山形県の事業承継・M&A案件！事業承継・引継ぎ支援センターの取組も解説

山形県内の産業を大分類別に見ると、「卸売業・小売業」が最も多く、次いで「宿泊業・飲食サービス業」、「建設業」、「生活関連サービス業・娯楽業」、「製造業」が続いています。これらの主要産業を含め、多くの業種で減少傾向が見られます。

県内総生産は平成19年度をピークに、その後平成21年度にかけて減少しましたが、令和元年度には4兆3,367億円まで回復しました。

産業別の構成比では、平成19年度において「製造業」が26.7％と最も高い割合を占めており、令和元年度も25.6％と依然として主要産業の地位を維持しています。

参考：山形県「山形県産業の現状」

はじめに、山形県の事業承継・M&Aの動向を説明します。

2024年の山形県内全業種を対象とした調査によると、後継者が「いない」または「未定」と回答した企業は1,090社で、後継者不在率は44.3％となりました。前年と比べて2.3ポイント低下し、4年連続で改善が続いています。特に、コロナ禍前の2019年と比較すると17.9ポイント低下するなど、大幅な改善が見られます。

この背景には、官民連携による事業承継支援の充実があります。相談窓口の整備や各種支援メニューの拡充により、これまで支援が行き届かなかった小規模事業者にも対応が広がりました。また、自治体や金融機関などが事業承継の重要性を積極的に周知したことも、不在率の改善に寄与しています。

一方で、前年からの改善幅はコロナ禍以降で最も小さく、後継者不在率の低下ペースは鈍化傾向にあります。

参考：帝国データバンク「山形県「後継者不在率」動向調査（2024 年）」

少子化が企業経営にもたらした問題に後継者難があります。中小企業において通常であれば身内に事業承継するところが、後継者となる親族がいないという問題です。次善の策として社内で後継者を見つけることも行われていますが、必ずしも適任者がいるとは限りません。

この全国的な事業承継問題は、山形県でも顕著です。帝国データバンクの「事業承継に関する山形県内企業の意識調査（2021年5月）」によると、回答企業137社の事業承継に対する考え方は以下の結果でした。

• 最優先の経営上の問題と認識している（14.6％）
• 経営上の問題のひとつと認識している（59.1％）
• 経営上の問題として認識していない」（15.3％）
• 分からない（10.9％）

企業が廃業すれば、その分、経済効果が減少します。従業員は職を失い、その家族は生活が逼迫するでしょう。この状況を危険視した国と自治体は、数年前から公的な事業承継支援制度を開始しました。

各都道府県横並びの制度のように見えて、自治体それぞれが独自の運営や取り組みを行っているようです。この公的事業承継支援を中心に、山形県における事業承継問題の解決手段を解説します。

2023年における山形県の休廃業・解散件数は470件で、前年比11.10%の増加が見られました。ただし、発生率を表す「休廃業・解散率」については、東北地方で最も低い2.83％を記録しています（東北地方の平均値は3.32%）。

2022年までは持続化給付金や雇用調整助成金などの支援により休廃業が抑えられていましたが、2023年以降、支援策の縮小や物価高騰、人手不足による人件費の上昇などが経営を圧迫し、厳しい状況に直面した中小企業が相次いで廃業に追い込まれています。

収益や財務状況が悪化したことで「事業を続けるかどうか」の判断を迫られ、事業の継続を諦めざるを得ない企業が多く発生したと考えられます。

参考：帝国データバンク「東北 6 県企業「休廃業・解散」動向調査（2023）」

2021年の登録M&A支援機関の報告によると、山形県企業が携わったM&A件数は、譲渡側で27件、譲受側で26件を記録しています。東北地方の他県と比べると、青森県（譲渡側：24件、譲受側：15件）、秋田県（譲渡側：26件、譲受側：18件）に次いで少ない水準にあることがわかっています。

参考：中小企業庁「M&A支援機関登録制度実績報告等について」

弊社M&A総合研究所が取り扱っている山形県近郊の事業承継・M&A案件一覧をご紹介します。

対象会社の施工する注文住宅は日本の風土や気候に適した木造軸組工法をベースにした「木造軸組パネル工法」を特徴としています。

一級建築士（1名）、宅地建物取引士（2名）の計3名が在籍いるため、小規模な建築物に関わらず公共建築物も設計可能になっており、不動産の売買・賃貸契約における業務に対応が可能です。

サッシ・エクステリア工事、特産物オンライン販売を手掛ける企業です。大手アルミ建材業界を中心に、地場工務店と長年の取引実績があります。優良取引先、外注先から安定的な売上を得ています。また、コンビニに土地を賃貸しており、安定的なストック収入があるのも強みです。

無借金経営を手掛け、譲渡対価も純資産の大幅アンダーの割安案件です。客室数60室以上のビジネスホテル運営を手掛けています。ホテル口コミサイトでも高評価を獲得しているのも強みです。コロナ禍も終息しつつあり、客室稼働率の改善も見込めます。
 

年間売電金額は約1億円です。FIT終了までの想定売電収益は約11億円（FIT買取期間終了は2037年）を見込んでいます。年間売電金額が約1億円の太陽光発電が2区画あり、1区画を売却予定（2区画合わせての売却は応相談）です。
 

ワンランク上の高性能住宅を身近に手頃な価格で提供することをモットーに事業を運営しています。直近3期平均で実態EBITDA4,000万で、直近期のNetCashが9,000万弱と財務良好です。

地域では一定の知名度があり、SNSや展示会運営も行うことで顧客流入経路を確保できています。体系的な組織化ができており、社長が勇退後も問題なく事業の運営が可能です。
 

山形県の事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。

カナデンは、2024年11月26日、山形県の髙島電機の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。

カナデンは、FAシステムやビル設備、半導体・デバイス、社会インフラなど幅広い分野で事業を展開するエレクトロニクス技術商社です。一方、髙島電機は東北地方を中心に、電設資材やFA機器、制御機器の設計・製造・販売を行っています。

このM&Aにより、カナデンは主力事業であるFAシステム分野の拡大を図ります。髙島電機との連携により、商材や技術力の強化、販売エリアの拡大を進め、新たなソリューションの開発を目指します。

2024年5月29日、サクサホールディングス（サクサHD）は、ソアーの全株式を取得し子会社化することを決定しました。

サクサHDは、情報通信システムの機器や部品の開発・製造を手掛けており、主力工場であるサクサテクノ株式会社は、基板実装や無線技術を活用した一貫生産体制を提供しています。ソアーは、カーエレクトロニクスを中心に技術力と経験豊富な人材を抱える企業です。両社は山形県米沢市に生産拠点を持ち、近接しています。

今回の株式取得により、サクサテクノとソアーは、それぞれの事業を拡大し、両社の生産体制を強化することで、スマート工場の実現を目指します。また、両社の人材や設備の有効活用が期待されています。

2023年9月22日、じもとホールディングスの子会社であるきらやか銀行は、富士通が保有していた富士通山形インフォテクノの全株式を取得し、完全子会社とすることを決定しました。取得金額は約1億710万円です。

富士通山形インフォテクノは、金融機関向けのソフトウェア開発を行っており、きらやか銀行やじもとグループのシステム開発や運用をサポートしてきました。今回の株式取得は、システムの安定運用や人材確保のため、株主間協定の終了を機に行われたものです。

2023年8月1日、七十七銀行の子会社である七十七パートナーズが運営する投資ファンドを通じて、キャド・キャムの全株式を取得しました。七十七銀行は宮城県仙台市に本店を置く地方銀行で、キャド・キャムは建物の床構造や鉄骨部材の設計を専門とする企業です。

今回の買収により、七十七銀行はキャド・キャムの技術や経営体制を支援し、企業の成長と価値向上を図る方針です。これにより、キャド・キャムの次世代承継と経営基盤の強化が期待されています。

山形県での事業承継・M&A時におすすめの相談先を紹介します。

近年、金融機関がM&A支援を専門に行う部署を設けるケースが増加しています。特に、大手銀行や投資銀行がファイナンシャルアドバイザー（FA）として積極的に関わることが多いです。

M&Aを進める際、金融機関は非常に重要な役割を担います。特に買収側では、資金調達のために金融機関との連携が必要不可欠で、通常は既存の取引関係がある銀行にまず相談します。

金融機関に相談する大きなメリットの一つは、資金調達に関する専門的なアドバイスが受けられる点です。例えば、事業承継において、親族や従業員が新しい経営者になる場合でも、株式取得のための資金が必要となるため、銀行の支援が大いに役立ちます。

さらに、金融機関の中にはM&Aに特化した部門を持ち、他の専門家と連携しているところも多く、必要に応じて専門家を紹介してもらえることもあります。

ただし、大手の金融機関は大規模なM&A案件を主に取り扱う傾向があり、比較的小規模な案件には対応しないこともあります。また、彼らが提供するアドバイザリー形式のサービスは、報酬が高額になることがある点も留意が必要です。

最近では、事業承継やM&Aに関する相談が、公的機関でも行えるようになっています。例えば、事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の後継者不足に対応するための公的な窓口として機能しています。

このセンターでは、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイス、さらには企業同士を引き合わせるマッチングサービスまで提供しています。2021年4月に設立され、全国各地のセンターで専門家が無料で相談に乗っており、地方の企業でも利用しやすいのが特徴です。

日本全国47都道府県に窓口が設けられており、どこでも簡単にアクセスできるのが大きな利点です。また、国の運営なので相談は無料で、利害関係のない公平なアドバイスを受けることができます。さらに、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介も受けられ、個人事業主にも対応しています。

ただし、公的機関であるため対応のスピードに限界があり、民間のM&A仲介会社と比べると、サポート体制やサービスの質が劣る場合があるのがデメリットです。

M&A仲介会社は、企業の買収や売却をサポートする専門企業で、売り手と買い手の双方と契約を結び、両者の利益を考慮しながら交渉を進めます。これらの会社は、初期段階の相談から、相手企業の選定、スケジュール管理、企業価値の評価（バリュエーション）、必要書類の作成まで、M&Aの全プロセスを包括的に支援します。

仲介会社は、売り手と買い手の希望や条件を調整し、双方が合意できる最適な条件を見つけることで、スムーズな取引成立を目指します。

仲介会社を利用する最大の利点は、多くの候補企業から適切な相手を見つけられる点にあります。これにより、双方が満足するM&Aの実現がしやすくなります。

さらに、M&Aに不慣れな企業に対しても、仲介会社は一貫したサポートを提供し、具体的なアドバイスや交渉のサポートを行うことで、成功率を高めます。

一方で、仲介会社によっては、着手金や中間金が発生する場合があり、コストが課題となることもあります。コストを抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを提供する企業を選ぶのが一つの方法です。

中小企業の事業承継問題を担当する国の機関は、主として中小企業庁です。全国の公的事業承継支援は、中小企業庁の指示・監督の下、まずは各都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されました。さらに、各自治体に「事業承継ネットワーク」を組成し支援にあたるのが基本政策です。

その際、原則的には事業引継ぎ支援センターが中心的役割をしますが、山形県の場合は「公益財団法人山形県企業振興公社」が、その役目を担っています。そこで、「公益財団法人山形県企業振興公社」と「山形県事業承継ネットワーク」について、それぞれの詳細を見ていきましょう。

山形県企業振興公社の歴史は古く、前身は1961（昭和36）年6月、財団法人山形県鉱工業機械貸与公社として山形県商工課内に設立されました。その後、4つの財団法人・社団法人が統合され、1995（平成7）年4月に財団法人山形県企業振興公社となります。

そして、2013（平成25）年4月には公益財団法人に移行しました。山形県内の中小企業の経営全般の支援が、その活動目的です。国が各都道府県に設置している中小企業向け経営相談窓口に「よろず支援拠点」というものがあります。

山形県の場合、「山形県よろず支援拠点」は山形県企業振興公社が事務局となって、2014（平成26）年6月に開設されました。また、前述の「山形県事業承継・引継ぎ支援センター」も国からの委託事業として、2015（平成27）年6月に山形県企業振興公社が開設にあたっています。

山形県事業承継・引継ぎ支援センターは山形県企業振興公社内に設置されており、事実上、山形県の公的事業承継支援の中核は、山形県企業振興公社であることが見て取れます。

事業承継ネットワークとは、事業承継に悩む各都道府県の中小企業に対して、関連する各自治体の公的機関や民間の企業・団体などが相互に連携し合いながら、一体となってそのサポートを行う取り組みです。

山形県事業承継ネットワークの場合も、山形県内の多くの団体や金融機関などがその構成員となって、2018（平成30）年10月に組成されました。以下に、山形県事業承継ネットワークの構成メンバー全54機関を記します。

【公的機関】

• 山形県
• 各総合支庁（4部門）
• 山形県企業振興公社
• 山形県事業承継・引継ぎ支援センター
• 山形県よろず支援拠点

【商工団体】

• 山形県内各商工会議所（合計7所）
• 商工会連合会
• 山形県内各商工会（合計24会）

【金融機関】

• 山形銀行
• 荘内銀行
• きらやか銀行
• 山形信用金庫
• 米沢信用金庫
• 鶴岡信用金庫
• 新庄信用金庫
• 北郡信用組合
• 中央信用組合
• 第一信用組合
• 商工組合中央金庫
• 日本政策金融公庫

【その他】

• 山形県信用保証協会
• 山形県中小企業団体中央会

山形県事業承継ネットワークの基本概念として、中小企業経営者は上記のどの機関や団体、金融機関に事業承継の相談をしても、その情報は山形県企業振興公社に集約されます。そして、最適な相談相手があっせんされ、事業承継の支援が受けられる仕組みとなっています。

山形県事業承継・引継ぎ支援センターは、国が実施する中小企業や小規模事業者の支援機関です。親族や従業員による事業の承継、事業の再生、新たな事業の創業、そして事業の廃業など、幅広い相談に応じています。

また、窓口では、事業引継ぎに詳しい専門家が個別に相談に応じます。相談は秘密厳守され、無料で回数の制限もありません。以上のように、山形県事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業や小規模事業者の事業引継ぎをサポートする機関であり、専門家の相談窓口として利用できます。

全国的な中小企業の経営課題である事業承継は、各社状況はそれぞれ異なるため、画一的な解決方法はありません。その点、各自治体が事業承継支援を行ってくれるのは、地域の特性なども加味したうえで個別対応してくれるので、便利なシステムといえます。

迷っていても何も解決しません。困ったらすぐに相談に出向き少しでも早く具体的な対応を始めるのが事業承継問題における解決の第一歩になります。本記事の要点は、以下のとおりです。

・山形県の公的事業承継支援
　→公益財団法人山形県企業振興公社が中心となり、山形県事業承継ネットワークが組成されている

・山形県における事業承継の方法
　→経営者が自力で事業承継を完遂させる
　→山形県事業承継ネットワークのいずれかの機関に相談する
　→M&A仲介会社に直接相談し、第三者への事業承継を目指す