2019年12月29日更新会社・事業を売る

企業価値の算定方法

M&Aの過程で重要なポイントの1つが企業価値の算定です。企業価値の算定方法には3種類あり、「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」「コストアプローチ」と呼ばれています。この3つのアプローチについてきちんと理解し、よりよいM&Aを成功させましょう。

目次
  1. なぜ「企業価値の算定」が必要なのか?
  2. そもそも「企業価値」とは?
  3. 企業価値算定方法
  4. 企業価値を上げる方法
  5. まとめ
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なぜ「企業価値の算定」が必要なのか?

2005年2月に起きたネット企業による敵対的買収事件によって、「M&A」という言葉が日本に広まりました。この事件によって、「M&A」にマイナスなイメージを持った方も多く、そもそも「M&A」という言葉を知らなかった方が多かったことでしょう。

しかし、今やM&Aは大企業のみならず、中小企業がM&Aを実施するケースも増加してきました。中小企業にとってM&Aは、事業承継問題の解決に非常に有効な手段です。また、M&Aは、自社が得意としている事業分野に対して、集中的に経営資源を投下する「選択と集中」の実現にも大変有効な手段です。
M&Aを実行するには多大な労力と時間が必要となり、さまざまな手続きが必要不可欠です。買い手探し、デューデリジェンスなど、実施すべきことは多岐に渡ります。

M&Aの過程で、特に重要なことが「企業価値の算定」です。企業価値を算定することで、M&Aの取引価格を判断する材料になります。M&Aを実施しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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そもそも「企業価値」とは?

「企業価値」とはいったい何でしょうか?

「企業価値」とは、その会社が持つ経済的な価値を意味します。つまり、その会社の収益力や保有資産を金額で表したものです。M&Aでは、企業価値を基準に買収価格を決定し、さまざまな算定手法を使って企業価値を算定します。算定した企業価値に、買い手が考える価値を考慮して買収価格を決定します。M&Aの買収価格を決めるうえで、企業価値の算定は必要不可欠なプロセスなのです。

企業価値算定方法

企業価値算定方法は、大きく分けて3種類あります。

  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

この3つはそれぞれ特徴が異なるため、どの算定方法を使用するかで使う場面や目的が変わります。目的や場面に合わせて、適切な算定手法を用いることが重要です。

⑴インカムアプローチ

①特徴

インカムアプローチとは、企業の将来的な収益性をベースにする企業価値の算定方法です。具体的には、将来稼ぐと予想されるキャッシュフロー(お金の流れ)や利益を用いて算出します。

正確な企業価値に近づけるためには、緻密な事業計画と高精度な市場環境の予測が不可欠です。将来得られるキャッシュフローは、事業計画や市場環境の予測をベースに算出します。つまり、事業計画や市場予測次第で、算定される企業価値は大きく変動するということです。

②算定方法

インカムアプローチにはDCF法と配当還元法があります。

一つ目の算定方法はDCF法です。DCF法とは、将来的なフリーキャッシュフロー(FCF)を基準に、企業価値を算定する方法です。フリーキャッシュフローとは、企業が事業活動から獲得した資金のうち自由に使うことができる資金のことを意味します。

企業価値の計算過程では、加重平均資本コスト(WACC)と呼ばれる割引率を用いて、FCFを現在価値に割り引きます。M&Aを初めとして、多くの場面で用いられています。

二つ目の算定方法は配当還元法です。配当還元法は、期待される配当金額をベースにした算定方法です。主に、中小企業のM&Aや事業承継の場面で用いられています。 

③メリット

一つ目のメリットは、インカムアプローチを用いると将来の収益力を反映した企業価値を算定できることです。企業同士の相乗効果や規模拡大により得られる将来的な収益性を目的にM&Aが実施されるため、理にかなった企業価値を算定できます。

二つ目のメリットは幅広い場面で活用できることです。将来の収益力を反映するため、M&A以外の場面でも活用できます。設備投資、事業投資、企業経営の重要な場面で活用できる点は、非常に大きなメリットです。買収形態や資金調達方法の違いで、節税効果を反映することもできます。

④デメリット

一つ目のデメリットは、主観的で論理的な根拠のない算定結果になりやすいことです。あくまで将来的な予測をベースに企業価値を算定しているため、算定者の主観的な企業価値になる可能性が高いです。

そのため、インカムアプローチを使用する際は、公平な第三者に企業価値の算定を依頼することをおすすめします。

二つ目のデメリットは、存続しない企業には適用できないことです。インカムアプローチによる算定方法は、経営の存続を前提にしています。

将来的な事業計画がない企業、もしくは将来的な利益が見込めない企業に対して利用しても、必然的に企業価値が0となってしまいます。さらに、計算が複雑で時間がかかってしまうという一面もあります。

⑤活用方法

インカムアプローチは幅広く活用可能です。M&Aはもちろん、事業投資などにも利用できます。特に大企業のM&Aでは、非常に使い勝手がいいアプローチです。

一方、創業間もないベンチャー企業の場合には、不確実性の高い算定結果となる可能性があります。また、存続しない企業に対する適用はできません。

⑥評価ポイント

キャッシュフローを予測するためには、業界の現状や背景などとの矛盾が生じないように考慮する必要があります。

企業価値算定の場合は、キャッシュフローの予測期間は5~10年で、非事業資産(特にキャッシュ)の見積もりがポイントです。非事業資産とは、FCFの増加に直接関与しない資産のことで、現預金、遊休地、投資目的の有価証券などを指します。

⑵マーケットアプローチ

①特徴

マーケットアプローチとは、市場取引をベースにする企業価値の算定方法です。「市場で取引されるとすると、この企業はいくらの価値がつくか」という視点で算定した方法です。つまり、市場で取引された場合にどの程度の企業価値になるかを算定します。

具体的には、類似する企業や取引事例を見つけて比較します。このアプローチでは、いかに類似する企業や事例を見つけられるかが重要です。市場を参考にするため、比較対象が正確であるほど、客観性の高い企業価値の算定が可能です。

②算定方法

マーケットアプローチの算定方法には市場株価法、類似会社比準法、類似取引比準法の3つの方法があります。

一つ目は市場株価法です。市場株価法は、過去数ヶ月(1ヶ月〜3ヶ月)の平均株価をベースに、企業価値を算定します。短期的な市場の影響を軽減したうえでの企業価値が算定できる方法です。市場株価を参考にするため、上場企業にのみ適用できます。

二つ目が類似会社比準法です。類似会社比準法とは、評価対象と事業内容が類似する企業を基準に企業価値を算定する方法です。

マルチプル法とも呼ばれるこの方法では、類似会社のPER(株価収益率)やEBITDA(営業利益に減価償却費を足したもの)などの指標を活用して算出します。非上場企業がM&Aを行う際、市場株価法に替わる方法として用いるものです。

三つ目は類似取引比準法と呼ばれる方法です。類似取引比準法は、過去に実際行われたM&A事例を基準に、企業価値を算定する方法ですが、M&Aと類似する事例を見つけることは難しくあまり活用されていません。

③メリット

客観的に企業価値を算定可能な点がマーケットアプローチの最大のメリットです。マーケットアプローチは市場取引をベースに算定しているため、他の算定方法よりも客観性が高く説得力のある企業価値となります。M&Aの交渉過程でも、算定した企業価値に説得力を持たせられます。

また、インカムアプローチが適用しにくい企業にも適用が可能なこともメリットの一つでしょう。赤字企業やベンチャー企業に対しても適用できます。

④デメリット

マーケットアプローチの一つ目のデメリットは、市場の影響を受けやすいことです。市場取引を基準にしている以上、企業価値が市場の状況に影響を受けやすいです。政治や国際情勢次第で、市場(株価)は大幅に変動します。その結果、妥当な企業価値とはかけ離れた算定結果となる可能性もあります。

二つ目のデメリットは、将来的な収益性を加味しにくいことです。あくまで市場との比較による算定のため、将来的な収益性を反映しにくくなります。確かに市場では、将来への期待を加味したうえで取引が行われていますが、マーケットアプローチでは評価企業の将来性に関しては考慮できません。

⑤活用方法

マーケットアプローチは、主に非上場ベンチャー企業に用いられます。ベンチャー企業がM&Aを活用する場合は、インカムアプローチを活用しにくいため、類似する企業や取引を参考に企業価値を算定する例がほとんどです。もちろん市場株価法など、上場企業を対象にすることも可能です。

⑥評価ポイント

比較対象する企業の選定が最大のポイントです。マーケットアプローチを行う際は、類似の商品やサービスの平均価格を知っている必要があるため、活用する際は必ず専門家に相談しましょう。市場を理解したうえで会社の価値を決めるのであれば、業界や評価に詳しい専門家のサポートが必要になります。

⑶コストアプローチ

①特徴

コストアプローチとは、貸借対照表の純資産をベースにする企業価値算定方法です。

貸借対照表とは資産・負債・資本を一覧表にしたもので、企業の財政状態を明らかにするために作成される計算書のことです。ちなみに純資産とは、貸借対照表の資産から負債額を差し引いた部分を指します。コストアプローチは、貸借対照表の数値のみで企業価値の算定が可能で、M&Aの実行可否を判断するために用いられることもあります。

②算定方法

コストアプローチの代表的な算定方法には、「清算価値法」「再調達原価法」「時価純資産価額法」「簿価純資産価額法」の4つがあります。

清算価値法とは、全資産の売却額から負債の金額を差し引いた残額(正味売却価額)をベースに算出する方法です。清算価値法は、売り手の会社の消滅・解散が前提なので、株式価値より清算価値が高い場合に利用されます。 コストアプローチ自体、事業が廃業する(=清算される)状況で使われるケースでよく使われる方法ですので、事業を廃業する会社にとっては利便性が高い方法です。

ニつ目の再調達原価法とは、 現時点での価値をベースに算出する方法です。再調達原価は、会社が所持している資産・負債を再度設立するために必要になるであろう投資金額を表したものです。通常この手法は、M&Aの買い手側が望ましい買収価格を決定するケースや、売り手側がM&Aが自社にとって必要かどうかを判断するケースで使用します。再調達原価を算定することで、M&Aを実行すべきかどうかの判断が可能となります。

次に時価純資産法とは、資産すべてを一度時価に換算した後、負債を差し引いて算定する方法です。時価として示された純資産から、支払手形・営業債務(支払手形や買掛金等など)を引いて企業価値を算出します。この方法では、未計上のすべての資産と負債を時価として換算します。

四つ目の簿価純資産法は、貸借対照表に記載された資産の合計から株式価値を計算する方法です。純資産を株式価値に当てるやり方なので、発行済みの株式数がわかればすぐに企業価値を導き出せます。そのときに必要な修正を加えて計算する場合は、「修正簿価純資産法」と言われます。貸借対照表をもとに進行するため、極めて簡便な方法です。 

このように、企業価値の算定は企業次第で大きく変動します。算定方法も複雑で、何を利用すればいいかわからない方もたくさんいらっしゃるでしょう。M&Aに関することで悩んだら、まずは一度M&A総合研究所にご相談ください。M&A仲介会社であるM&A総合研究所は・専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを活かしM&Aをフルサポートいたします。

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③メリット

客観性の高い企業価値を算定できる点がコストアプローチの最大のメリットと言えるでしょう。貸借対照表の記載事項をベースにしているため、客観的な算定が可能です。貸借対照表に虚偽がない限り、誰が計算しても同じ算定結果を得られます。

また、簡単に企業価値を算定できる点もメリットと言えます。純資産額を見るだけで、簡単に企業価値を算定することができるため、他の方法とは違い専門的な知識も必要ありません。

④デメリット

コストアプローチは、将来的な収益力をまったく含まない点がデメリットです。マーケットアプローチは市場全体の期待を反映したものですが、コストアプローチは将来的な収益力を反映しない方法です。そのため、将来性を重視するM&Aには向いていません。

また、コストアプローチを使用すると企業価値が低くなりやすいです。将来的な収益性を含まないため、企業価値が低くなる可能性が高いです。M&Aの売り手にとって、最も不利になる可能性が高い手法です。

⑤活用方法

コストアプローチは、M&Aにあまり向いていない手法です。しかし、経営不振の中小企業M&Aでは用いられるケースがあります。コストアプローチは客観的な企業価値を算定できる方法ですので、廃業により経営を継続しない企業の価値算定に向いています。

⑥評価ポイント

適切な時価の算定ができないため、資産の査定がポイントになります。M&Aと同時に会社が消滅する場合には、将来の収益性を踏まえる必要がないため、コストアプローチを使用するのがベストです。一方で、売り手会社の事業を継続させる場合、コストアプローチは決して適切な手法とはいえません。

※関連記事

インカムアプローチ

マーケットアプローチ

コストアプローチ

企業価値を上げる方法

企業価値が高いほうが、当然高い値段で会社を売却できます。売り手側としては、可能な限り1円でも高く会社を売りたいでしょう。では、どうすれば企業価値を上げることができるのでしょうか?

答えは企業の「磨き上げを実施すること」にあります。磨き上げを実施すれば、買い手先が見つかりやすくなるというメリットもあります。企業価値をあげるためには、以下の磨き上げが有効です。

  1. ブランド力、ノウハウ、技術力、特許権などの目に見えない資産(無形資産)の強化
  2. 不必要な負債や在庫の削減
  3. 特許侵害や訴訟案件などのトラブルは解決しておく  

磨き上げは、すぐにできるものではありません。M&Aを考えた段階で、すぐに取り組みましょう。

※関連記事

会社を売ります/買います。M&A・事業承継の流れや仲介会社を解説【案件一覧あり】

まとめ

「企業価値」とは

  • その会社が持つ経済的な価値のこと  

企業価値算定方法①:インカムアプローチ

  • 企業の将来的な収益性をベースにする企業価値の算定方法
  • 算定方法:DCF法、配当還元法  

企業価値算定方法②:マーケットアプローチ

  • 市場取引をベースにする企業価値の算定方法
  • 算定方法:市場株価法、類似会社比準法、類似取引比準法  

企業価値算定方法③:コストアプローチ

  • 貸借対照表の純資産をベースにする企業価値算定方法
  • 算定方法:清算価値法、再調達原価法、時価純資産価額法、簿価純資産価額法 
企業価値を上げる方法
  1. ブランド力、ノウハウ、技術力、特許権などの目に見えない資産(無形資産)の強化
  2. 不必要な負債や在庫の削減
  3. 特許侵害や訴訟案件などのトラブルは解決しておく

M&Aを成功させるうえで、自社の企業価値を高めることは重要です。自社の状況により、企業価値の最適な算定方法が異なるため、算定方法と種類を十分理解しておく必要があります。実際にM&Aを行うときは、複数の算定手法を用いる場合もあります。複数の算定手法を用いれば、企業価値の予測精度も上がります。

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