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2021年5月2日更新節税
みなし配当とは?課税と計算方法をわかりやすく解説
みなし配当とは、自己株式取得の際や株主に何らかの形でお金や資産を渡す際に発生します。会社法上では配当には当たりませんが、実質的には利益が分配されているため配当とみなされ、課税対象となります。ここでは、みなし配当の意味や計算方法などを解説していきます。
はじめに
みなし配当は、会社法上では「配当」とは定義されていません。しかし、自己株式の取得や株主に対し何らかの形でお金や資産を渡すことで、実質的に得られる利益であることから、配当とみなされます。そのため、みなし配当は課税対象として扱われ、経営者や株主はみなし配当の意味や計算方法、課税の仕組みなどを知っておくこと必要があります。
そこで今回は、みなし配当の意味や計算方法など、みなし配当を扱ううえで必要な知識をお伝えしていきます。
みなし配当とは
みなし配当は「配当」という言葉が付いていますが、厳密にいうと配当ではありません。そもそも、「配当」とは、企業が株主に対して株式の配当金や投資信託の収益を、株主が保有する株数に比例して分配することをいいます。
一方、みなし配当とは、株主が会社から配当金を受け取っていないのに、受け取ったとみなされ課税されることです。会社から株主に対して実質的な利益が分配されているとみなされるため、「みなし配当」と呼ばれています。
では、みなし配当が発生するのはどのようなケースでしょうか?みなし配当が発生するケースには、大きく分けて2種類のパターンがあります。
- 会社から株主へ払い戻しをするケース
- 組織再編の際に株主が別会社の株式やお金を受け取るケース
①会社から株主へ払い戻しをするケース
会社が株主へ払い戻しを行うと、「みなし配当」として扱われます。
会社が払い戻しをする代表的なパターンは、以下の3つです。
- 自己株式の取得
- 資本剰余金からの配当金の支払い
- 会社解散に際しての残余財産の分配
自己株式の取得
自己株式の取得に関しては、会社が株主に対価を支払って自社株式を取得するため、株主の利益として解釈します。
通常、株式の評価額は出資した額よりも高くなるため、差額を配当したものとみなされ、所得税が課税されるのです。
資本剰余金からの配当金の支払い
資本剰余金からの配当金の支払いは、一見すると配当金を払っているため、みなし配当ではないと認識してしまいます。しかし、本来、資本剰余金は株主が出資したお金のうち、資本金に組み込まれなかったものです。
つまり、株主が出資したお金の中で余った部分を分配していることになるため、単に株主自身のお金がバックされている形となり、厳密な意味での配当金としては扱われないことになります。
会社解散に際しての残余財産の分配
会社解散に際しての残余財産は、株主が出資した分に加えてその会社の利益も含められているため、それを株主に分配することは実質的に配当を与えていることと同じ意味になります。
よって、みなし配当として課税されることになるでしょう。
②組織再編の際に株主が別会社の株式やお金を受け取るケース
組織再編の際に、代償として別会社の株式やお金を受け取った場合も、みなし配当として扱われます。
代表的なケースとしては、以下の通りです。
- 合併
- 会社分割
合併と会社分割の違い
「合併」とは、会社同士が経営統合を行って1つの会社になることであり、「会社分割」は会社の中にある事業の権利義務を別の会社に承継させることです。このパターンでみなし配当が発生するのは「売り手側の会社の株主」になります。
合併と会社分割はそれぞれ違う手法ですが、それぞれを実行した際に対価として受け取る株式やお金は、株主の出資であると同時に、売り手側の会社が組織再編を行った際に得た利益となるのです。
そのため、株主に分配された対価は「みなし配当」として扱われることになるでしょう。
ただし、みなし配当が発生するのは、適格要件を満たしていない非適格合併・非適格分割型分割であり、適格要件を満たしている適格合併や適格分割型分割については発生しないので注意してください。
また、以下の2記事は自己株式や会社解散について解説していますので、気になる人は併せてチェックしておきましょう。
みなし配当で課税される税金と源泉徴収
みなし配当は課税対象になりますが、実際はどのように扱われているのでしょうか?ここでは、みなし配当が発生するそれぞれのパターンに応じた税務についてお伝えしていきます。
自己株式を取得した法人
みなし配当は税務上の「配当所得」に該当するため、自己株式を取得した法人は「所得税」を源泉徴収し、翌月の10日までに納付しなければなりません。この際の税率は、上場株式であれば15.315%、非上場会社の株式であれば20.42%となります。
次に、「法人税」についても注意が必要です。自己株式を取得した法人は、基本的にその株式などに発生したみなし配当を益金(利益金)に算入しなければなりません。ただし、完全支配関係のあるグループ内(完全親会社と完全子会社の関係)で自己株式の取得が行われた場合は、益金不算入となるので注意しておきましょう。
株式を発行法人に譲渡した法人
株式を発行法人に譲渡した法人の場合、みなし配当は「受取配当金」として扱われます。この場合、みなし配当の部分については益金不算入です。
決算までは通常の株式譲渡として会計処理を行い、決算時に益金不算入規定を適用して会計処理する必要があります。
株式を発行法人に譲渡した個人
株式を発行法人に譲渡した個人の場合、みなし配当は「配当所得」として扱われ、上場株式の場合は、発行済株式総数の3%以上を保有していない(大口株主でない)場合で30.315%(所得税、住民税、復興特別所得税の合計)となります。一方、非上場株式の場合は20.42%が源泉徴収されるのです。
しかし、配当所得は総合課税となりますので、他の所得と合算した金額に対して課税され、所得の合計に応じて15%~55%の所得税が課税されます。そのため、発行法人に株式を譲渡した個人は確定申告を行わなければならず、その際に配当控除を受けることもできるでしょう。
みなし配当の計算方法
ここからは、みなし配当の計算方法について説明していきます。
みなし配当は、基本的に以下の計算方法が使われるでしょう。
- みなし配当=株主が受け取った財産の総額-資本金などの額÷株式総数×株主の保有株式数
ここでいう「資本金などの額」は、資本金に資本剰余金などをプラスした数字であり、「株式総数」には未発行の自己株式などは含まれません。
上記の計算方法だけ見ると、みなし配当の計算は簡単そうに見えるかもしれませんが、みなし配当を正しく計算するには以下のような注意事項があります。
- みなし配当の計算の前にさまざまな計算を行う場合もある
- 非上場株式は株価が算定されていないケースが多い
①みなし配当の計算の前にさまざまな計算を行う場合もある
みなし配当が発生するシチュエーションによっては、上記の計算を行う前にさまざまな計算を行う必要が出てきます。
例えば、資本剰余金からの配当金の支払う場合を見てみましょう。このシチュエーションでは、資本剰余金だけでなく、利益剰余金からも配当を出す場合があります。
本来であれば、資本剰余金からの配当金は資本の払い戻しであるため、みなし配当として税務処理を行うのです。しかし、この場合には、資本剰余金と利益剰余金のバランスを考えたうえで資本の払い戻しとは扱わないように計算することができ、計算が非常に面倒で手間がかかってしまいます。
また、合併や会社分割といった組織再編を行う際に発生するみなし配当に関しても、株価を算定する際に非常に手間がかかります。
②非上場株式は株価が算定されていないケースが多い
とりわけ、中小企業などの非上場の会社の株式については、株価が算定されていないものが多く、改めて株価を算定するとなると会社を多角的に分析する必要があります。
株価の算定には専門的な知識と経験が必要であり、経営者が簡単に算定できるものではなく、株価の算定がきちんとできていなければみなし配当を計算することはできません。
その際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aアドバイザーが親身にサポートいたします。
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また以下の記事では株価の算定方法について詳しく解説しているので、併せてご確認ください。
みなし配当における配当控除と確定申告
ここでは、みなし配当における配当控除や確定申告についてお伝えしていきます。
みなし配当の配当控除や確定申告に関する知識は、経営者にとって重要なものの1つであり、とりわけ個人でみなし配当の税務を行う場合は理解しておきましょう。
配当控除
配当控除とは、確定申告の際に総合課税として申告することで発生する控除のことであり、課税総所得金額によって計算方法が変わってくるので注意が必要です。
配当控除の計算方法についても見ていきましょう。
課税総所得金額などが1,000万円以下の場合
課税総所得金額などが1,000万円以下の場合は、以下のように配当控除を計算します。
- 配当控除=配当所得×10%
なお、証券投資信託の収益の分配だった場合は、以下のように配当控除を計算するのです。
- 配当控除=配当所得×5%
課税総所得金額などが1,000万円を超える場合
課税総所得金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円までの部分と1,000万円を超えた部分の2つに分けて計算します。
まず、1,000万円までの部分については、さきほどの計算式と同様に「配当所得×10%」で算出します。そして、1,000万円を超えた部分については「配当所得×5%」で算出します。よって、これらの計算式で算出した金額を合計した金額が配当控除として申告できます。
- 配当控除=1,000万円までの配当所得×10%+1,000万円を超えた配当所得×5%
なお、証券投資信託の収益の分配の場合は、1,000万円までの部分を「配当所得×5%」、1,000万円を超えた部分を「配当所得×2.5%」で計算します。よって、これらの計算式で算出した金額を合計した金額が配当控除として申告できます。
- 配当控除=1,000万円までの配当所得×5%+1,000万円を超えた配当所得×2.5%
配当金額が10万円以下だった場合の確定申告
配当金額が10万円以下だった場合は、基本的に確定申告は必要ありません。なぜなら、配当金が発生した段階で源泉徴収が行われているからです。ただし、場合によっては確定申告をすることで得をすることもあります。
確定申告をすると得をするケース
確定申告が不要な場合でも、株式で損失を被っている場合は確定申告をすることで得をするケースがあります。この場合では、確定申告を行うことによって株式で発生した損失を配当金から差し引くことができるのです。
つまり、確定申告を行うことにより源泉徴収の段階で差し引かれている税額の一部、あるいは全額が戻ってくることになります。もしも株式で損失を被った際には、配当金額が10万円以下だったとしても確定申告をしておきましょう。
ただし、配当金額が10万円以下だったとしても、計算期間によっては1回で支払われる配当金が5万円を超えることがあり、確定申告を行わなければならないので注意が必要です。
配当金額が10万円を超えた場合の確定申告
配当金額が10万円を超えた場合は、源泉徴収を受けたうえで確定申告を行う必要があります。この場合、配当所得として総合課税に該当し、他の所得(給料や年金など)と合計されて課税されることになるのです。
配当所得は累進課税(課税標準の増加に比例して、より高い税率を課する課税方式)が適用されることになるため、所得総額によっては税額が大きく膨らんでしまう恐れがあります。また、被扶養者であれば配当所得によって扶養控除から外れてしまう可能性も少なくないのです。
しかし、配当金額が10万円を超えた場合であっても、総合課税として申告するため配当控除を受けることができます。確定申告は誰でも実施できますが、計算や手続きに不安がある場合は、税理士などに依頼しましょう。
また、以下の記事では株式の確定申告について解説しています。節税のポイントや注意点についても紹介しているので、併せてご確認ください。
みなし配当における支払調書
ここでは、みなし配当における支払調書についてお伝えします。支払調書とは、法定調書の一種であり、特定の支払いを行った事業者が、その支払いの明細を記載したうえで税務署に提出するものです。
支払調書は、支払いを受けた者がきちんと申告しているかどうかを税務署が照らし合わせるために利用するものであり、正式には「配当等とみなす金額に関する支払調書」と呼びます。みなし配当の支払確定日から1ヶ月以内に、支払調書と支払調書合計表を作成したうえで税務署に提出する必要があるのです。
また、株主へ支払調書を送付しなければならないとなっていますが、これは法的な義務ではなく、ある種の慣習のようなものとなります。そのため、必要がないと判断された場合には、株主に対して支払調書を送る必要はないでしょう。
支払調書はインターネットでも作成可能
みなし配当金の支払調書を作成するにあたり、経営者や会社の事務員でもインターネットで作成が可能です。インターネット上には、「配当等とみなす金額に関する支払調書」に関するさまざまなサイトがあり、ひな形に関してもすぐに見つけることができます。
また、中には書き方のアドバイスも掲載されているサイトもあるため、自分にあったものを探してみてください。
税理士に依頼する
会社経営者が作成しなければならない法定調書は大変多く、中小企業であっても最低10種類近く作成する必要があると言われています。税務についての知識がある場合は大して苦にならないかもしれませんが、税務の知識に自信がなかったり、作成する暇がない場合は税理士にまとめて依頼してしまいましょう。
また、みなし配当に限らず、法定調書はすべて重要な書類です。中途半端な知識で間違った書類を作成してしまう前に、正しい書式で作成できる専門家に任せたほうが後々のトラブルを防ぐことにもつながるはずです。
まとめ
税務上での取り扱い方を含め、みなし配当の定義について理解に至っていない経営者の方も多いでしょう。
しかし、みなし配当に課税される税金を納付しなければ追加徴税をされる恐れがあります。
みなし配当に関する税務の知識をきちんと身につけ、事前に理解しておくことが重要です。
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