M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年9月26日更新業種別M&A
カフェのM&A・売却・事業承継の相場!2024年最新動向や案件例を解説
カフェのM&A・売却・事業承継について、価格相場から業界動向、案件例、買収・売却のポイントを中心に、カフェのM&A成功事例も交えて解説します。カフェのような飲食業界は移り変わりが激しく、M&Aも活発な業界です。M&A・事業承継を検討中の方は必見です。
目次
カフェのM&A・事業承継スキーム
カフェの買収・売却スキームは、大別して居抜きとM&Aがあります。居抜きとM&Aは類似して見えますが内容は異なりますので、それぞれの概要を確認しておきましょう。
株式譲渡
株式譲渡とは、会社の株式を他者に売却し、経営権を移す方法です。手続きが比較的簡単で、経営権の移行がスムーズに行えるため、よく使われる手段です。
この手法では、売り手の持つ資産や負債、営業権、従業員などをそのまま買い手が引き継げるため、買い手はすぐに事業を開始することが可能です。売り手側にとっては、創業時の投資から得られる利益を確保でき、従業員の雇用も引き続き維持できる点が大きなメリットです。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社の一部または全ての事業を第三者に引き渡す方法です。特定の事業だけを選んで譲渡できるため、例えばカフェ事業以外の分野に集中したい場合などに適しています。
買い手にとっての利点は、簿外債務といった予期せぬリスクを回避できる点です。しかし、事業譲渡では、許認可や既存の契約が自動的に引き継がれるわけではありません。譲渡後に改めて許認可を取得したり、契約を再交渉したりする必要がある点には注意が必要です。
居抜き
居抜きとは、カフェ店舗内の内装・設備・什器などをそのままの状態で、店舗を引き渡すことです。この内装・設備・什器などのことをまとめて造作といいます。自己所有物件(建物)のカフェを、造作をそのままの状態で売却または賃貸するのが居抜きです。
賃貸物件で営業していたカフェも居抜き(造作譲渡)は可能ですが、その場合、貸主の承諾が必要になります。一般に、賃貸物件から退去する場合は原状復帰が条件です。しかし、次の賃借人がそのままの状態を希望すれば居抜きが成立し、原状復帰工事費用が省けます。
カフェ業界の最新動向
カフェ業界はトレンドの移り変わりが激しい業界の1つなので、その動向を把握しておくことが重要です。近年のカフェ業界の動向には、以下のような特徴がみられます。
- 飲食業界全体よりも売上高が伸長している
- 低価格チェーン店とこだわりの喫茶店が主流
- 商品のマンネリ化から脱するためコーヒーショップによる紅茶販売も増加
- 上場する会社や別事業に参入するケースもみられる
- 新規参入のしやすさから常に競争状態にある
飲食業界全体よりも売上高が伸長している
2023年、飲食業界全体が回復基調にある中、特にカフェや喫茶店は大きく成長しています。カフェの前年比売上高は2020年に69%まで落ち込んだものの、2021年以降に急回復し、2023年には120.6%に達しました。
利用客数の伸びも全体を上回っており、行動制限の解除後にカフェの利用が増えたと推測されます。さらに、客単価の増加も顕著で、2023年には飲食業界全体で最も高い伸びを記録しました。
一方、前年比店舗数はカフェが横ばいで、新規出店と閉業がほぼ同数です。カフェ業界には大きなチャンスがありますが、成功するためには適切なコンセプトやビジネスモデルの構築が必要です。
参考:日本フードサービス協会「日本フードサービス協会会員社による外食産業市場動向調査 令和5年(2023年)年間結果報告 」
低価格チェーン店とこだわりの喫茶店が主流
かつてカフェといえば個人経営の喫茶店が多かったのですが、近年は低価格を売りにしたチェーン店が増えているのが特徴です。ドトールやスターバックスを始めとした、多彩なメニューを提供するカフェ・チェーンが全国に展開しています。
その一方でチェーン店に対抗して、個性を主張したこだわりの喫茶店も人気があるのも事実です。
商品のマンネリ化から脱するためコーヒーショップによる紅茶販売も増加
カフェは本来はコーヒーを提供する店ですが、近年はコーヒーのメニューが非常に多彩になり、商品がマンネリ化している部分もあります。そこで打開を図るため、紅茶や日本茶などコーヒー以外の飲み物を提供する店舗も増えてきました。
カフェでありながら、コーヒーを提供しない紅茶や日本茶専門のカフェも多く、コーヒーが苦手な顧客を取り込み人気を博しています。
上場する会社や別事業に参入するケースも見られる
カフェや喫茶店は小規模な個人経営も多いですが、なかには株式を上場するような会社もあり、スターバックスやキーコーヒーをはじめ、カフェ運営を主な事業とする上場企業は15社前後、存在しています。
一方で、カフェの運営会社が別事業に参入して事業拡大するケースもみられ、アミューズメント施設の運営や、コラボレーションカフェを利用したクロスメディア展開が多いのが特徴です。
新規参入のしやすさから常に競争状態にある
カフェは新規参入が比較的しやすい業種であるため、常に激しい競争にさらされています。カフェ同士の競争だけでなく、ファーストフード店・コンビニ・自動販売機のコーヒーなどとも顧客を取り合うので、売上を維持して長期間安定した経営をするのは容易ではありません。
また、カフェ業界は新規参入も多いですが、その一方で廃業も多く、店舗数自体は横ばいから微増の状態が続いています。
カフェのM&A・売却・事業承継の価格相場
カフェのM&A・売却・事業承継を検討している経営者にとっては、いくらで買収・売却できるのかという相場が気になるところでしょう。居抜きの場合、M&Aの場合、それぞれの価格相場を説明します。
居抜きの価格相場
カフェの居抜きの価格相場はいくつかの条件によって上下します。主な条件となるのは以下のようなものです。
- カフェの立地条件(地域、駅からの距離、住宅街か商店街か、路面店かどうかなど)
- カフェの広さ(面積)
- カフェの内装の状態(清潔さ)
- カフェの設備・什器の状態(使用年数)
小規模なカフェ1店舗の居抜きの場合、相場は100~250万円程度です。しかし、上に挙げた条件が良好であれば、500万円以上の居抜き価格となる場合もあります。
M&Aの価格相場
カフェのM&Aでは、単なる居抜きとは異なり、以下のような点を鑑みて買収・売却価格が決まります。
- カフェの現在の売上高・利益額
- 今後の売上高・利益額の見通し
- カフェの特徴の有無(運営地域におけるブランド性や特徴となるメニューの存在の有無など)
- カフェで働く人材の優秀性
- 経営上のリスクの有無(債務の有無・内容、労務上の問題の有無、賃貸物件の場合の契約内容など)
以上の要素を総合的に判断したうえで、小規模なカフェ1店舗のM&Aの場合、買収・売却相場は数100万円から1,000万円程度になることが多いでしょう。この相場は、他業種の飲食店やサービス業店舗の買収・売却相場とおおむね同程度だといえます。
飲食店のM&Aの金額や相場については下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
カフェのM&A・売却・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っているカフェのM&A・売却・事業承継の案件例をご紹介します。
【エリア内食べログ1位】首都圏のベーカリ・カフェ運営
エリア内850店舗中で食べログ1位を記録しています。富裕層顧客が多く、8割がリピーターです。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 2億5,000万円 |
譲渡理由 | 事業拡大 |
【海外/EBITDA3億円】シンガポール カフェ事業(マスターFC)
韓国本社のカフェ事業マスターフランチャイジーライセンス(シンガポール/フィリピン)を保有しています。マレーシアやインドネシアなど、本部との協議でライセンスを広げていく余地があります。
エリア | 海外 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 非公開 |
カフェのM&A・売却・事業承継の成功事例
カフェのM&A・売却・事業承継の成功事例をピックアップしてご紹介します。
コメダHDによるPOON RESOURCESのM&A・事業承継
2024年9月6日、コメダホールディングス(コメダHD)は、連結子会社KOMEDA INTERNATIONAL HOLDINGS PTE. LTD.(KIH)に対する増資と、POON RESOURCES PTE. LTD.(POON)の株式70%を取得し孫会社化する基本合意書を締結したと発表しました。
コメダHDは喫茶店チェーンの運営を行い、KIHはアジア地域での統括管理を担っています。POONはシンガポールでカフェとタイ料理レストランを経営しています。
このM&Aにより、コメダHDはPOONの事業を加え、シンガポールや東南アジアでコメダ珈琲店の事業拡大を図る計画です。
ETVOXによるIMOMのM&A・事業承継
2024年7月9日、IMOM(名古屋市)は、東京の店舗「LITTLE TOY BOX」をETVOX(東京都目黒区)に譲渡することを決定しました。IMOMは就労継続支援B型事業とカフェ事業を展開しており、今回の譲渡により名古屋での事業に専念し、リソースの最適化を図ります。
また、譲渡後は収益性の改善や流動比率の向上を目指し、さらに新たな就労支援拠点の開設も予定しています。ETVOXはプロジェクトマネジメント支援事業を行っています。
サンマルクホールディングスによる倉式珈琲のM&A・事業承継
2024年1月、サンマルクホールディングスは倉式珈琲を吸収合併しました。
サンマルクホールディングスは、レストラン及びカフェなど約850店舗の飲食店を運営する外食チェーン企業です。倉式珈琲は、倉式珈琲店事業を行う完全子会社です。今回の吸収合併により倉式珈琲事業部としてビジネスの再構築を行います。
カフェのM&A・事業承継で高値で売るポイント3選
せっかく自分のカフェをM&Aで売却・事業承継する以上、できるだけ高値で売りたいものです。一般に以下のような強みを持っているカフェは、高値で売却できる傾向にあります。
- 不動産などの資産も保有している
- 個性がありファン(固定客)のいる店
- アクセスしやすい立地条件
①不動産などの資産も保有している
カフェを経営する時は店舗を賃借することが多いですが、もし店舗も自分で所有しているなら、その不動産価値が売却価格に上乗せされます。
②個性がありファン(固定客)のいる店
最近のカフェは、メニューや店内の雰囲気づくりに個性があり、動物カフェやコンセプトカフェなど特殊なカフェも増えています。このような個性的なカフェを運営していて固定客がある場合は、売却価格を高く見積もってもらえる可能性があります。
③アクセスしやすい立地条件
カフェはメニューやサービスの良さももちろん重要ですが、立ち寄りやすい場所に立地しているかどうかも売上に大きく影響するものです。したがって、アクセスしやすい立地条件のカフェは、そうではないカフェよりも売却価格が高くなります。
飲食店の事業譲渡/株式譲渡のメリット・デメリットについては下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
カフェのM&A・売却・事業承継を成功させるポイント
この章では、カフェのM&A・売却・事業承継を行う際のポイントについて、売却側・買収側双方の立場から解説します。
売却側の4つのポイント
まずは、カフェのM&A・買収・売却を行う際の、売却側のポイントについてみていきます。売却側の主なポイントは以下の4つです。
- 事前の準備を計画的に行う
- 売却の目的を明確にする
- 売却できる資産・強みなどを明確に伝える
- M&A・事業売却の専門家に相談する
①事前の準備を計画的に行う
カフェをM&Aでうまく売却するためには、いきなり買収先を探して交渉に入るのではなく、事前準備をしっかり行うことが大切です。たとえば、自社の強みの洗い出しや磨き上げといった作業をしてM&Aに臨みます。
事前準備は、経営者が自分だけで行うことも不可能ではありませんが、M&A仲介会社に相談してサポートを受けたほうがスムーズに進みます。
②売却の目的を明確にする
カフェをM&Aで売却する目的には、経営者の引退による事業承継、他の事業に注力するための選択と集中、資金の獲得などが考えられます。買収候補の経営者と面談するにあたっては、売却の目的を明確にしておけば交渉がスムーズに進むでしょう。
③売却できる資産・強みなどを明確に伝える
カフェをM&Aで売却する時は、売却できる資産や強みを買収側に明確に伝えられるようにしておきましょう。独自のメニューやコンセプトがある場合はそれが強みになり、不動産や独自の設備を所有しているなら、その資産の分だけ売却価格が上乗せされます。
④M&A・事業売却の専門家に相談する
カフェのM&Aによる売却は、小規模な店舗ならマッチングサイトなどを利用して自分で行うことも不可能ではないものの、やはりM&A・買収・売却の専門家に相談したほうが無難です。
M&A・買収・売却の専門家には、M&A仲介会社、M&Aアドバイザリー、経営コンサルタント、士業事務所、金融機関などといった選択肢があります。
買収側の3つのポイント
次は、カフェのM&A・買収・売却を行う際の、買収側のポイントをみていきます。買収側の主なポイントは以下の3つです。
- 経営状態・会計などを確認する
- 状況により居抜きの選択も行う
- M&A・事業買収の専門家に相談する
①経営状態・会計などを確認する
カフェは新規参入と廃業が常に繰り返されている業種なので、なかには経営状態がよくない店舗もあります。カフェをM&Aで買収する際は、経営状態が良好か確認するようにしましょう。
また、個人事業や中小企業のカフェでは会計処理が雑なことも少なくないため、経理関係がしっかりしているかどうかも要確認です。
②状況により居抜きの選択も行う
カフェをM&Aで買収するときは、設備を自分でそろえる場合と、設備をそのまま利用する居抜き物件の場合があります。居抜き物件はレイアウトなどを自由にできないデメリットがありますが、設備投資を抑えられるのはメリットです。
したがって、コストを抑えてカフェの買収を行いたい場合は、居抜き物件という選択肢も有効になります。
③M&A・事業買収の専門家に相談する
買収側も売却側と同様、M&A・事業買収の専門家に相談するようにしましょう。1店舗のみの小規模な買収の場合は、中小企業専門のM&A仲介会社がおすすめです。
中小企業専門のM&A仲介会社は、小規模な売買が得意なだけでなく、料金体系も中小企業に合わせて低く設定していることが多く、使い勝手がよいでしょう。
カフェのM&A・売却・事業承継まとめ
後継者がいない場合の事業承継や、大手の傘下に入ることによる経営の安定化など、カフェのM&A・売却には様々な利点があります。M&Aの相場やポイントを理解して、納得いく条件で買収・売却できるように準備しておくことが重要です。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。