2024年12月31日更新業種別M&A

電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継の現状は?事例や案件例まで紹介!

本記事では、電子機器を構成する回路基板・半導体・部品などを製造している電子部品業界に焦点を当て、M&Aによる事業承継の事例を紹介します。事業承継時の相談先やM&Aでの成功ポイントも解説します。電子機器のM&A・事業承継を検討している方は必見です。

目次
  1. 電子機器・回路基板・部品製造業界の現状
  2. 電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継の動向
  3. 電子機器・回路基板・部品製造をM&A・事業承継するメリット5選
  4. 電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継の案件例3選
  5. 電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継事例
  6. 電子機器・回路基板・部品製造をM&A・事業承継する際のポイント
  7. 電子機器・回路基板・部品製造をM&A・事業承継する際の相談先5選
  8. 電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継のまとめ
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電子機器・回路基板・部品製造業界の現状

まずは電子機器・回路基板・部品製造業界の現状を解説します。

電子機器・回路基板・部品製造業界の市場規模

電子基板の需要は、国内外の景気に強く左右されます。過去50年を振り返ると、1990年のバブル期に初めて国内の電子回路基板生産額が1兆円を突破しましたが、その後は低迷しました。2000年のITバブルでは再び急激な増加が見られ、2007年には戦後最長の景気拡大の影響で3度目のピークに達しました。その後は減少傾向が続き、2013年以降は6,000億円から7,000億円の間で推移しています。

ただし、基板の種類によって需要の動きは異なります。経済産業省の統計によれば、2022年のフレキシブル配線板では、片面板の生産額が前年比で21%減少した一方、両面板は4%増加しました。また、リジッドプリント配線板では多層板の需要が大きく伸びています。

参考:日経コンパス「電子回路基板・配線板」

電子機器・回路基板・部品製造業界の課題と展望

電子情報技術産業協会が発表した「電子部品技術ロードマップ」によれば、2028年までにSociety 5.0(超スマート社会)の実現を支える4つの主要分野が挙げられています。

具体的には、「ヒューマンライフ」、「モビリティ(環境対応車、自動運転技術、システムや電子部品など)」、「インダストリー(産業用ロボット、物流や小売産業)」、そして「六次産業(農業、漁業、畜産、林業など)」です。

日本では、Society 5.0を目指してIoT、AI、ロボット、センサーといった先進技術を活用し、社会全体の効率化や最適化を図る取り組みが進められています。この動きは企業だけでなく、政府も積極的に関与しています。

特に、電子機器や回路基板、部品製造分野の技術進化が、Society 5.0を支える重要な基盤となると期待されています。

参考:電子情報技術産業協会「電子部品技術ロードマップ」

電気機械器具製造・卸のM&A・事業承継事例については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】電気機械器具製造・卸のM&A・事業承継事例14選を紹介!業界動向や相場も解説!

電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継の動向

電子機器・回路基板・部品製造業界のM&A・事業承継動向は、以下のように推移しています。

  1. 海外に生産拠点が移っている 
  2. 最新機器の受注を取れることが重要
  3. 事業所数は徐々に減少している

①海外に生産拠点が移っている

これまで性能の高さで他国と差別化を図ってきた日本の電子機器・回路基板・部品製造業界ですが、近年はこれまで安価な製品を作ってきた国で品質が向上しています。

これを受けて、日本でも高性能な製品をできる限り安く製造するために、海外に拠点を設ける企業が増加している状況です。

②最新機器の受注を取れることが重要

自動車業界における技術の大転換・スマートフォンの性能向上・IoTの普及などにより、電子機器・回路基板・部品製造業界に対する需要が変化しています。

トレンドの変化に対応した製品開発を行い、最新機器の受注を取れるかが、生き残るためのカギといえるでしょう。

そこで電子機器や回路基板、部品製造業界では、規模の大きさではなく、自社にない特定の技術を持つ企業を対象としたM&Aが増加しています。

これらのM&Aは、単に企業規模を拡大することを目的とするのではなく、必要な技術を効率的に取り入れることに重点を置いています。今後もこのような技術獲得型のM&Aが主流となると考えられます。

③事業所数は徐々に減少している

電子機器・回路基板・部品製造業界の市場規模は堅調に推移していますが、事業所数は減少傾向です。

これは、大手・中堅企業が自社グループ内でサプライチェーンの構築戦略を取り、M&Aによる統合の増加・経営者の高齢化・後継者不在による廃業などが増加していることが主な原因と考えられます。

ソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収の動向については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】ソフトウェア業界のM&A・会社売却・買収の動向/相場/メリットを解説【事例あり】

電子機器・回路基板・部品製造をM&A・事業承継するメリット5選

電子機器・回路基板・部品製造業界でM&A・事業承継を行う場合、以下のようなメリットが得られます。

  1. 後継者問題の解決 
  2. 大手の傘下に入れば海外進出が可能になる
  3. 技術継承が行える
  4. 従業員の雇用を守る
  5. M&Aによる譲渡・売却益の獲得

①後継者問題の解決

電子機器・回路基板・部品製造業界でも多くの中小企業が直面している後継者問題ですが、M&A・事業承継によって最適な後継者を探せて、後継者問題の解決を図れます。

②大手の傘下に入れば海外進出が可能になる

大手・中堅企業の海外進出が増加している電子機器・回路基板・部品製造業界ですが、中小企業でも大手の傘下に入ることで資金・ノウハウ・人材を活用でき、海外進出を目指すことが可能です。

③技術継承が行える

電子機器・回路基板・部品製造業界では独自技術を保有する企業も多いですが、M&A・事業承継によって技術を継承することで、技術が失われることを防げます。

④従業員の雇用を守る

従業員の雇用確保は経営者にとって重要な課題ですが、M&A・事業承継によって人材不足の電子機器・回路基板・部品製造業界で貴重な技術者の雇用を守ることも可能です。

⑤M&Aによる譲渡・売却益の獲得

電子機器・回路基板・部品製造業界の中小企業では、オーナー経営者やその親族ですべての株式を保有しているケースが多いです。M&A・事業承継によって譲渡・売却益を得ることで、会社経営からのリタイア資金や新事業の資金などに使用できます。

買手企業にもメリットがある

M&Aによる電子機器・回路基板・部品製造会社の事業承継でメリットがあるのは、売手企業のみではありません。買手企業は、M&Aによる事業承継により、時間や資金の節約をしながら実績のある取引先や顧客のネットワークを獲得できるほか、未進出の地域や国で事業拡大や販路の拡大も可能です。

また、承継と同時に人材も確保できるため、人材確保のための手間や費用なども節約できます。これらの点は、新天地への事業拡大・時間や費用の節約を望む企業にとって魅力のあるメリットです。

電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継の案件例3選

弊社M&A総合研究所が取り扱っている電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継の案件例をご紹介します。

①【純資産アンダー/中国地方×製造業】LED照明・電気自動車の電子部品製造業

LED照明は自社ブランドにて展開しており、電子部品は大手車載向け電子部品製造メーカーへ独占的に部品を製造しています。
 

エリア 中国・四国
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【純資産アンダー/中国地方×製造業】LED照明・電気自動車の電子部品製造業(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

②【首都圏×電子部品組立業】無借金経営

取引先は医療業界から自動車業界など幅広い業種があります。通常のはんだつけから、微細及び精密部品への対応も可能です。
 

エリア 関東・甲信越
売上高 5000万円〜1億円
譲渡希望額 5000万円〜1億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【首都圏×電子部品組立業】無借金経営(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

③【東京/高利益率】大手電子部品メーカーの代理店 電子部品卸売業

東京にて電子部品卸売をメインとする企業です。大手メーカーの代理店として確固たる仕入基盤、販路を保有しています。
 

エリア 関東・甲信越
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 5000万円〜1億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継事例

ここからは、以下の電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継事例を紹介します

①三菱電機によるALT Heis社の買収

2024年11月29日、三菱電機は、スウェーデンの子会社Motum ABを通じて、ノルウェーのALT Heis ASの全株式を取得しました。三菱電機は、幅広い分野を手がける総合電機メーカーであり、Motum社とALT Heis社はいずれも昇降機の新設、保守、リニューアル事業を展開しています。

この買収は、三菱電機とその子会社である三菱電機ビルソリューションズが進めるグローバルな昇降機保守事業拡大戦略の一環で、2023年にUNIHEIS社を買収した流れを受けたものです。本件により、ノルウェーでの保守事業拡大や欧州市場全体での保守ストック拡大を図り、事業基盤のさらなる強化を目指しています。

ノルウェー昇降機事業会社ALT Heis社を買収 M&A成長による欧州の昇降機事業を拡大

②能美防災によるシステムズの買収

2024年10月1日、能美防災は、宮城県仙台市に本社を置く株式会社システムズの全株式を取得し、子会社化しました。

今回のM&Aにより、能美防災グループは、東北地域における防災および弱電分野での協力体制を強化し、さらなる事業拡大を目指します。

能美防災グループは、火災報知機や消火設備を提供し、社会の安全を守る防災総合企業です。一方、システムズは東北エリアで電気通信、電気工事、消防設備の設置を手がけており、地域に根ざした事業展開を行っています。

株式会社システムズの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

③アイコムによるコムフォースの買収

2024年8月8日、アイコムは、東京都江東区に本社を置く関連会社のコムフォースの全株式を取得し、完全子会社化しました。

アイコムは、業務用からアマチュア用まで幅広い無線通信機器を製造・販売するメーカーです。一方、コムフォースは、ODA(政府開発援助)案件を中心に、中規模・大規模な無線通信システムの設計・構築・設置、そしてサポート業務を手掛けています。

今回のM&Aにより、アイコムは単なる無線機器の販売に留まらず、無線通信システム全体の提供を強化していく方針です。特に、コムフォースが持つ20年以上の無線システム構築の経験を活用し、国内外での事業継続計画(BCP)関連ビジネスにおいて、提案力と競争力を高めることを狙っています。

システムインテグレータ会社 株式会社コムフォースの株式取得(⼦会社化)に関するお知らせ

④ロームによるラピステクノロジーの吸収合併

2023年9月、ロームはラピステクノロジーの吸収合併を行いました。

ロームを存続会社とし、ロームの子会社であるラピステクノロジーは2024年3月で解散します。ロームは、半導体・電子部品メーカーです。対象会社のラピステクノロジーはマイクロコントローラ、画像LSI、音声合成LSIなどの企画・開発を行う企業です。

今回のM&A(吸収合併)により製品開発の強化を目指します。

⑤KYOCERA AVXによるロームのタンタルコンデンサの事業譲受

2022年8月、KYOCERA AVX Components Corporationは、ロームよりタンタルコンデンサ製品の事業資産(製造ライン・知的財産権など)を譲受しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。

買収側は、電子部品・電子機器の大手メーカー京セラの米国子会社で、先進的電子部品を製造する企業です。売却側は、LSI・半導体素子・ダイオード・トランジスタ・LED・抵抗器などの製造販売を展開しています。

本件M&Aの目的は、世界的なシェアを持つタンタルコンデンサ分野をさらに強化すること、電解コンデンサソリューションのポートフォリオを一気に拡大することです。

タンタルコンデンサ事業に関する資産譲渡について

⑥アルコニックスによるジュピター工業の買収

2022年4月、アルコニックスは、ジュピター工業の株式すべてを取得しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。

買収側は、グループの中核企業として国内外子会社とともに電子機能材・アルミ・銅・ニッケル・レアメタル・レアアースなどの商社事業を展開する企業です。近年は金属加工を中心に製造事業を拡大しています。

売却側は、岩手県宮古市と中国に拠点を構えています。デジタルモバイル製品などの民生機器向け部品を主力製品として、精密コネクタ金属端子部品のプレス加工とプレス金型設計・製作、一体成形によるコネクタ製造の事業を展開する企業です。

本件M&Aの目的は、商社機能と製造業を融合した総合企業への変革を加速することです。

株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

⑦大泉製作所によるフェローテックHDとの資本業務提携

2021年3月、大泉製作所は、フェローテックHDとの間で資本業務提携を締結すると発表しました。

大泉製作所は、埼玉県を拠点に電子部品の製造および販売を手がけています。対するフェローテックHDは、東京都中央区に本社を置く半導体関連製品を手掛ける企業で、半導体製造装置向け真空シールで、約7割の世界シェアを有しています。

本件M&Aは、大泉製作所とフェローテックHD両社の企業価値向上を図ることを目的として実施されました。

株式会社大泉製作所との資本業務提携契約の締結に関するお知らせ

⑧日清紡HDによる新日本無線とリコー電子デバイスの合併

2021年1月、日清紡HDは、日清紡グループのマイクロデバイス事業を構成する連結子会社である新日本無線とリコー電子デバイスを合併し統合すると発表しました。

日清紡HDは、エレクトロニクス・ブレーキ・精密機器・化学品・繊維を事業とする「環境・エネルギーカンパニー」グループの持株会社です。

本件M&Aにより、「日清紡マイクロデバイス」を新設し、電子デバイス製品・マイクロ波製品の設計および製造販売を手がけていくとしています。

新日本無線株式会社とリコー電子デバイス株式会社との事業統合の概要について

⑨フェローテックHDによるRMT社の買収

2020年10月、半導体関連製品を手掛けるフェローテックHDは、RMT社の出資金持ち分のうち、78.96%(議決権所有割合:60.0%)を取得し、連結子会社化しました。

売却側は、サーモモジュールの超小型化や多段化に関する技術力、高品質のビスマス・テルル材料開発力、2,000種類以上の少量多品種に対応した生産ノウハウなどを有している企業です。

本件M&Aの主な目的は、サーモモジュール製品のラインアップの強化および、電子デバイス事業のさらなる成長・企業価値の向上にあります。

超小型サーモモジュールメーカー RMT社の出資持ち分取得(子会社化)に関するお知らせ

電子機器・回路基板・部品製造をM&A・事業承継する際のポイント

電子機器・回路基板・部品製造関連会社がM&A・事業承継を成功させるには、自社の強み・アピールポイントを明確にし、企業価値の向上を図ることが重要です。買い手企業は、自社の弱みを補完し、強みを伸ばせる企業の買収を望みます。

買い手企業に対して明確なメリットを示すためには、他社と差別化できるアピールポイントが必要です。そのためには、事前にM&Aに向けた戦略を立て、企業価値を向上させることが有効です。

最近は、M&Aに向けて企業価値を向上させる戦略アドバイスを行うM&A仲介会社もあります。M&A・事業承継による譲渡・売却を検討し始めたら、早めにM&Aの専門家に相談し、企業価値の向上を図ることも大事なポイントの1つです。

電子機器・回路基板・部品製造をM&A・事業承継する際の相談先5選

電子機器・回路基板・部品製造業界でM&A・事業承継の検討を始めた場合、以下のような専門家に相談できます。

  1. 地元の金融機関
  2. 地元の公的機関
  3. 地元の弁護士・税理士・会計士など
  4. マッチングサイト
  5. M&A仲介会社

①地元の金融機関

後継者不在により廃業する中小製造業が増加しているため、地方銀行などの金融機関も事業承継支援に力を入れており、地元の融資先企業などを紹介しています。しかし、M&A・事業承継の実務に関しては単独で行うことが難しいため、提携先のM&A仲介会社に依頼することが一般的です。

電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継に強いM&A仲介会社を紹介してもらえるかどうか不明である点が、デメリットといえます。

②地元の公的機関

地元企業・個人事業主の廃業による地域経済の衰退を防ぐため、各都道府県では事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関が事業承継支援を行っています。公的機関は地域の各専門家と連携し、地元企業へ事業承継に関するアドバイスや、一部直接支援を行っています。

しかし、公的機関も多くの場合、提携先のM&A仲介会社へ依頼することで実務面のサポートを行うため、自社に適した専門家かどうかの判断が必要です。

③地元の弁護士・税理士・会計士など

相続税・贈与税の相談や株主・債権者とのトラブル相談など、特定分野の相談には弁護士・税理士・会計士などの士業専門家への相談も効果的です。事業承継支援を行っている事務所もありますが、提携しているM&A仲介会社へ委託して行う場合が多いので、事前に確認しておきましょう。

④マッチングサイト

マッチングサイトでは基本的に自身でM&A相手を探して交渉を進めますが、運営元企業に相談できるマッチングサイトもあります。M&A相手の選定までを自身で行い、実務サポートを運営元のM&A仲介会社に依頼することも可能です。

⑤M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&A・事業承継をトータルでサポートするプロデューサーのような専門家です。M&A・事業承継のトータルサポート経験を持っているため、総合的な視点からアドバイスを行えます。

幅広い業種に対応しているM&A仲介会社がほとんどですが、電子機器・回路基板・部品製造に精通した仲介会社を選ぶことで、より良い成果を得やすいです。

電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継のまとめ

本記事では、電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継事例や、事業承継の相談先などを紹介しました。

M&Aによる売却・譲渡を成功させるためには、事前に自社の強み・アピールポイントを明確にしたうえで、企業価値の向上を図るなど、計画的な準備が必要です。

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