M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年2月6日公開業種別M&A
漁業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!
魚介類などの海洋資源は私達の生活に欠かせないものですが、漁業業界は厳しい市場環境が続いています。そのような中で、事業継続のためのM&Aを模索する動きも出てきています。この記事では、漁業業界におけるM&Aのメリットや事例などについて解説します。
漁業業界の動向
業界動向サーチの分析によると、漁業業界では、2011年から2018年までは市場規模が増加傾向にありましたが、2019年から2020年は減少しました。その後、新型コロナからの経済の回復に伴い、2021年からは売上が小幅に増加傾向にあります。
しかし、原材料費や包装材のコスト、エネルギー価格、輸送コストの高騰によるコストアップで各社とも利益が圧迫されています。各社とも値上げで対応していますが、値上げ幅にコストアップが追いついていません。
参考:業界動向サーチ「水産業界の動向や現状、ランキングなどを分析」
漁業企業をM&Aで売却するメリット
漁業会社をM&Aで売却するメリットは次のとおりです。
売却利益の獲得
M&Aで会社を売却すれば、会社のオーナーは売却益を手に入れることができます。もしも廃業した場合には、廃業にかかるコストをオーナーが負担しますが、M&Aで売却すれば廃業コストはかかりません。それどころか利益を得られます。
利益は引退後の生活費などに使えるので、引退後の生活に余裕を持たせることもできるでしょう。
後継者不足の解消と事業の継続
漁業関係に限らず、日本の会社では6割近い会社が後継者不足により、今後廃業する可能性が高いとされています。漁業業界でも高齢化の波が押し寄せており、近い将来に事業を継続できなくなる会社が増えてくるでしょう。
M&Aで会社を第三者に事業承継することができれば、経営者の親族に後を継ぐ人がいなくても、会社を存続させることができます。M&Aは後継者不足を解決できる手段として大きな注目を集めています。
事業展開や経営の効率化
複数の事業を展開している企業の中には、漁業関連事業がその他の事業の負担になってしまっているところもあります。
そのような場合に、漁業関連事業だけをもっと効果的に発展できる企業に事業譲渡することで、経営に余裕が生まれます。また売却益も手に入れることができます。
漁業関連事業を売却した余裕と資金で、もっと自社が得意とする分野に注力することで、自社の経営をもっと大きく発展させることができる可能性が高まるでしょう。
経営のリスク分散
経営の先行きに不安を感じている場合には、経営が悪化する前にM&Aで売却することで、倒産や経営者が個人債務を負うリスクを回避できるでしょう。
また、中小企業であれば、M&Aで大手の傘下に入ることで、大手の販路に拡大させることが可能になり、安定的な収益が望めます。大手が持つ技術力やブランド力も使えるようになるので、会社をより発展させられる可能性が高まるでしょう。
漁業業界のM&A・売却・買収事例7選
漁業に関連する会社を実際にM&Aした事例を紹介します。
横浜冷凍がHI YR ASを株式譲渡した事例
2021年9月に横浜冷凍株式会社が、連結子会社Hofseth Aqua AS(以下HA)の持株会社であるHI YR AS(以下HI YR)の、すべての所有株式をHofseth International AS(以下、HI)に譲渡するM&Aを実施することを発表しました。
横浜冷凍は冷凍食品を中心とした食品卸と倉庫事業を行っている会社です。HI YRはノルウェーサーモンの安定的な供給確保のために横浜冷凍が2016年にノルウェーで買収したサーモントラウトの養殖事業会社です。
ノルウェー政府が国策として漁業への保護姿勢を強める中で、外国企業である横浜冷凍が50%以上の株式を所有しているとライセンスの新規発行や優遇などを受けられなくなる恐れが出てきたことから、HAを完全にノルウェーの会社にするためにM&Aを実施しました。
参考:横浜冷凍株式会社「連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ」
ヨシムラ・フード・ホールディングスが森養魚場を子会社化した事例
2019年5月に、株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングスが、株式会社森養魚場のすべての株式を取得して子会社化するM&Aを発表しました。
ヨシムラは中小の食品企業を傘下に持つ持株会社です。森養魚場は岐阜県内に3カ所の全国トップクラスの規模の鮎の完全養魚場を持つ会社です。
森養魚場のオーナーが高齢で事業継続が困難になり、ヨシムラにM&Aで事業承継することになりました。
参考:株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス「株式会社森養魚場の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
WDBホールディングスがWDB環境バイオ研究所を譲渡した事例
2018年12月にWDBホールディングス株式会社が、連結子会社であるWDB環境バイオ研究所の全株式を譲渡するM&Aの実施を発表しました。譲渡先は個人であり詳細は公表されていません。
WDBホールディングスはインターネットでのプラットフォーム事業や人材サービス事業、医薬品の基礎研究の代行、支援事業などを展開しています。
WDB環境バイオ研究所は魚介類の養殖販売事業を展開する子会社でしたが、経営資源の選択と集中のために、すべての株式を譲渡することになりました。
参考:WDBホールディングス株式会社「子会社株式の譲渡に関するお知らせ」
マルハニチロがAGROBEST(M)SDN.BHDを譲渡した事例
平成28(2016)年3月に、マルハニチロ株式会社が、連結子会社であるマレーシアのエビ養殖会社AGROBEST(M)SDN.BHD(アグロベスト)の全株式を、福建恒水股份有限公司に譲渡するM&Aを発表しました。
アグロベストはマルハニチロが1988年に設立した会社ですが、2011年以降に東南アジア全域に広がった病害の影響から、厳しい経営状況にあり、事業の選択と集中のための事業譲渡を決定したのです。
参考:マルハニチロ株式会社「子会社の異動にともなう特別損失の計上に関するお知らせ」
ユーグレナが竹富エビ養殖を子会社化した事例
平成27(2015)年9月に株式会社ユーグレナが、竹富エビ養殖株式会社のすべての株式を取得して子会社化するM&Aを発表しました。
ユーグレナは、微細藻類を利用した事業を基本戦略としている会社です。竹富エビ養殖の養殖プールでは水質維持には微細藻類が使われています。
竹富エビ養殖の子会社化によって、ユーグレナに関する実証実験や有効性試験を自社グループ内で可能になるとのことです。
参考:株式会社ユーグレナ「竹富エビ養殖株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
マルハニチロ水産がマダガスカル水産を株式譲渡した事例
平成21(2009)年6月に株式会社マルハニチロホールディングスが、連結子会社のマダガスカル水産(株)の全持ち株を、中水遠洋漁業有限責任公司に売却するM&Aを実施しました。
マルハニチロはマダガスカルで1966年からエビの養殖事業などを展開してきました。しかし、マダガスカルでの資源枯渇問題や操業コストの増大、政情不安などで終始改善が望めないとして、事業撤退を決定しました。
参考:株式会社マルハニチロホールディングス「連結子会社の株式譲渡ならびに特別利益の発生に関するお知らせ」
漁業企業のM&Aの流れ
漁業会社がM&Aで会社を売却したいときにはどうしたらいいのでしょうか。M&Aの流れについて解説します。
専門家への相談
まずはM&Aの専門家に相談しましょう。特に中小企業の場合には、専門的にM&Aの相談に乗ってくれる専門家がいます。M&Aをするべきなのか、どのようなところに売却したらいいのか、懇切丁寧に話しを聞いて教えてくれるでしょう。まずは、M&Aの専門家へ相談するのがおすすめです。
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秘密保持契約の締結
M&Aの専門家にM&Aの売却先探しや諸々の手続きを依頼することに決めたら、まずは秘密保持契約を結びます。
M&Aの手続きを進めるためには会計資料やノウハウなどの機密資料を開示する必要があります。会社の機密を守るためにも、秘密保持契約を締結したほうがいいでしょう。
基本合意書の締結
M&Aの専門家が売却先候補をピックアップして、経営者自らが交渉相手を決めます。買収側とも秘密保持契約を結んだ上で、企業情報の詳細資料を渡して、最初の交渉に入り基本合意書を締結します。
基本合意書では、M&Aの基本的な条件やスケジュール、デューデリジェンスの実施方法などについて記載します。基本合意書では独占交渉権以外の項目には法的拘束力はかけないのが一般的です。
基本合意書の締結後に、買収側が売却側に何らかのリスクがないか徹底調査するデューデリジェンスを実施します。
条件交渉と面談
デューデリジェンスの結果に基づいて行われるのが最終交渉です。具体的な譲渡金額や条件などを決めます。売却側と買収側の経営者同士の面談で交渉することもあります。
最終契約締結とクロージング
最終交渉がまとまったら最終契約書の締結です。最終契約書には、譲渡金額、クロージング日(経営権の引き渡し日)、クロージングまでの義務、クロージング後の義務、売却側が開示した会社の財務や法務などが正確であることを保証する表明保証条項などが盛り込まれます。
クロージング日までに、株主や取引先からの承認を得たり、経営体制の移行に向けて準備したりします。
クロージング日になったら、必要に応じて登記の手続きや株式の名義変更、代金の決済などが行われて、M&Aのプロセスは完了です。
漁業企業でM&Aを行う際の注意点
漁業関連会社でM&Aを行う際の注意点について解説します。
売却先が見つかりにくい
漁業関連はM&Aで既存の企業を買収する場合であっても、参入障壁が他の産業を比較しても高い業界であり、売却したいと思ってもなかなか売却先が見つかりません。
経営者の高齢化などで、M&Aの必要性を感じ始めたら、時間をかけて売却先探しができるように、早め早めに動き始めましょう。
譲渡後は事業として漁を行えない
M&Aで漁業権も付けて会社を売却した場合、会社を売却した後は事業として漁を行うことができなくなります。
個人の漁師や新しく会社を立ち上げて、仕事としての漁を続けたい場合には、売却前に漁業権についての確認をしておきましょう。
従業員(漁師)から反対される可能性もある
会社を売却する場合に、会社の従業員から反対されてしまうことがあります。特に、腕のいい漁師など、買収側がキーマンとして考えている人材からの反対に合ってしまうと、売却もなかなか難しくなるでしょう。
M&Aを公表できる段階になったら、丁寧に従業員に対して説明を尽くして、会社を売却するべき必要性を理解してもらうように務めましょう。
漁業企業のM&A・事業譲渡まとめ
日本人の食にとって水産物はなくてはならないものですが、燃料費の高騰などで漁業関連業界は厳しい局面が今後も続くでしょう。
会社を廃業してしまうと、今までに培ってきたノウハウや製造法が失われてしまいます。ぜひ、廃業を考える前にM&Aでの売却を検討して、会社を存続させる方向性で考えてみましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。