福岡県の事業承継を徹底チェック！動向や成功事例・案件の探し方は？

他の都道府県と同様に、福岡県でも多くの中小企業で経営者の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。

これに対応するため、県内では事業承継支援の拡充が進められており、最近ではM&Aを活用した事業承継も増加しています。

以下では、事業承継について簡単に説明し、福岡県での事業承継の現状や動向、問題点について詳しく解説します。

事業承継とは、経営者が会社の事業を後継者に引き継ぐことです。主に、会社の経営権や資産、従業員や企業文化などを引き継ぐことで、事業を存続させることが可能です。

中小企業においては、経営者が重要な役割を担っていることが多いため、事業承継では後継者選びを慎重に行うことが大切です。

福岡県では、人口減少や高齢化に伴う人材不足や後継者不足に陥っている企業が中小企業を中心に増加しています。

この事態に対して、公的機関やM&A仲介会社などが積極的に事業承継を推進しており、ここ数年で後継者不足の問題は徐々に解消されつつあります。

また、従来は親族内の承継がほとんどとなっていましたが、最近ではM&Aなどの第三者承継も検討されるようになってきており、さらに、後継者不足を理由とした事業承継のみならず、事業規模の拡大やDXの加速化を目的とした事業承継も増加しています。

福岡県では、地域全体で企業の事業承継を推進していますが、それでも廃業や倒産にいたる企業も多く、十分に事業承継が行われていない状況です。

近年では、親族内に後継者が存在しないケースも多く存在し、事業の継続や従業員の雇用の継続のためにも、徐々に第三者への承継を検討する方が増加してきています。

しかし、これまで高齢の経営者が営む企業では家族内承継が主流となっていることが多く、第三者承継の認知が行き届いていない、または第三者に事業承継を行うことに対して抵抗を覚えてしまう方も多くいるでしょう。

今後も高齢の経営者を中心に、第三者への事業承継の魅力や効果などを理解してもらう取り組みが重要となってきます。

事業承継を行う際の目的は、主に以下の3つに分けられます。
 

• 事業の存続
• 従業員の雇用維持
• 売却益の獲得・個人保証の解除

後継者が見つからず廃業する場合や経営難が原因で倒産に至る場合には、顧客だけでなく従業員や取引先、地域の住民など、さまざまなステークホルダーに大きな影響を与えます。

しかし、事業承継を行うことによって、長年培ってきたノウハウや技術を守ることで事業を継続的に発展させ、地域社会や経済に貢献し続けることが可能になります。

事業承継を行うことによって従業員の雇用を維持することも可能です。

廃業や倒産を選択する場合には、従業員の次の雇用先やエージェントの紹介などの転職支援や、解雇予告手当や退職金などの金銭的支援を行う必要が生じます。

そのため、特に後継者が不在で廃業を考えている場合には、従業員が働き続けられる環境を提供できるよう、早期から事業承継対策をして廃業の選択を避けるようにすると良いでしょう。

第三者に対して事業を承継（売却）する場合、経営者はその対価として売却益を得られます。引退後の資産や新たな投資資金として活用することができます。

また、事業承継によって、経営者が負っていた個人保証を解除することも可能です。個人的な財務リスクから解放されることによって、精神的な安心感が得られるでしょう。
 

事業承継を行う場合、しっかりと手順を理解しておくことでスムーズに進められるようになります。

ここでは、事業承継を行う場合の手順について解説します。

第三者承継を行う場合、最初に相手先企業の選定・状況確認を行います。

自社の事業を承継する相手先企業選びは、事業承継を成功させるために非常に重要なことです。

自社に適した相手先企業を見つけたとしても、状況次第では他の企業へ変更するなどすることも必要になります。

自社の事業を最適な後継者に承継することは、事業承継後に事業を順調に運営するために欠かせないポイントです。

特に、中小企業では経営者が非常に重要な役割を担っていることが多く、後継者にもその重要な役割を担ってもらう必要があります。

最適な後継者選定ができれば、事業承継後も事業を効果的に成長・拡大させられる確率が高くなります。

後継者が見つかれば、次に事業計画書を作成します。

事業計画書では、主に会社の状況や後継者の候補、後継者の教育状況などを詳細に記載して、事業承継で何をするかをはっきりさせることが大切です。

また、自社のみで事業計画書の作成が困難な場合は、M&A仲介会社などの専門家からのサポートを受けながら作成することがおすすめです。

事業承継を行うことは、しっかりと親族・従業員、取引先などの関係者へ説明しておきましょう。

経営者や一部の役員のみで事業承継を行うことを決定してしまうと、親族・従業員から不安感を与えてしまい関係性が悪化したり事業承継後の離職などへと繋がってしまったりしてしまいます。

また、事業承継を行うことで十分な効果が期待できると判断できるまでは、情報漏れが起きないように注意しましょう。

事業承継は、できるだけ経営状況の良い状態で後継者に承継することが大切です。

そのため、財政状況や従業員のスキルなどを向上させて経営改善を図ることが重要になります。
特に、不必要な資産や個人債務などはできるだけ減らしておくことが効果的です。

自社のみで経営改革を進めることが難しい場合は、M&A仲介会社や公的機関などからサポートを受けることも効果的な手段になります。

事業承継に必要な業務が全て完了したら、事業計画書に基づいて事業承継に着手していきます。

ここでは、後継者に事業の経営権や資産などを移動させていき、完全に引き継ぎを進めていきます。
ただ、この段階で後継者の教育が不十分な場合や計画通りに予定が進んでいない場合は、焦らずに事業承継を遅らせるようにしましょう。

無理に進めてしまうと、事業承継が失敗してしまうリスクが高くなってしまうため、十分に注意が必要です。

福岡県では、これまでに数多くの企業が事業承継を行なっており、今後も多くの企業が事業承継を行うことが予想されています。

これから福岡県で事業承継を検討している企業は、福岡県での事業承継・M&A事例を参考にすることをおすすめします。

ここでは、福岡県の事業承継・M&A事例を7つ紹介します。

ゲオホールディングスは、2019年4月におお蔵の全株式を取得して完全子会社化しました。

ゲオショップやセカンドストリートなどの買取販売店を展開しているゲオホールディングスは、商材調達力の向上やノウハウの共有による事業成長を目的に、福岡県に本拠地を置き、高級時計やブランド品を取り扱うおお蔵とのM&Aを行いました。

今後、ゲオホールディングスは競合他社との競争力の強化や事業拡大を進めていく方針です。
 

丸和運輸機関が2022年7月にM・Kロジの全株式を取得し完全子会社化しました。

丸和運輸機関はEC物流・医療物流・ロジスティックコンサルティング事業を展開しており、M・Kロジは倉庫業・物流アウトソーシング・物流コンサルティング事業を行う企業です。

このM&Aでは、丸和運輸機関がノウハウの共有や物流事業の強化などを目的に行われた事例の1つであり、今後さらに充実した物流サービスの提供を進めていくことでしょう。　

ヤマナミ麺芸社は2019年1月に樽味屋の株式を取得し子会社化しました。

大分県でラーメン屋を展開しているヤマナミ麺芸社は、福岡県で野菜漬物製造を行う樽味屋を買収することで、事業の多角化を図りました。

樽味屋は、自社を売却することで従業員の雇用や自社の事業が存続でき、お互いに十分なシナジー効果があると判断したため、事業承継が実現しました。

福岡運輸は、2018年10月に八洲陸運の全株式を取得し子会社化しました。

低音物流に特化した物流事業を展開している福岡運輸は、東北地方での物流事業の拡大を進めていたため、青森県で物流事業の基盤を持っている八洲陸運との事業承継を行いました。

この事業承継によって、福岡運輸は東北地方だけでなく北海道から鹿児島県までの全国で多くの物流事業拠点を確保することができました。

丸松セムは、2017年8月にミモザの全株式を取得し子会社化しました。

丸松セムは女性向けアパレル製品の企画・製造・卸売を行っている企業で、ミモザは四国・中国地方に婦人服を販売している企業です。

丸松セムは、アパレルの小売業に参入するために婦人服の小売業を行っているミモザを買収しました。今後は、自社製品のアパレル小売に力を入れていく方針です。

福岡運輸ホールディングスが2016年1月に北松通運の株式を買収して子会社化しました。

福岡運輸ホールディングスは九州地方を拠点に物流事業を展開している企業の親会社で、北松通運は長崎県を拠点に貨物運送事業などを展開している企業です。

福岡運輸ホールディングスは、北松通運を買収することで長崎県での事業基盤を獲得することで地域への貢献や復興を進められるとしています。

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、2022年10月に林久右衛門商店の株式を取得し子会社化しました。

この事業承継は、食品関連会社の持株会社であるヨシムラ・フード・ホールディングスが、林久右衛門商店の持つ削り節などの製造・加工技術やブランド力などに魅力を感じたことで実施されました。

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、林久右衛門商店の商品開発力やブランド力、ノウハウを活かして、販路拡大や業績向上を目指しました。

事業承継を行うなら、自社の事業を引き継いでくれる企業を探す必要があります。
ただ、どのようにして自社に最適な承継先を見つければいいのかわからないと感じている企業も多くいます。

ここでは、福岡県の事業承継・M&A案件の探し方について解説します。

マッチングサイトとは、M&A・事業承継のための相手先企業選定を行えるサイトのことです。

無料で利用できるものも多く提供されており、業種や規模に応じてさまざまな候補を探すことができるため、自社のみでも最適な相手先企業を見つけられます。

ただ、弁護士や税理士などへの依頼を自社で行う必要があり、M&Aサポートも受けることができないことを理解して利用しましょう。

ベンチャーキャピタルとは、将来性のあるスタートアップ企業やベンチャー企業の株式を取得して、上場や買収の際に高額で株式を売却することを目指している機関です。

目的の一環として、スタートアップ企業やベンチャー企業への出資や経営コンサルティング、育成支援などを行います。

そのため、ベンチャーキャピタルの中には、将来性の高い企業を多く周知していることが多く、優良なM&A案件として保有しているケースも少なくありません。

事業承継・引継ぎ支援センターは、各都道府県の自治体に設置されている公的機関のことです。

主に、経営やM&A、事業承継に関する相談・支援を無料で行なっており、多くの中小企業や小規模事業者などが利用しています。
さらに、M&Aマッチングサイトや後継者人材バンクなどを提供していることもあるため、自社に最適なM&A案件を見つけることも期待できます。

そのため、自社拠点の周辺に事業承継・引継ぎ支援センターがある場合は、利用してみることをおすすめします。

金融機関では、主に資金調達や融資に関する相談・支援を行っていますが、中にはM&A・事業承継に関する相談も引き受けているケースがあります。

地元の企業との結びつきが強く、他の機関では取り扱っていない独自の案件を有していることもあります。

また、全国の金融機関との幅広いネットワークを活用して自社に最適なM&A案件を探してもらうことも可能です。

M&A仲介会社などの専門家は、事業承継やM&Aに関連する全ての業務のサポートに特化しており、事業承継の案件（相手）を紹介してもらえるだけでなく、その後の手続きも代行してもらうことができます。

M&A仲介会社であれば、売却側と買収側の間に入って中立の立場でマッチングや条件交渉を進めてくれるため、自社が不利になる可能性がほとんどありません。

公的機関と異なり費用はかかりますが、さまざまなサポート・アドバイスを受けられるため、事業承継での失敗のリスクを軽減することができます。

初めて事業承継を行う場合、自社のみでは知識は十分でないため、効果的に事業承継を進めることが困難です。

そのため、事業承継を検討している場合は、事業承継・M&Aの専門家に相談するようにしましょう。

ここでは、福岡県のM&A・事業承継の相談先について解説します。

福岡県事業承継・引継ぎ支援センターは、福岡県にある公的機関の1つで、無料で経営や事業承継に関する相談を受け付けています。

主に、事業承継に必要な準備や業務の支援や後継者不在や経営不振、人材不足などの関する相談・アドバイスを受けることが可能です。

さらに、福岡県事業承継・引継ぎ支援センターからM&A仲介会社への紹介もしてもらえるため、自社に適したM&A案件の獲得やスムーズな事業承継を進められます。
 

福岡県よろず支援拠点は、中小企業や小規模事業者に向けて無料で経営相談を行っている公的機関の1つです。

主に、経営や事業承継の専門家やコーディネーターが在籍しており、企業ごとに最適なアドバイスや支援を行うことができるため、初めて事業承継を行う企業でも安心して利用できます。

また、個別相談会やセミナーなどを開催しているため、わからないことや不安なことがある企業でも効果的に解決させられます。

福岡県信用保証協会は、主に資金調達や融資などの相談を受けている金融機関の1つです。

主に、福岡県信用保証協会が公的保証人として資金融資をスムーズに進められるように支援してくれるため、事業承継や経営改善に必要な費用を得やすくなります。

そのため、事業承継のために資金を必要としている場合は、利用してみることをおすすめします。

福岡商工会議所は、福岡県の中小企業や小規模事業者の経営者が会員となって構成されている公的機関です。

会員同士で福岡県の地域復興や経営改善、事業拡大や事業承継などのさまざまな相談・支援を行っているため、効果的に事業承継を進めることもできます。

また、従業員の福利厚生や保険などの支援も行っているため、経営状況を改善させたい場合にも効果的です。

M&A専門家・仲介会社も効果的な相談先の1つです。

M&A仲介会社では、事業承継に関するさまざまな相談から事業承継に必要な業務や準備まで徹底して支援してくれるため、初めて事業承継を行う企業でもスムーズに進められます。

さらに、自社に最適なM&A案件を見つけるためのマッチングサイトを保有している仲介会社も多いため、これから相手先企業の選定を行う場合にも効果的です。

事業承継にはいくつかポイントがあるため、これから事業承継を検討している企業は事業承継のポイントについても理解しておくことが大切です。

ここでは、事業承継を行う際のポイントについて解説します。

事業承継には、後継者の選定、引き継ぐ資産や負債の整理、事業承継に向けた経営改善など、事前に準備しなければならないことが数多くあり、多くの時間が必要となります。

親族内承継や従業員承継を考えている場合には、後継者候補の育成が十分に進んでいない、第三者承継を考えている場合には事業を承継する相手が見つからないなど、引退したいと考えているタイミングに合わせて事業承継を行えない可能性もあります。

そのため、最適な条件・タイミングで承継することができるよう、早期から事業承継対策を講じておくことが大切です。

事業承継を行う際は、事前に従業員や取引先から理解を得ることも大切なポイントです。

従業員や取引先からの理解が得られていない状態で事業承継を進めてしまうと、従業員や取引先からの信用を失ったり不安感を増加させ、事業承継後に多くの従業員が離職したり取引先からの契約が破棄されたりしてしまう可能性があります。

そのため、従業員や取引先からの理解を得た上で事業承継を進め、混乱を招かないためにも事業承継について早めに公表しておくことが大切です。

福岡県では、事業承継を行う企業が増加傾向にありますが、後継者問題を抱える企業は半数以上を占めるため、今後も多くの企業が事業承継を視野に入れることになるでしょう。

特に、中小企業や小規模事業者などは経営者の高齢化や人材不足による廃業の危機などを抱えているケースが多く、雇用の確保や自社の存続のためにも、事業承継のニーズは高いと考えられます。

ただ、事業承継には多くの知識や業務が必要となり、簡単に進めることが難しいものであるため、M&A・事業承継を検討する際は専門家に相談して慎重に進めることをおすすめします。