M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年9月9日更新都道府県別M&A
奈良県の事業承継・M&Aの動向!事例や案件・相談先も紹介
本記事では、奈良県の事業承継の実態からM&Aを活用した事業承継を解説します。全国の中小企業では後継者不在による事業承継問題を抱えているケースが多いですが、奈良県も同様です。奈良県で事業承継・M&Aを検討している方は必見です。
目次
奈良県の経済状況
奈良県の推計人口調査は、令和6年8月1日現在、1,286,651人です。そして、「令和元年度奈良県版GDP統計(県民経済計算)について」によると、2019年度の奈良県の県内総選額(名目)は3兆9,252億円でした。
県内総生産の産業別の構成比は以下のとおりです(合計値が100%未満だが資料のまま記載)。
- 製造業:18.2%
- 不動産業:15.0%
- 保健衛生・社会事業:11.8%
- 卸売・小売業:9.2%
- 公務:7.2%
- その他のサービス業:5.4%
- 運輸・郵便業:5.5%
- 教育:5.5%
- 金融・保険業:4.9%
- 建設業:4.6%
- 専門・科学技術、業務支援サービス業:4.3%
- 電気・ガス・水道・廃棄物処理業:3.3%
- 宿泊・飲食サービス業:2.4%
- 情報通信業:2.3%
- 農林水産業:0.5%
- 鉱業:0.0%
太字の産業は、全国平均より比率が高い、つまり奈良県で盛んな産業です。一方、全国平均より比率が低かった産業は、卸売・小売業、専門・科学技術、業務支 援サービス業、情報通信業、農林水産業、鉱業などでした。
奈良県の事業承継・M&Aの動向
奈良県の事業承継・M&Aの動向を3つのトピックに分けて解説します。
奈良県企業の後継者不在率
奈良県における2023年の後継者不在企業の割合は51.2%に達し、前年から1.3ポイント増加しましたが、それでも全国平均を下回っています。年齢別では、「30代未満」の層で後継者不在率が大幅に減少しましたが、業種別では「建設業」を除く他の6業種で増加しています。
また、後継者の就任方法としては、依然として「同族承継」が60.4%で最も多いものの、M&Aなどを利用して家族以外の人物に事業を引き継ぐ「脱ファミリー」の動きが見え始めています。
奈良県企業の休廃業件数
後継者不在の問題は、企業の休廃業を招いています。奈良県を含む近畿地方の「休廃業・解散」の件数は、前年比10.2%増の7,809件となり、2年ぶりに前年を上回りました。地域別では、「京都」「大阪」「滋賀」で二桁の増加率が見られました。
業種別では、『卸売業』と『小売業』で「休廃業・解散」の件数が10%以上増加し、特に『建設業』が931件で最も多く、『卸売業』の増加率が18.4%と最大でした。細かい分類では、「家庭用電気機械器具小売業」や「婦人・子供服小売業」などで、50%以上の増加が見られました。
また、休廃業・解散に至った企業の代表者の平均年齢は71.4歳で、70歳以上は3年連続で続いており、前年より0.2歳上昇しています。一方、70代以上の割合は減少し、「50代」と「60代」の割合が増加しています。
奈良県企業のM&A件数の推移
レコフの調べでは、奈良県の企業が関わったM&A件数は以下のように推移しています。
- 2018年:4件
- 2019(平成31、令和元)年:7件
- 2020年:9件
- 2021年:8件
- 2022年:13件
奈良県近郊の事業承継・M&A案件一覧
弊社M&A総合研究所が取り扱っている奈良県近郊の事業承継・M&A案件一覧をご紹介します。
【法面緑化資材等企画販売】全国対応可能
官公庁とのつながりがあり、直接提案を行えることが強みです。毎期30%近い粗利率を維持しており、高い収益力を誇っています。
エリア | 近畿 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 5000万円〜1億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【関西/OBからの高い信頼】木造住宅の新築・リフォーム工事業
長年の丁寧な仕事によって培われた、地元での抜群の信頼関係があります。代表は継続勤務可能なため、一定期間は自走可能です。
エリア | 近畿 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡理由 | 財務的理由、後継者不在(事業承継)、事業存続に対する不安 |
【業歴30年以上/関西地方】内装工事業
飲食店(居酒屋、レストラン等)、ブティック、オフィス・住居等での内装施工をメインに手掛けています。顧客の要望に応じて、内装設計や家具工事にも対応可能です。
エリア | 近畿 |
売上高 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
奈良県の事業承継・M&Aの事例
ここでは、実際に奈良県の企業が関わったM&A事例をピックアップして紹介します。
オリエンタルチエン工業による寺田精工の事業承継・M&A
2024年5月9日、オリエンタルチエン工業は取締役会を開き、寺田精工(奈良県橿原市)の株式を取得し、同社を子会社化することを決定しました。
オリエンタルチエン工業は、産業用チェーンやコンベヤチェーン、スプロケット、そして金属射出成形関連製品の製造・販売を手がけています。一方、寺田精工はローラチェーン用スプロケットを中心に、各種歯車の製造を行っています。
今回の株式取得の理由として、寺田精工は長年にわたりオリエンタルチエン工業のスプロケット製品の主要な仕入先および外注先であり、両社には強い取引関係がありました。
この子会社化により、顧客の多様なニーズに迅速に対応できる体制の構築や、生産能力の向上、品質改善などの相乗効果を期待しています。結果として、スプロケット事業の規模拡大と収益力の強化を図り、企業価値の向上を目指しています。
プラッツによるやまと産業の事業承継・M&A
2024年4月18日、プラッツは取締役会を開催し、やまと産業(奈良県山辺郡)の全株式を取得し、同社を子会社化することを決定しました。
プラッツは日本国内で医療介護用の電動ベッド事業を展開しており、介護保険制度を利用した福祉用具貸与向けの電動ベッドや、医療・介護施設向けの周辺機器を製造・販売しています。特に、ウレタンフォーム製のマットレスは主要な製品の一つとして注力して展開しています。
やまと産業は、国内でも有数のウレタンフォーム加工設備と、ウレタンマットレス製品の開発力を持つ企業であり、長年にわたり国内大手寝具メーカーから製造を委託されてきました。
今回の株式取得により、プラッツは医療介護用電動ベッドに関連するマットレス事業を強化すると同時に、やまと産業の得意とする個人向けマットレスの製造・販売(BtoBtoC)分野にも進出し、グループ全体としての成長と収益力の向上を目指します。これにより、企業価値のさらなる向上を図っていきます。
キャス・キャピタルによるベトリードの事業承継・M&A
2022年1月、東京都千代田区のキャス・キャピタルは、運用する投資ファンドの持株会社であるCCH7bを通じて、奈良県奈良市のベトリードの株式を取得しました。取得株式数、取得価額は公表されていません。
キャス・キャピタルは、バイアウトファンドを運営・管理する独立系の投資会社です。CCH7bは、国内最大規模の高度医療動物病院グループを形成しています。ベトリードは、関西地域で高度医療を提供する動物病院3院を展開している企業です。
今回のM&Aは、高度医療動物病院グループをより強力な体制とするために実施されました。
東洋テックによる明成の事業承継・M&A
2020年10月、大阪府大阪市の東洋テックは、奈良県大和高田市の明成の全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。東洋テックは、警備事業、ビルメンテナンス事業、不動産事業などをグループ会社とともに行っています。
明成は、ビルメンテナンス事業、設備・セキュリティ事業、電気工事事業などを行っている企業です。東洋テックとしては、特に明成の電気工事事業のノウハウやリソースに着目し、高いシナジー効果が望めると判断しました。
小田原機器によるアズマの事業承継・M&A
2020年7月、神奈川県小田原市の小田原機器は完全子会社を設立し、奈良県生駒郡三郷町のアズマとの間で吸収分割を実施しました。分割会社がアズマ、承継会社が小田原機器の完全子会社です。吸収分割吸収分割の対価は公表されていません。
小田原機器の完全子会社名もアズマで、吸収分割実施後、奈良県生駒郡三郷町に移転しています。小田原機器は、ワンマン路線バス用運賃収受機器の設計・製造・販売、システム開発、エンジニアリング、ソフトウェア設計、システム・機器の輸出入販売などを行う企業です。
アズマは、小型電子計算機・電子計算機部品の製造販売、各種電子計算機器の製図設計の請負、ソフトウェア開発、プリント基板コンピューターグラフィック設計・製造・販売、プリント基板組立配線、労働者派遣事業などを行ってきました。
小田原機器の完全子会社アズマは、上記のアズマの事業全てを承継しています。小田原機器としては、グループ内におけるソフトウェア開発の効率化や開発ノウハウ伝承が可能となり、大きなシナジー効果が得られると判断しました。
事業承継・M&A時におすすめの相談先
奈良県での事業承継・M&A時におすすめの相談先を3つご紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設置するケースが増えています。特に、投資銀行や大手銀行がファイナンシャルアドバイザー(FA)として、M&Aの重要な局面で支援する例が目立ちます。買収を検討する企業にとって、資金調達に関する協議は不可欠であり、通常は既に取引のある金融機関が最初の相談相手となることが多いです。
金融機関に相談することで、資金調達に関する専門的な助言が得られ、事業承継の際にも大いに役立ちます。また、一部の金融機関では、M&Aに精通した部署や専門家を紹介してくれる場合もあります。
ただし、大手金融機関は主に大規模な案件に対応し、中小規模の案件には対応しづらい傾向があります。また、アドバイザリー形式を採用しているため、報酬が高額になる点がデメリットとなり得ます。
公的機関
最近では、公的機関でも事業承継やM&Aに関する相談がしやすい体制が整ってきています。たとえば、「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業が抱える後継者不足などの問題に対応するための窓口として、無料で情報提供やアドバイス、さらに企業間のマッチングサービスを行っています。
このセンターは全国の47都道府県に設置されており、地方にある企業でも手軽に利用できる点が大きな利点です。
また、公的機関による運営のため、無料で信頼性の高いアドバイスを受けられ、必要に応じてM&A仲介会社や専門家を紹介してもらうことも可能です。ただし、対応速度に限界があり、民間の仲介会社と比べるとサポートの充実度がやや劣る場合があるのがデメリットです。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収や売却を専門的に支援し、売り手と買い手の両者と契約を結びながら交渉を進めていく役割を担います。これらの会社は、初期段階の相談から、取引相手の選定、スケジュール調整、企業価値の評価、そして必要な書類の作成まで、M&Aに関わるすべてのプロセスを包括的にサポートします。
仲介会社の強みは、豊富な候補企業の中から最適な相手を見つけ出し、売り手と買い手の双方が納得できるM&Aを実現する可能性を高める点にあります。また、M&Aに不慣れな企業にも、一貫したサポートを提供し、交渉やコミュニケーションを円滑に進めることで、成功の確率を高めます。
一方で、着手金や中間金が発生することがあり、コスト面での負担が問題となる場合があります。そのため、成功報酬制を導入している会社を選ぶことが望ましいです。
奈良県の事業承継に関する公的支援
奈良県の事業承継に関する主な公的支援を紹介します。
奈良県事業承継・引継ぎ支援センター
奈良県事業承継・引継ぎ支援センターでは、現経営者の皆様だけでなく、親族内承継を検討している「後継者候補の方」や「譲受を希望する企業」、さらには「創業を予定しており、後継者がいない事業を引き継ぎたいと考えている方」からの相談を受け付けています。まだ具体的な計画がなくても、お気軽に相談可能です。
当センターは国の委託事業として運営されており、相談は無料で秘密厳守ですので、安心して利用できます。
奈良県事業承継円滑化支援補助金
奈良県では、県内の中小企業が持つ技術や雇用などの経営資源を次世代に継承し、県内経済の持続的発展を目指すため、「事業承継円滑化支援補助金」を実施しています。この補助金は、県内で事業承継を進める中小企業が専門家を活用する取り組みを支援するものです。
申請期限は令和6年10月31日(木)17時まで(必着)です。申請は先着順で審査されます。予算額に達した場合、期限前でも受付が終了することがありますので、早めの申請をおすすめします。
補助対象者は、以下の条件をすべて満たす方です。
- 中小企業基本法に基づく中小企業または小規模企業者であること
- 県内で事業を営み、本社が奈良県にある法人、もしくは県内に住所を持つ個人事業主であること
- 奈良県事業承継・引継ぎ支援センターから事業承継計画の確認を受けていること
M&Aによる第三者承継の場合、補助の対象は譲渡側となりますが、譲受側は事業承継後も県内で事業を継続する必要があります。
奈良県の事業承継・M&Aのまとめ
以前は、M&Aは大企業が行うものというイメージがありました。そのため、高齢者の場合、M&Aにためらいの気持ちを持ってしまいがちです。しかし、後継者不在で廃業を選択した場合、従業員は職を失います。
経営者であれば、従業員の生活が犠牲となるのは、できるだけ避けたいものです。公的機関、取引金融機関、税理士、M&A仲介会社など、どこでも無料でM&Aの相談ができます。後継者不在であるなら、一度、M&Aの相談をしてみましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。