2021年5月25日更新業種別M&A

建築会社の事業譲渡・売却と株式譲渡はどちらが節税できる?手法の違いを解説!

本記事では、建築会社のM&Aについて、事業譲渡・売却と株式譲渡の違いやメリットデメリット、成功させるためのポイントを解説します。また、建築会社が事業譲渡・売却と株式譲渡ではどちらが節税できるかといった点も解説しています。

目次
  1. 建築会社の事業譲渡・売却と株式譲渡
  2. 建築会社の事業譲渡・売却と株式譲渡はどちらが節税できる?
  3. 建築会社の事業譲渡・売却・株式譲渡は許認可の引き継ぎに注意
  4. 建築会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際のポイント
  5. 建築会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際の相談先
  6. まとめ
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建築会社の事業譲渡・売却と株式譲渡

建築会社の事業譲渡・売却と株式譲渡

東京オリンピック特需や災害復興需要などによって建築業界は堅調に推移しており、最近のリフォームブームも市場を後押ししています。

そのような状況にあるにもかかわらず、建築会社の廃業は増加しています。この主な要因には、経営者の高齢化や後継者問題・慢性的な職人不足・東京オリンピック後の先行きの不透明さなどがあげられます。

一方で、廃業ではなく事業譲渡・事業売却や株式譲渡といった、M&Aによる会社売却を行うことで会社の存続を図るケースも増加しています。

本記事では、建築会社が事業譲渡・事業売却や株式譲渡によって会社を売却する際のポイントや、節税方法などについて解説します。

建築会社とは

建築会社とは、建築物の設計・施工を行う会社のことです。建築会社には、工務店とハウスメーカーの2つがあります。

工務店もハウスメーカーも、注文を受けて設計・施工を行う点は同じですが、工務店は地域密着型で事業を展開していることが多いのに対して、ハウスメーカーは全国展開している会社が多い点が特徴です。

事業譲渡・売却とは

事業譲渡・事業売却とは、売り手側が事業部門や資産の一部または全部を、買い手側へ譲渡・売却するM&A手法です。

事業譲渡・事業売却は株式の売買が伴わないので、自営業者のM&Aで用いられます。また、事業や資産を個別に選択できる柔軟さから、中小企業でもよく用いられるM&A手法のひとつです。

例えば、複数の飲食店を展開している会社が、事業譲渡・事業売却によって1店舗だけ譲渡・売却したり、複数の事業を営んでいる会社がノンコア事業を譲渡・売却することで、コア事業に経営資源を集中させるといった使い方が可能です。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、売り手企業の株主から買い手側へ発行済み株式を譲渡・売却することで、経営権を渡すM&A手法です。

株式譲渡は手続きの負担が少なく、手続き中に会社の通常業務に支障が出にくいことから、中小企業のM&Aで最も多く採用されています。

同じ株式譲渡でも、親族内で株式譲渡をする場合と従業員へ株式譲渡する場合、第三者へ株式譲渡する場合など、ケースによって必要な対処方法が変わり、メリットやリスクも対処の仕方によって大きく変わります。

手続き自体は簡便な手法でも、株式譲渡を行うための計画・戦略は専門家とともに慎重に練る必要のある手法です。

【関連】会社譲渡時にかかる税金とは?仕組みや計算方法について解説!

建築会社の事業譲渡・売却と株式譲渡はどちらが節税できる?

建築会社の事業譲渡・売却と株式譲渡はどちらが節税できる?

事業譲渡・事業売却と株式譲渡、それぞれの特徴には大きな違いがあり、どちらを用いる方が有利になるかは案件ごとに判断する必要があります。

ここでは、事業譲渡・事業売却と株式譲渡のメリット・デメリットや、事業譲渡・事業売却と株式譲渡の節税方法、建築会社がM&Aを行う際により節税できる手法について解説します。

事業譲渡・売却の特徴

事業譲渡・事業売却は、事業部門や資産を個別に選択して売買できる点が特徴です。以下では、事業譲渡・事業売却のメリット・デメリットについて解説します。

メリット

事業譲渡・事業売却は事業部門や資産を個別に売買できるので、売り手側にとっては必要な事業や資産を残して経営を継続することができ、買い手側にとっては不要な事業や資産・負債を取得する必要がなく、リスクを減らせることがメリットです。

建築会社であれば、支店を他社に譲渡・売却したり、他社から営業部門だけを取得したりすることも可能です。

他にも、事業部門を譲渡・売却できる手法として会社分割がありますが、会社分割の場合は事業ごと包括的に譲渡・売却しなければならないため、柔軟性の面では事業譲渡・事業売却の方にメリットがあるといえるでしょう。

デメリット

事業譲渡・事業売却の場合、買い手側は許認可を取り直し、契約を結びな直す必要があります。

買い手側が、建築事業を事業譲渡・事業売却によって取得し建築事業に参入する場合、建設業許可の必要な建築工事を行うには、一定の要件を満たしたうえで建設業許可を取得しなければなりません。

もし、建設業許可がないまま建設業許可の必要な工事を行うと、罰則を受けることになるので注意しておきましょう。

また、事業譲渡・事業売却では、売り手側には譲渡・売却益に対して法人税が課税され、買い手側には取得した事業・資産に対して消費税が課税されます。

買い手側は消費税も含めて売り手側に支払い、売り手側は消費税を税務署に納めなければなりません。他の手法と比べて、税負担が大きくなりやすい点も事業譲渡・事業売却のデメリットです。

株式譲渡の特徴

株式譲渡は、売り手側企業の株主から買い手側へ発行済み株式を譲渡・売却することで、経営権を移すことができます。以下では、株式譲渡のメリット・デメリットを解説します。

メリット

株式譲渡であれば株主が買い手側に移るだけなので、顧客や取引先・従業員・金融機関などとの関係に影響が少ない点や、株式譲渡の手続き中であっても通常業務に支障が出にくい点がメリットです。

また、買い手側には株式取得による課税が発生しない点も、事業譲渡に比べてメリットがあるといえるでしょう。

ただし、親族間などで適正な価格から大きく乖離した価格で株式譲渡を行った場合や、無償で譲渡を行った場合、買い手側にも課税されるケースがあるので注意が必要です。

デメリット

オーナー経営者が会社の株式を100%保有している場合、株式の譲渡・売却がスムーズにできますが、売り手側企業の株式が複数の株主に分散している場合は、株式を集約する手間がかかります。

また、株式譲渡は経営権を包括して引き継ぐ手法なので、買い手側は簿外債務などを背負う可能性もあります。

偶発リスクの可能性は売り手側も把握していなかったり、買い手側が売り手企業を監査するデューデリジェンスを行っても見つけ出せないこともあります。

事業譲渡・売却と株式譲渡の節税方法

事業譲渡・事業売却と株式譲渡では、節税の方法に違いがあります。事業譲渡・事業売却と株式譲渡の節税方法について解説します。

事業譲渡・売却の節税方法

棚卸資産を多く保有している場合、棚卸資産の売買量にともなって消費税額も高くなります。

税額を抑えるためには、事業譲渡・事業売却の実施タイミングに合わせて棚卸資産の量を減らしたり、事業譲渡・事業売却のタイミングを決算期首に合わせるなどの調整が必要です。

また、事業承継によって後継者に事業譲渡・事業売却を行う場合は、事業用資産に対して贈与税や相続税が発生します。

税負担を軽減するための制度を活用するには、さまざまな適用要件があるので十分な準備が必要であるため、早めに専門家に相談して進めておくとよいでしょう。

株式譲渡の節税方法

株式譲渡による課税負担を減らすには、利益の圧縮や資産の整理が有効であり、具体的には以下の方法があります。

  • 経営者・役員に役員報酬・退職金の支給
  • 優遇税制の活用
  • 資産価値の見直し
  • 債権や不良在庫の整理

役員退職金の支給額を増額しておくことは、利益圧縮に高い効果があります。ただし、役員報酬退職金の支給タイミングや支給要件には注意が必要です。退職金の支給要件を満たしていないと、税務署から役員退職金として認められない可能性があります。

また、支給額が高すぎると関係者からの不信・不満を買う可能性もあるので、以前に十分な準備が必要です。役員報酬も役員退職金に影響するので、金額を引き上げておくと効果的です。ただし、こちらも金額の引き上げタイミングなどが重要です。

資産の整理面では、債権や不良在庫の整理が効果的です。中小企業の中には、不良在庫を放置したままになっているケースも少なくありません。

ただし、不良在庫を廃棄する際は、廃棄したことを税務署に認められるよう、証明書の取得や廃棄タイミングに注意が必要です。同じく、放置されている回収不能債権がある場合も処理しておきたいところです。

建築会社の節税におすすめの手法とは?

建築会社がM&Aを行う場合、節税面で考えると株式譲渡の方がメリットがあります。

株式譲渡は手続き面でも便利なので、実際に多くの中小企業が株式譲渡によるM&Aを採用しています。ただし、総合的に判断すると事業譲渡・事業売却の方が有利になるケースも少なくありません。

事業譲渡・事業売却は手続きが煩雑で税負担が大きくなりやすい反面、売買する資産を選択できるメリットがあります。

M&Aを行う際は、節税面も含めた幅広い視点でメリット・デメリットを判断することが大切です

【関連】節税対策とは?法人や個人事業主向けに保険や経費不動産の活用事例を解説

建築会社の事業譲渡・売却・株式譲渡は許認可の引き継ぎに注意

建築会社の事業譲渡・売却・株式譲渡は許認可の引き継ぎに注意

建築会社のM&Aでは、許認可の引き継ぎに注意が必要です。この章では、建設会社の許認可が引き継げる場合と引き継げない場合について解説します。

建築会社の許認可が引き継げる場合

株式譲渡によって建築会社のM&Aを行った場合、買い手側に許認可も引き継がれるので、あらためて許認可を取得する必要はありません。

そのため、M&A後すぐに新しい仕事を受注することができ、継続中の工事にも影響なく続けることが可能です。

ただし、許認可の条件を下回らないよう注意が必要です。建設業許可の場合、経営業務管理責任者と専任技術者が常勤していることが条件になっています。

買収先建築会社に条件を満たした人材がいるか、途中で離職してしまう可能性はないかなど、注意を払わなければなりません。

建築会社の許認可が引き継げない場合

事業譲渡・事業売却によって建築会社のM&Aを行った場合、買収先建築会社の許認可を引き継ぐことはできません。

そのため、買い手側がすでに許認可を保有していれば問題はありませんが、許認可を保有していない場合は許認可の取得が必要です。

しかし、建設業許可の取得には注意が必要です。建設業許可の取得には常勤の経営業務管理責任者と専任技術者がいることが条件となっていますが、事業譲渡・事業売却によって人材が確保できるのはM&A完了後になります。

M&Aが完了してから建設業許可申請を行うと許可が出るまで空白の期間ができてしまうので、その間は建設業許可が必要な仕事を受注できません。

【関連】不動産における相続の手続きや売却の際の節税対策をわかりやすく解説

建築会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際のポイント

建築会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際のポイント

建築会社の事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行う際は、以下のポイントを押さえる必要があります。

  1. 選定した手法を選ぶ理由を明確にすること
  2. 準備期間を設けること
  3. 事業の価値・強みを認識しておくこと
  4. 業界の需要が高まっているタイミングで話をすすめること
  5. 専門家に相談すること

1.選定した手法を選ぶ理由を明確にすること

多くの中小企業がM&A手法に株式譲渡を選んでいるからといって、株式譲渡を選べばメリットが最大化できるとは限りません。

ここまで述べたように、手法によってメリット・デメリットが違うので、M&Aの目的に合わせて最適な手法を選ぶ必要があります。

2.準備期間を設けること

許認可の引き継ぎについて前述したように、建設業許可の準備をしていなかったために、M&A後の仕事に支障が出るなどのトラブルが発生する可能性があります。

十分な準備期間を設けることは建設会社のM&Aにおいて重要です。M&Aの準備に早すぎるということはありません。

3.事業の価値・強みを認識しておくこと

建築業界の競争が激化するにつれて、買い手側は買収先建築会社の付加価値も重視するようになっています。

自社の付加価値や強みを分析・整理しておくことも、大事な対策のひとつといえるでしょう。

4.業界の需要が高まっているタイミングで話をすすめること

M&Aはタイミングが非常に重要です。近年建築業界は東京オリンピックや災害復興、インバウンドによって需要が高まっています。

M&Aによる買い需要が高いうちに、建築会社を事業譲渡・売却と株式譲渡を行動に移すことが重要です。

5.専門家に相談すること

建設業界に精通したM&Aの専門家であれば、最適なM&Aスキームの選択や節税対策など、さまざまな面からM&Aをプロデュースすることができます。

まずは、建設業界に詳しい専門家に相談することで、具体的な行動方針や自社の課題が見えてきます。

【関連】経営分析の方法とは?目的や種類、財務分析との違いを解説

建築会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際の相談先

建築会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際の相談先

建築会社の事業譲渡・事業売却や株式譲渡を節税も意識しながら計画的に進めるには、M&Aと会計・税務に精通した専門家による節税アドバスなどのサポートを受けるのが良いでしょう。

M&A総合研究所では、豊富なM&A支援実績や専門知識を持ったアドバイザーがフルサポートいたします。

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まとめ

まとめ

本記事では、建築会社が事業譲渡・事業売却や株式譲渡によって会社を売却する際のポイントや、節税方法などについて解説してきました。

【事業譲渡・事業売却のメリット・デメリット】

  1. 事業部門や資産を個別に選択して譲渡・売却できる
  2. 許認可や契約の引き継ぎが不可能
  3. 税負担が大きくなりやすい

【株式譲渡のメリット・デメリット】
  1. 手続きが簡便
  2. 税金の負担が比較的少ない
  3. 簿外債務などのリスクも引き継ぐ可能性がある

【建築会社の事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行うポイント】
  1. 選定した手法を選ぶ理由を明確にすること
  2. 準備期間を設けること
  3. 事業の価値・強みを認識しておくこと
  4. 業界の需要が高まっているタイミングで話をすすめること
  5. 専門家に相談すること

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