M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年7月30日更新業種別M&A
EC業界の動向とM&Aのメリット!流れや注意点と売却・買収事例38選を解説!【2024年最新】
本記事は、EC業界のM&A事例31選を紹介します。また、積極買収企業や売却案件について紹介します。最近は、EC業界を対象とするM&Aが盛んです。EC業界ECサイトのM&Aを検討中の方は必見です。
目次
EC事業とは
EC業界の定義
EC(Electronic Commerce)とは、電子商取引という意味で一般的にはインターネットを用いた商品売買のことです。
OECD(経済協力開発機構)はECを広義的ECと狭義的ECの2つに分けており、「コンピューターを介したネット上で行われる物・サービスの売買」を広義的EC、「インターネット上で行われる物・サービスの売買」を狭義的ECと定義しています。
また、ECにはBtoB-EC・BtoC-EC・CtoC-ECの3分類があり、BtoB-ECはBusiness to Businessの略で企業間での取引を指す言葉です。
2つ目のBtoC-ECはBusiness to Consumerの略で、店舗・企業と一般顧客との取引を指します。一般的にネットショッピングと聞いてイメージするヤフー・アマゾン・楽天などがBtoC-ECの代表例です。
3つ目のCtoC-ECはConsumer to Consumerの略で、一般顧客(消費者)間で行われる売買取引を指し、ネットオークションやフリマサイトはこれに該当します。
EC事業の現状と動向
EC事業の市場規模は、年々右肩上がりで推移している状況です。これを踏まえて、本章では、EC事業の現状と動向について解説します。
市場規模
経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 」より
出典:https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf
EC事業の市場は直近10年間で順調に伸び続けている状況です。経済産業省が行った調査では、2022年度の国内BtoC-EC市場規模は22.7兆円であり、前年度比で9.91%増加しています。
また、同年度の国内BtoB-EC市場規模は420.2兆円と、こちらも前年比で12.8%の増加となりました。直近10年間、EC業界の市場は右肩上がりとなっており、現在の国内スマートフォン保有率の高さやキャッシュレス決済の普及などを考えると今後も順調に拡大していくものと予測されます。
ECサイトの増加による通信販売市場の拡大
通信販売市場が拡大する背景には、EC事業の売上増加が深く関係しています。これに伴い、ECサイトの数自体も増加傾向にある状況です。
とはいえ、ECサイトはその性質上、実績を積なければ十分な売上を確保できない傾向が強いです。新規参入業者からすると、多くの時間と手間をかけても商品が順調に売れ始めるまでに数年間かかるケースが珍しくなく、労力に見合った成果を得られないおそれがあります。
そこで、すでに軌道に乗っているEC事業をM&Aにより買収し、サイト会員・SEOなどのノウハウを獲得するケースが増加しています。また、顧客がECサイトを利用する際に重視する「信用」の獲得を目的に、M&Aによる買収を図る企業も多いです。
CtoC(個人間による電子商取引)の台頭
BtoC(消費者向けの電子商取引)市場に加えて、最近ではCtoC(個人間による電子商取引)市場も増加傾向にあります。また、EC事業のグローバル化が進んでおり、成長市場である中国市場に進出する企業も増えてきました。
経済産業省の資料によると、2022年度におけるCtoC-ECの市場規模は2兆3630億円であり、前年度の2兆2121億円から6.8%増加しています。
特に「メルカリ」に代表されるフリマサイトは、急速に拡大している状況です。近年におけるCtoC(個人間による電子商取引)市場の増加率をみるとECチャネルのひとつとして成長していることがわかります。
ECサイトの拡大
アマゾン日本事業の2020年(2020年1~12月)売上高は、円ベースで2兆1,893億2,700万円を記録し、国内の小売市場が縮小する中なか、EC事業が店舗型小売業のシェアを奪う構図に変化してきました。
また、ECサイトの拡大により、ヤマト運輸・佐川急便などの宅配便貨物も大きく伸長しています。国土交通省の発表によると、2022年度の宅配便取扱個数は、50億588万個(トラック運送は42億9063万個、航空等利用運送は3286万個)であり、前年度比で1.1%増(5265万個の増加)となりました。
宅配便貨物の取扱個数は、直近10年間で飛躍的に増加しており、EC業界では物流網の確保が重要課題とされています。
越境ECの市場規模拡大
経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
出典:https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf
越境ECの市場規模も、近年は大きく伸びています。経済産業省の調査によれば、2022年の日本・アメリカ・中国の3か国間における越境ECの市場規模は前年を上回っており、日本の越境BtoC-EC(米国・中国)は前年比6.1%増となる3954億円となりました。
また、同年におけるアメリカ経由の市場規模は3561億円(前年比5.9%増)であり、中国経由の市場規模は392億円(前年比6.2%増)となっています。
アメリカや中国と比べると日本の市場は小さいものの、順調に伸びている状況です。このような状況から、世界の越境EC市場は今後ますます拡大するものとみられています。
参考:経済産業省 「電子商取引に関する市場調査」
EC業界の特徴
これまでに紹介したほかに、昨今のEC業界では以下のような特徴も見られます。
- スマートフォン経由での取引額が増加傾向
- SNSを活用したマーケティング施策を行う事業者が増加
- キャッシュレス決済の普及
最近では、スマートフォンを用いた取引件数が増加中です。これに伴い、プッシュ通知機能を活用して消費者とコミュニケーションを図る企業や、カメラ・決済機能を駆使したECサービスを提供する企業が目立っています。
また、近年は、SNSの利用時間が増加しています。そこで、EC業界では、SNS上で趣味や考え方などが共通する人物から情報を収集したうえで、購買の意思決定を行うケースが浸透している状況です。
上記の動向を踏まえて、多くの企業では、SNS上で「消費者の興味関心を引く情報発信」「自社商品のアピール」「商品に対する評価の収集・分析」などを行っています。
さらに、2019年に政府が「キャッシュレス・消費者還元事業」を行った点や、新型コロナウイルス感染拡大などの影響を受けて、キャッシュレス決済の比率が年々増加傾向にあり、2022年のキャッシュレス決済比率は36.0%まで上昇し、決済額も111兆円と初めて100兆円を超えました。
EC事業のM&A動向
業界再編が進む
近年、EC業界ではグループ力の強化やITや物流システムなどのテクノロジーを活用する動き、顧客基盤の強化や、プラットフォームの総合活用による送客力の強化などを目的とした大手EC事業者による業界再編が進んでいます。
異業種間のM&Aが多い
EC業界の多くは、異業種でのM&Aです。理由としては、コスト削減や売り上げの増加、ノウハウの獲得などさまさまなシナジーを目的としているためです。
今後もEC化は進んでいくと想定されているため、ますます異業種とのM&Aが活発になるでしょう。
イグジットを目的にした経営者も多い
EC業界は参入障壁が低めであり、若い経営者も多いです。そのような経営者はイグジットを目的としたM&Aを行うことが少なくありません。M&Aによる会社売却はIPOよりも実現しやすく、売却益を資金として新しい事業を行うケースも見られます。
EC事業によるM&Aのメリット
今後もEC業界は伸長が予想されており、M&Aニーズが高まっている状況です。本章では、EC事業のM&Aによるメリットを売り手側・買い手側それぞれ紹介します。
売り手側のメリット
売り手側のメリットには、主に以下の5つがあります。
メイン事業に注力できる
EC事業の経営者の中には、個人で事業を開始した方が多いです。しかし、事業が拡大するにつれて、個人での維持が困難になるケースも少なくありません。
中でもサイトやアプリの開発者には、サイトの管理を行うよりも、IT分野などで新しい事業への挑戦を狙う人も多いです。このようなケースでは、EC事業を売却・譲渡することで、本業や新事業に注力できる点に大きなメリットがあります。
サイト運営にかかる経費の移管
EC事業で増えているのが、バグの発生によって事業がストップしてしまうケースです。このようなトラブルを避けて運営するには、システムを管理できるエンジニアの雇用が必要とされるため、予想以上に経費がかさんでしまうケースがあります。
そこで、EC事業を売却・譲渡すれば、その経費を他の事業に移管できる点にメリットがあります。
創業者利益の確保
EC事業の売却では、多額の創業者利益を得られる可能性がある点も大きな利点です。EC業界では、サイト構築やアプリ開発により株式の評価額が上がる場合が多く、出資額を上回る株式評価額が算出されるケースも少なくありません。
M&Aにより売却・譲渡を行い、創業者利益が獲得できれば、新しく始める事業に向けた資金調達も可能です。
後継者問題の解決
人気が高く売上が好調なサイトであっても、経営者が引退する際に事業を引き継がなければ、ノウハウやブランドなどはすべて失われます。
中小規模の事業者の場合、後継者候補がいなかったり、経営者の個人保証の引継ぎが難しく事業承継できなかったりするケースは珍しいものではありません。
M&Aは後継者がいない場合でも、第三者へ授業を引き付ける方法です。譲渡側にとってだけでなく、譲受側にとっても顧客・ノウハウ・ブランド力などを引き継げるという多くのメリットがあります。
従業員の雇用確保
ECサイトの運営は個人事業主が一人で行っていることもありますが、従業員がいる場合に廃業すれば従業員を解雇しなければなりません。経営者にとって従業員の雇用をどう守るかは廃業時の大きな悩みですが、M&Aを行えば従業員の雇用を譲受側へ引き継ぐことができます。
雇用契約の引継ぎで注意しておきたいのは、事業譲渡スキームを用いる場合です。事業譲渡スキームでは取引対象を個別に引き継ぐため、従業員の雇用を引き継ぎたい場合は交渉時にしっかり取り決めておく必要があります。
買い手側のメリット
一方で、買い手側のメリットとして考えられるものには、主に以下の3つがあります。
新規事業の参入
EC業界に新規参入を考えている企業の場合は、M&Aの実施によりサイト構築にかかる時間とコストを大幅に削減できるだけでなく、安全に業界参入できます。
また、EC業界は、インターネットを活用するため、必然的に予期せぬトラブルも起こりやすいものです。しかし、M&Aによりすでに構築されたシステムを持つ企業を買収すれば、そのリスクを最小限にしながら新規業界に参入できます。
販売網の拡大・サイト構築のコスト削減
ECサイトの運営にはサイト構築が不可欠ですが、サイトさえ作れれば顧客がついてくるというわけではなく、認知度とアクセス数が上がらなければ売上にはつながりません。
いわゆる「売れるECサイト」や「人気ECサイト」へと育てあげるには時間が必要ですが、顧客ニーズの変化は速いため時間をかけすぎるとチャンスを逃す可能性もあります。
M&Aを活用すれば、サイト構築や認知度向上にかかる時間を大幅に短縮できるうえ、自社の既存ECサイト事業とのシナジー創出によってコストダウンや販売網の拡大による新規顧客獲得につながる点も大きなメリットです。
自社商品のサイトでの販売
自社商品を持っている企業がM&AによってEC事業を取得すれば、サイト上での販売が可能となり、譲渡側の顧客数が多いほど、売上拡大に期待できます。
近年は幅広い年齢層の消費者がネット通販・ECサイトを利用しているため、自社商品のターゲット層の顧客を持つ譲渡側とM&Aが行えれば、潜在ユーザーを一度に獲得できる点もメリットです。
EC事業のM&Aの成功可能性を少しでも引き上げるには、プロの力を借りると良いでしょう。M&A総合研究所では、専門知識・経験豊富なアドバイザーが専任につきM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ、譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にお問い合わせください。
EC事業によるM&Aのデメリット
EC事業に限らず、M&Aにはリスクやデメリットも必ずあるものです。M&A実施を検討する際は、メリットとデメリットをよく考えたうえで決断する必要があります。
売り手側のデメリット
希望どおりの条件で売却できないおそれ
M&Aによる売却では、買い手企業との交渉によって最終的な条件が決められます。そのため、買い手の要望次第では、希望どおりの条件で売却できないおそれがあるのです。売却側の条件を無理に押し付けてしまうと、交渉が決裂してM&A相手探しから再び始めなければなりません。
また、買い手にとって魅力的な事業でない場合、相手候補がなかなか見つからない可能性が高いです。
経営の自由度が制限されるおそれ
M&Aによる売却では、取引後も継続して売り手側経営者が残って、事業を運営するケースも少なくありません。ただし、株式を売却してしまうことから、あくまでも会社の支配権は買い手企業が持ちます。そのため、M&A前と比べて経営に対する自由度が制限される可能性が高いです。
買い手側のデメリット
買い手側のデメリットとしては、主に以下の2点が考えられます。
簿外債務などの引き継ぎリスク
株式譲渡によって譲渡側の経営権を引き継ぐ場合、従業員の雇用や取引先、顧客基盤をそのまま引き継げるメリットがある一方で、負債や債務もすべて引き継がなければなりません。その際に問題となりやすいのは「簿外債務」と呼ばれる財務諸表に計上されない負債です。
簿外債務に該当するものは買掛金や未払い残業代などですが、これらがM&A後に発覚すれば金額によっては以降の事業運営に支障をきたす要因となります。
譲受側はデューデリジェンスをしっかり行っておくことはもちろん、どのようなM&Aでも買収リスクが少なからずあることを理解しておくことも重要です。
引き継ぎに時間や費用がかかる可能性
M&A完了後はPMIと呼ばれる統合作業を行い、円滑な事業雲煙ができるよう引継ぎやシステム統合などを進めていきます。PMIでは経営・業務・意識の3つすべてを統合する必要があり、どれかひとつでもうまくいかなければM&Aの効果は十分発揮されません。
引継ぎには当然時間がかかりますが、システム統合などでは費用も必要なケースが多いです。譲受側はPMIの重要性をよく理解しておき、費用面・時間的な部分も考慮してスケジュールを立てておく必要があります。
EC事業のM&A相場と費用
EC事業のM&Aを検討する際は、買収や売却の相場をあらかじめ調査しておくことが大切です。たとえ現在勢いのあるEC業界でも、相場を知らずにM&Aを実施してしまうと、譲渡側・譲受側ともに失敗するリスクが高まります。
また、ECのM&Aでは、相場だけでなく、相手企業との相性も事前に把握したうえで交渉を進めていくことが重要とされています。EC業界は順調に伸びているため、相場が合えばM&Aは成功すると考えがちです。
しかし、相手先企業との相性次第では、M&Aが成立したとしても期待した効果は得られません。
EC業界のM&Aにおける一般的な相場
EC業界M&Aの一般的な相場は、
- サイトの売上から原価と販売管理費を差し引いた営業利益の2~3年分
とされています。
販売管理費とは、損益計算書に記載する項目であり、商品・製品を販売するために直接かかる「販売費」と、企業全体の業務管理にかかる「一般管理費」の合計額のことです。「営業費」とも呼ばれます。
また、営業利益とは、売上から原価を差し引いた「売上総利益」から、販売費と一般管理費を差し引いた金額のことで、本業で得た利益をさします。例えば、M&Aの実施により毎月の営業利益が300万円の通販販売・ECサイトを買収する場合、「300万円✕24~36カ月=7,200万円~1億円」程度が買収価額です。
EC業界でのM&A相場は営業利益の2~3年分ですが、譲受側の価値観によって同じサイトでも評価金額が大きく変わるケースがあります。さらに、実際のM&Aの費用は買取価格だけでなく、サポートを依頼した専門家への報酬も加算されて、この報酬も負担を大きくする可能性があるのです。
もしもM&Aの費用に関して不安があれば、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。支援実績を豊富に持つアドバイザーが、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
実際は企業価値評価をもとに取引価格を算定
EC事業を対象とするM&Aでは、はじめに企業価値を算出したうえで、これをベースに売り手と買い手が交渉を行い、最終的な取引価格を決定するのが一般的です。
企業価値とは、事業活動での獲得が期待できるキャッシュフローなどの現在価値の合計(事業価値)に、事業以外の資産(非事業用資産)の価値を加算した金額のことです。
企業価値の算出方法は、大まかに以下の3種類があるので、そのなかから自社に合った方法を選んで企業価値を求めます。
- インカムアプローチ:収益力をベースとする算出方法
- マーケットアプローチ:市場価格をベースとする算出方法
- コストアプローチ:純資産をベースとする算出方法
また、M&A価額を決定する要素は企業価値だけでなく、M&Aの緊急度や想定されるシナジーなども加味され、さらにデューデリジェンスの結果も反映されます。
EC事業によるM&Aの流れ
ネット販売・ECサイト事業のM&Aは、使用するM&A手法によって多少の違いはありますが、全体の流れはほぼ同じです。M&Aを行う前に全体の流れを把握しておくと準備や心構えができ、M&Aをスムーズに進めていくことができます。
M&Aの検討・専門家へ相談
M&Aを実施する場合、M&A仲介会社など専門家へ依頼しますが、その前にM&Aの目的を明確にしておきます。事業承継の実現や経営基盤の安定化など、M&Aに期待する内容はさまざまです。
目的の明確化と併せて相手先への希望条件を決めますが、細かすぎる内容では相手先がみつかりづらくなります。そのため、条件設定は譲れないポイントを考えたうえで、ある程度幅を持たせておくことも必要です。この段階まできたら、M&A仲介会社へ相談して具体的な準備を始めます。
交渉先探し・交渉先選定
自社の目的と希望条件をM&Aアドバイザーに伝えておくと、希望条件に合った企業やシナジーが規定できそうな企業を数社リストアップしてくれますが、この段階ではノンネーム(ノンネームシート)と呼ばれる資料を使用します。
ノンネーム(ノンネームシート)は社名・所在地・事業の詳細な内容を伏せ、簡単な概要をまとめた資料です。ノンネーム(ノンネームシート)を使用する目的は、社名が特定されたり秘密情報が漏洩したりするリスクを防ぐためであり、互いの詳細な情報は本格的にM&A交渉を進めることが決まった段階で開示します。
ノンネーム(ノンネームシート)をみて交渉を行いたい企業が決まったら、M&A交渉についてM&Aアドバイザーを通して打診し、相手側も交渉に臨む意思があれば秘密保持契約を締結して互いに情報開示を行い交渉へと進みます。
トップ面談
M&Aの交渉先は過去に取引が合った企業や普段から付き合いがある企業であるケースもありますが、全く面識のなかった企業であるケースが大半です。
企業概要書によって開示された情報でしか互いを知らないため、トップ面談という場を設けて互いの経営者同士が企業風土や相手経営者の人間性など、資料ではわからない部分を確認し合います。
トップ面談はM&A成立に不可欠な信頼関係を構築することなので、トップ面談の場では価額交渉は行わないのが一般的です。
基本合意書の作成・締結
トップ面談後、双方がM&A成立に向けて前向きな意向である場合はさらに交渉を進め、M&Aの条件や価額など大まかな内容に合意した段階で基本合意書を締結します。
基本合意書はこの時点までに協議した価額・条件・スケジュールなどを記載しますが、M&A成立を保証するものではなく、法的な拘束力はありません。
譲受側によるデューデリジェンス
基本合意書を締結したら、次は譲受側がデューデリジェンスと呼ばれる調査を行い、M&Aによるリスク(買収リスク)はどの程度なのか、譲渡側が開示した情報は事実に基づくものかを確認します。
デューデリジェンスの結果は、譲受側が買収価額や条件は適正か、M&Aを実行して問題はないかを判断する材料となるものです。
そのため、デューデリジェンスの結果次第では最終交渉で価額や条件が変更されるケースや、大きなリスクや問題が発覚した場合はM&A取引そのものが中止となるケースもあります。
最終交渉・最終契約書の締結
譲受側がM&A(買収)実行を判断したら、最終交渉へ移り最終的な価額や条件を話し合います。そして、最終交渉で決定した事項すべてに双方が合意したら、最終契約書を締結します。最終契約書にある記載事項には全て法的拘束力があるため、締結前によく確認することが重要です。最終契約書を締結したらM&Aは成立となります。
クロージング
最終契約書の締結後はクロージングと呼ばれる工程に移り、譲渡対象の経営権を譲受側へ移転させ、対価の支払い手続きを行います。
クロージング手続きは使用したM&A手法によって変わり、たとえば株式譲渡であれば株式(株券)の移転・株主名簿の書き換え手続き・役員の改選などが必要です。
また、クロージングは最終契約書を締結すればすぐに行えるものではなく、譲渡側がクロージングするための前提条件を満たしていなければ行うことができません。
クロージングを行うための前提条件は最終契約によって取り決めますが、クロージング実行予定日までに条件を満たせない場合は予定が延期されたり、内容によってはM&Aが白紙撤回される可能性もあります。
PMI
M&Aの一連の流れはクロージング実行をもって完了です。以降は、M&Aの効果を最大化し経営統合後の事業を円滑に進めるために、PMIを行います。PMIとは、譲渡側と譲受側の経営面・業務面・意識面のすべてに及ぶM&A後の統合プロセスのことです。
M&Aにおける最大のメリットともいえるシナジー効果を発揮させるためには、PMIの成功が不可欠であり、PMIが失敗するとM&Aの効果を十分に得ることは難しくなります。PMIの成功こそがM&Aの成功といわれるほど重要なものであり、PMIは時間をかけて丁寧に進めていかなければなりません。
EC事業によるM&Aの注意点
在庫・商標権の確認
在庫に関しては、売れない在庫の保有や在庫状況が正しく把握できているか確認しましょう。また、独自のブラントを展開している場合は商標県の申請や取得を行っているか確認しましょう。
取引基本契約書の記載確認
取引基本契約書とは、販売先など企業間での継続的取引の際に適用される基本的な条件に関して交わした契約のことを指します。
中でも、COC条項の内容は必ずしっかりと確認する必要があります。COC条項とは、経営権(支配権)が移転した際に、契約内容の制限や契約解除に関する取り決めです。
COC条項で取引先に対する通知義務に関してなど記載がありますので、内容を確認し理解しておきましょう。
引き継ぎ期間(ロックアップ)の確認
M&Aでは会社を売却した後、旧経営陣が一定期間その会社に拘束されこの期間をロックアップと呼びます。ロックアップの期間は話し合いで決めます。
EC業界では経営者が若いことも多く、買い手側はロックアップ期間を5〜10年など長めに設定することがあります。しかし、売り手側は新たな事業を始めたいと考えていることもあります。そのため、ロックアップをどれくらいにするのかしっかり話し合い、条件を確認しておきましょう。
PMI
M&Aの成功は、PMIにかかっていると言われるほと重要です。特に買い手側が新規参入を目的としてM&Aを実施した場合、PMIによっては事業が失敗となる可能性があります。
PMIを成功させるためにも、交渉の段階からPMIに関しての話し合いを行う必要があります。
EC事業によるM&Aの成功ポイント
EC事業のM&Aを成功させるコツとして、以下の3つを取り上げます。
相手企業が魅力的に感じる経営資源をそろえる
もともと買い手側企業は、ノウハウ・人材・顧客など経営資源の獲得を目的にM&Aを実施するケースが多く見られます。つまり、相手企業が魅力的に感じる経営資源がないと、買い手候補を探したり、希望どおりの条件でM&Aを行ったりすることが難しいです。
M&Aの売却を成功させたい場合、業界動向や過去のM&A事例などを調査したうえで、買い手企業がどのような目的で取引を実施しているのか把握しましょう。EC事業のM&Aで魅力度の高い経営資源は、主に以下のとおりです。
- UI/UXに優れたECサイト
- 顧客からのニーズが高い商品
- 顧客数の多さ
- ECサイトの運営ノウハウ
- ECサイトの運営をサポートする優秀な社員
シナジー効果が見込める相手企業を見つける
買い手側企業は、シナジー効果の獲得を目的にM&Aを実施するケースも多く見られます。そのため、買い手企業との間で収益増加やコスト削減などシナジー効果の獲得が見込めない場合、高値での売却は困難です。
少しでも高く売却したい場合、収益やコストなどの面でシナジー効果の獲得が期待できる相手候補を探しましょう。
ECサイトのUI・UXを向上させる
買い手側企業が買収対象とするECサイトを選ぶ際、取扱商品・顧客層のほか、サイトそのもののUI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)も重要視します。UIとは「人とモノをつなぐ窓口」のことで、UXとは「人がモノやサービスに触れて得られる体験や経験」のことです。
購入ページまでの到達が困難なECサイトや、商品の情報が閲覧しにくいECサイトは、訪問者の離脱率を高めたり、再訪問の可能性を下げたりするおそれがあります。そこで、売却価額を低下させないためにも、M&A実施前にECサイトのUI・UXを向上させておくと良いでしょう。
将来の収益性や予測値を明確化
譲受側は、M&Aによってどのようなシナジーが期待できるか、買収費用はどのくらいの期間で回収できるか、などをM&A可否を判断する判断材料のひとつと考えます。
M&Aは面識がなかった企業同士で行われるため、譲渡側は自社(事業)将来の収益性や予測値を相手へ伝える必要があります。その際は根拠となる資料(数字)が不可欠であり、また客観的に判断できるものでなければなりません。
EC事業のM&Aで重視されるのは、主に売上高・原価・営業利益・販売管理費です。基本的にはこれらを基に相手先へ説明しますが、その際は今後の収益予測(3年程度)をアップサイドケースやリスクケースなどパターンごとに説明できる資料を用意しておくと譲受側も判断しやすくなります。
運営データ・資料の用意
M&A後は譲受企業へ引継ぎを行いますが、その際に必要となる運営データや資料や用意もあらかじめ用意しておくとよいでしょう。特に以下4つの業務に関するデータや資料は必須となるため、事前に整理しておくことが重要です。
- 商品管理業務に関するデータや資料
- 販促・集客集客方法に関するデータや資料(アクセス解析や季節ごとの販促企画など)
- 顧客サポート業務に関するデータや資料(問い合わせ対応マニュアルや顧客管理データなど)
- 売上管理業務に関するデータや資料(入金確認・売掛金回収なに関するものなど)
EC・ネット通販の売却の相場や高値で売る方法については、下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
M&AでEC事業を高値で売却するポイント
サイトが扱いやすい
EC業界は競争が激しく、多くの事業者が存在しています。利用者は多くのECサイトから購入先を選びますが、その際に使いにくかったり見づらかったりするサイトはすぐに離れてしまう可能性が非常に高いです。
購入意欲のある利用者がサイトを訪れても、購入までのアクションに不満があれば購入には至らず、再びアクセスすることは期待できません。
譲受側は譲渡側のECサイトを必ず確認しますが、その際にユーザビリティーが低ければ高値での売却は難しくなるでしょう。譲渡側はM&Aを行う前に客観的な視点から自社サイトをみて、扱いやすさを確認しておくこともポイントです。
利用者が安定的にいる
顧客ニーズの変化は非常に早いものですが、顧客にとって魅力・メリットがあるECサイトは安定的な利用者も多いはずです。顧客満足度は価格面だけでなく、配送サービス(翌日配送やお急ぎ便など)やポイント付与サービスの充実など、さまざまな要素で向上します。
利用者が安定的にいるECサイトは売上拡大に期待できるため、譲受側からの評価が高くなるケースも多いです。譲受側から高い評価が得られれば、希望譲渡価額を上回る価額でのM&A成立にも期待できます。
今後も需要がある取扱商品
自社のECサイトで取扱っている商品は、今後も需要があるのかをM&A前に確認しておくこともポイントのひとつです。EC市場は参入障壁が低いため次々に新しい事業者が増えるので、他社と差別化できるポイントや商品ラインナップでなければ、生き残りは難しくなります。
商品ラインアップを拡充させターゲット層を広くするのも方法のひとつですが、リピーターの多い商品やカテゴリーにターゲットを絞る方法もあります。
どの方法がよいのかは自社サイトの顧客構成にもよりますが、今後も需要がある商品を扱っていなければ譲受側からの高い評価は難しくなるでしょう。
EC事業のM&A売却案件一覧
本章では、EC事業のM&A売却案件として、M&A総合研究所で取り扱っている2件を紹介します。それぞれの案件からポイントをつかんで、自社のM&A戦略構築にお役立てください。
ドレスのECアパレルサイト
1つ目は、ドレスを取り扱っているECアパレルサイトの売却案件です。利益率が高い(4,000円~5,000円で仕入れて1万円前後で販売)ほか、約9割はインスタグラムからの集客であり広告費などを使用していません。SEO対策なども未実施であるため、伸び代があるとされています。
売上高 | 1,000万円〜5,000万円 |
売却希望額 | 〜1,000万円 |
売却理由 | 新規事業に専念したいため |
日本向け商品のネット通販会社
2つ目は、日本向け商品のネット通販会社の売却案件です。特定の領域に特化した商品を販売しており、他社よりもリーズナブルな価格で提供しています。他ではなかなか取引できない大手卸企業と取引しているほか、他社よりも品ぞろえが豊富である点が強みです。
売上高 | 1,000万円〜5,000万円 |
売却希望額 | 5,000万円〜1億円 |
売却理由 | 後継者不足(事業承継) |
EC事業によるM&A成功事例
最近では、業界内外を問わず、さまざまな企業がEC事業を対象とするM&Aを行っている状況です。そこで本章では、近年報告されている代表的なM&A事例として、以下の37件を紹介します。
売れるネット広告社とアクセスブライトのEC事業のM&A
2024年5月、売れるネット広告社はアクセスブライトが行う中国市場をターゲットとする「中国越境 EC」に関する事業を譲受することを発表しました。
売れるネット広告社は創業以来、健康食品・化粧品業界のD2C事業者向けにクラウドサービスとマーケティング支援サービスを提供し、インターネット広告の費用対効果を改善して業績を拡大することを目的に事業を展開しております。
アクセスブライトは、中国での多面的なマーケティング支援を通じて中国進出をサポートしてきた実績があり、高難易度の中国ECプラットフォームの開設・運用を実現しております。
今回の事業譲受により、越境ECのサービス・ノウハウを蓄積し、当社クライアントへの利便性を向上させ、さらなる成長を目指していくとしています。
参考:「中国越境 EC 事業」の事業譲受
GMOペパボとONEのM&A
2022年10月、GMOペパボはインターネット事業を手掛けるONEから「Super NFT Products」事業を取得すると発表しました。ONEが手掛ける「Super NFT Products」事業は、利用者が自身の保有するNFT(非代替性トークン)のオリジナルグッズを作成・購入できるサービスです。
GMOペパボは、現在、ハンドメイドマーケット「minne」やネットショップ作成支援サービス「カラーミーショップ」などを運営しており、本M&Aによってクリエイターが創作活動できる機会を拡大するための取り組みを進めていくとしています。
参考:GMOペパボ株式会社「GMOペパボ、ONE株式会社のNFTオリジナルグッズ購入サービス「Super NFT Products」事業を譲受」
ギフティによるpaintoryのM&A
2022年9月、eギフトの発券・販売プラットフォーム事業を行うギフティは、岡山県のpaintoryを子会社化すると発表しました。子会社となったpaintoryは、オリジナル衣料品の制作・販売プラットフォームを運営しており、クリエイターのオリジナル商品を販売だけでなく、ストア開設の支援サービスなども行っています。
ギフティは、自社が運営するプラットフォームでeギフトの発券から販売までを一貫提供しており、今回の子会社化は新しいコンテンツとして法人福利厚生向けにオリジナル衣料品の製作・販売を取り入れ、新規需要の獲得を図ることが目的です。
参考:株式会社ギフティ「株式会社paintoryの株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ」
Eストアーと志風音のM&A
2022年7月、ネット通販の運営コンサルティングやECサイト構築などを行うEストアーは、アパレル会社の志風音を子会社化したと発表しました。
子会社となった志風音は、ファッション・スポーツ衣料・ランドセルなどの企画生産から販売までを手掛ける企業です。2004年に設立された企業ですが、高い企画力や商品力を強みとしています。
本M&Aにより、Eストアーは自社のEC運営ノウハウと志風音の企画力・商品力・企画力を融合してシナジーを発揮させ、事業拡大を図ることが狙いです。
参考:株式会社Eストアー「株式会社志⾵⾳の株式取得(⼦会社化)に向けた 基本合意書締結に関するお知らせ」
DCMホールディングスによるエクスプライスのM&A
2022年2月、DCMホールディングスは、エクスプライスの発行済み全株式を取得し、同社を子会社化すると発表しました。子会社となったエクスプライスは日本最大級の専門店EC事業会社であり、家電商品を主軸に幅広く販売を手掛けています。
DCMホールディングスはホームセンター事業をグループの主軸としていますが、家電領域以外で商品ポートフォリオを拡充し、実店舗とEC事業の相互送客や物流スピードアップなどのシナジーにより、売上拡大と企業価値向上を目指すとしています。
参考:DCMホールディングス株式会社「エクスプライス株式会社の株式取得に関する株式譲渡契約締結についてのお知らせ」
イノベスタによるアンド・フォースとのM&A
2021年4月、イノベスタは、アンド・フォースから出資を受ける形で、資本業務提携を締結しました。 イノベスタは、「沖縄県内のすべての企業がオンラインビジネスに参入できるインフラを提供する」などの目的を掲げたスタートアップ企業です。
沖縄県内のEC活用促進や沖縄県内事業者のDX支援を目的として、沖縄県内に限定したオンラインショッピングモールを開設しています。また、2020年12月には、沖縄県内の大手企業8社が主催するOKINAWA Startup Programに採択されました。
対するアンド・フォースは、ブランド戦略の専門集団として、広告・PR・デジタル戦略・クリエイティブ・イベント・新規事業開発などを一手に引き受けている企業です。本件M&Aの主な目的は、沖縄県内事業者に対するブランディング・広告・PRなどを通じたサポートの実現にあります。
日本郵政グループによる楽天グループとのM&A
2021年3月、日本郵政および日本郵便は、楽天グループと資本業務提携を締結しました。日本郵政は、株式会社法にもとづき日本郵政グループの持株会社として設立された企業です。日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険・日本郵政スタッフ・日本郵政インフォメーションテクノロジーなどを子会社に持ちます。
対する楽天グループは、70以上のサービスと1億人以上の楽天会員を有しており、独自の経済圏を形成している企業です。本件M&Aの主な目的は、物流・モバイル・DXなどさまざま領域での連携強化にあります。
参考:日本郵政株式会社 日本郵便株式会社 楽天株式会社「 日本郵政グループと楽天グループ、資本・業務提携に合意」
オイシックス・ラ・大地による大戸屋HDとのM&A
2020年8月、オイシックス・ラ・大地は、大戸屋HDと業務提携を締結しました。オイシックス・ラ・大地は、有機・無添加食品やミールキットの通信販売を手掛けている企業です。
有機野菜などの食品宅配専門スーパー「Oisix」や、有機野菜などのカタログ食品宅配「大地を守る会」・有機野菜などの個別宅配「らでぃっしゅぼーや」などを運営しています。
対する大戸屋HDは、大戸屋や海外で飲食店事業を行う他の事業会社の運営を手掛けている持株会社です。本件M&Aの主な目的は、市場規模の拡大および、食を通じた社会へのさらなる貢献の推進にあります。
参考:オイシックス・ラ・大地、大戸屋ホールディングスと業務提携 流通額 約30億円規模の事業成長を目指し、共同でECサービスを構築 ~当社の強みである“食のサブスクリプション”を共同事業で拡大~
ロコンドによるFashionwalkerのM&A
2020年7月、ECサイトを運営するロコンドは、ワールド傘下のFashionwalkerを子会社化すると発表しました。ロコンドは靴とファッションを中心としていますが、今回のM&Aはアパレル領域におけるEC事業の強化が目的です。
Fashionwalkerの親会社であるワールドは、ECサイト「WORLD ONLINE STORE」でグループのアパレル商品を販売していますが、今回事業の選択と集中を行うことでグループの収益向上を図るとしています。
参考:株式会社ロコンド「株式会社 Fashionwalker(完全子会社)との吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ」
TSIホールディングスによるEfuego CorpのM&A
2020年3月、TSIホールディングスは子会社と通じ、アクションスポーツを専門に展開するECサイトを運営するアメリカのEfuego Corpを子会社化すると発表しました。
TSIホールディングスは中期経営計画において、重点領域として「多国籍企業化」と「デジタル企業化」を掲げています。今回の子会社化はその一環で行われたものであり、現地子会社とのシナジー創出だけでなく、今後アメリカへ進出する際に共通プラットフォームとして重要な役割に期待できるとし、本M&Aに至りました。
参考:株式会社TSIホールディングス「Efuego Corp 社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
ヴィーダがインタートレードヘルスケアの一部事業を譲受
2020年1月、ヴィーダは、インタートレード傘下のインタートレードヘルスケアが手掛ける通信販売事業を譲受すると発表しました。ヴィーダは冠婚葬祭事業や館員コミュニティ運営事業を手掛ける企業です。
インタートレードヘルスケアは健康補助食品や化粧品の販売事業を手掛けており、機能性キノコ「ITはなびらたけ」を主力商品としています。
今回、インタートレードヘルスケアが事業譲渡を行ったのは選択と集中の一環であり、「ITはなびらたけ」など自社商品の販売事業にリソースを集中させることが目的です。
参考:株式会社インタートレード「連結子会社の一部事業譲渡に関するお知らせ」
ZホールディングスによるZOZOとのM&A
2019年11月、Zホールディングスは、ZOZOの株式50.1%を取得し連結子会社化しました。本件の取得価額は、およそ4,000億円と発表されています。Zホールディングスは、ソフトバンクグループ傘下の持株会社です。
対するZOZOは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」、ファッションコーディネートアプリ「WEAR」、古着下取サービス「ZOZOUSED」などのサービスを運営している企業です。本件M&Aの主な目的は、EC事業の強化にあります。
参考: ホールディングス株式会社「株式会社 ZOZO 株式(証券コード 3092)に対する 公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ」
ナガホリによるジェイウェルとのM&A
2019年6月、ナガホリは、ジェイウェルとの間で、資本業務提携契約を締結して経営陣からの譲り受けにより株式10.15%を取得すると発表しました。本件の取得価額は非公開です。
ナガホリは、宝石・真珠・貴金属製品の輸出入および製造加工のほか、国内・国外販売も手掛ける企業です。対するジェイウェルは、宝飾品ECサイトの企画・運営を手掛けています。本件M&Aの主な目的は、ECサイトの共同企画による、販売チャネルの拡大および事業領域の拡大にあります。
参考:株式会社ナガホリ「ジェイウェル株式会社との資本業務提携および普通株式の譲受けについて」
ロコンドによる千趣会とのM&A
2019年3月、ロコンドは、千趣会傘下の企業「モバコレ」の株式すべてを取得し完全子会社化すると発表しました。本件の取得価額は約4億8,800万円です。
ロコンドは、靴や衣料品の通販サイト「LOCONDO.jp」を運営しています。対するモバコレは、20代女性向けのファッションを主力商品として取り扱っている企業です。本件M&Aの主な目的は、顧客ターゲット層の補完関係の構築および短期での収益改善にあります。
参考:株式会社ロコンド「株式会社モバコレの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
ナックによるインフィニティービューティーとのM&A
2018年12月、ナックは、インフィニティービューティーの株式すべてを取得し完全子会社化しました。本件の取得価額は非公開です。
ナックは、住宅環境衛生を中心としたサービス業などを手掛ける企業です。2013年に通販事業に参入しており、子会社のJIMOSを通じてオリジナルブランドの化粧品、健康食品などを取り扱っています。
対するインフィニティービューティーは、美容専売品卸「コスメフリー」のほか、楽天・Yahoo・Amazonなどのモールに出店するコスメショップ「コントラストビューティー」「ビューティーコスメ」をプロデュースするなど、サロン専売品の販売を積極的に手掛ける企業です。
本件M&Aの主な目的は、モール型ECサイトの販売ノウハウ獲得による販路拡大にあります。
参考:株式会社ナック「当社連結子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ」
錦半ホールディングスによるアベルネットとのM&A
2018年11月、錦半ホールディングスは、アベルネットの株式を取得し子会社化すると発表しました。本件の取得価額は約20億円です。錦半ホールディングスは、綿半グループを統括している持株会社です。傘下企業として、ホームセンターを展開する綿半ホームエイドなどを抱えています。
対するアベルネットは、通販サイトで家電・PCなどを販売しているインターネット通販事業の企業です。本件M&Aの主な目的は、取扱商品の拡充およびシナジー効果の発揮にあります。
参考:綿半ホールディングス株式会社「株式会社アベルネットの株式の取得(連結子会社化)に関するお知らせ」
エイジアによるハモンズとのM&A
2018年9月、エイジアは、ハモンズが持つベビー服のECサイト事業を取得しました。本件の取得価額は、約3,300万円です。エイジアは、インターネットを用いた販売活動を支援するパッケージソフト「WEB CAS」の開発・販売を主力に取り扱っています。
対するハモンズは、ベビー服ECサイト「べびちゅ」の運営およびEC事業者向け在庫管理クラウドサービス「FULLKAITEN」の開発販売などを手掛けています。本件M&Aの主な目的は、ECサイトの運営ノウハウの収集・活用による、主力製品の機能強化にあります。
参考:株式会社エイジア「EC 事業の譲受けおよび子会社設立に関するお知らせ」
ティーライフによるLifeitとのM&A
2018年7月、ティーライフは、Lifeitの株式すべてを取得し完全子会社化すると発表しました。本件の取得価額は非公開です。ティーライフは通信販売を手掛ける企業であり、自社企画した健康茶・健康食品・化粧品などを主に取り扱っています。
対するLifeitは、ベビー用品・キッズ家具などを取り扱うセレクトショップ通信販売サイトを運営する企業です。本件M&Aの主な目的は、情報システムなどプラットフォームの共有による、運営の効率化にあります。
参考:ティーライフ株式会社「株式会社Lifeit(ライフイット)の株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」
スクロール360によるもしもとのM&A
2018年5月、スクロール360は、もしもの株式を取得して子会社化すると発表しました。本件の取得価額は非公開です。スクロール360はカタログ通信販売「スクロール」の子会社であり、通販業務(受注・物流・決済)代行・通販システム構築・販促支援(Web広告)・コンピューター業務受託などを手掛けています。
対するもしもは、個人や法人向けのドロップシッピングサービス・アフィリエイトサービス・ドロップシッパー、アフィリエイターの育成を目的とした教育・支援などを手掛ける企業です。
本件M&Aの主な目的は、Eコマース事業のポートフォリオの拡充・ソリューション事業や海外事業の強化・事業拡大・シナジー効果の獲得などにあります。
参考:株式会社スクロール「株式会社もしもの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」
BEENOSによる帝国酒販とのM&A
2018年3月、BEENOSは、帝国酒販の株式すべてを取得して完全子会社化しました。本件の取得価額は非公開です。BEENOSは持株会社であり、Eコマース事業・インキュベーション事業などを手掛けています。
対する帝国酒販は、国内8店舗の酒類買取専門店「JOY LAB」を運営する企業です。これらの店舗で買い取った酒類は、自社ECサイト「銘酒専門店 帝国酒販」や国内大手ECモールなどで販売しています。本件M&Aの主な目的は、国内外でのインターネットによる酒類販売の強化にあります。
参考:BEENOS株式会社「酒類の買取専門店「JOY LAB」の運営とインターネット販売を行う「株式会社帝国酒販」を完全子会社化」
TGビジネスサービスによるアウトレットプラザとのM&A
2018年2月、TGビジネスサービスは、アウトレットプラザの株式すべてを取得し完全子会社化しました。本件の取得価額は非公開です。
TGビジネスサービスは、創薬支援事業(CRO・バイオテクノロジー)やTGBS事業(投資・コンサルティング事業)を提供する「トランスジェニック」の連結子会社です。M&A関連サービスや事業再生関連サービスなどを展開しています。
対するアウトレットプラザは、価格比較サイトを軸に、BtoC・BtoBのEC事業者として、主に電機製品などの小売り・卸売りを展開している企業です。本件M&Aの主な目的は、新たなビジネスモデルの構築を含めた、双方の事業拡大にあります。
参考:株式会社トランスジェニック「当社子会社による株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ」
バローホールディングスによるファーストとのM&A
2018年2月、バローホールディングスは、ファーストの株式すべてを取得し完全子会社化しました。本件の取得価額は非公開です。
バローホールディングスは、スーパーマーケットを中核に、ホームセンター・ドラッグストア・スポーツクラブなどを展開するバローグループを統括する企業です。仕入れた商品を販売する小売業ではなく、製造・流通・販売を一貫して担う「製造小売業」としてビジネスモデルを構築しています。
対するファーストは、インターネット専業の資材・工具販売業者です。本件M&Aの主な目的は、ホームセンター事業の品ぞろえを補完する機能の構築および、インターネット販売業の効率化・拡大にあります。
参考:株式会社バロー ホールディングス「株式会社ファーストの株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」
コメ兵によるイヴコーポレーション・アークマーケティングジャパンとのM&A
2017年12月、コメ兵は、イヴコーポレーションおよびアークマーケティングジャパンの株式すべてを取得し、それぞれ完全子会社化すると発表しました。本件の取得価額は非公開です。
コメ兵(現:コメ兵ホールディングス)は、リサイクルショップ(コメ兵・KOMEHYO)を運営するKOMEHYOグループを子会社に構える企業です。対するイヴコーポレーションは、主にECと実店舗でアパレル事業とスニーカー事業を手掛けています。
また、アークマーケティングジャパンは、主にECでシューケア用品事業を手掛ける企業です。本件M&Aの主な目的は、ファッションリユース事業のうち、アパレル・スニーカー・シューケア商材の専門性強化およびシナジー効果の獲得にあります。
参考:株式会社コメ兵「株式会社イヴコーポレーション及び株式会社アークマーケティング ジャパンの株式取得(100%子会社化)に関するお知らせ 」
アエリアによるGG7とのM&A
2017年10月、アエリアは、GG7を株式交換の手法で完全子会社化しました。簡易株式交換の手法を採用し、交換比率は1対0.19株です。
アエリアは、オンラインゲーム運営などを手掛けています。対するGG7は、アニメやゲームなどのキャラクターグッズなどを手掛ける企業です。本件M&Aの主な目的は、コンテンツ事業の強化戦略の一環としてのマーチャンダイジング機能の補強にあります。
参考:株式会社アエリア「簡易株式交換による当社子会社株式の追加取得(完全子会社化)に関するお知らせ」
スタートトゥデイによるIQON運営会社とのM&A
2017年10月、スタートトゥデイは、VASILYの株式すべてを取得して完全子会社化すると発表しました。本件の取得価額は非公開です。
スタートトゥデイ(現:ZOZO)は、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」、ファッションコーディネートアプリ「WEAR」、古着下取サービス「ZOZOUSED」などのサービスを運営しています。
対するVASILYは、さまざまなECサイトからファッションアイテムをユーザーが自由に組み合わせてコーディネートを作成できるサービス「IQON」を運営するほか、ソフトウエアなどの受託開発も手掛けている企業です。本件M&Aの主な目的は、開発技術の応用による、企業のさらなる成長の実現にあります。
参考:株式会社スタートトゥデイ「スタートトゥデイ、ファッションメディア「IQON」などを手がけるVASILY社を完全子会社化」
スクロールによるキナリとのM&A
2017年7月、スクロールは、キナリの株式を取得して子会社化しました。本件の取得価額は非公開です。スクロールは、カタログ通販準大手の通信販売事業者です。婦人衣料品を主体としたカタログ通販およびインターネット通販を手掛けています。
対するキナリは、資生堂の完全子会社であり、30~40代の女性を対象に、自然派化粧品ブランドのインターネット通販を手掛ける企業です。
本件M&Aの主な目的は、販売網・販売促進ノウハウ・通販インフラの活用によるキナリの成長拡大および、グループ全体としてシナジー効果の発揮にあります。
参考:株式会社スクロール「株式会社キナリの株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」
アライドアーキテクツによる大都とのM&A
2017年5月、アライドアーキテクツは、大都との間で、植物特化型のSNSプラットフォーム「GreenSnap」の運営事業を会社分割してGreenSnapを設立したほか、GreenSnapを株式交換完全子会社・大都を株式交換完全親会社とする株式交換を実施しました。
アライドアーキテクツは、マーケティングのDX支援事業を手掛けています。「世界中の人と企業をつなぐ」を理念に、2005年に設立されました。対する大都は、DIY専門の提案型通販サイト「DIY FACTORY」を中心に、さまざまなEC事業・メディア事業を展開しています。
本件M&Aの主な目的は、DIY市場・グリーンインテリアやガーデニング領域・住関連市場のビジネス領域拡大にあります。
参考:アライドアーキテクツ株式会社「会社分割(簡易新設分割)による「GreenSnap 株式会社」の設立及び 株式会社大都と新設会社との株式交換に関する基本合意締結のお知らせ」
オールアバウトライフマーケティングによるミューズコーとのM&A
2017年5月、オールアバウトライフマーケティングは、ミューズコーの株式を取得し子会社化すると発表しました。本件の取得価額は、5,000万円です。
オールアバウトライフマーケティングは、オールアバウトの子会社であり、サンプリング事業・コマース事業、・マーケティングソリューション事業などを展開しています。
対するミューズコーは、ラグジュアリーブランドやトレンドのファッションアイテムをはじめ、女性向けの商品を多数取りそろえるファッションコマースサイトを運営する企業です。本件M&Aの主な目的は、買収側による新たな取り組みの強化および既存事業とのシナジー創出にあります。
参考:株式会社オールアバウト「当社連結子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ」
オイシックスによる大地を守る会とのM&A
2017年3月、オイシックスは、大地を守る会との間で、株式交換の手法により経営統合を行うと発表しました。株式交換の比率は、オイシックス:大地を守る会=1:261です。
オイシックス(現:オイシックス・ラ・大地)は、有機・無添加食品およびミールキットの通信販売を手掛けています。対する大地を守る会は、有機野菜や自然食品などの宅配サービスを手掛けている企業です。
本件M&Aの主な目的は、新規顧客層の拡大・既存顧客層の確保・市場での競争力の向上および、調達から販売までのサプライチェーンの共通部分の効率化による収益性の向上にあります。
参考:オイシックス株式会社「オイシックス株式会社と株式会社大地を守る会の経営統合(合併)に向けた 株式交換に関するお知らせ」
楽天による爽快ドラッグとのM&A
2016年12月、楽天は、爽快ドラッグの株式94.58%を取得し子会社化すると発表しました。本件の取得価額は89億円です。
楽天(現:楽天グループ)は、インターネット関連サービスを中心に展開しており、インターネットショッピングモール「楽天市場」・総合旅行サイト「楽天トラベル」・フリマアプリ「ラクマ」などのECサイトを運営しています。
対する爽快ドラッグは、ミネラルウォーター・健康食品・洗剤・キッチン家電などの生活用品・日用品をインターネットで販売する企業です。
本件M&Aの主な目的は、生活用品向けECの直販モデルの強化および、商品価格と配送サービスの競争力向上にあります。
参考:楽天株式会社 「株式会社爽快ドラッグの株式の取得(子会社化) に関するお知らせ」
楽天によるFablicとのM&A
2016年9月、楽天は、Fablicの株式すべてを取得し完全子会社化しました。本件の取得価額は非公開です。
Fablicは、フリーマーケットアプリ「フリル」を提供する企業です。特にファッションや美容用品のジャンルに注力しており、10代後半から20代を中心とする多くの女性から支持を集めていました。本件M&Aの主な目的は、両社サービスのさらなる利便性向上にあります。
参考:楽天株式会社「楽天、フリマアプリ「フリル(FRIL)」を提供する Fablic社を買収」
メタップスによるビカムとのM&A
2016年6月、メタップスは、ビカムの株式すべてを取得し完全子会社化すると発表しました。本件の取得価額は3億2,000万円です。
メタップスは、決済サービスを軸に、フィンテック領域で総合的にサービスを展開するファイナンス事業・デジタルマーケティングをワンストップで提供するマーケティング事業などを展開しています。
対するビカムは、ショッピング検索サイトを運営しています。また、商品データを各広告配信先の仕様に最適化する「データフィードマネジメント」技術を活用し、商品データの一元管理・管理コストの削減などを支援する事業も展開する企業です。本件M&Aの主な目的は、既存事業との連携にあります。
参考:株式会社メタップス「ビカム株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
オイシックスによるとくし丸とのM&A
2016年6月、オイシックスは、とくし丸の株式を取得し連結子会社化しました。本件の取得価額は非公開です。
とくし丸は、「移動スーパーマーケット」の仕組みをフランチャイズ方式で提供する事業を手掛ける企業です。本件M&Aの主な目的は、1人あたりの売上の効率的な伸長および、商品の品質向上にあります。
参考:オイシックス株式会社「シニア向け移動スーパー運営企業株式会社とくし丸の子会社化に関するお知らせ」
ディノス・セシールによるイードとのM&A
2016年5月、ディノス・セシールは、イードとの間で包括的業務提携を締結し、コンテンツマーケティングプラットフォーム事業を譲受しました。本件の取得価額は非公開です。
ディノス・セシール(現:DINOS CORPORATION)は、フジサンケイグループの通信販売会社です。主力事業として、「ディノス」「セシール」のブランドがあります。これらはカタログとWebによる通信販売事業を展開しているほか、保険代理店事業も手掛けています。
対するイードは、RBB TODAYやResponse.をはじめ、ニュースサイトの運営やマーケティングリサーチなどを行っているIT企業です。
本件M&Aの主な目的は、既存のECビジネスの活性化および新機軸のEC事業への取り組み実施にあります。
参考:株式会社イード「イードとディノス・セシールによる包括的業務提携に関する基本合意のお知らせ」
健康コーポレーションによる三鈴とのM&A
2016年4月、健康コーポレーションは、三鈴の株式すべてを取得して完全子会社化すると発表しました。本件の取得価額は48億7,000万円です。
健康コーポレーションは、RIZAPグループの完全子会社であり、化粧品・美容機器・健康食品やダイエット食品の販売などを手掛けています。対する三鈴は、10代から20代前半を主力ターゲットに婦人服を取り扱っている企業です。
本件M&Aの主な目的は、ヤングエレガンス領域へのリアル店舗の展開および、三鈴の顧客を「RIZAP」をはじめとする商品・サービスに送客することです。
参考:株式会社ヨンドシーホールディングス「子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ 」
ASJによるNTTデータ・アイテックスとのM&A
2016年2月、ASJは、NTTデータ・アイテックスの株式を取得し子会社化しました。これに伴い、NTTデータ・アイテックスの子会社「東北情報システム」も子会社化しています。
ASJは、ホスティングサービス・決済代行サービスなどのインターネットサービスや、オンラインゲーム・SNSなどデジタルコンテンツの企画・開発・運営を手掛けています。対するNTTデータ・アイテックスは、人事管理に特化したシステム「ePro_St@ff」「PRO_STAFF-α」を主力商品として事業展開する企業です。
本件M&Aの主な目的は、SI(システムインテグレーション)事業の拡大および、クラウドサービス提供による業容拡大にあります。
参考:株式会社ASJ「株式会社NTTデータ・アイテックスの株式取得(子会社化)及び資金の借入に関するお知らせ」
トランスコスモスによる富士通HRプロフェショナルズとのM&A
2016年2月、トランスコスモスは、富士通HRプロフェショナルズの株式49%を取得しました。本件の取得価額は非公開です。
トランスコスモスは、企業へのITアウトソーシングサービスを展開しています。対する富士通HRプロフェショナルズは、富士通の子会社であり、人事業務関連を受託するアウトソーシング事業を手掛けている企業です。
本件M&Aの主な目的は、受託業務のさらなるQCD(品質・コスト・納期)の向上および徹底した効率化にあります。
参考:富士通株式会社「 富士通、富士通HRプロフェショナルズの株式をトランスコスモスへ一部譲渡」
レントラックスによるベーシックとのM&A
2016年2月、レントラックスは、ベーシックのスマートフォンアプリ向けアフィリエイト広告ネットワーク「GAMEFEAT」事業を取得しました。本件の取得価額は非公開です。
レントラックスは、インターネット広告事業やコンサルティング事業などを手掛けています。対するベーシックは、マーケティングポータル事業などを手掛ける企業です。本件M&Aの主な目的は、成果報酬型広告サービス事業の拡大にあります。
参考:株式会社レントラックス「GAMEFEAT事業の GAMEFEAT事業の譲受けに関するお知らせ」
EC事業のM&A失敗事例
最後に、EC事業のM&A失敗事例を取り上げます。売却側企業は、化粧品などの通販サイトを運営する企業で、別事業へ注力するためにM&Aによる事業売却を検討していました。一方、買収側は、実店舗で化粧品を販売しており、ネット販売分野への新規参入を計画していた企業です。
売却側(売り手側)企業は、運営するネット通販サイトの売上が伸びていたこともあり、交渉はスムーズに進みM&Aは成立するかと思われました。しかし、直前にM&A交渉が破談になってしまったのです。
その理由は、売却側の契約書を改めて確認したところ、仕入先の情報が全く記載されていなかったためです。たとえ多くの売上があるECサイトでも、販売商品がなければ利益を得ることはできません。
当然ながら、M&A成立後には、取り扱っている商品の手配を行う必要があります。仕入先情報のないまま買収してしまうと、新たに仕入先を探して交渉しなければなりません。仮に仕入れがスムーズに進められなければ、売上は急速に低下します。つまり、期待していた効果が全く出ないまま、M&Aは失敗してしまうのです。
失敗事例の中で見落としがちなのは、契約書に記載されている譲渡対象の内容です。契約書は表記方法が複雑であるため、こうしたリスク要因を減らすためにも、M&Aコンサルタントや仲介業者を介して進めると良いでしょう。
EC事業のM&A積極買収企業
最後に、EC事業のM&Aで買収を積極的に検討している企業を2社取り上げます。
①オズビジョン
オズビジョンは、EC利用支援のためのポイントモール「Hapitas」や買取アプリ「Pollet」の運営・広告代理店事業などを手掛けている企業です。
さまざまな領域で価値を作り上げることに成功した「東急沿線経済圏」や、ショッピングモール・銀行・保険まであらゆるジャンルを取りそろえる「楽天経済圏」のビジネス構想の実現を目指しています。
主に、「美容・コスメ・香水」「ダイエット・健康」「食品」「医薬品・コンタクトレンズ・介護」「キッズ・ベビー・マタニティ」「ペット・ペットグッズ」などの商品を取り扱う企業の買収を前向きに検討しています。
②ブループリント
ブループリントは、モバイルゲーム事業および、その周辺領域の事業・サービスを提供する企業です。現在は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の一都三県で、直営店舗の拡大および全国での販売代理店の拡大を予定しています。
主に、「ECサイトを運営している会社」のほか、「Webメディアを運営している会社」「ブランド品、ガジェット系などのリユースを行っている店舗を持っている会社」などの買収を積極的に検討しています。
EC事業のM&Aまとめ
本記事では、EC事業のM&Aに関して、動向・相場・成功(失敗)事例などを解説しました。買い手・売り手によってM&Aを選択する目的は異なるため、メリット・デメリットを十分に判断したうえでM&Aを選択することが大切です。
企業にとって重大な意思決定であるM&Aの手続きは煩雑であり注意点も多いため、専門家に相談しながら行いましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。