M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月19日更新業種別M&A
旅行代理店の事業承継の動向!業界動向や課題・事例・相談先も解説
最近では、旅行代理店と異業種の会社が事業承継型のM&Aを実施するケースが多く見られます。後継者不在などを理由に廃業を検討する前に、まずは旅行代理店である自社の存続を検討しましょう。本記事では、旅行代理店における事業承継の課題や事例を中心に紹介します。
目次
旅行代理店業界の市場動向
まずは旅行代理店業界の市場動向をお伝えします。
旅行代理店業界の市場規模
2023年度における主要旅行業者の総取扱額は約3.6兆円で、2019年度の約80%まで回復しました。特に外国人旅行や日本人の国内旅行はほぼ2019年度の水準まで回復している状況です。
2023年10月から12月にかけては、国内旅行やインバウンド旅行が中心となり取扱額が増加しており、順調に回復が進んでいます。
旅行サービスにおけるEC市場の推移
令和5年の日本における消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模は24.8兆円となり、前年の22.7兆円、前々年の20.7兆円から9.23%増加しました。また、企業間電子商取引(BtoB-EC)の市場規模は465.2兆円に達し、前年の420.2兆円、前々年の372.7兆円から10.7%の増加を記録しました。
EC化率はBtoC-ECで9.38%(前年より0.25ポイント増)、BtoB-ECで40.0%(前年より2.5ポイント増)と、電子化が引き続き進んでいます。
サービス系BtoC-ECの内訳を見ると、「旅行サービス」が3兆1,953億円と大きな割合を占めています。令和5年には、コロナの影響で大幅に落ち込んでいた旅行、飲食、チケット販売が前年に続き大きく回復しました。
旅行代理店の事業承継課題
2023年の後継者選定の状況では、50~60代の「現役世代」において、後継者不在の割合が大幅に低下している傾向が見られました。特に「50代」の後継者不在率は60.0%と全国平均を上回っているものの、前年から5.7ポイント減少し、全年代で最も大きな低下幅を記録しました。
また、事業承継の適齢期にあたる「60代」も、50代に次ぐ4.9ポイントの減少幅で、初めて40%を下回りました。「70代」(29.8%)も同様に、初めて30%を下回る結果となり、全世代で後継者不在率が過去最低を更新しました。
ただし、業種別に見ると、旅行代理店が属するサービス業の後継者不在率は58.2%で全業種平均53.9%よりも高い状況です。
旅行代理店は景気の影響を受けやすい
もともと旅行代理店は、景気の影響を受けやすく不安定な業界に属しています。つまり、景気が良いときは国内や海外への旅行を計画する人が多く業績は良好ですが、景気が悪くなると旅行へ行く人が減少するため売上高に大きな影響が及んでしまうのです。
このように不安定な業界であるため、旅行代理店を子供に事業承継せずに「自分の代で廃業しよう」と考える経営者も多く見られます。とはいえ、提携先が確立しており独自のパッケージツアーなど取扱商品が多い旅行代理店などは、廃業ではなく事業承継の検討がおすすめです。
その中でも子供・従業員・役員への事業承継が難しい場合は、M&Aによる事業承継を検討して会社の存続を目指すと良いでしょう。 そもそも旅行代理店は、旅行業法によって都道府県知事の登録を受ける必要があり、廃業してしまえば登録が抹消されてしまいます。
こうした登録だけでなく取引先・従業員・顧客との関係を維持するためにも、廃業ではなく事業承継を検討しましょう。後継者不在の問題は旅行代理店のみならずさまざまな業界における共通課題とされていますが、いかにして旅行代理店を存続させていくかという視点を念頭に置いた検討が大切です。
旅行代理店の事業承継・M&A案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている旅行代理店の事業承継・M&A案件例として、首都圏の旅行代理店をご紹介します。
依頼者の要望に応じて様々な旅行プランを提案しています。個人向けのツアーがメインではなく、取引先も安定した先が多いです。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 1億2,000万円以上 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継)、戦略の見直し |
旅行代理店の事業承継・M&A事例
旅行代理店の事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。
太平洋クラブによるジェットアンドスポーツのM&A
2024年4月30日、太平洋クラブ(東京都千代田区)は、旅行代理店業を行うジェットアンドスポーツ(東京都中央区)の株式を一部取得しました。
太平洋クラブはゴルフ場、ホテル、ゴルフアカデミーの運営を行い、ジェットアンドスポーツはゴルフツアーとイベント企画・運営を専門としています。
ジェットアンドスポーツは1986年に創業し、国内外のゴルフツアーで豊富な実績があります。太平洋クラブは、2014年から海外のゴルフクラブとの提携を進め、現在は29クラブと契約しています。
今回の協業により、ゴルフツアーに関連する各種手配が円滑になり、両社のサービス拡充と太平洋クラブ会員の満足度向上を目指します。将来的には、海外の提携メンバーに向けたサービス提供も計画しています。
令和トラベルによるAloha7 Inc.のM&A
2023年12月20日、令和トラベル(東京都渋谷区)は、取締役会の決定により、ハワイ・ホノルルに拠点を置くAloha7 Inc.(A7)の全株式を株式会社旅工房から取得し、完全子会社化することを決定しました。
令和トラベルは、総合旅行代理店業および海外旅行予約アプリ『NEWT(ニュート)』を運営しており、A7は1973年に米国で設立されたハワイ州の旅行業者です。
『NEWT』は、A7をグループ化することで、通常長期間かかるホテルとの提携関係を迅速に確立できると判断し、今回の決定に至りました。
ザッパラスによる連結子会社PINKの全株式の譲渡
2021年3月19日、ザッパラスは、連結子会社であるPINK(東京都港区)の全株式を第三者に譲渡することを決定しました。
ザッパラスは、女性をメインターゲットとし、占いサービス、eコマース事業、旅行代理店事業などを展開しています。PINKはオリジナルブランド「Love&Travel」の企画・販売や、旅行業法に基づく国内外の旅行事業、航空券やホテル手配、損害保険代理業を行っています。
今回の株式譲渡により、ザッパラスはグループ全体で経営リソースの最適化を図り、PINKのさらなる成長を期待しています。
旅行代理店の事業承継の注意点
本章では、旅行代理店の事業承継における注意点として、以下の3項目を取り上げます。
- 情報漏えいに注意
- 事業承継は大きな転換期でもある
- 準備は早めに始める
それぞれの注意点を把握して、旅行代理店の事業承継を成功につなげましょう。
①情報漏えいに注意
いかなる方法で事業承継する場合であっても、事業承継の内容が確定するまでは情報が漏れないよう注意しなければなりません。特にM&Aを実施する際は、従業員や取引先などに不安を与えかねないため、情報漏えいに細心の注意が求められます。
その一方で、親族内承継の場合は従業員や取引先などから比較的受け入れやすく、万が一に情報が漏れたとしても不安に感じるケースは少ないです。ただし、役員や従業員承継では従業員間で不満が出るケースが多いため、事業承継が確定する前の公表は避けると良いでしょう。
もともと旅行代理店は旅館・ホテル・航空会社など多くの会社と取引・提携しているため、M&Aで事業承継する場合はいかなるタイミングで知らせるのか念入りに予定を立てる必要があります。
②事業承継は大きな転換期でもある
事業承継は自社である旅行代理店にとって大きな転換期となる可能性が高いため、働いている従業員や取引先に不安感を与えないよう配慮して進める必要があります。
また、これまで取引関係にあったバス会社・旅館・ホテルなどとの関係を良好にしておきながら、事業承継の実施後も変わらないサービスを提供できるよう体制を整備することも大切です。事業承継は経営者交代のみで済む行為ではなく、経営方針・運営方法・業務形態を後継者に引き継ぐための準備が求められます。
③準備は早めに始める
事業承継を済ませるには約10年の期間が必要となるため、なるべく早く準備を始めるべきです。子供を後継者として事業承継する場合、比較的早期の段階から準備を始められるため、事業承継がスムーズに進む可能性が高まります。
また、親族以外の従業員や役員を後継者とする場合でも、後継者がすでに会社の運営方法や方針などを理解しているため、準備期間を短縮可能です。とはいえ、経営者としての資質の教育は求められます。そしてM&Aでは社外への事業承継となるため、M&A仲介会社に依頼して買い手企業を探さなければなりません。
ここでは、即座に買収先の会社が見つかるとは限らないため、「親族にも社内にも後継者がいない」と判断した場合にはできるだけ早くM&A仲介会社に相談しましょう。
なお、事業承継は会社の転換期となる可能性があるため、会社の方針など現経営者が譲れない条件を明確にしておくと将来的なトラブルを防止できます。例えば、事業承継により後継者が従来の取引先との取引をやめてしまうことを防ぎたい場合には、あらかじめ後継者に伝えておくと良いです。
後継者となった人物の考え方次第では、会社の体制が一変してしまうケースも珍しくありません。したがって、旅行代理店として取引関係のあった取引先を継続的に利用してほしい場合は、事前に後継者に伝えたうえで良好な関係を構築していく必要があります。
旅行代理店の事業承継時におすすめの相談先
旅行代理店の事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
最近、金融機関がM&A・事業承継の支援に特化した専門部門を設置する動きが増加しています。特に、投資銀行や大手メガバンクでは、企業間取引を円滑に進めるために、M&A・事業承継のファイナンシャルアドバイザー(FA)として、資金調達や戦略策定のサポートを提供しています。
このような専門的な支援を活用することで、企業は資金調達や事業承継といった複雑な課題に迅速かつ効果的に対応し、専門家の助言によって取引の成功率を向上させることが可能です。
しかし、大手金融機関は規模の大きなM&A案件を優先する傾向があるため、中小企業には十分な支援が行き届かない場合があります。そのため、企業は自社の規模やニーズに最も合った支援先を慎重に選ぶことが重要です。また、アドバイザリー費用が高額になることもあるため、事前に費用確認やコスト計画を確実に行うことが求められます。
公的機関
近年、事業承継やM&A・事業承継に対する公的サポートが大幅に強化されています。全国に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業に対し、事業承継やM&Aに関する情報や専門的なアドバイスを提供し、企業間のマッチングも無料で支援しています。
この仕組みにより、地方の中小企業でも専門的なサポートを受けやすくなっており、個人事業主も対象として、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介も受けられます。
ただし、民間のM&A仲介会社と比較すると、対応のスピードや柔軟性に限界がある場合もあるため、その点には注意が必要です。それでも、公的機関は事業承継やM&Aを検討している企業にとって、信頼性の高いサポート先として活用できます。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収・売却プロセス全体をサポートする専門サービスを提供する機関です。売り手側と買い手側の双方に対し、最適な取引相手の紹介や交渉のサポート、進行スケジュールの管理、企業価値の評価(バリュエーション)、契約書作成など、さまざまな支援を行います。彼らの役割は、双方の条件や希望を調整し、取引がスムーズに進むよう仲介することです。
特に、広範なネットワークを活用し、理想的な取引先を迅速に見つける能力に長けており、M&A・事業承継の成功率向上に寄与しています。さらに、経験の少ない企業に対しても、実践的なアドバイスを提供し、取引の進行をスムーズにサポートします。
ただし、仲介会社を利用する際には、着手金や中間金といった手数料が発生する可能性があります。費用を抑えたい場合は、成功報酬制を採用している仲介会社を選ぶとよいでしょう。
旅行代理店の事業承継まとめ
旅行代理店は都道府県知事の登録が必要であるため、事業承継が難しいケースも見られます。とはいえ、廃業してしまえば、旅行代理店が持つ独自のサービス・パッケージツアーなどが消失するほか、取引先・従業員・顧客に大きな迷惑をかけてしまいかねません。
親族の中に後継者がいない場合、従業員の中に候補となる人材がいないか検討する必要があります。そして、親族や従業員の中にも候補がいない場合には、M&A・事業承継を検討しましょう。本記事で紹介した事例のように、最近では旅行代理店と異業種の会社がM&A・事業承継を実施している事例も多く見られます。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。