M&Aとは?目的・メリットから手法、最新動向までわかりやすく解説
2025年12月22日公開業種別M&A
非鉄金属業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例5選や流れと注意点も解説!
本コラムは、非鉄金属業界のM&Aに関してまとめたものです。主な内容としては、非鉄金属業界の市場動向、非鉄金属業界におけるM&Aのメリットと注意点、M&Aを行う際の流れなどを動画も交えて解説するとともに、実際の売却・譲渡・買収事例の紹介も添えています。
非鉄金属業界の動向
数多くある非鉄金属は、以下の3つに分類されます。
- レアメタル:リチウム、ニッケル、チタン、コバルトなど
- 貴金属:パラジウム、プラチナ(白金)、銀、金など
- ベースメタル:鉛、銅、アルミニウム、亜鉛など
非鉄金属業界とは、上に例示した各種の非鉄金属を採掘(資源開発)、製錬(精錬)、加工、リサイクル(再利用化)する業種の総称です。
非鉄金属業界の市場動向
総務省・経済産業省の資料によると、2014(平成26)年と2015(平成27)年の非鉄金属製造業の市場動向(製造品出荷額)は以下のとおりです。
- 2014年:9兆4,220億円
- 2015年:9兆6,795億円
- 2019年:9兆6,142億円
- 2020年:9兆4,237億円
非鉄金属業界におけるM&Aのメリット
非鉄金属業界においてM&Aを実施すると以下のようなメリットが得られます。
- 事業承継問題の解決
- 従業員の雇用継続
- 対価の獲得
- 債務からの解放
- 経営の安定化
- スケールメリット
- 人材の獲得
- 新たなノウハウの獲得
非鉄金属業界のM&Aにおける各メリットの内容を説明します。
事業承継問題の解決
非鉄金属業界のM&Aにおいて、売却・譲渡側は事業承継問題を解決できるメリットがあります。売却・譲渡側が後継者不在で廃業危機であったとしても、M&Aの実施により、買収側が新たな経営者となるため会社は存続するのです。これをM&Aによる事業承継といいます。
従業員の雇用継続
非鉄金属業界において、M&Aの実施により廃業を免れた売却・譲渡側では、従業員の雇用契約が継続されるというメリットもあります。会社が廃業となれば従業員の末路は解雇です。売却・譲渡側の経営者としては、是非とも避けたいことでしょう。M&Aが成立すれば会社は存続しますから、従業員の雇用も守られるのです。
対価の獲得
非鉄金属業界のM&Aが実施された場合、売却・譲渡側の大きなメリットは対価を得ることです。その際の注意点として、事業譲渡や会社分割などのM&Aスキーム(手法)の場合は会社が対価を受取ります。
株式譲渡や合併などの場合に対価を受取るのは経営者個人(株主)です。対価の運用目的と合わせてM&Aスキームを選択する必要があります。
債務からの解放
非鉄金属業界のM&Aにおける売却・譲渡側のメリットには、「債務からの解放」もあります。株式譲渡や合併などでM&Aが実施された場合、買収側は売却・譲渡側の全てをそのまま継承し債務も引継がれるのです。
ただし、事業譲渡でM&Aを実施した場合は、譲渡対象を選別できるため、必ずしも債務を買収側が引継ぐとは限りません。
経営の安定化
非鉄金属業界のM&Aでは、M&A後、売却・譲渡側の経営が安定するメリットも得られます。買収側が資金力豊富であれば、子会社に対して財務面の援助が行われるでしょう。財務が安定すれば、より事業に集中できる環境が整い経営も安定します。
スケールメリット
非鉄金属業界のM&Aでは、売却・譲渡側にとっても買収側にとっても、M&A後、スケールメリット(規模の経済)が得られます。
スケールメリットとは、株式譲渡による買収であれば企業グループとして、合併であれば一企業として、M&Aの実施によって事業規模が拡大することで得られるメリットのことです。具体的には、コスト削減、シェア拡大、営業エリアの拡張、交渉力向上などさまざまなメリットがあります。
人材の獲得
非鉄金属業界のM&Aにおいて、買収側は人材獲得メリットがあります。人口減少中の日本では、ほとんどの業種で人材不足です。M&Aであれば、売却・譲渡側の人材をまとめて獲得できます。また、それらの人材は一定の経験を積んでいてスキルも備えており、人材教育に要するコスト(時間・費用・手間)も節約できるのです。
新たなノウハウの獲得
非鉄金属業界でM&Aを行う買収側は、新たなノウハウを獲得できるメリットもあります。M&Aの買収側は、売却・譲渡側の人材だけでなく設備・機械類、知的財産、顧客リスト、取引先、独自の業務ノウハウなどを獲得可能です。
特にノウハウは、それぞれの企業が時間をかけて築きあげたものであり、M&Aであればそれを簡単に入手できます。
非鉄金属業界のM&Aによる売却・買収事例5選
ここでは、実際に行われた非鉄金属会社関連のM&A事例として以下の5事例を紹介します。
- 豊田通商アメリカによるRadius Recycling, Inc.の買収事例
- 三井金属鉱業と日本イットリウムの合併事例
- アルコニックスとアルコニックス・エムティおよび富士カーボン製造所の合併事例
- 和田電機とアイアンゲートおよびその子会社横山金属との資本業務提携事例
- 東港金属による白銅への事業譲渡事例
各M&A事例の内容を説明します。なお、表中に売上高を記載している場合、それはM&Aが実施された時期の直前期決算の数値です。最新の決算数値とは違う点にご留意ください。
豊田通商アメリカによるRadius Recycling, Inc.の買収事例
| 事例1 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | Radius Recycling,Inc. | 豊田通商アメリカ |
| 所在地 | 米国オレゴン州 | 米国ニューヨーク州 |
| 事業内容 | 廃自動車・金属屑などの 再資源化、鉄鋼製品製造 |
総合商社 |
| 売上高 | 27億3,869万2千米ドル(連結) | 非公開 |
2025(令和7)年3月、豊田通商の完全子会社である豊田通商アメリカは、Radius Recycling,Inc.(以下RRI)を子会社化するための合併契約を締結しました。具体的には、豊田通商アメリカが新たに設立する完全子会社とRRIが合併し、存続会社となるRRIが豊田通商アメリカの完全子会社になります。
合併予定時期は2025年第3四半期で、買収対価は約9億700万米ドル(約1,344億円)です。豊田通商アメリカとしては、RRIの優れた鉄・非鉄金属の回収・加工・リサイクル技術および施設を取り込むことで、同社が推進している循環型静脈事業をさらに拡大させる目的でM&Aを実施しました。
三井金属鉱業と日本イットリウムの合併事例
| 事例2 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | 日本イットリウム | 三井金属鉱業 |
| 所在地 | 福岡県大牟田市 | 東京都品川区 |
| 事業内容 | 希土類製品の製造販売と それに関連する業務 |
機能材料・電子材料の製造・販売、 非鉄金属製錬、貴金属リサイクル、 自動車部品の製造・販売、 資源開発、素材関連事業 |
| 売上高 | 32億9,200万円 | 6,466億9,700万円(連結) |
2025年4月、三井金属鉱業は、完全子会社である日本イットリウムを吸収合併しました。完全親子会社間の合併であるため、対価は発生しません。
三井金属鉱業は、機能性粉体事業部のレアメタル事業と日本イットリウムの間で協業を行ってきました。今後は一層の事業拡大を図るため、日本イットリウムを取り込んで一体化し、新たにレアマテリアル事業部を設立しています。
アルコニックスとアルコニックス・エムティおよび富士カーボン製造所の合併事例
| 事例3 | 売却側 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|---|
| 法人名 | アルコニックス・エムティ | 富士カーボン製造所 | アルコニックス |
| 所在地 | 東京都千代田区 | 愛知県安城市 | 東京都千代田区 |
| 事業内容 | 非破壊検査装置・マーキング装置・ 関連用品などの製造・販売を行う マークテック株式会社の全株式を 保有する中間持株会社 |
カーボンブラシ製品・特殊炭素 製品などの製造・販売を行う 株式会社富士カーボン製造所の 全株式を保有する中間持株会社 |
非鉄金属などの各種製品・ 原材料の輸出入・国内販売、 金属加工品・装置材料 などの製造・販売 |
| 売上高 | 非公開 | 非公開 | 1,749億100万円(連結) |
2025年1月、アルコニックスは、完全子会社であるアルコニックス・エムティと富士カーボン製造所を吸収合併しました。完全親子会社間の合併であるため、対価は発生しません。アルコニックスとしては、グループ管理を合理化するため、M&Aによって中間持株会社体制を廃止することにしました。
和田電機とアイアンゲートおよびその子会社横山金属との資本業務提携事例
| 事例4 | 売却側 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|---|
| 法人名 | アイアンゲート | 横山金属 | 和田電機 |
| 所在地 | 東京都港区 | 神奈川県川崎市 | 大阪府大阪市 |
| 事業内容 | 横山金属の持株会社 | 非鉄金属の購入販売、 電子機器・部品の販売、 電子部品の表面処理、 条材金メッキ処理、 非鉄金属スクラップ購入販売 |
電機・電子・機械の専門商社 |
| 売上高 | 非公開 | 非公開 | 非公開 |
2021(令和3)年10月、和田電機は、アイアンゲートおよびその完全子会社横山金属との資本業務提携契約締結を発表しました。資本業務提携契約の詳しい内容は公表されていません。おそらくは、和田電機がアイアンゲートの過半数の株式を取得することで、アイアンゲートと横山金属を傘下に加えたのでしょう。
また、2022(令和4)年6月にアイアンゲートの法人登記が閉鎖されていることから、中間持株会社体制を廃し横山金属を孫会社から子会社にしたと思われます。なお、和田電機のM&Aの目的は、非鉄金属業界への参入のためとのことです。
東港金属による白銅への事業譲渡事例
| 事例5 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | 東港金属 | 白銅 |
| 所在地 | 東京都大田区 | 東京都千代田区 |
| 事業内容 | 金属スクラップ 全般に関する業務 |
アルミニウム・伸銅・特殊鋼・ ステンレス・プラスチックなどの 板・棒・管などの加工・販売 |
| 売上高 | 非公開 | 452億2,800万円(連結) |
2020(令和2)年3月、白銅は、東港金属から同社東北支店が行ってきた非鉄金属販売事業を譲渡されました。譲渡額は非公表です。白銅としては、事業規模拡大を目的としてM&Aを実施しました。
非鉄金属会社のM&Aを行う流れ
非鉄金属会社のM&Aは以下のような流れで進めます。
- M&Aの検討・実施決定
- M&A業務委託先の選定
- M&A交渉相手探し
- M&A交渉相手との秘密保持契約締結
- M&A交渉開始
- トップ面談
- 基本合意書の取りまとめ
- デューデリジェンス
- 最終交渉
- M&A契約の締結
- クロージングに向けた諸手続き
- クロージング
- PMI
上記のプロセスのうち、クロージングとは契約内容の履行のことです。PMIについては後述する「注意点」で説明いたします。
以下の動画はM&Aの基本的な流れを解説したものです。また、その他にポイントとなるM&Aのプロセスについては、順次、個別に説明動画を掲載します。
M&Aプロセスの個別解説動画として、まずは「M&A検討段階」です。
次は「M&Aアドバイザーの見極め方」の解説動画です。
続いて「M&Aにおける譲渡先の探し方」の解説動画です。
次の動画は「M&Aにおける秘密保持契約と情報漏えい」を解説しています。
こちらは「トップ面談」の解説動画です。
こちらの動画は「デューデリジェンスの種類」を解説しています。
この動画では「デューデリジェンスにおける売却・譲渡側の注意点」を解説しています。
以下の動画では「M&A成約当日の流れ」を解説しています。
最後に「M&Aの契約書」に関する解説動画です。
非鉄金属会社のM&Aにおける注意点
非鉄金属会社のM&Aを行う場合、以下のような注意点があります。
- M&Aの専門家に相談をする
- 事業譲渡時の人材流出を防ぐ
- 的確な企業価値評価を行う
- 慎重にPMI計画を策定し実行する
非鉄金属会社のM&Aにおける各注意点の内容を説明します。
M&Aの専門家に相談をする
非鉄金属会社のM&Aの注意点は、「初期段階からM&Aの専門家に相談する」ことです。M&Aは、初期段階における戦略決めとM&A交渉相手探しが重要な鍵を握ります。それらを円滑かつ効果的に行うには、M&A専門家の存在が欠かせません。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
非鉄金属会社のM&Aを相談できる専門家をお探しであれば、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は多くのM&A成約実績を有しており、知識・経験ともに豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(ただし譲受側企業様には中間金が発生します)。随時、無料相談を承っておりますので、お気軽にご連絡ください。
事業譲渡時の人材流出を防ぐ
M&Aを事業譲渡で行う場合の注意点は、人材流出に気をつけることです。事業譲渡の場合、他のM&Aスキーム(手法)と違って、買収側に転籍することになる売却・譲渡側の従業員に対し、1人ずつ同意を取ったうえで買収側が新たに雇用契約を結ばなければなりません。
従業員は転籍を拒否できますし、一旦、離職する形を取ることから買収側に入社しない選択肢もあるため、その際に流出してしまう懸念があります。
的確な企業価値評価を行う
M&Aでは、的確な企業価値評価を行うことも注意点の1つになります。企業価値評価とは、売却・譲渡側の事業や企業の価値を金額に換算することです。M&Aでは、売却・譲渡側と買収側が、それぞれ別個に行います。
この企業価値評価を基にして、それぞれが交渉の際の条件を決めるため、的確に企業価値評価を行わないと主張がかけ離れてしまうのです。
以下の動画は企業価値評価方法の1つである「コストアプローチ」について解説したものであり、ご参考まで掲載します。
以下の動画は、企業価値評価方法の1つである「マーケットアプローチ」について解説したものです。ご参考まで掲載します。
慎重にPMI計画を策定し実行する
M&Aにおける買収側特有の注意点がPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)です。M&A後に実施するPMIの失敗は、そのままM&Aの失敗を意味します。PMIを成功させるには、慎重にPMI計画を策定し、進捗管理を適切に行いながらPMIを進めることが肝要です。
非鉄金属業界のM&Aまとめ
非鉄金属業界のM&Aを成功させるポイントは、業務委託するM&A専門家選びです。具体的な観点としては、非鉄金属会社のM&A支援実績および自社と同規模のM&A支援実績の有無、特定の地域での強みの有無、あるいは全国対応や海外対応しているかといったものがあります。自社に適する専門家を見極めましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。