M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月22日更新業種別M&A
段ボール業界のM&A・事業承継の最新動向!事例や成功ポイント・相場も解説
段ボール業界のM&A・事業承継の最新動向から事例、成功のポイント、相場を解説します。段ボール業界では、ECの拡大などによる段ボールの需要増加が目立ちます。事業強化やグローバル展開の強化など、各目的に沿ったM&A・事業承継が行われています。
目次
段ボール業界の主な動向
全国段ボール工業組合連合会「2024 年(令和 6 年) 段ボールの需要予測 」
出典:https://zendanren.or.jp/files/libs/1011//202402161027337450.pdf
近年の段ボール業界の大きな特徴は、ECの拡大による段ボールの需要増加です。インターネット通販やネットショップの需要増加に伴い、宅配サービスの増加とともに段ボールの需要も伸びているのです。
段ボールは紙製容器としての需要がもともと大きく、さらに近年のECの拡大もあり、今後も需要の増加が続くと予想されます。それに伴い段ボール業界では、多くの企業が需要増加を見据えた事業戦略を策定しています。
その一環として、M&Aを検討する企業も多いです。例えば、特定のエリアでの段ボールの需要増加を見込み、そのエリアに強みをもつ企業を買収して事業拡大につなげるケースがあります。
全国段ボール工業組合連合会によると、2024年の段ボール需要予測は142億㎡です。2009年には、リーマンショックが原因で126億㎡まで生産が落ち込みましたが、その後順調に増加しています。
段ボール業界の主な課題
段ボールの需要が増加傾向にある一方、業界全体では価格の上昇傾向が見られます。これは原材料の価格高騰などが原因です。各企業でコストの増加に悩む形となり、結果として段ボールの値上げが進みました。
段ボールは差別化が図りにくいため、価格競争になりやすいです。そのため、段ボール自体の値上げはリスクが高く、今後の対策としてコストカットに焦点を置いた戦略が求められるでしょう。
M&A・会社売却・事業譲渡が増加している理由については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
段ボール業界のM&A・事業承継の最新動向
近年の段ボール業界では、段ボールの需要増加を見据え、M&A・事業承継でサービス体制の強化や事業エリアの拡大などを図るケースが増えています。
特定のエリアに強みのある企業の買収により事業エリアを拡大し、同業者同士のM&A・事業承継により双方のノウハウを活用してサービス体制を強化するなど、M&Aは事業強化・拡大のために効果的な手法です。
特にECの拡大による段ボールの需要増加は、今後も続くでしょう。このような動向も踏まえ、M&A・事業承継により事業強化を図るケースが多いです。グローバル展開の一環としてM&A・事業承継を行う場合もあります。 海外市場への新規参入、あるいは既存の海外シェアの増加などを目的として、海外の同業他社とM&Aを行うケースです。
海外進出の課題については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
段ボール業界のM&A・事業承継の事例
ここでは段ボール業界におけるM&A・事業承継の事例をご紹介します。自社の状況と類似したM&A事例を分析する参考にしてみましょう。
トライウォール社によるジェイパックの買収
レンゴーの連結子会社であるトライウォール社(香港)は、トライウォールジャパンを通じて、ジェイパック(神奈川県川崎市)の全株式を取得しました。トライウォール社は重量物包装資材の製造・販売を手掛け、トライウォールジャパンは同分野での技術コンサルティングも行っています。
ジェイパックは梱包や倉庫管理、海外引越し、通関、運送事業を展開する企業です。このM&Aにより、レンゴーはトライウォールグループの販路やサービスを活用し、重量物包装資材の分野で顧客ニーズにさらに応えていく方針です。
トーモクによる大和段ボールの買収
トーモクは、2024年9月30日に大和段ボール(千葉県野田市)の全株式を取得し、子会社化しました。トーモクは段ボールや紙器、住宅、運輸、商事事業などを展開しており、大和段ボールは段ボールおよびシートの製造・加工・販売を専門とするメーカーです。
このM&Aにより、埼玉、千葉、茨城をはじめとする近隣地域でグループ会社間の連携を強化し、生産や配送面での効率化を図り、企業価値の向上を目指します。
レンゴーによる柴田段ボールの買収
レンゴーは、2024年7月10日に柴田段ボール(愛知県豊橋市)の全株式を取得し、完全子会社化しました。レンゴーは、段ボールや紙器、板紙などの製造・販売を手掛けており、柴田段ボールは段ボールケースの製造・販売を行っています。
本件のM&Aにより、レンゴーは愛知県東部および周辺地域での事業拡大を目指し、柴田段ボールやグループの直営工場との連携を強化して、段ボール事業のさらなる発展を図ります。
王子ホールディングスによる森羽紙業の完全子会社化
王子ホールディングスは、森羽紙業(青森県五所川原市)を株式交換により完全子会社化することを決定し、株式交換契約を締結しました。王子ホールディングスは簡易株式交換の手続きを通じ、株主総会の承認なしで進め、森羽紙業は2024年1月9日の臨時株主総会で承認を予定しています。効力発生日は2024年2月1日です。
王子ホールディングスは段ボール事業の強化を目指し、生産体制の再構築や新工場建設、M&Aを推進しており、森羽紙業の参画により津軽地区でのシナジー効果を期待しています。
大王製紙による芳川紙業の子会社化
2021年10月、大王製紙のグループ会社である大王パッケージは、芳川紙業の全ての株式を取得し子会社化しました。
大王製紙グループは、日本の大手製紙メーカーであり、「エリエール」ブランドで知られています。原料のパルプから紙製品、日用消費財まで一貫して手がけ、「紙・板紙事業」と衛生用紙やおむつなど「ホーム&パーソナルケア事業」の一体運営が特徴です。
大王パッケージは、段ボール・ディスプレイ製品の製造、販売を行っています。対象会社の芳川紙業は、段ボールケースの製造販売事業をメインとしている企業です。
今回のM&Aにより、芳川紙業のノウハウを取得することで、段ボール事業の成長をさらに促し、企業価値向上や関西における事業拡大を目指します。
会社売却の戦略策定方法については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
段ボール業界のM&A・事業承継のメリット
段ボール業界のM&A・事業承継は、売却側にはもちろんのこと、買収側にもメリットがあります。ここでは、売却側・買収側それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
売却側
段ボール業界のM&A・買収における売却側が得られるメリットとして、まず後継者問題の解決が挙げられます。
近年は中小企業の多くが「後継者問題」を抱えており、段ボール業界も例外ではありません。もし経営者の周りに後継者候補がいない場合でも、M&Aにより第三者へ譲渡できれば自社を存続することができます。
また、M&Aにより売却・譲渡益の獲得できる点や、従業員の雇用が維持できるのも売却側のメリットです。
後継者が現れずに廃業してしまうと従業員を解雇しなければなりませんが、M&Aで自社を引き継げば従業員の雇用も確保できます。
そのほかにも、M&Aで大手傘下に入れば経営安定が見込めたり、経営者の個人保証・債務・担保などの解消ができたりすることも、売却側のメリットです。
買収側
一方で、買収側が得られるメリットとしては、従業員の確保、事業の効率アップなどが挙げられます。また、M&Aですでに完成している事業や企業を買収すれば、新規事業へ低コストで参入することも可能です。
通常、新規事業をスタートして軌道に乗せるまでには多くの時間とコストがかかりますが、買収によって顧客・取引先・ノウハウなどが獲得すれば、スピーディーに事業エリアの拡大も目指せます。
M&Aの買い手のメリットについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
段ボール業界におけるM&A・事業承継の注意点
注意すべきポイントを大きく整理すると「目的の明確化」「対象企業は丁寧に選択」です。M&Aによってさまざまなメリットを享受するには、M&Aにより何を実現したいかはっきりさせなくてはなりません。 目的が明確であれば具体的なM&A戦略を策定でき、適切なスキームを検討できます。
自社に合う適切なM&Aを実現できれば、期待するシナジー効果も得られるでしょう。M&Aの対象企業は丁寧に選定する必要があります。その企業の事業内容や方針などを検討し、自社に合うかどうかを慎重に見極めなくてはなりません。
ふさわしい対象企業が見つかった場合は、アプローチを早めに行いましょう。アプローチは早ければ早いほど、他の企業に先を越されるリスクを軽減できます。
ただ、M&Aは法務や税務、財務などの専門知識、対象企業との交渉力が必要です。自社だけでM&Aを進めるのは難しいため、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーなど専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
段ボール業界におけるM&A・事業承継の相場
近年の段ボール業界のM&Aは、大手企業、中小企業、海外企業も含め、さまざまな規模の会社が関係しています。比較的小規模のM&Aもありますが、数億円規模、さらには数十億円規模のM&Aも見られます。しかしM&A事例の多様化が進んでいるため、一概に相場や費用を把握するのは難しいです。
ただ、相場の把握が困難だからといって、M&Aにおける相場・費用を全く考慮しないわけにはいきません。 事前にある程度の目安がなければ、M&Aを行う際に予想外の費用が発生するケースもあります。「M&Aに必要な資金が足りない」といった事態は避けなくてはなりません。
そのためにも、自社の状況と類似したM&A事例を徹底的に分析し、ある程度の相場を把握する必要があります。
段ボール業界におけるM&A・事業承継の成功ポイント
ここでは段ボール業界における買収・売却を成功させるためのポイントを見ていきましょう。
売却側
シナジー効果が見込める企業に売却を行う際は、その企業に自社の魅力を知ってもらわなければなりません。 買い手にとって魅力的な事業やサービス体制を構築すれば、それだけ自社に合う買い手が見つかる可能性が高まります。そのためにも、自社の魅力や強みはしっかりとアピールするのが必要です。
特化している分野は何か、強みのあるエリアはどこかなど、魅力・強みを事前に整理し、効果的なアピールへとつなげましょう。
買収側
特定の事業エリアや分野を強化したい場合、その分野で強みがある企業を買収すれば、比較的短期間で事業の強化・拡大を実現できます。双方のノウハウや販路などを活かし、サービス体制の強化につなげることも可能です。
今後は業界内で価格競争が進む可能性があります。コストカットを実現するためにも、買収によるシナジー効果で競争力の強化を図ることは大きなメリットです。こうしたシナジー効果の高い買収を行うには、強化したいエリアはどこか、どの事業を強化すべきかなどの目的を整理し、買収すべき企業を検討するのが重要です。
M&Aによる売却の基礎知識については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
段ボール業界のM&A・事業承継時におすすめの相談先
段ボール業界のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&Aサポートに特化した部門を設立する動きが拡大しています。特に、投資銀行や大手メガバンクは、企業間の取引をスムーズに進行させるために、ファイナンシャルアドバイザー(FA)として資金調達や戦略策定を積極的に支援しています。
こうした専門的なサポートを活用することで、企業は資金調達や事業承継といった複雑な課題にも迅速に対応しやすくなり、専門家の助言により、取引の成功率を高めることができます。
一方、大手金融機関は規模の大きな案件を優先しがちなため、中小企業が十分な支援を受けにくいケースもあります。そのため、企業は自社の規模やニーズに適した支援先を選ぶ必要があります。
また、アドバイザリーサービスの費用は高額になることがあるため、事前にコストを確認し、予算計画をしっかりと立てることが重要です。
公的機関
近年、事業承継やM&Aに対する公的な支援体制が大幅に強化されています。全国各地に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業に向けて、事業承継やM&Aに関する情報提供や専門的なアドバイスを行い、企業間のマッチングを無償でサポートしています。
この体制により、地方の中小企業や個人事業主でも、専門的なサポートを手軽に受けられる環境が整えられています。また、必要に応じて、M&A仲介会社や専門家を紹介することも可能です。
ただし、民間のM&A仲介業者と比べると、対応の迅速さや柔軟性に限界があるケースもあるため、その点には留意が必要です。それでも、公的機関は、事業承継やM&Aを検討する企業にとって、信頼性の高い支援先として重要な役割を果たしています。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収や売却における全過程を支援する専門組織です。売り手と買い手の双方に対し、適切な取引先の紹介、交渉の支援、取引の進行管理、企業価値の算定(バリュエーション)、契約書の作成といった幅広いサービスを提供し、取引を円滑に進行させる役割を果たします。
特に、仲介会社はその豊富なネットワークを駆使して最適な相手を見つけ、M&Aの成功率を向上させることに貢献しています。また、M&Aの経験が少ない企業に対しては、具体的で実践的なアドバイスを提供し、スムーズな進行をサポートします。
ただし、仲介会社を利用する際には、着手金や中間金などの費用が発生するケースがあるため、コスト管理が求められます。コストを抑えたい場合は、成功報酬型の仲介会社を検討することも有効です。
段ボール業界のM&A・事業承継まとめ
近年、さまざまな業界・業種でM&Aが増加していますが、段ボール業界も例外ではありません。同業者同士のM&Aによって事業の強化を実現するケースや、海外企業とのM&Aによってグローバル展開を強化するケースなど、それぞれの目的に沿ったM&Aが行われています。
段ボール業界では、ECの拡大などによる段ボールの需要増加も目立ちます。需要拡大を見込んだサービス体制を強化するためにも、M&Aは効果的な手法となるのです。また、近年の段ボール業界ではM&A事例の多様化も見られます。
M&Aの相場や費用を把握するためには、M&A事例の分析力も必要です。専門家と相談しつつ自社の規模や事業と似た事例は徹底的に分析し、十分な検討を重ねることが大切です。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。