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製薬会社におけるM&Aの売却/買収事例とは?買う・売る方法、費用の相場を解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

製薬会社のM&Aは、買い手、売り手によってM&Aを選択する目的は異なります。メリット・デメリットをしっかり判断した上でM&Aを選択しましょう。大きな意思決定であるM&Aは注意点も多いため慎重に専門家を活用しましょう。

目次

    製薬会社のM&A

    M&Aはすでに一般的な経営戦略として様々な会社で使われるようになっています。

    ただ、M&Aがどういう意図で行われているのか、どういった背景で使われているのかは業界ごとに異なっています。

    今回は製薬会社で行われているM&Aに注目していきます。

    健康への意識が高まっている今、製薬会社がある医薬業界は好調のイメージがありますが、M&Aはどのような理由で行われているのでしょうか?

    ぜひ参考にしてみてください。

    製薬会社のM&Aとは?

    製薬会社で行われているM&Aはどのようなものでしょうか?

    製薬会社で行われているM&Aには大きく分けて3つの理由があります。

    その理由はそれぞれ以下の通りです。

    ⑴市場の拡大

    一般的なM&Aでも市場の拡大を目的に実行されることは多いですが、製薬会社のM&Aも例外ではありません。

    大手の製薬会社の中には東南アジアやアフリカへの市場拡大のためにM&Aを実施するなど、積極的に市場の拡大を行うケースは少なくありません。

    最新技術が投入されるなど、医療の分野はどんどん拡大しており、海外からのニーズも尽きることはありません。

    中には特定の国や地域のシェアの独占に成功したM&Aもあります。

    そもそも日本は少子化による人口減少で、国内の市場は縮小傾向にあり、既存の事業展開では限界を感じている製薬会社が少なくありません。

    そのため新たな市場を獲得できるM&Aによる海外進出は有効的な方法だといえます。

    ⑵新薬の研究開発のための人員・費用・設備の確保

    製薬会社が事業を継続していくうえで避けては通れない課題が「新薬の研究開発」です。

    新薬を研究開発することで製薬会社は事業を拡大し、競合他社との差別化に成功できるからです。

    しかし新薬の研究開発は年々ハードルが高まっています。

    そもそも新薬の研究開発が成功する可能性は3割程度といわれており、失敗する可能性がはるかに高いものだからです。

    それに加えてジェネリック医薬品の台頭が新薬の研究開発にブレーキをかけてしまっています。

    ジェネリック医薬品は既存承認医薬品の特許期間が終了した後に同じ有効成分、形を持つ医薬品のことを指しており、オリジナルの医薬品より安い値段で販売できるものです。

    オリジナルの医薬品と変わらない成分をリーズナブルな金額で購入できることからジェネリック医薬品は人気が高まっていますが、それがかえって製薬会社の売り上げ低下を招いてしまっています。

    そのため新薬の研究開発を行いたくても、製薬会社は研究開発に必要なコストをかけづらくなっています。

    さらに薬効成分のライセンス契約取得など必要なプロセスを完了させるためのコストの増大や政府主導の薬価引き下げなども新薬開発のハードルを上げているといえるでしょう。

    そのため製薬会社はM&Aを通じて人員・費用・設備の確保を実施し、コストをコントロールしつつ新薬の研究開発ができる環境を整えるようになっています。

    ⑶新事業の進出

    従来の製薬会社によってジェネリック医薬品の台頭は酸いも甘いもあるものですが、他業種からしたらジェネリック医薬品が台頭する医薬業界は魅力的な市場に見えるでしょう。

    そのため医薬業界へ進出する他業種の会社がM&Aを利用するケースが増えています。

    他業種が製薬会社のように設備を整えることは決して簡単ではありません。

    医薬品を製造するための設備や知識、ノウハウを取り揃えることは難しく、研究開発ができる人員も確保は簡単ではなく、教育にも時間がかかります。

    しかしM&Aであれば、設備や人員の確保にかかるコストや時間を省くことが可能になります。

    製薬会社のM&Aの現状と動向

    製薬会社のM&Aの現状と動向はどうなっているのでしょうか?

    製薬会社のM&Aは世界的に見ても、大手・中堅関係なく行われています。

    M&Aは1990年代に欧米の製薬会社の間で頻繁に行われるようになり、その結果、大型のブロックバスターが次々と生み出されるようになりました。

    これに対して日本の製薬会社は2000年代からM&Aを本格化するようになりました。

    欧米の製薬会社に対して遅れは取っていますが、国内・国外問わずM&Aは増加傾向にあります。

    とりわけ顕著に目立つのが大型のM&Aです。

    詳細は後述しますが、国内の大手の製薬会社同士がM&Aで経営統合を行ったり、海外の製薬会社を買収するなど、大規模なM&Aが頻出しています。

    いずれも新薬の研究開発のための設備・人員・資金の確保や新しい市場の獲得が目的のM&Aであり、一定以上の成果を上げています。

    医療の進歩はめざましく、新しい技術が次々と導入されている昨今、このような大型のM&Aは今後も発生すること考えられます。

    また、業界を問わず、中小企業が共通して抱えている事業承継という課題も、M&Aを行う動機を作っています。

    昨今の中小企業は経営者が高齢化しており、引退を迎えようとしていても後継者がいない「後継者不在」という状況に陥りがちです。

    そのため会社を存続させるために、第三者に会社の経営を託す事業承継M&Aを行うケースが増えています。

    製薬会社も例外ではなく、後継者がいない製薬会社が事業承継のためにM&Aを行うケースが発生しています。

    製薬会社のM&Aの相場と費用

    製薬会社がM&Aを行う際、その費用の相場はどうなっているのでしょうか?

    会社によって異なりますが、製薬会社は総じて高い費用になる傾向があります。

    製薬会社は特殊な設備、人員があり、また許認可もあるため、M&Aにおいてはその分費用が高くなります。

    そのため製薬会社のM&Aは他の業界より相場が高くなるといえるでしょう。

    もし製薬会社のM&Aが大企業同士の大型M&Aであれば、その費用はかなりの巨額になります。

    日本国内で実際にあった製薬会社のM&Aで最も大きな費用がかかったのは日本の製薬会社である武田薬品工業とアイルランドの製薬会社のシャイアーが行ったM&Aです(M&Aの詳細は後述します)。

    その際、武田製薬はシャイアーを買収するために約7兆円の費用をかけたといわれています。

    この規模の大型M&Aは頻繁に起こるわけではありませんが、大企業同士のM&Aであれば数千億円以上の費用が発生することは珍しくありません。

    中堅の製薬会社同士のM&Aでも数十億円に達するM&Aが発生することは充分に考えられるでしょう。

    そのため製薬会社のM&Aはいかに資金調達を行うかが重要だといえます。

    製薬会社の買収とは?買う・買いたい場合

    製薬会社を買収する際、どのような動機があるでしょうか?

    製薬会社の買収において最も動機になるのは、やはりさきほどもお伝えした人員・費用・設備の確保だといえます。

    製薬会社が事業を展開する、あるいは新薬の研究開発を行ううえで人員・費用・設備は欠かせないものです。

    しかしゼロベースからこれらを用意するのはコストも時間もかかることであり、とりわけ人員に関しては教育や研修にどうしても時間がかかってしまいます。

    そのため買い手となる会社はM&Aを活用してこれらを揃える手間を省こうとします。

    また、売り出している新薬の特許切れが近づいている製薬会社がM&Aに乗り出すケースも多いです。

    特許切れを迎えれば、一気にジェネリック医薬品が増えてくるため、たとえその製薬会社の看板商品でも、その売り上げだけに頼り続けるのは危険です。

    これから売り出す新薬の候補も少ないと言う状況であれば、M&Aで新たな人員やノウハウを取り入れ、さらなる新薬の研究開発に乗り出すことは充分に考えられるでしょう。

    ただ、さきほどもお伝えしたように製薬会社のM&Aは費用がかかりやすいものであり、いかに資金調達を行うかが肝要です。

    基本的に製薬会社のM&Aは他の業種が行うM&Aのように直接現金を使用したり、株式譲渡を行うことで買収を実行するケースがほとんどです。

    しかし海外進出のためのM&Aを行う場合、従来のやり方では資金が間に合わなくなる可能性が高くなるでしょう。

    その際は海外のM&Aの仕組みを活用するという方法があります。

    実際、武田薬品工業が行ったシャイアーの買収ではイギリスの「スキーム・オブ・アレンジメント」という制度を活用してM&Aを成功させました。

    これは株主の過半数が議案に賛同しており、加えて議決権を持つ株主の75%以上も議案に賛同していた場合、全ての株式を取得できるという制度です。

    これを活用することで武田製薬薬品はシャイアーの株主が持つ全ての株式を等価交換で買収することに成功しました。

    このように自分達が行うM&Aに役立つ制度があるなら、積極的に活用していくことも資金調達を円滑にできる有効策だといえるでしょう。

    製薬会社の売却とは?売る・売りたい場合

    売り手となる製薬会社にとっても、M&Aは有効的な手段だといえます。

    さきほどお伝えした事業承継がそうですが、後継者不在によって存続が危ぶまれている製薬会社にとってM&Aは事業や雇用を守る手段となり得ます。

    ただ、M&Aそれ自体の成功率は決して高くなく、3割~5割程度だといわれています。

    そのため失敗する可能性を考慮しつつ、慎重に行う必要があります。

    また後継者不在のような事情を抱えておらずとも、M&Aは売り手となる製薬会社にとって役立つことがあります。

    さきほどもお伝えしたように新薬の研究開発はハードルが上がっており、必要な費用も膨大になりやすいものです。

    そのため中堅の製薬会社のような規模だと、資金繰りが苦しくなり、事業展開が難しくなる可能性があります。

    そんな時にM&Aを行い、大手の資本の傘下に入ることができれば、財務基盤が強化され、潤沢な資金を元に新薬の研究開発に取り組むことができるようになります。

    昨今、国内市場の縮小だけでなく、ジェネリック医薬品の流通や薬価の引き下げによって製薬会社の成長は抑制されており、中堅の製薬会社にとっては厳しい状況が続く今、M&Aは今後の事業展開の活路を見出す手法だといえるでしょう。

    製薬会社のM&Aは大手・中堅に関わらず、多くの会社が実践していますが、今後もその傾向は続くと見込まれています。

    しかし製薬会社が売り手になる際、ネックとなりやすいのが費用です。

    売り手である以上、高値で売却できるのは大きなメリットですが、あまりに大きい費用に膨れ上がると買い手がM&Aを渋ってしまう可能性があります。

    そのため、買い手となる会社と売り手となる会社がどのようにM&Aを前進させるか、入念な交渉が必要になると言えるでしょう。

    製薬会社のM&A事例

    ここでは実際にあった製薬会社のM&Aの事例についてお伝えしていきます。

    今回お伝えするのはさきほども触れた武田薬品工業と沢井製薬が行ったM&Aの事例です。

    ⑴武田薬品工業のM&A

    武田薬品工業が行ったM&Aで有名なのは2017年に行ったアメリカの製薬会社のアリアド・ファーマシューティカルズと、さきほどお伝えしたシャイアーとのM&Aです(こちらは2018年に実施されました)。

    2017年の武田薬品工業が買収したアリアド・ファーマシューティカルズは特許申請中のALK阻害剤「ブリガチニブ」をはじめとする抗ガン剤を専門的に取り扱っている製薬会社であり、武田薬品工業はガン領域を強化するためにアリアド・ファーマシューティカルズを買収しました。

    これは従来の事業の強化のために行ったM&Aだといえます。

    そして日本国内で最大額に達したシャイアーとのM&Aでは、武田薬品工業は今後の新薬の研究開発のための地盤作りを実行しました。

    そもそも武田薬品工業はアリナミンのような医薬外事業が主力になっており、従来の事業展開では限界を感じていたために、これだけ新薬の研究開発に力を入れようとしているのだといえます。

    しかし良くも悪くも巨額のM&Aが話題になったために、先行きが不安視された武田薬品工業の株価は一時的に暴落しました。

    ⑵沢井製薬のM&A

    さきほどお伝えした武田薬品工業とは異なり、ジェネリック医薬品を取り扱っている沢井製薬もアメリカの製薬会社であるアップシャー・スミス・ラボラトリーズを買収しています。

    ジェネリック医薬品の市場は現在も伸びてはいますが、薬価の引き下げも影響して、その伸びしろはだんだん低迷しています。

    そのため、今は好調でも、ジェネリック医薬品の市場がいずれ低迷する兆しは徐々に見え始めています。

    沢井製薬のアップシャー・スミス・ラボラトリーズの買収はそんな状況を打開するために、アメリカ市場に進出することが狙いです。

    沢井製薬のM&Aを見ていると、ジェネリック医薬品を扱っている製薬会社も油断できない状況であることがわかります。

    まとめ

    製薬会社は他の業種と違って、様々な社会的情勢が絡みやすい会社です。

    加えて事業の特殊性からM&Aにかかる費用も大きくなる傾向があります。

    そのため製薬会社全体の動向やM&Aの発生は当事者でなくとも注目すべきものがあるといえるでしょう。

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