M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月10日更新業種別M&A
内装・外装工事業界のM&A・事業承継の案件を紹介!注意点や事例も解説
内装・外装工事各社は新築建築市場が落ち込むなか、リフォーム市場へ進出し生き残りを図っています。そこに必要なのは、他社との差別化です。内装・外装工事会社にとってM&Aは重要な手段となります。内装・外装工事業界のM&A事情について掘り下げます。
目次
内装・外装工事業界の市場規模・動向
内装・外装工事業界の市場規模・動向についてご紹介します。
市場規模
国土交通省によれば、2022年度における内装工事の市場規模(完成工事高)は、4兆2383億円(前年度比1.1%増)です。
外装工事業界に含まれる事業には、左官工事・屋根工事・塗装工事・防水工事などがあります。国土交通省によれば、2022年度における外装工事の種類別市場規模(完成工事高)は、塗装が2兆1420億円(前年度比1.6%増)です。
次いで、煉瓦・タイル・ブロックが7857億円(前年度比3%増)、屋根が4017億円(前年度比8%減)、板金が4384億円(前年度比1.8%増)、左官が3709億円(前年度比3%増)、金属製屋根3083億円(前年度比12.5%増)、ガラスが4949億円(前年度比159.1%増)となっています。
外装工事と聞くと限定的な工事をイメージしがちですが、外装のみを下請けで行う事業者もいれば、建築から総合的に行う事業者など形態もさまざまです。
近年では、新築住宅の着工戸数の低迷などを踏まえ、リフォーム市場などの新分野への参入を図る企業も少なくありません。というのは、外装工事業界は建築市場の動向に大きく左右されるため、市場が低迷した場合に備えた事業戦略も必要なためです。
その事業戦略として多いのは、新規事業参入などに代表されるような、他社との差別化を図るケースです。事業戦略を実現する具体的な手段として、M&Aが大きくクローズアップされています。
参考:国土交通省「建設工事施工統計調査報告(令和4年度実績)」
新規参入の増加
建築業界のなかで外装工事業は比較的少ない設備投資で始めることができるので、新規参入しやすい業界といえるでしょう。そのため、近年では、外装工事業界へ新規参入する事業者が増加傾向にあります。
人材不足と後継者不在問題の深刻化
建設業界全体では若年層の入職者が減少し、同時に従事者の高齢化が進んでおり、人材の確保と技能の継承が喫緊の課題となっています。2019年度の建設業構造実態調査によると、内装工事業者の73.4%が人材不足を経営上の大きな問題として挙げています。
さらに、建設業に限らず、多くの中小企業が後継者不足に直面しており、2023年には全国・全業種で後継者不在率が53.9%に達しました。これが原因で廃業に追い込まれる企業も少なくありません。
特に建設業界では、後継者不在の割合が他業種と比べて高く、職別工事業(内装工事業など設備工事以外の専門工事業)では64.6%と深刻な状況です。こうした後継者不足は、業界全体の将来を揺るがす問題となっており、今後の対応が強く求められています。
参考:e-Stat「2019年度建設業構造実態調査(経営上の課題)」
帝国データバンク「特別企画:全国「後継者不在率」動向調査(2023 年)」
マンションの大規模修繕工事の増加
マンションの老朽化対策として、2020年6月に「マンション管理適正化法」が制定され、2022年4月から「マンション管理適正評価制度」が導入されました。この制度は、修繕費用の積立や管理組合の活動が計画通りに実施されているかを基準に物件を認定するものです。
国の調査で3割以上の物件で修繕積立金が不足していることが判明したことが背景にあります。2021年9月には、国土交通省が修繕積立金と修繕計画に関するガイドラインを見直しました。
さらに、2024年度には、建物の耐震性や防火性、外壁や給排水設備、バリアフリーなどに問題がある場合、建て替え決議の賛成基準を緩和し、所在不明者を除く4分の3の賛成で建て替えが可能となるよう区分所有法を改正する予定です。2023年4月には、大規模修繕工事を行ったマンションに対し、各住戸の建物部分の固定資産税を減額する特例も導入されました。
さらに、2025年度税制改正では、老朽化したマンションの全面改修や解体を促進する税制優遇措置も検討されており、改修や解体後の敷地売却による収益を非課税にする案も進められています。
一方、マンションの大規模修繕費用は、建材や人件費の高騰や2000年代に大量に供給された物件が修繕期に入ったことから、過去10年間で2〜3割上昇しました。その影響で、住宅金融支援機構によるリフォーム融資額も10年前の約3倍に増加しています。
また、大規模修繕の周期を従来の12年から18年に延ばすケースも増えており、足場の設置費用を抑え、60年間の総修繕費を約14%削減できるという効果も報告されています。こうした事情から、今後はマンションの大規模修繕工事の増加する見込みです。
空き家リフォーム市場への参入も相次ぐ
近年は空き家リフォーム市場への参入企業が増加しています。総務省の住宅・土地統計調査によれば、2023年の空き家数は899万5000戸、空き家率は13.8%に達し、いずれも過去最高を記録しました。この背景には、2023年12月に改正された空き家対策特別措置法があります。
改正後は、「危険な空き家(特定空家)」に加え、「特定空家になる恐れのある管理不全空家」も対象となり、固定資産税の増額が適用されることとなりました。これにより、空き家をそのまま放置することが難しくなり、対策が急務となっています。
内装・外装工事業界のM&A動向
近年の外装工事業界におけるM&Aを俯瞰すると、他業種同様、それぞれの企業の事情によるさまざまな目的でのM&Aが実施されています。例えば、同業者同士のM&Aであれば、双方の技術力や異なる事業エリアなどを融合させることによって、既存事業の技術力は強化されます。なおかつ事業エリアは拡大されますから、収益増強が望めるはずです。
新規事業を開始したい場合も、M&Aによってその事業に強みのある企業を買収できれば、自社で一から事業を開始するよりも圧倒的に短期間で新分野への参入が可能となります。
例えば、リフォーム事業の成長を見込んで、異業種からの参入が相次いでいます。家電量販店大手のヤマダホールディングス(旧ヤマダ電機)は、2011年に注文住宅事業を手掛けるエス・バイ・エル、翌年には住設機器メーカーのハウステックを子会社化し、2018年には4子会社を統合して「ヤマダホームズ」を設立しました。
また、リフォーム専業のナカヤマ(埼玉県上尾市)を吸収合併し、さらに2019年12月に家具販売の大塚家具、2021年2月には住宅メーカーのヒノキヤグループを連結子会社化するなど、家電以外の事業強化を進めています。2022年5月には大塚家具を吸収合併し、2024年3月期の住建事業の売上高は前期比2.6%増の2,795億円に達しました。
上新電機は2014年に住宅リフォーム事業に本格参入し、コメリは2015年に中古住宅販売のカチタスと提携し、全国約1,200店舗の半数でリフォームに対応可能な体制を整え、顧客紹介で連携を図っています。
また、ホームセンター大手のコーナン商事もリフォーム事業を拡大中です。2021年12月にパナソニックホールディングスの子会社から50名の技術者を引き継ぎ、関東圏で間取り変更などのサービスを提供し、2026年2月期までにリフォーム事業の売上を2021年2月期の2倍となる250億円まで引き上げる計画を掲げています。
このように、同業種だけの合従連衡では実現できない外装工事業界の新たな発展への可能性として、今後のM&A動向も注目されます。
内装・外装工事業界のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている内装・外装工事業界のM&A・事業承継の案件例をご紹介します。
【近畿地方/内装仕上工事・造作家具製造】
長年の実績により、直接受注がほぼ100%を占めています。打ち合わせから設計・製作・施工まで一貫して対応しており、さまざまな依頼内容に対応可能です。
エリア | 大阪府 |
売上高 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 4,000万円(応相談) |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【東京都内/大手ゼネコン1次請け】内装仕上げ工事業
大手ゼネコンからの一次請けを中心に、内装仕上げ工事を手掛けています。外注先として多くの一人親方を抱えており、常時35人程度が稼働中です。
エリア | 東京都 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 希望なし |
譲渡理由 | 前代表の急逝・資金繰り改善のため |
【神奈川/営業に強みあり】建築工事業(内装/外装/修繕工事)
不動産管理会社とのコネクションが強く、定期的な修繕工事の請負が可能です。80%以上が元請ですが、大規模修繕工事については、一次請けで受注しています。
エリア | 神奈川県 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡理由 | 代表者の別事業注力のため(引継ぎ期間等は柔軟に対応可能) |
内装・外装工事業界のM&A・事業承継の事例
内装・外装工事業界のM&A・事業承継の事例をピックアップしてご紹介します。
ジオリーブグループが丸西を子会社化
2024年9月12日、ジオリーブグループは、内装工事業を営む丸西(宮城県仙台市)の株式を取得し、連結子会社とすることを決定しました。
ジオリーブグループは、傘下企業の経営管理などを行う企業であり、今回のM&Aは、人口減少や少子高齢化に伴う住宅需要の縮小が見込まれる中、東北エリアを中心に商業施設や公共施設などの内装工事を手掛ける丸西をグループに迎え入れることで、同地域での事業基盤を強化し、グループ全体として非住宅分野への展開を強化することを目的としています。
これにより、ジオリーブグループは将来的な需要減少に備え、事業領域の拡大と安定的な成長を図る方針です。
サンゲツがD’Perception Pte.Ltd.を買収
2024年5月10日、サンゲツは、シンガポールを拠点とし東南アジアで空間デザインと総合施工を展開するD’Perception Pte.Ltd.(D’Perception社)およびそのグループ会社の過半数の株式を取得する契約を締結することを取締役会で決議しました。
サンゲツは、インテリア商品の企画・開発・施工に強みを持ち、今回のM&Aは海外事業の拡大を目的としています。D’Perception社との協業を通じて、東南アジア市場における空間デザイン力を強化し、顧客ニーズに応じた総合的なサービス提供を実現する計画です。
また、中国やインドを含むアジア全域への事業展開を見据え、地域特性に応じたサービスの向上を図り、顧客満足度を高めることで競争力と収益力の強化を目指します。この取り組みは、サンゲツグループ全体の企業価値向上に大きく寄与すると見込まれています。
東宝ファシリティーズがシコーを子会社化
2021年11月1日、東宝の連結子会社である東宝ファシリティーズ(東京都千代田区)は、内装工事業を手掛けるシコー(東京都世田谷区)の全株式を取得し、子会社化しました。
東宝は映画や演劇の企画・制作、不動産経営などを展開しており、東宝ファシリティーズは清掃、設備管理、警備、建設、施設運営などの事業を行っています。
今回のM&Aにより、東宝は建設事業の拡大を目指すとともに、シコーの技術力を取り入れることで、技術力・営業力の強化を図り、グループ全体の企業価値向上を図る狙いです。両社の強みを活かしたシナジー効果を生み出すことで、グループとしての競争力をさらに高めることを目指しています。
ヨシックスホールディングスが芝産業を子会社化
2021年10月、ヨシックスホールディングスは神奈川県の芝産業の全発行済み株式を取得し、同社を子会社化すると発表しました。
子会社となった芝産業は、店舗などの内外装の設計施工や空調・ダクト工事、電気・看板工事などを手掛ける企業です。ヨシックスホールディングスは、飲食店などのフードビジネスや店舗の設計施工をグループで展開しています。
ヨシックスホールディングスが芝産業を子会社化したのは、グループ外の顧客との取引を広げることでグループでの売上・利益の向上を図ることが目的です。
内装・外装工事業界のM&A・事業承継のメリット
この章では、内装・外装工事業界のM&Aで、売却側・買収側がそれぞれに得られるメリットを紹介します。
売却側のメリット
売却側は、次のようなメリットが得られます。
従業員の雇用を確保
まずメリットとして挙げられるのは、従業員の雇用を確保できることです。比較的年齢層の高い職人が多い業界のため、廃業などの場合の再雇用先を探すのは容易ではありませんが、M&Aであれば雇用を継続できます。
後継者問題の解決
2つ目のメリットは、後継者問題を解決できる点です。近年、中小企業においては後継者不足による廃業が後を絶ちませんが、M&Aによる売却ができれば後継者問題による廃業を回避できます。
売却・譲渡益の獲得
3つ目のメリットは、売却・譲渡益が獲得できることです。売却・譲渡が実現すれば、売却・譲渡益を確保できます。
株式譲渡の場合は経営者が得られるので、他事業立ち上げの資金に充当したり、リタイア後の生活費などに充てたりすることが可能です。
大手企業の傘下に入る
4つ目のメリットは、大手企業の傘下に入れることです。大手企業のグループに入れば、安定した経営が継続でき、自社のみでは実現が難しかった事業拡大や新しい領域へのチャレンジなども可能となります。
個人保証や担保などの解消
また、個人保証や担保などが解消できることもメリットといえるでしょう。経営者は、融資を受けるために個人保証などを行っている場合が多いですが、会社を売却・譲渡の手法によっては債務もそのまま買い手側に引き継がれるので、個人保証や担保などが解消されます。
買収側のメリット
一方で、買収側は次のようなメリットが得られます。
従業員の確保
1つ目のメリットは、従業員を確保できることです。売却側の経験ある優秀な人材を一度に獲得することができます。
事業を低コストで獲得
また、事業を低コストで獲得できるのも大きなメリットといえます。事業を新規に立ち上げようとすれば、当然それなりの費用がかかりますが、M&Aによって必要な事業の引き継ぎができれば、コストを抑えることが可能です。
グループ体制の強化
3つ目のメリットは、グループ体制を強化できる点です。受注から施工までをグループ内で行うことで、体制の強化と事業の効率化が図れます。
顧客・取引先・ノウハウの獲得
売却側の顧客・取引先・ノウハウを獲得できるのも買収側の大きなメリットです。自社の既存事業とのシナジーを生み出したり、事業領域を拡大したりなど、事業の成長・発展につなげることが可能です。
事業エリアの拡大
5つ目のメリットは、事業エリアを拡大できることです。この業界は地域密着で経営している企業に強みがあるので、M&Aにより買収できれば、事業エリアの拡大が期待できます。
内装・外装工事業界のM&A・事業承継を成功させるポイント
内装・外装工事業界でM&Aを実施するにあたり、それを成功へと導くポイントがあります。売却側、買収側それぞれの立場におけるM&A成功のポイントについて見てみましょう。
売却の場合のポイント
内装・外装工事業界のM&Aで売却するにあたっては、自社の魅力・強みを相手企業にきちんとアピールする必要があります。具体的にどのような事業に強みがあるのか、特徴的な技術やノウハウは何かなど、長所をわかりやすく伝えましょう。
わかりやすく魅力が伝わるようでなければ、買い手として名乗り出る企業も現れづらくなります。買い手が売り手に魅力を感じてこそ売却が成功するわけですから、魅力や強みをどのようにわかりやすく伝えるか工夫が大切です。
特に内装・外装工事業界では、同業種以上に関連業界とのM&Aが増えるかもしれません。同業種であれば、それほど工夫しなくてもこちらの長所は伝わるでしょう。しかし、異業種相手であれば、より工夫したアピールを心掛けなくてはいけません。
買収の場合のポイント
内装・外装工事業界のM&Aで、買収によって事業の強化・拡大や新規事業開始などを実現するためには、自社が強化すべき事業は何か、新しく開始したい分野は何かなど、具体的な目的をはっきりと定めておかなければなりません。
それがはっきりしていれば、あとは自社に必要な売り手を見つけるだけです。近年の内装・外装工事業界の動向を踏まえると、他社との差別化を図るためにM&Aでの買収を活用することには大きなメリットがあります。
既存事業強化にしろ、新規事業開始にしろ、自社とシナジー効果の高い企業の買収は、今後の業界動向に対応するために大きな意味があるからです。買収を成功させるためにも、相手企業の事業内容、技術、サービス体制、実績などを徹底的に分析しましょう。
内装・外装工事業界のM&A・事業承継での注意点
内装・外装工事業界のM&Aについて、引き続き注意点を論じていきます。成功へのポイントにも密接に関連する内容です。本章では、3つの注意点について説明します。
目的をはっきりさせること
内装・外装工事業界のM&Aにあたっては、目的の明確化が非常に重要です。目的が不明確なM&Aなどはあり得ませんが、他の業種以上にM&Aの目的を鮮明化しておくことが、成功を左右するといっても過言ではありません。
漠然と事業拡大などをイメージするような状態でM&Aをしても、失敗して損失が発生することもあるでしょう。「M&Aの費用がかかっただけで、結果として損失になってしまった」などという事態は、避けなくてはなりません。
M&Aで失敗することのないようM&Aの目的を鮮明化したうえで、その目的に十分合致する相手とM&Aを進める必要があります。内装・外装工事業界の動向を踏まえつつ、具体的な将来の収益目標を持ってM&Aに臨むといいでしょう。
M&Aの対象は丁寧に選ぶこと
内装・外装工事業界のM&Aにおいては、相手企業に経営を任せることになる売却の場合も、相手企業を傘下に迎える買収の場合も、どちらにしてもその相手企業は信頼できる企業でなければなりません。
M&Aで相手の候補企業を絞り込む際には、信頼できるかどうかを慎重に見極めたうえで、丁寧に慎重に選ぶ必要があります。100%信頼しきれないような状態でM&Aを行っても、後になってトラブルが発生するかもしれません。
そのような事態を防ぐためにも、相手企業の事業内容や経営方針、収支状況などを細かく分析することが肝要です。ふさわしいと思える相手が見つかったときは、早急にアプローチしましょう。良い企業は他社もすぐに目を付けます。決断したらすぐに動くべきです。
専門家のサポートがおすすめ
内装・外装工事業界でM&Aを実施する場合、そのプロセスでは法務、税務、財務などの専門知識が求められます。また相手企業との交渉力も必要です。それらを自社だけで進めることは困難なので、M&A仲介会社・アドバイザリーなど専門家のサポートがおすすめです。
M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
内装・外装工事業界のM&A・事業承継の売却相場
内装・外装工事業界のM&Aを検討している売却側にとって、自社(事業)がどのくらいで売却できるのかというのは非常に気になるものです。M&Aの最終的な売却価額は買収側との交渉で決定されるため、明確な相場というものはありません。
ですが、交渉は言い値で行われるわけではなく、企業価値をベースとするため事前に算出することで大まかな売却相場を知ることは可能です。
大まかな売却相場の求め方
価額交渉のベースとなる企業価値の算出方法にはいくつかの種類があり、どの方法が適しているかは企業の規模や状況によって異なります。中小企業がM&Aを行う場合は「年倍法」と呼ばれる方法を用いるケースが多いです。
年倍法による企業価値算出は「時価純資産+営業利益×年数」で求めることができます。計算式中の乗ずる年数は2〜5年であることが多いですが、何年に設定するのが妥当なのか判断に迷う場合はM&A仲介会社などの専門家へ相談して企業価値を算出してもらうとよいでしょう。
外装工事業界は関連業界とのM&Aが活発化する可能性もあり、今後はM&A事例が多様化することも予想されます。こうしたなかでM&Aの相場・費用を正確に把握することは難しいですが、企業価値評価を行ったり自社と似たM&A事例を分析したりして、M&Aの相場・費用を検討しておくことも必要です。
各事例におけるM&Aの目的、M&Aの当事者となる会社の規模、対象事業の規模、業績、従業員の数、M&Aのスキームなどの詳細を確認し、その中で自社と類似するものは徹底的に分析しておきましょう。
事業承継・M&A時におすすめの相談先
事業承継・M&A時におすすめの相談先を3つピックアップしてご紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設けるケースが増えています。特に、投資銀行や大手メガバンクは、FAとしてM&Aのサポートを積極的に行っており、買収時の資金調達や戦略的なアドバイスなど重要な役割を担っています。金融機関を活用するメリットとして、専門的な資金調達アドバイスが受けられることに加え、事業承継時の株式移転などにも役立つ点が挙げられます。
さらに、これらの専門部署を通じて、M&Aのプロフェッショナルと繋がることも可能です。
ただし、注意点として、大手金融機関は主に大規模案件を取り扱う傾向があり、中小企業向けの案件には対応しないことがあるため、利用を検討する際には自社の規模や案件の内容に合った支援機関を選ぶ必要があります。また、アドバイザー報酬が高額になるケースもあるため、事前に費用面を確認することが重要です。
公的機関
近年、公的機関でも事業承継やM&Aに関する相談体制が整備されてきています。
「事業承継・引継ぎ支援センター」は、後継者不足に悩む中小企業の支援を目的に設立された窓口で、情報提供やアドバイス、企業間のマッチング支援を行っています。このセンターは全国47都道府県に展開され、地方の企業でも気軽に利用できる点が大きな特徴です。さらに、相談は無料で、専門的な知見に基づいたアドバイスを受けられるため、信頼性の高い支援が期待できます。
個人事業主も相談対象となっており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家を紹介してもらうことも可能です。しかし、対応のスピードやサポートの範囲については、民間のM&A仲介会社と比べると制限があるため、利用の際にはその点を考慮する必要があります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の売買プロセスを全面的にサポートする専門機関です。売却希望の企業と買収希望の企業の双方と契約し、交渉の調整や相手企業の選定、取引のスケジュール管理、企業価値の評価(バリュエーション)、書類作成など、M&Aに関わるすべての段階を支援します。
彼らの役割は、売り手と買い手の条件をすり合わせ、双方にとって最適な合意を導くことです。また、豊富な選択肢の中から最適な取引相手を見つけることで、M&Aの成立率を高めることも得意としています。特に、M&Aに不慣れな企業に対しては、具体的なアドバイスやサポートを提供し、安心して取引を進められるよう支援を行います。
ただし、仲介会社によっては、着手金や中間金といった費用がかかることがあり、コスト面での負担が発生する点には注意が必要です。コスト負担を抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを提供している仲介会社を選ぶことが一つの選択肢です。
内装・外装工事業界のM&A・事業承継まとめ
内装・外装工事各社は、建築市場とリフォーム市場を両にらみしながら、自社の強みを持つために他社との差別化が急務といえる状況です。そのような状況の中で、M&Aは事業の強化・拡大に有効な手段として注目が集まっています。
ただし、M&Aは慎重に相手を選んで行わなければ、実施後、想定したようなシナジー効果が得られない可能性もあります。M&A実施の際は、実績あるM&A仲介会社を伴って進めるようにしましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。