M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年11月14日更新業種別M&A
ホテル・旅館の事業承継の現状は?課題や注意点から事例も解説!
本記事では、ホテル・旅館の事業承継に関する課題や注意点、さらに事例やおすすめの相談先を解説していきます。ホテル・旅館の事業承継は、運営に関することだけでなく、しきたりやお得意様への配慮などお客様に対する気持ちなどを大切にする業種でもあります。事業承継を検討中の方は必見です。
目次
ホテル・旅館の事業承継の現状
現在の日本の中小企業は、後継者がいないことや経営者自身の高齢化などを理由に事業承継が難しい局面を迎えています。以前であれば、親が会社を経営していれば、おのずと子供が事業を承継するのが当たり前の時代もありました。
しかし、現在はライフスタイルの多様化や職業選択の自由などを理由に、親が会社を経営していてもそれを継がない、という選択をする子供も増えているのです。このように、後継者がいないことで廃業を選択するしかないと判断する経営者もいます。
ホテルや旅館においても同様の傾向が見られており、後継者がいないことを理由に廃業を選択するケースが増加しているのです。
しかし、最近では従業員や役員の中から後継者となる人材を選定したり、 第三者への事業承継としてM&Aを実施して、会社を存続させようとする動きが活発になっています。
後継者不在を理由に1割が「承継せず」
日本政策金融公庫の調査によると、ホテル・旅館を経営する方は「事業を承継させたい」と回答していることが多く48.3%の割合を占めています。反対に「事業承継させるつもりはない」としているのは、が22.8%となっています。
この中で、事業承継の意思がある会社のうちおよそ半分の後継者が決まっているとしており、後継者となるのはほとんどが「子供」としています。ホテル・旅館業を営む会社では、子供が後継者とならない場合は事業承継をしないという選択をする経営者も多いようです。
一方で、事業承継をしないとしている会社のうち、およそ半数が後継者不足を理由としていることがわかっています。またホテル・旅館業を営む会社のうち、事業承継の意思がないとしているのはおよそ1割で、「現時点では考えていない」としているのが32.6%となっています。
参考:「2022年 事業承継に関するアンケート調査結果」|日本政策金融公庫
M&Aが活発化傾向
現在、旅館・ホテル業界におけるM&Aは活発化傾向です。子供が後継者とならない場合は事業承継をしないという経営者もいる一方で、第三者への事業承継としてM&Aを選択する経営者もいます。
地方における中堅中小の旅館・ホテルが、経営環境が良好であるうちに大手資本の傘下に入ることを目的としてM&Aや、シナジーの獲得・事業領域の拡大を目的としたM&Aがホテル・旅館業では増加傾向です。
ホテル・旅館の事業承継課題3選
ホテル・旅館業は、政府が打ち出した観光立国としての役割も大きく、地方のホテル・旅館も外国人観光客などを相手に景気が良い状態であるといえます。そのような中で、事業承継となると後継者の有無やM&Aの実施など検討する内容がいくつかあるでしょう。
現在の日本は少子高齢化となっており、その波はホテル・旅館業の事業承継にも影響を与えています。この項では、ホテル・旅館の事業承継の課題を以下のポイントに絞って解説します。
- 後継者不在
- 高い離職率と人手不足
- 経営者の高齢化
①後継者不在
ホテル・旅館業界においても後継者不足の問題は大きく、今後の運営にも大きな影響を与えています。前述したとおり、適切な後継者が見つからずに、事業承継を断念して「自分の代で廃業しよう」と考える経営者もいます。
ホテル・旅館によっては老舗として有名なところも多く、業績も良く事業承継したいが後継者がなかなか決められない、という悩みを抱えている場合もあります。しかし、何かしらの手立てをしないと、そのままホテル・旅館を廃業することとなる可能性が高いのです。
ホテル・旅館を営んでいる会社では「子供」に事業承継しようとする傾向が強いですが、役員や従業員に事業承継する「親族外承継」を選択する方法もあります。しかし、親族外承継においても、人手不足により後継者として適切な人材が見つからないというケースもあるのです。
②高い離職率と人手不足
ホテルの宿泊者数は増加傾向にあるものの、従業員数は横ばいの状態が続いており、ホテル・旅館業界では人手不足が深刻化しています。ホテル・旅館業界の場合、人手不足の理由は「離職率の高さ」が原因といわれています。
深夜や早朝から勤務することがあるホテル・旅館業界は、勤怠が不規則であるにもかかわらず待遇面が見合わないという理由で離職率が高い傾向です。この深刻な人手不足も、事業承継における後継者不足の問題に関わってきます。
③経営者の高齢化
ホテル・旅館を営む会社だけでなく、ほかの業種にも共通していることですが、経営者自身が高齢となって廃業している場合もあります。中小企業庁の調査では、2015年には経営者の年齢が66歳を迎えようとしており、その年齢に達しても経営者を続けるケースが多くあります。
ホテル・旅館業においても同様で、経営者が高齢になっても後継者不足を理由に経営を続けている方も多いです。中には、高齢が理由で廃業を検討していた際に、同じ宿泊施設を運営する会社代表者から引き継ぐ意思を聞いて、M&Aを実行した事例もあります。
現経営者が高齢になってから事業承継を実施しようとしても、準備期間が足りないために十分な準備をしてから事業承継できない場合もあります。経営者の年齢がおおむね60歳になった頃には、事業承継の準備を始めた方が良いでしょう。
参考:「中小企業の経営者の高齢化と事業承継」|中小企業庁
ホテル・旅館の事業承継の注意点2選
事業承継は、会社にとって大きな変化となる場合もあります。経営者の交代によって、ホテル・旅館の雰囲気が一新することも考えられるので、事業承継計画を的確に策定して進めていくことが前提です。
事業承継には、おおむね10年の期間を要するといわれているため、10年先を見据えて事業承継を進めていく必要があります。ホテル・旅館業では、これまでのしきたりやお客様とのおつきあいなどもあるので、さまざまな点において注意しながら事業承継を進めていくべきでしょう。
この項では、ホテル・旅館の事業承継における注意点を以下で解説していきます。
- 情報が漏れないように注意
- 後継者の経営者教育
①情報が漏れないように注意
事業承継については「親族内承継」、役員・従業員が後を継ぐ「親族外承継」、そして第三者へ引き継ぐ「M&A」3つの方法があります。その中でも、ホテル・旅館を営む会社では、親族内承継をしたいと考えている経営者が多くいます。
すでに、後継者候補である子供が自社で働いている場合は、従業員や取引先、顧客においていずれ子供が後継者となるのだろうという予測をしている場合もあります。しかし、事業承継に関する内容は情報が漏れないように注意しましょう。
事業承継によって、会社の業務が一新される可能性もあり、そのことが従業員の間で情報が広まるとさまざまな憶測が広がる可能性があります。例えば、従業員のリストラや事業の縮小など、情報が漏れることで従業員に不安を与える可能性があるのです。
また取引先や顧客にまで情報が広がると、業績不振などの不安を与える可能性があり、その後の取引にも影響を与える場合があります。また、心情的に受け入れられやすい親族内承継に対して、親族外承継やM&Aの場合は従業員の間に不満が出る場合もあります。
M&Aを実施する場合には特に注意が必要で、内容が確定するまでは情報が漏れないように注意しなければなりません。売り手側も買い手側も多くのメリットを生み出せるM&Aですが、マイナスなイメージを持たれやすいので注意しましょう。
②後継者の経営者教育
現経営者の子供が後継者となる場合は、早期に教育を始めることができるので、10年先を見据えて着実に教育できます。ホテル・旅館での事業承継は、これまでのしきたりやお客様とのおつきあいなど、気を配る点が多いでしょう。
それらを事業承継の内容として、しっかり承継していくことも重要なポイントです。役員・従業員に承継する場合は、すでにホテル・旅館の方針などは理解しているので、後継者教育の期間短縮が可能です。
M&Aの場合は、ホテル・旅館を売却する際に、売却後も同様の運営を希望する場合は条件を明確にしましょう。親族内承継の場合は、子供を自社に迎え入れて教育をしていく方法と、社外へ就労させて業界のことや他社の手法などを学んでから迎え入れる方法があります。
どのような方法が良いかは、後継者の年齢や適性などを考慮して決めるようにすると良いでしょう。また、どの方法であっても時間を要することに変わりはないため、早めにしっかりとした経営者教育に取り組むことをおすすめします。
ホテル・旅館の事業承継はM&A仲介会社に相談
ホテル・旅館の事業承継をスムーズに実行するには、いろいろな点において配慮する必要があります。1人で事業承継について悩んだり、どのように進めるべきか迷ったりするときは、M&A仲介会社を利用する方法もあります。
M&A仲介会社の事前相談を活用
M&A仲介会社は、M&Aにおいて交渉の仲介を行う会社ですが、M&Aに限らず事業承継についても相談可能です。M&A仲介会社には弁護士や会計士、税理士などの士業の資格を保有しているスタッフが在籍しているところも多く、専門的なサポートやアドバイスを受けられます。
M&A仲介会社によっては、M&Aだけの事前相談をしている場合もありますが、事業承継に関する事前相談に応じているところが多くあります。相談料が無料のM&A仲介会社もあるので、事業承継に関する悩みがある場合は事前相談を活用しましょう。
実績が豊富なところを選ぶ
M&A仲介会社は、比較的どの業種にも対応していますが、ある分野に特化しているM&A仲介会社もあります。ホテル・旅館業界におけるM&Aを得意としているM&A仲介会社もあるので、探してみることをおすすめします。
大手M&A仲介会社は、多くのM&A成約の実績があり経験が豊富なので、M&Aだけでなく事業承継の相談に応じてくれるところがあります。そのほかにも、中堅や地元密着型のM&A仲介会社の場合でも、ホテル・旅館を営む経営者との取引が多い会社もあります。
M&A仲介会社の多くは、地方の会社でもしっかりと対応してくれるところが多いので、地方の会社だからと諦めずに相談できる仲介会社を探してみると良いでしょう。
ホテル・旅館の事業承継事例3選
近年は外国人観光客の増加によりホテル・旅館の業績は良いように感じられますが、外国人旅行客は割安なシティーホテルなどを利用することが多く、リゾートホテルや旅館を利用する割合は少なくなっています。
そのような中で、ホテル・旅館の運営が立ち行かなくなり、M&Aや事業再生を実施しているホテル・旅館もあります。この項では、ホテル・旅館の事業承継事例をご紹介します。
①Fractaleグループによる事例
2019年9月、ホテルや旅館のリノベーション事業に力を入れているFractaleは、連結子会社のホテルKANAZAWA合同会社が、ホテル金沢の全株式を取得して子会社化することを発表しました。
JR金沢駅から徒歩1分の好立地に位置するホテル金沢は、金沢を代表するホテルの一つで、国内外からの観光客数は年々増加傾向です。このM&AによりFractaleグループでは、ノウハウと保有する経営資源を提供し、ホテル金沢のさらなる成長を目指しています。
②ヒューリックによる事例
2019年の6月、ホテル事業やオフィスビルを中心とする不動産事業を営むヒューリックは、日本ビューホテルを子会社化することを発表しました。日本ビューホテルはホテルを中核に、結婚式場、遊園地を展開する知名度の高い企業です。
近年日本ビューホテルは、婚礼需要の減少や人手不足に伴う人件費上昇などにより、経営環境が厳しさを増していました。ヒューリックはM&Aにより、日本ビューホテルが有する多様な顧客と、自社が所有する不動産を活かしホテル事業の発展を図っています。
③アールビバンによる事例
2018年10月にアールビバンは、連結子会社のTSCホリスティックの「タラサ志摩ホテル&リゾート」の事業を、大江戸温泉物語へ譲渡しました。アールビバンは、アート作品のプロモーションや販売、作家の育成などを手掛ける企業です。
アールビバンは、営業損失がかさんだことを理由に「タラサ志摩ホテル&リゾート」の譲渡を決定しました。そして、大江戸温泉物語は譲り受けた施設を、アジア初のタラソテラピー(海洋療法)施設「TAOYA志摩」として事業を開始しました。
ホテル・旅館の事業承継についてまとめ
ホテル・旅館の事業承継は、施設の運営だけでなく、お客様に対する思いやホテル・旅館を運営するうえでの気持ちなどを大切にする業種でもあります。また、老舗といわれるホテル・旅館ではしきたりやお得意様への配慮などさまざまな点について承継していくものがあります。
事業承継については、経営者の子供を後継者としたいと考えるところが多いようですが、そのほかの選択肢としてM&Aを検討しても良いでしょう。それでは最後に、今回の記事をまとめると以下のようになります。
・ホテル・旅館の事業承継の現状
→後継者不足から1割が承継せず、M&Aが活発化傾向
・ホテル・旅館の事業承継の課題
→後継者不在、高い離職率と人手不足、経営者の高齢化
・ホテル・旅館の事業承継の注意点
→情報が漏れないように注意、後継者の経営者教育
・ホテル・旅館の事業承継の相談先
→経験豊富なM&A仲介会社がおすすめ
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。