M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2023年2月10日更新業種別M&A
保険代理店のM&Aのメリットは?業界動向や成功のポイントから相場まで解説!
本記事では、保険代理店のM&Aを実施する際のポイントや方法などを紹介します。保険代理店業界は、市場規模が縮小傾向にある一方、保険ショップ型店舗やインターネットを活用した契約などで競争が激化しています。保険代理店のM&Aを検討している方は必見です。
目次
保険代理店M&Aのメリット
まずは、保険代理店がM&Aを実施するメリットとして代表的なものをピックアップし、売り手側・買い手側の立場に分けて取り上げます。
売り手側がM&Aで得られる4つのメリット
保険代理店の売り手側がM&Aで得られるメリットには、主に以下が挙げられます。
- M&Aによる売却利益
- 事業承継問題の解決
- 大企業の傘下で効率的な事業運営
- 従業員の雇用を維持できる
これらのメリットがあるため、最近は保険代理店を売却しようと考える経営者は少なくありません。それぞれのメリットを順番に確認します。
①M&Aによる売却利益
保険代理店を売却することで、経営者は現金を獲得できる点は大きなメリットです。売却により得た現金は、アーリーリタイアや新規事業などの資金に充てられます。
昨今は、市場の変化に応じて既存のビジネスモデルや経営を変革していかなければなりません。たとえ現時点では利益を得られていても、将来的に赤字に陥る可能性も十分あります。とりわけ保険代理店の場合、既存企業が生き残ることは非常に困難です。
そこで、M&Aにより多額の現金を得てリタイアした方が、長期的に見ると効果的な選択肢となる可能性もあります。「将来の経営に不安がある」という場合は、保険代理店を売却するのも1つの選択肢です。
②事業承継問題の解決
近年、保険代理店をはじめとする多くの企業が後継者不足に頭を抱えています。会社を引き継ぐ人がいない場合、廃業もしくはM&Aによる譲渡という2つの選択肢が検討されることが多いです。ここでもしも廃業を選んだ場合、解散登記や清算登記で多額の費用がかかります。
また、面倒な手続きも多いうえに、長年に渡り自身で経営してきた会社を廃業させることは経営者として寂しいものです。その一方、M&Aによる譲渡を選ぶことで、幅広い地域から後継者を探せます。すでに経営者として活躍している相手側に売却すれば、安心して自社の事業を任せることが可能です。
思い入れのある保険代理店をM&Aによって存続できる点は、経営者にとって大きなメリットです。そのため、「今まで経営してきた保険代理店を自身がリタイアしてからも存続させたい」という場合、M&Aを検討すると良いでしょう。
③大企業の傘下で効率的な事業運営
既存の保険代理店では、訪問販売などをメインに事業を遂行しています。しかし、近年はダイレクト販売や保険ショップの台頭により、従来の戦略が通用しなくなっている状況です。そのため、既存の保険代理店にとって、現在の市場は非常に厳しい環境だといえます。
しかし、M&Aによって大企業の傘下に入ることで、相手側の有する最新の事業ノウハウ・情報システムを活用できます。これにより、ダイレクト販売・保険ショップ型の事業運営も可能となるうえに、大企業の知名度・ブランド力も活用できます。
つまり、M&Aを実施することで、市場で生き残れる可能性が格段に上昇します。いかなる業種でも大企業の傘下に入るメリットはありますが、保険代理店の場合は大企業とのM&Aによって得られるメリットが特に大きいです。
④従業員の雇用を維持できる
M&Aの活用では、従業員の雇用を守れる点もメリットです。会社を経営している以上、何らかの理由で廃業せざるを得ないことあります。もしも廃業する場合、経営者だけでなく従業員も路頭に迷ってしまうのです。しかし、保険代理店を売却することで、従業員の雇用を守ることが可能です。
具体的にいうと、M&A後に雇用契約を買い手に引き継いでもらえば、従業員は今後も働き続けられます。また、大手企業とM&Aを行えれば、従業員の待遇が現在よりも良くなる可能性もあります。このように、M&Aの実施は、経営者だけでなく従業員にもメリットがあるのです。
買い手側がM&Aで得られる2つのメリット
保険代理店の買い手側がM&Aで得られるメリットは、主に以下のとおりです。
- 迅速かつ低コストで事業を始められる
- 規模の経済性による利益を獲得できる
これらのメリットがあるため、保険代理店を買収しようと考える経営者は増えてきています。それぞれのメリットを順番に確認していきましょう。
①迅速かつ低コストで事業を始められる
M&Aによって保険代理店を買収した場合、迅速かつ低コストで事業を開始できます。保険代理店業界で生き残るには、スピーディーな事業展開が必須条件です。しかし、ゼロから事業を始めると、既存事業者・新規参入企業との競争に勝つことは厳しいといえます。
また、ゼロから事業を始めると、販路拡大や営業で多額の費用・時間がかかります。特に保険代理店業界の場合、営業ノウハウの獲得には多大な時間がかかり、多額の費用と時間を費やすためにリスクが高いです。
そこで、M&Aによって既存の保険代理店を買収することで、迅速かつ低コストで事業を開始できます。M&Aは、お金で時間を買う戦略ともいわれており、初期の段階で多額の費用はかかるものの、短期間で競争優位性を得られる点は大きなメリットです。
現に保険代理店業界では、大企業がM&Aによって競争優位性を築いています。すでに成功事例があることからも、M&Aによる保険代理店買収のメリットは明白です。
「できるだけ早く保険代理店を買収したい」という場合、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。
さらに、M&A総合研究所はスピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月での成約実績を有している点も強みです。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
②規模の経済性による利益を獲得できる
規模の経済性による利益を獲得できる点も、買い手側のメリットといえます。規模の経済性とは、事業規模の拡大によって得られるさまざまな利益です。保険代理店同士が統合することで、営業コストを削減できます。また、お互いの販路が被っていない場合、販路拡大にもつながるのです。
さらに、2つのブランドが1つになることで、市場シェアの拡大も実現できます。現在、中小保険代理店が勝ち残るのは困難な状況です。しかし、複数の保険代理店が1つになることで、生き残れる可能性が高まります。
現在の保険代理店をこれまで以上に発展させたい場合は、M&Aによる事業規模の拡大戦略を検討すると良いでしょう。
保険代理店のM&Aの3つのデメリット
保険代理店M&Aには多くのメリットがありますが、当然デメリットもあることも理解しておくことが大切です。本章では、保険代理店のM&Aにおける売却側で問題となりやすい主なデメリットを3つピックアップし、順番に解説します。
希望する条件で売却できるとは限らない
M&Aでは、「可能な限り高い取引価格で売却したい」「従業員の雇用条件を維持する条件で売却したい」など、売り手側は何らかの希望条件を掲げるケースが多くみられます。しかし、買い手が条件に合意しなければ、売却側の希望どおりにM&Aを行うことは不可能です。
もし強硬な姿勢で希望条件を叶えようとすると、交渉が決裂しM&A自体を行えなくなるおそれがあります。また、これとは反対に、ほとんどの条件を妥協してしまうと、一方的に不利な条件での売却を強いられかねません。
納得のいくM&Aを実現させるためには、事前に妥協できる条件と譲れない条件をはっきりさせたうえで、買い手との交渉に臨むことが大切です。
相手先企業が見つからないリスクがある
自社が債務超過に陥っていたり、ニーズの高い経営資源を持っていなかったりすると、買い手候補が見つからないおそれがあります。もしも買い手候補が見つからない状態が続けば、経営者が体調を崩すなどして事業を続行できなくなり、事業承継に失敗し、結果的に廃業を選択せざるを得ない状況に陥りかねません。
保険代理店のM&Aで買い手を円滑に見つけるためには、自社の磨き上げを行うことが大切です。具体的にいうと、自社の売却前に企業価値を高める取り組み(例:自社の強みとなる技術やノウハウの創出、不必要な資産の処分、負債の返済など)を実施することが望ましいでしょう。
関係者に不利益を与えるリスクが生じる
M&Aによって保険代理店を売却すると、買収側の意向によっては、顧客や従業員との契約内容・事業の運営方針などが変更されるケースがみられます。その結果、顧客からすると不利な取引内容に変更される可能性もゼロではありません。
顧客との良好な関係性を維持するためにも、顧客を大切にしてくれる買い手を選ぶことが大切です。
事業譲渡のメリット・デメリットは下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
保険代理店のM&A・売却価格の相場
保険代理店のM&A・売却には相場があるのでしょうか。ある程度の相場や価格の算定方法を知っておくことは、M&Aでの売却を検討している経営者の方だけでなく、買収側にとっても役立ちます。本章では、保険代理店を対象とするM&Aにおける売却価格の相場に関する基本的な情報をみていきましょう。
大型案件のM&A相場
保険代理店のなかでも上場企業や大手企業などの場合、M&Aにおける取引価格の大まかな相場は、数億円〜数十億円程度と考えられています。実際の事例では、全国規模で事業を手掛けている企業の場合、100億円を超える金額で売却契約を締結したケースもありました。
中小規模のM&A相場
保険代理店のなかでも中小規模をM&Aにより売却する場合、大まかな相場は「純資産に3年分の営業利益を足した金額」といわれています。
たとえば、純資産2,000万円、平均営業利益が1,000万円の保険代理店の場合は、およそ5,000万円で売却できるという計算になります。
とはいえ、企業全体ではなく一部の権利のみを売却する場合や、多額の負債を抱えている場合などでは、相場よりも低い金額で成約する可能性が高いです。一概に相場どおりにM&Aが成約するとは限らないため注意しましょう。
M&Aにおける企業価値評価については下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
保険代理店のM&Aスキーム
株式譲渡(会社売却)
まず、株式譲渡(会社売却)に関して、以下の項目に分けて解説します。
- 株式譲渡とは
- 株式譲渡を用いるメリット
- 株式譲渡を用いるデメリット
それぞれの項目を順番に確認します。
株式譲渡とは
会社を丸ごと売却する場合、株式譲渡と呼ばれるM&A手法を用います。株式譲渡とは、売り手側の株式を買い手側に売却することで、経営権を譲渡する手法です。
株式会社では、持ち株数に応じて行使できる権限が決まります。過半数を超えると、取締役の専任が可能となり、さらに3分の2を超えると、M&Aの実行や社名の変更などを独断で決定することが可能です。保険代理店のM&Aでは、全ての株式を買い手側に売却するケースが一般的とされています。
全ての株式を譲渡することで、完全に経営権を移転できるのです。なお、非公開会社の場合、取締役会による株式譲渡の承認が必要です。また、M&A実行後には、株主名簿の書き換えも必要不可欠です。
株式譲渡を用いるメリット
株式譲渡の最も大きなメリットは、M&Aに要する手続きが簡便な点です。特別決議や債権者保護の手続きが不要なため、迅速にM&Aを実行できます。そのため、中小企業のM&Aで最も用いられている手法です。保険代理店のM&Aでも、株式譲渡が多用されています。
また、一部の事業のみを売買する場合と比べて、売却金額が大きい点も特徴です。そのため、売り手側は多額の現金を獲得できます。
株式譲渡を用いるデメリット
株式譲渡は、売り手側にとってはメリットが多い一方で、買い手側にとってはデメリットの多いM&A手法です。売り手企業が複数の事業を営む場合、買い手側は保険代理店業務のみを買収したいと考えるのが一般的です。しかし、株式譲渡では、保険代理店の業務のみの買収はできません。
つまり、株式譲渡では会社の全てを買い取るために買収費用がかさむうえ、簿外債務まで引き継いでしまう可能性もあります。簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない債務をさし、未払い給与や訴訟トラブルなどが該当します。
そのため、将来的に大きな損失を発生させるおそれがあるため、気をつけなければなりません。結果として、M&A後に経営が悪化するリスクもあります。
商権譲渡(事業譲渡)
次に、商権譲渡(事業譲渡)に関して、以下の項目に分けて解説します。
- 商権譲渡(事業譲渡)とは
- 商権譲渡(事業譲渡)を用いるメリット
- 商権譲渡(事業譲渡)を用いるデメリット
それぞれの項目を順番に確認します。
商権譲渡(事業譲渡)とは
保険代理店のM&Aに特有な手法として、商権譲渡があります。商権譲渡とは、保険代理店の運営権利のみを売買する手法です。商権譲渡によるM&Aを行う際は、債権者保護や特別決議が必要となる場合もあるため、気をつけなければなりません。また、従業員を引き継ぐ場合、個別に契約を結び直す必要があります。
商権譲渡(事業譲渡)を用いるメリット
最も大きなメリットは、買い手側からすると保険代理店事業のみ獲得できる点です。株式譲渡では、不要な資産や簿外債務も引き継いでしまいます。しかし、商権譲渡では、保険代理店事業に必要な権利のみ引き継げるのです。ここでは、代理店の運営に必要な従業員や資産も状況に応じて引き継げます。
一方で、売り手側にも、M&Aによって得られるメリットはあります。例えば、保険代理店事業を売却することで、他の主力事業に集中できて売却資金も得られるため、主力事業を大幅に強化できる点です。
商権譲渡(事業譲渡)を用いるデメリット
商権譲渡は、手続きが非常に面倒なおそれがあります。商権のみを売買する場合や商権の価値が非常に低い場合は、手続きはそれほど面倒になりません。しかし、商権の価値が高かったり、引き継ぐ資産に雇用契約なども含まれたりする場合には手続きが煩雑になりやすいです。
例えば、譲渡の際は、各従業員と再度雇用契約を結ばなければなりません。また、仮に従業員が雇用契約の締結を断った場合、M&A後の経営に支障が出るおそれもあります。
保険代理店の基本情報
本章では、保険代理店とはどのようなものか、おさらいします。
- 保険代理店業界の定義
- 保険代理店の業務内容
- 保険代理店の種類
上記についてM&A前に確認し、M&Aの相手候補との話し合いを円滑に進められるようにしておくと良いです。それぞれの項目を順番に確認します。
保険代理店業界の定義
保険代理店とは、顧客と保険会社の間に介入し、保険に関するさまざまなサービスを提供する事業者をさします。例えば、家を買う状況を想定すると、保険代理店は不動産業者に近いイメージです。つまり、「保険の仲介会社」の役割を果たします。
保険契約は契約者本人と保険会社が結びますが、保険会社に代わって顧客に対して保険の紹介や保険契約の手続きの説明などを代理で行います。そのため、保険代理店業界は、ときに専門性の高い内容も扱うことになる業界です。
保険代理店の業務内容
保険代理店は、主に下記のサービスを顧客に提供します。
保険商品の紹介・アドバイス
保険代理店では、取り扱う保険商品の紹介やアドバイスを行います。顧客の要望に合う保険商品の提案・重要説明事項の説明・商品によっては補償が受けられない場合などの注意喚起もします。
保険代理店で取り扱う保険商品は、大まかに以下の2種類に分けられます。保険代理店はこのいずれか、あるいは両方の代理業務を行うことも業務の1つです。
- 医療保険、がん保険、死亡保険、介護保険などを取り扱う「生命保険」
- 自動車保険、火災保険、地震保険などを取り扱う「損害保険」
保険契約の締結、契約内容の変更・解約
保険契約締結に関する手続きを代行する業務です。契約後も契約内容の変更・契約の解除を受け付けるなど、保険会社の代わりに保険契約に関する手続きも含まれます。
保険金の請求
保険金の請求も保険会社に代わって取り扱います。また、契約者は給付金などの手続き内容を把握していないことがあるため、保険代理店が給付金・保険金の請求案内などのサポートなども行います。
さらに、保険契約の被保険者が事故に遭った場合や死亡した場合などにアドバイスを行い、適切な給付金・保険金の受取りへとつなげます。顧客にとって保険代理店は、さまざまなリスクに対処するうえで役立つパートナーです。
したがって、幅広い状況に適切に対応できる従業員を多く抱えている保険代理店は、M&Aの買収側にとって魅力的に映ります。
保険代理店の種類
保険代理店は、以下のように種類分けできます。
- 専業代理店と「副業代理店」
- 専属代理店と「乗合(のりあい)代理店」
それぞれの項目を順番に解説します。
①「専業」と「副業」
保険代理店は、「専業」または「副業」で大別できます。
- 「専業代理店」とは、保険の販売を専門に実施している会社です。
- 「副業代理店」とは、他の事業を実施しながら保険商品の販売も行う会社です。
専業は、主力事業に関連する保険のみを取り扱っている保険代理店です。加えて、その分野に特化した専門的な保険の知識も持っているはずです。例えば、旅行保険を取りそろえるJTBなどの旅行業者が、「副業代理店」の一例となります。
②「専業」と「乗合」
別の視点では、保険代理店は「専業」と「乗合」の2つに大別されます。
ここでいう「専業代理店」とは、特定の保険会社一社から商品販売を委託されている会社です。つまり、ある一社の商品のみを販売しています。そのため、顧客はきめ細やかなサポートを受けられます。
一方で「乗合代理店」は、複数保険会社の商品を取り扱う保険代理店です。顧客側は、複数企業の商品から自分に合った保険を選択できる点にメリットがあります。
計4パターンの代理店が存在する
ご紹介した①と②の分類は異なる存在であることから、保険代理店は「専業で専属」「専業で乗合」「副業で専属」「副業で乗合」と4パターンに分けられます。例えば、大手の「ほけんの窓口」や「保険見直し本舗」は、「専業・乗合」の業者です。このように、保険代理店にはさまざまな種類があります。
そのため、保険代理店を売りたい場合は「自社の種類はどうなるのか?」、保険代理店を買いたい場合は「自社に必要なのはどのような種類なのか?」を検討しなければなりません。保険代理店のM&Aをご検討されている場合は、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼することがおすすめです。
M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを生かしてM&Aをサポートいたします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aをご検討される際にはお気軽にご相談ください。
保険代理店業界の現状
保険代理店の数・市場の成長率は、ともに減少傾向にあります。これにはさまざまな要因はありますが、最も大きいのは、少子化によるマーケット規模の縮小です。なお、保険代理店業界全体では店舗数・成長率ともに減少しているものの、一部の代理店は勢力を拡大しているのが現状です。
そのため、市場全体では競争が激化しています。競争が激しくなっていく保険代理店業界で生き残るために、M&Aを検討する経営者も少なくありません。ここでは、現在勢力を増している形態の代理店を解説します。
- ダイレクト販売型業者の台頭
- 保険ショップの台頭
ダイレクト販売型業者の台頭
ダイレクト販売型とは、ネットで保険商品を販売する業者です。ダイレクト販売型の業者は、約10年前から勢力を急成長させています。特に自動車保険業界では、その傾向が顕著です。2005年から2012年までの8年間で、ダイレクト販売の売上高が急激に増加しました。
もちろん生命保険業界でも、ダイレクト販売のニーズが高まっています。近年はライフネット生命をはじめとして、多くのダイレクト販売型の業者が参入しています。
気軽に保険商品を購入できる点が、ダイレクト販売が拡大した要因と考えられています。今後はネットに親しみのある世代が増加していくため、ダイレクト販売のニーズもますます増加すると予想されます。
保険ショップの台頭
ダイレクト販売と同程度かそれ以上に勢力を拡大しているのが、保険ショップです。保険ショップとは、店舗を保有したうえで保険商品を取り扱う乗合型の業者をさします。従来は、セールスマンが各家庭に訪問販売する形が一般的でした。
しかし、近年は共働き世代の増加により訪問販売が困難となっており、顧客自ら店舗に出向く形の代理店が人気を集めています。
保険ショップの成功には、もう1つの理由があります。それは、存在感を急激に高めた点です。テレビCMなどの大規模な広告宣伝や多数の店舗出店により、短期間で市場での存在感向上に成功しました。CMでも有名な「ほけんの窓口」の急成長もあり、現在は多くの業者が保険ショップの形で新規参入しています。
上記の背景により、来店型保険ショップの市場規模は、急激に拡大しているのが現状です。今後、さらにこの傾向は続くと予想されています。
保険代理店業界のM&A動向
本章では、保険代理店業界に関係するM&Aの動向を紹介します。保険代理店業界のM&A動向の大きなポイントは以下のとおりです。
- 大企業のM&Aによる勢力拡大
- 保険会社同士のM&Aも増加
- 事業承継目的のM&Aの増加
①大企業のM&Aによる勢力拡大
まず知っておきたいポイントは、大企業のM&Aによる勢力拡大の動きです。近年は来店型保険ショップが勢力を拡大しています。実はこのような保険ショップは、大企業のM&Aによる買収がベースとなって勢いを増しているのです。
例えば、大手保険会社「日本生命保険」は、「ほけんの110番」や「ライフサロン」をM&Aにより買収しています。楽天が運営している「楽天生命」も、M&Aによる子会社化によって取得されたものです。つまり、大手企業は、M&Aによって事業を買収し、豊富な経営資源によってそれを急成長させています。M&Aによる多角化戦略が、保険ショップ急成長の一因となっているのです。
②保険会社同士のM&Aも増加
保険会社同士のM&Aも増加している点も大切です。少子高齢化などの影響により、保険代理店の市場自体は縮小しています。一方で、大企業によるM&A戦略により、市場競争が激化している状況です。既存の中小保険代理店は、市場で生き残るのが困難となっています。
生き残りをかけ、中小保険代理店同士がM&Aを実施するケースも増加中です。M&Aの実行によって、規模拡大によるメリットを享受できます。具体的には、販売コストの減少・販路の拡大・市場シェアの拡大などのメリットがあります。
このようなM&Aニーズが増えたことで、現在では保険業界以外でも中小企業のM&Aが一般的に実施されています。中小企業や中堅企業のM&Aを専門的に取り扱うM&A仲介会社も増加中です。
M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中小・中堅企業のM&Aを主に取り扱っており、専門的な知識とM&Aの経験が豊富なアドバイザーがフルサポートします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。電話やWEBでのご相談は無料ですので、M&Aをご検討される際には気軽にお問い合わせください。
③事業承継目的のM&Aの増加
保険代理店業界では、事業承継目的のM&Aの増加も注目すべきポイントです。現在多くの中小企業では、経営者の高齢化に伴い、事業承継の時期を迎えています。しかし、職業選択の自由化などの理由により、多くの中小企業は後継者不足に悩んでいる状況です。
従来は親族内もしくは社員の誰かに事業承継するケースがほとんどでしたが、近年は身近な人に会社を引き継げない経営者が増加しています。そうした事情から、M&Aによって第三者に事業承継する事例が増加中です。こうした事業承継に関する問題の深刻化は、保険代理店業界も例外ではありません。
後継者不足に悩んでいる中小保険代理店の件数は、年々上昇しています。それに伴い、M&Aによって第三者に事業承継を行う保険代理店の数も増加している状況です。「保険代理店を経営しているけれど、後継者がいない」という場合は、M&Aを検討すると良いでしょう。
保険代理店M&Aを成功させる3つのポイント
本章では、保険代理店のM&Aを成功させるポイントを解説します。ポイントは以下の3点です。
- 長期的な目線で行動する
- 売り手企業のニーズを理解する
- 保険代理店業界のM&Aに精通した仲介会社に相談する
それぞれの項目を順番に解説します。
①長期的な目線で行動する
保険代理店のM&Aを成功させるためには、長期的な目線で行動することが必要不可欠といえます。なぜなら、短期的な利益を目的にM&Aを行ってしまうと、売却側である自社の従業員が買い手企業に馴染めず離職してしまったり、より高値で売却できるチャンスを逃してしまったりするためです。
また、海外進出の足がかりとして、M&Aを実施する経営者も存在します。さらに、縮小する市場で今後の競争優位を築くうえでも、M&Aは有効手段です。そのため、短期的な利益を目的とせず、将来を見据えてM&Aを行うべきといえます。
②売り手企業のニーズを理解する
M&Aを行う際、買い手企業は売り手企業のニーズを理解しなければなりません。なぜなら、買い手・売り手それぞれがM&A後の戦略やビジョンを掲げており、お互いの考えがズレているとM&A後の事業運営が円滑に進まないためです。
さらに、M&A後の統合がスムーズに進まないリスクもあり、統合が上手くいかなければ保険代理店の業務にも影響が出てしまいます。そのため、M&Aの交渉段階で、両社の経営方針やビジョンを確認し、ズレが無いか確認する必要があるのです。
③保険代理店業界のM&Aに精通した仲介会社に相談する
保険代理店業界に精通したM&A仲介会社を選ぶこともポイントです。なぜなら、保険代理店業界に精通したM&A仲介会社を選ぶことが、スムーズな取引や適正価格での売却に向けて必要不可欠であるためです。
M&A仲介会社ごとに得意とする分野、M&Aの種類は異なります。保険代理店のM&Aを行う際は、保険代理店業界に詳しいM&A仲介会社を起用しましょう。近年は、保険代理店のM&Aに特化しているM&A仲介会社も存在します。
また、全国に広範囲のネットワークを保有するM&A仲介会社に依頼すれば、幅広い範囲から買い手を探せて、早期でのM&A成約につなげられる可能性が高まります。
保険代理店のM&A成功事例
本章では、保険代理店のM&A成功事例として、代表的な3つのケースをピックアップし解説します。
NHSインシュアランスグループ×朝日生命
2021年1月、朝日生命は、NHSインシュアランスグループの株式すべてを取得し、完全子会社化しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。
買収側は、相互会社形式の生命保険会社です。東京都多摩市に本社を構え、「生命保険の販売および引受け」「資産運用業務」「他の保険会社の業務の代理および事務の代行」などを主要な業務として手掛けています。
対する売却側は、東京都中野区に本社を置き、保険代理店企業です。「お客様中心主義」「たゆまぬ向上心」「誠実さと高い倫理観」「Win-Winの精神」「ダイバーシティ(多様性)の推進」などを行動指針を掲げながら、保険代理店を主軸としたコンサルティング事業を展開しています。
買収側はWithコロナ・Afterコロナに適した新たな営業スタイルの構築を目指しており、非対面でも確度の高い営業を行うノウハウを有する売却側の買収に至りました。
信和実業×トータル保険サービス
2021年1月、トータル保険サービスは、白洋舎より、その傘下企業である信和実業の保険代理店事業を買収しました。本件M&Aの取得価額は2億2,000万円です。
買収側は、東京都中央区に本社を置く総合保険代理店です。生命保険の募集に関する業務および損害保険代理業を手掛けており、ブランドコンセプトとして、「Your-side Solution」を掲げています。対する売却側(信和実業)は、白洋舎の子会社であり、不動産事業・保険代理店事業・商品販売などを手掛ける企業です。
本件M&Aにより、売却側では、信和実業における事業の選択と集中のほか、グループ全体の業務効率の改善が図られました。なお、本件M&Aに伴い、白洋舎は信和実業を吸収合併しています。
ファイナンシャルジャパン×新生銀行
2019年4月、新生銀行は、ファイナンシャルジャパンの株式すべてを取得し、同年5月に連結子会社化しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。
買収側は、東京都中央区に本店を置く、SBIホールディングス傘下の普通銀行です。1952年に長期信用銀行法にもとづき、北海道拓殖銀行と日本勧業銀行の信用部門を分離して設立されました。
対する売却側は、東京都千代田区を拠点に、生命保険の募集に関する業務・損害保険代理業・自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業などを手掛けています。
買収側は個人向け保険ビジネスを強化する目的を掲げていたことから、保険乗合代理店の販路を持つファイナンシャル・ジャパンとのM&Aを決めており、M&A後は顧客の多様なニーズに応える販売チャネルの拡大および構築を目指すと発表しました。
また、売却側からすると、保険代理店の枠組みを超えた総合的な金融コンサルティング事業を展開する目的のもと、革新的な金融サービスの提供に注力する新生銀行グループへの会社売却を決めています。
保険代理店のM&A・買収・売却のまとめ
今回の記事では、保険代理店のM&Aに関して紹介しました。少子高齢化などの影響により、保険代理店の市場規模は縮小傾向にあります。しかし、ダイレクト販売・保険ショップ型の保険代理店はむしろ勢力を拡大しており、保険代理店業界は競争が激化しているのが現状です。
大手企業はM&Aの活用により、保険代理店市場での勢いを増しています。中小保険代理店は生き残るために、M&Aの活用が今後も増加する見込みです。中小保険代理店同士でのM&Aによって、生き残りを検討することも有効です。
もしくは大企業とのM&Aにより、傘下に入る戦略も効果的であると考えられています。どのような経営判断を行う場合でも、将来を見据えたうえでM&A活用を選択肢の1つとして頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
あなたにおすすめの記事

M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
M&Aの特徴は手法ごとに異なります。昨今の日本では、M&Aが経営戦略として人気を集めており、実施件数が増加中です。経営課題の解決を図るべく、M&Aの前向きな検討をおすすめ...
買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説
買収には、友好的買収と敵対的買収とがあります。また、買収に用いられるM&Aスキーム(手法)は実にさまざまです。本記事では、買収の意味や行われる目的、メリット・デメリット、買収のプロセスや...
現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説
M&Aや投資の意思決定するうえでは、今後得られる利益の現時点での価値を表す指標「現在価値」についての理解が必要です。今の記事では、現在価値とはどのようなものか、計算方法や割引率、キャッシ...
株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説
株価算定方法は多くの種類があり、それぞれ活用する場面や特徴が異なります。この記事では、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセス、株...
赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説
法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。しかし、会社は赤字だからといって、必ず倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリット...
関連する記事
WACC(加重平均資本コスト)とは?意味や計算式・分析方法など徹底解説!
WACC(加重平均資本コスト)とは、株主へ支払うコストと、借入にかかるコストを加重平均したものです。WACCを理解していないと、信用性に関わるトラブルが発生する可能性があるため理解が必要です。本...
税理士法人・会計事務所のM&A動向!買収・売却・事業承継の事例を紹介!
税理士法人・会計事務所は、税理士法人の増加や経営者の高齢化などによって、M&Aが活発化してきている業界です。本記事では、税理士事務所・会計事務所のM&Aについて、動向や売却・買収...
商社業界のM&A動向!売却や買収の事例・実績とM&Aのメリットを解説!
さまざまな商品の流通をサポートする商社業界は、トレーディング需要の減少などにより、M&Aによる積極的な経営で打開を図る企業が増えています。本記事では、商社業界のM&A動向について...
老人ホームM&Aの動向!最近のトレンドは?買い手と売り手のメリットも
日本の高齢化社会が進むにつれ、老人ホームの需要が高まると予想されています。同業種だけでなく異業種からの参入も増えており、業界内のM&Aが活性化しています。本記事では、老人ホームM&...
障害福祉M&A!買い手と売り手のメリットとデメリットは?注意点なども解説
障害福祉業界とは、介護を必要とする身体・知的・精神障害者の生活支援サービスを行う業界を指します。本記事では、障害福祉サービス事業者がM&Aを行う場合の買い手と売り手のメリットとデメリット...
グループホームは廃業するより売るべき?売り手と買い手のメリットを比較!
新型コロナウイルス感染症の影響で、認知症高齢者グループホームなどの介護事業所の経営が悪化し廃業危機にひんしている事業者が増加中です。本記事では、グループホームを廃業するよりM&Aによる売...
調味料でもM&A?食品製造業界を調査!売却・買収の動向、過去事例も紹介
今後、調味料・食品製造業界は、将来的に市場が縮小していく可能性があります。そのため、調味料・食品製造業界の大手企業はM&Aによって競争力を高める動きが見られます。本記事では、調味料・食品...
介護事業を買いたい!買い手が注意するポイントは?過去事例と共に紹介
高齢化で介護事業が市場拡大しており、買いたいと思っている経営者も多いと考えられます。本記事では、介護事業を買いたい時に注意すべきポイントを解説します。また、実際に行われた介護事業のM&A...
調剤薬局が大手に身売りするのはなぜ? M&Aの動向から事例まで徹底解説
近年、調剤薬局の業界では会社を維持するM&Aの手段として、中小企業が大手に身売り(事業継承)するケースが少なくありません。そこで、他にもM&Aの手法があるにも関わらず、なぜ身売り...