M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年6月26日更新節税
株式譲渡の課税額はいくら?税金の種類や計算方法、効果的な節税対策を専門家が解説
M&Aにおける株式譲渡では、譲渡益に対して課税されます。税金の計算は複雑ですが、仕組みを理解すれば効果的な節税が可能です。本記事では、株式譲渡で課税される税金の種類や計算方法、具体的な節税策をわかりやすく解説します。
目次
株式譲渡で課税される税金の種類と税率
株式譲渡の際にかかる税金は、所得税・住民税・法人税の3種類です。2037年(令和19年)まで、株式の取引に対して課せられる復興特別所得税もあります。
株式譲渡は、株式を売却して売り手株主が譲渡所得を得るため、売り手に対し税金が課せられます。売り手の株主が個人であれば所得税と住民税、法人であれば法人税を納税します。
株式譲渡における課税対象「譲渡所得」とは
株式譲渡では、株式の譲渡価格から株式の取得費と委託手数料などの必要経費を差し引いた額に対し、税金がかかります。譲渡価格そのものに税金がかかるわけではありません。
株式を取得するために使用した金額を引いてから税金が課せられると覚えておきましょう。この譲渡価格から必要経費を引いた額を譲渡所得と呼びます。譲渡者が個人でも法人でも、税金を計算するうえで基本の額となるのは譲渡所得です。
相続した株式を譲渡すると、譲渡所得に税金が生じます。株式譲渡で生じた所得は、単独で所得額を算出し一律の税率を乗じて税額を出しますが、これが分離課税です。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算方法は、下記です。
- 株式の売却金額-(株式の取得費+株式譲渡にかかった費用)
取得費は、株式購入時の取得価額、手数料、消費税、名義書き換え料です。株式譲渡にかかった費用は、譲渡時の手数料、消費税になります。
譲渡者が個人の場合、株式を売却したときに得た譲渡所得に対し所得税と住民税がかかり、2037年までの株式取引には復興特別所得税が課せられます。
個人の株主が株式を売却した場合、譲渡所得に対して所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%)の合計20.315%が課税されます。
一方、法人が株主の場合は、株式譲渡益は他の事業利益と合算され、法人税等が課されます。法人税の実効税率は企業の規模や所得額により変動しますが、およそ30%程度が目安です。
なお、株式を譲渡して損失が出るときは、課税されず申告も必要ありませんが、申告することによって損益通算や繰越控除を受けられるので、詳しく確認するとよいでしょう。
取得費の算出方法
基本の計算式を見ていきましょう。
- 1株の取得費を計算:(取得単価×取得株式数)+購入時手数料など+消費税〕÷株式数
- 譲渡株式の取得費を計算:1株の取得費×譲渡株式数
2回以上に分けて買ったケースは、総平均法に準じます。計算式は以下の通りです。
- 2回以上買ったケースの計算式:1株の取得費:(最初に株式を購入したときの購入総額+2回目以降に株式を購入したときの購入総額)÷(最初に株式を購入したときの購入総額にかかる株式などの総数+2回目以降に株式を購入したときの購入総額にかかる株式などの総数)
- 今回譲渡する株式取得費の計算式:1株の取得費×譲渡株式数
取得費が不明な場合の調べ方と対処法
取得費を調べる流れは、下記です。
- 株式購入の際に証券会社から交付された取引報告書を確認
- 株式購入先の証券会社に顧客勘定元帳で調べてもらう
- 故人の日記や預金通帳などから調べる
- 名義書き換え日を調べ取得時期を把握し、その時期における相場から算定
金融機関は、顧客勘定元帳を10年間保存するため、10年以内に被相続人が取得したものは、問い合わせできます。また、取得時期がわかると、当時の相場から株式の取得費における算定が可能です。
取得費を証明する資料が見つからない場合、売却代金の5%を「概算取得費」として計上できます。ただし、この方法は実際の取得費より大幅に低くなることが多く、結果的に課税額が増える可能性があります。まずは取引報告書など、取得費を証明できる資料を徹底的に探すことが重要です。
譲渡損失の繰越控除
先に述べましたが、上場株式の場合、年内に控除できなかった損失は、損失が発生してから3年間繰り越せることになっています。年内に控除できなかった損失とは、その年に生じた譲渡損失から譲渡益を差し引いても、まだ損失が残ってしまう場合です。
繰り越した分の損失は、翌年以降に発生する譲渡益と相殺できます。この制度を利用するには、確定申告が必要です。したがって、譲渡損失額が大きく、損失を3年間繰り越すためには、取引がなかったとしても、毎年確定申告をしなければなりません。
株式譲渡の課税における重要ポイント
株式譲渡の課税を考える上で、特に注意すべき3つのポイントを解説します。
非上場株式と上場株式の損益通算はできない
株式の譲渡所得は「上場株式等」と「一般株式等(非上場株式など)」の2つに区分されます。上場株式の譲渡損失は、他の上場株式の譲渡益や配当所得と損益通算できますが、一般株式等の譲渡益と通算することはできません。同様に、一般株式等の譲渡損失を上場株式等の譲渡益と相殺することも不可能です。
資本の払い戻しで発生する「みなし配当」
自己株式の取得など、実質的に資本の払い戻しとみなされる取引では、譲渡対価の一部が「みなし配当」として扱われることがあります。みなし配当部分は配当所得として総合課税の対象となり、譲渡所得とは異なる税率で課税されるため注意が必要です。特にオーナー経営者が会社に株式を売却する際は、この点を確認する必要があります。
役員退職金を活用した税負担の軽減
オーナー経営者が株式譲渡と同時に役員を退任する場合、譲渡対価の一部を「役員退職金」として受け取ることで、全体の税負担を軽減できる可能性があります。退職所得は他の所得と分離して課税され、勤続年数に応じた退職所得控除が適用されるため、譲渡所得よりも税率が低くなるケースが多いです。
外国株式の譲渡にかかる税金
国内外に上場する外国株式の譲渡にかかる税金は、国内株式の譲渡所得同様、分離課税の対象となります。税率も同じです。
配当金については、国外で源泉徴収された場合、税引き後の配当金に国内でも源泉徴収されます。ただし、確定申告をする際に、外国税額控除を受けられるケースもあります。
国内株式とは違い、外国株式の場合、特定口座で管理されるものとそうでないものがあります。取引をされる証券会社や取引所に確認するとよいでしょう。
株式譲渡にかかる税金は確定申告が必要
例外を除き、年内に株式を譲渡し、利益が発生していれば確定申告が必要です。ただし、株式譲渡に利用したのが源泉徴収ありの特定口座や、その年における株式売買の損失が利益を上回っている場合は、確定申告の必要はありません。
特定口座は、銀行や証券会社で口座を開設するときに選択できます。選ぶだけで、銀行や証券会社が一年の株式による損益を自動で計算してくれるのです。
源泉徴収ありの特定口座を選べば、確定申告もしてくれるため、税金の計算や確定申告の手間を減らしたい場合におすすめです。
特定口座(源泉徴収あり)以外であれば必要
上場株式の口座には、以下の3つがあります。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 一般口座
②③の口座であれば、確定申告をしなければなりません。①の場合は確定申告の必要はありませんが、譲渡損があるときは申告すると節税できます。
相続した株式であれば取得費加算の特例を利用可能
取得費加算の特例とは、譲渡株式に対応する相続税額を取得費にプラスできる制度をいいます。取得費が増えると譲渡所得は減るので、課税額を抑えられることになり、上場株式・非上場株式いずれの場合も利用が可能です。
ただし、相続税の申告期限翌日から3年以内に株式を譲渡し、確定申告もしなければならないため、事前によく確認しておきましょう。
税金の納付時期
確定申告は、所得が生じた年の翌年3月15日までが原則の期限です。税金の計算は複雑で、相続の場合は、故人が過去に株を売買していると、取得費の計算がより難しくなります。
計算や申告が困難な場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
株式譲渡で課税額を抑えるための節税方法
株式譲渡では高額な取引となることが多く、課税額も大きくなるため、数パーセントの税率の違いが最終的な手取り額に大きく影響します。
M&Aにおいて株式譲渡は、他の手法と比較して税負担を抑えやすいメリットがあります。例えば、事業譲渡では法人に対して法人税等が課されるのに対し、個人株主による株式譲渡では所得税・住民税を合わせて約20%の分離課税で済むため、効果的な節税が期待できます。
株式譲渡にかかる税金の節税
M&Aの際に株式譲渡を選択するだけで税金を減らせます。それだけでなく、株式を譲渡する金額を一部退職金として受け取れば、さらに節税ができます。
退職金は、役員として5年以上勤務していれば、課せられる税金が通常の半分になるため、一部を退職金にすると節税が可能です。ただし、節税となるのは一定条件を満たした場合のみです。条件によっては税金が増えることになるため注意しましょう。
譲渡損の申告でも節税可能
上記でも触れましたが、上場株式の売却で損失が生じると、分離課税で確定申告すれば節税可能です。例えば、〇〇証券の特定口座で生じた譲渡損を、△△証券における特定口座の配当益・譲渡益と一緒に申告すれば、損失と利益を相殺して所得額を下げられるのです。
損失が残る場合は、翌年以後に3年間続けて確定申告をすると損失の繰り越しができ、繰り越した損失を将来の譲渡益や配当益と相殺できます。
株式譲渡の課税に関する注意点
株式譲渡は、譲渡所得に税金が課されるので、基本的には譲渡側へ税金がかかります。通常、譲受側に税金は生じませんが、親族へ株式譲渡するケースでは相続税に当たるとみなされるかどうかに注意が必要です。
例えば、著しく低い価額(時価の2分の1未満など)で親族へ株式譲渡した場合、時価と譲渡価額の差額が贈与とみなされ、譲受側に贈与税が課される可能性があります。無償譲渡(贈与)の場合も同様です。また、個人から法人へ時価の2分の1未満で譲渡すると、譲渡者(個人)には時価で譲渡したものとみなして所得税が課税されます(みなし譲渡)。
譲受側にも税金が生じるかどうかの判断には、専門知識が必要となります。事前にM&A仲介会社などの専門家に相談するとよいでしょう。
株式譲渡の税金に関する特例
非上場株式の承継を支援するため、事業承継税制には特例措置が設けられています。この特例は、2018年度(平成30年度)の税制改正で創設され、2027年12月31日までの贈与・相続が対象です。特例の適用を受けるためには、2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。
この制度を利用すると、後継者が事業承継のために非上場株式を贈与または相続で取得した場合、その株式にかかる贈与税・相続税の全額が納税猶予されます。
複数の株主から代表者である3人までの後継者が対象となり、親族だけでなく第三者の承継も適用されます。
後継者の相続・贈与が生じれば、取り消しにならない限り、猶予されていた税額が免除となるのがメリットです。ただし、事務手続きが煩雑で制度が複雑であり、取り消しリスクも存在します。税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
株式の配当金・分配金にかかる税金
株式の配当金や投資信託の分配金を受け取る時、一般的に所得税と住民税は自動で差し引かれます。このため、多くの場合、税務署に確定申告をする必要はありません(申告不要制度を選択の場合)。
差し引かれる税率は、合計で20%です。所得税が15%、住民税が5%含まれています。さらに、日本の復興を支援するために「復興財源確保法」という法律があり、これに基づき、令和19年までの間は、配当金などから得た所得に対して、所得税額の2.1%が追加で復興特別所得税として徴収されます。
株式譲渡の税金に関するおすすめの相談先
株式譲渡する際は、節税対策も検討しておかなければ、数%の違いが数百万円の違いになることもあります。株式譲渡する際は、譲渡者が個人か法人かで税率が変化するなど仕組みが複雑なため、M&A仲介会社などの専門家に相談することをおすすめします。
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無料相談を行っておりますので、株式譲渡をお考えの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
株式譲渡の税金まとめ
株式譲渡とは、株式の手続きのみで、会社の経営を売り手から買い手へと譲り渡す方法です。複雑な手続きを省き、簡単に経営権を譲渡できるため、多くの中小企業におけるM&Aで採用されています。
ただし、株式譲渡を行う際は、譲渡者が個人か法人かで税率が変化するなど仕組みが複雑なので、専門家に相談しましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。