M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年1月17日公開業種別M&A
士業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!
士業業界は個人で運営している事務所が多く、士業である経営者本人の高齢化に伴う事業承継が大きな問題となっています。そこで、M&Aによって顧客とスタッフの雇用を守ろうとする動きもあります。この記事では、士業業界のM&Aについて解説します。
士業業界の動向
士業とは、国家資格が必要な職業のうち、名称が「士」で終わるものを総称して呼びます。特に、職務上必要な場合に、戸籍や住民表などの職務上請求を行うことができる士業が八士業です。
八士業には、弁護士、司法書士、弁理士、税理士、社会保険労務士、行政書士、土地家屋調査士、海事代理士があります。
近年のこれらの士業の動向をみると、国内で顧問先となる中小企業が減少傾向にある中で、個人事務所が減少し、大規模な法人が増加傾向です。
士業の事務所の主な収入は顧問料ですが、顧客の減少と法人の増加により、顧問料の価格低下が起きており、今後、AIの発達により大きな環境変化が訪れる予想もされています。
今後は、他の事務所にはない独自性や高い専門性、AIには追いつけないより付加価値のあるサービスの提供などが、士業業界にも求められて来るでしょう。
士業事務所のM&Aのメリット
士業事務所をM&Aするメリットとはどのような点にあるのでしょうか。売却側のメリットと買収側のメリットをそれぞれ解説します。
売却側のメリット
士業事務所を売却するメリットは次のとおりです。
後継者問題の解消
士業業界でも、経営者の高齢者問題が深刻化しています。60歳を超える士業経営者の多くが個人事務所で地域密着の経営をしていますが、後継者不足に悩んでいる事務所がたくさんあります。
士業には高い専門性が必要で、身内で資格を持った人がいなければ、経営者本人が働けなくなったときに廃業せざるを得ません。事務所を廃業してしまうと、長年信頼を寄せて顧問契約を結んでいてくれた顧客や、従業員の行く先がなくなってしまいます。
まだ経営者本人が動けるうちに、大手事務所などとM&Aによって合併して、顧客の移行をスムーズに進めることができれば、後継者問題も解決できます。
従業員の雇用の維持
士業事務所をM&Aによって売却できれば、従業員の雇用も確保することができます。士業事務所の多くは、弁護士や税理士が一人で全てを回しているわけではなく、事務職員や若手の見習いを抱えています。廃業してしまえば、雇用している従業員は解雇せざるを得ません。
M&Aでは、ほとんどの場合、売却側の従業員の雇用もそのまま買収側企業で維持されます。M&Aなら、従業員を路頭に迷わせずに済むというメリットもあるのです。
売却利益の獲得
もしも、M&Aで事務所を売却せずに廃業することになると、従業員には退職金を支払う必要があります。また、事務所の閉鎖に伴い諸々の出費も重なるでしょう。
しかし、M&Aで売却すれば、売却側に出費は一切ありません。反対に、売却した利益が手元に入ってきます。その利益は経営者が自由に使っていいものなので、引退後の生活費などに充てることも可能です。
買収側のメリット
M&Aによって士業事務所を買収するメリットは次のとおりです。
事業拡大・新規顧客の獲得
士業事務所のM&Aでは、売却側の顧問契約を買収側がそのまま引き継ぎます。M&Aで、事務所を買収することで、新規営業する必要もなく、契約顧客数を増加させることが可能です。
また、士業事務所ではそれぞれの事務所が得意としている分野や地域があります。例えば、医療関係に強い法律事務所や税理士事務所などです。自社があまり得意としていない分野や地域に強い事務所を買収することで、その分野への事業拡大が低コストで可能となります。
優秀な人材の獲得
M&Aによる買収では、売却側で雇用されていた従業員を買収側でそのまま引き受けます。
士業業界でも深刻な人出不足問題が起きていて、優秀な人員の確保に多くの事務所が悩んでいるところです。
M&Aで、すでに多くの実績を積んできた事務所を買収できれば、経験豊かなスタッフをそのまま自社に取り込むことができます。優秀な人材を確保する方法としてもM&Aには大きなメリットがあるのです。
士業業界のM&A・売却・買収事例
士業業界でM&Aを行った事例を紹介します。
ライズアクロスグループが共生グループをM&Aした事例
2019年2月に、ライズアクロスグループが共生グループを経営統合するM&Aを実施しました。M&Aのスキームなどは非公表です。
ライズアクロスグループは東京を中心とした司法書士法人です。共生グループには、札幌に土地家屋調査士法人共生と株式会社共生測量があります。
このM&Aにより土地家屋調査士法人共生は土地家屋調査士法人共生ライズアクロスに、株式会社共生測量は株式会社共生ライズアクロスに社名を変更しました。さらに、司法書士法人ライズアクロス札幌を新設します。
このM&Aにより、共生としては札幌で従来の測量、土地家屋調査士業務の他に司法書士、行政書士業務もできるようになりました。その結果、相続や事業継承、農地転用などに幅広く対応できるようになるとしています。
参考:共生ライズアクロス「ライズアクロスグループとの経営統合について」
税理士法人カオスが柄溝税理士事務所をM&Aした事例
2018年7月に、税理士法人カオスが柄溝税理士法人事務所を買収するM&Aが実施されました。M&Aのスキームなどの詳細は非公表です。
税理士法人カオスは大阪市に拠点を置く税理士法人事務所です。会計、租税法、社会保険、労務、ファイナンシャル・プランニングなどの各分野のスペシャリストが揃っています。
柄溝税理士法人事務所は大阪市にあった個人事務所でした。後継者がいなかったことから、今後に不安を感じて、M&Aによる事務所の譲渡を決断しました。
このM&Aにより、税理士法人カオスでは柄溝税理士法人事務所の顧客を新規で獲得できたほか、スタッフの合流により、今までにはなかった管理の手法などを経験することができて、M&Aのメリットがとても大きかったとのことです。
参考:税理士法人カオス「合流に関するご案内」
税理士法人TOTALが井上総合会計事務所をM&Aした事例
2013年4月に井上総合会計事務所が税理士法人TOTALにより買収されて合併するM&Aが実施されました。
税理士法人TOTALは東京を拠点に、会社設立や医療経営の支援などを行っている税理士法人です。
井上総合会計事務所は東京で12名のスタッフで、法人84件、個人35件の顧客を抱えていた個人経営の会計事務所でした。後継者がいない状況で、経営者が60歳を過ぎた頃に、10年後の顧客とスタッフの雇用を考えはじめて、M&Aによる事務所の譲渡を決断しました。
税理士法人TOTALとしては、特に医療系に強い井上総合会計事務所を合併したことで収益性が向上し、また若手スタッフがコンサルティングノウハウを学ぶことができて、M&Aのメリットが大きかったとのことです。
参考:税理士法人TOTAL「井上貴司からの挨拶」
士業事務所のM&Aをする流れ
士業事務所をM&Aする流れです。
専門家への相談
士業事務所の行く末に不安を感じたら、まずはM&Aの専門家に相談してみましょう。日本には、中小企業や個人事業主のM&Aの相談に乗ってくれる専門家がいます。
専門家のもとには、士業事務所を買収したいという顧客もいます。そのような顧客から、最適な売却先を探してくれるでしょう。また、手続きが大変なM&Aも懇切丁寧にサポートしてもらえます。
まずは、M&Aするべきかどうか、といったところから気楽に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所は、中小・中堅規模のM&A案件を主に取り扱っており、全国に案件に対応しています。
知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートさせていただきます。
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無料相談を随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお電話・Webよりどうぞお気軽にお問い合わせください。
売却先の選定と条件の整理
M&Aの専門家に仲介を依頼することに決めたら、仲介契約や秘密保持契約を結びます。そして次に行うのは売却先の選定です。
士業事務所を買い取りたいという顧客に声を掛けるなどして、適切な売却先を探し、経営者に提示します。経営者は提示されたリストから、交渉先を自ら決定します。
交渉先を決めたら、売却に当たっての希望条件を整理します。
売却先とのトップ面談
具体的な交渉に入る前にトップ面談を行います。売却する側と買収する側の経営者が直接会って面談します。
トップ面談では経営理念や顧客への思いなどを語り合い、書類などからは見えないお互いの相性などを見ます。
契約の交渉・調節と締結
トップ面談でM&Aを決定したら、具体的な交渉やデューデリジェンスを実施します。
その後、最終的な条件の調節が行われて、最終契約書の締結となります。
士業事務所をM&Aする注意点
士業事務所をM&Aする場合の注意点です。
売却側の注意点
売却側の注意点としては、売却するタイミングと、売却益の税務申告についてがあります。
買収側としては、顧客のスムーズな移行のために、数年は売却元の経営者に自社に入ってもらいたいと考えています。そのためには、まだ元気に動けるうちにM&Aを進めることが大切です。
タイミングを逃したために、希望する金額で売却できなかったという失敗例もあります。自分のライフステージを考えながら、M&Aを進めるタイミングも見極めましょう。
また、個人事務所を売却した場合には、売却益は雑所得として申告する必要があります。雑所得では支払う税金が高くなることから、経営者が買収先へ入り、顧問先の移行が完了した時点で退職金として支払ってもらうことが一般的です。
その点も、どのように進めたらいいのか、買収側とよく検討しましょう。
買収側の注意点
買収側の注意点としては、必ずしも売却側の顧客を全て引き継げるわけではないという点と、通常のM&Aよりも買収価格の算定が高額になる傾向があるという点です。
個人事務所は、経営者本人に顧客が付いている場合が多く、M&A後は契約を解除してしまうこともあります。売却側の経営者に、数年間は買収側に入ってもらうなどの工夫が必要です。
また、通常のM&Aでは純資産に営業利益の2年から3年分をプラスした金額が企業価値となります。しかし、士業事務所では純資産の移動がなく、また長期で高額な収入が見込める顧問料が期待できるので、営業利益の4年から5年分が算定基準となることが一般的です。
通常のM&Aよりも高額な算定となる点に気をつけましょう。
士業事務所のM&A・事業譲渡まとめ
このように、士業事務所も行く末が心配な場合には、M&Aで売却することができます。しかし、売却先を自分で見つけることや、複雑なM&Aの手続きを士業とはいえ、全て自分ひとりで進めることは難しいでしょう。
適切な売却先を見つけて、手続きをサポートしてもらうためには、専門家の手を借りた方がいいでしょう。ぜひ、士業事務所の売却をお考えなら、M&Aの専門家に一度相談してみて下さい。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。