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2024年5月24日更新会社・事業を売る
DCF法とは?メリット・デメリットから計算方法や割引率まで詳しく解説
DCF法とは割引率を使って現在の事業価値を調べる計算法です。DCFとはとの疑問に応えて、DCF法の計算式や、計算で使う割引率・永久成長率、エクセルを取り入れたDCF法の計算式、例題、メリット・デメリットを取り上げています。
DCF法とは
インカムアプローチの1手法に含まれるDCF法とは会社の事業価値をはじき出す方法で、将来のキャッシュフロー(以下、FC)を今の価値に換算し直して、事業価値をはじき出します。
DCF法とはつくられた事業計画に基に価値を導き出すため、将来価値を含める際にDCF法が選ばれます。これまでの業績が今後も継続することを前提に置く際は収益還元法が合っているので、企業の事情に合わせて方法が使い分けられています。
インカムアプローチのひとつ
将来に得ると予想されるCFを元に事業価値をはじき出すDCF法とは、ほかのインカムアプローチと比べてポピュラーな方法との認識です。
3つの方法の1つで、そのほかの方法は、収益還元・配当還元法です。それぞれの特徴を簡単にまとめると、収益還元法とはこれまでの実績を元に事業価値をはじき出す方法で、配当還元法とは1株の配当金を元に事業価値をはじき出す方法と見なされています。
DCF法とは事業価値を知る方法
割引率を使うDCF法とは、将来の現金を今の価値に換える計算法です。ディスカウンテッド・キャッシュ・フローの頭文字をとってDCF法とよばれ、DCF法の計算は下記の計算式で価値をはじき出します。
【DCF法の計算式】
- 企業価値=FCF×(1+割引率)
ちなみに、FCFとは事業活動で得られた資金から経費を差し引いたお金のことで、FCFとは企業が自由に使えるお金と捉えられます。また、割引率とは、将来に得るFCFを現在の価値に換えるための割合のことです。
FCFとは
DCF法を理解するためには、まずFCF(フリーキャッシュフロー)の概要を知っておきましょう。
FCFは、企業が自由に使うことができる現金のことで、営業キャッシュフロー(営業利益から営業経費の支払いや減価償却費等営業活動を引いたもの)から、投資キャッシュフロー(設備投資や固定資産の増減・有価証券の売買等で得た現金の流れ)を引いた計算式で求めるものです。
DCF法でFCFを計算する際は、法人税率や利息の支払率なども考慮して、さらに厳密な計算式で使用されます。
FCF(フリーキャッシュフロー)の計算式
- FCF(フリーキャッシュフロー)=(営業キャッシュフロー)+(投資キャッシュフロー)
収益還元法との使い分け
事業価値をはじき出す収益還元法とは過去の収益を軸にする計算法です。そのため、収益に偏りのある企業が収益還元法を採用するのは不適当と見なされます。
つまり、将来の収益が安定すると見込めるならDCF法を、現在の収益が安定しているなら収益還元法が採用されています。
DCF法による計算の流れ
ディスカウントキャッシュフロー(DCF)方式で企業の価値を計算する方法は以下のステップに従います。
- 企業が将来生み出す予想される自由な現金(フリーキャッシュフロー、FCF)を計算します。
- その現金が今の価値でどれくらいかを決めるための割引率を定めます。
- 長期的な将来の価値、すなわちターミナルバリュー(TV)を予測します。
- それらの将来の現金フローを割引率を使って現在の価値に割り引いて合計し、企業の価値を出します。
この計算によって、事業計画に書かれている期間のフリーキャッシュフローと、それ以降の期間のターミナルバリューが見積もられます。その後、それぞれの期間のフリーキャッシュフローを割引して現在価値を求め、それらを全て足し合わせることで、DCF方式による企業の総価値が算出されます。
DCF法のメリット・デメリット
割引率を乗じた計算を行うDCF法のメリットでは、将来性を加味した事業計画への反映や、透明性を維持できるCFの利用などが挙げられ、デメリットの内容は事業計画によって計算する値に開きが生じる点と相続・清算には適さない点です。
DCF法のメリット
今後の成長・相乗効果を事業計画に反映させやすい点や、経営者の意向を排除できる透明性の高いCFの利用や、減損会計の把握・貸倒引当金の計算などのケースでも利用可能な点がDCF法の利点です。
- ビジネスプランへの反映のしやすさ
- 実態を表すキャッシュフローの使用
- 企業価値評価の場面以外にも使用可能
1.ビジネスプランへの反映のしやすさ
DCF法とは計算式で、将来手元に残る現金に割引率を掛けています。将来に焦点を合わせた計算式を使うことから、現在の収益率が芳しくなくても、今後の成長を事業計画に反映しやすい特徴を備えます。
そのほか、DCF法の利用は、M&Aの実施でシナジーを得る際も、事業計画への効果が反映しやすいといえます。
2.実態を表すキャッシュフローの使用
DCF法とは、企業の実態を把握しやすい特徴を備えた計算法です。経営者の意向に沿って会計の方法が変更されると、売上・利益も変わり、会計の仕方によってはじき出す企業の価値にバラつきが生じます。
DCF法であれば受け取る現金から支払う現金を引いた計算式でCFを求めるため、会計の変更による企業価値の違いが発生しません。DCF法の計算式を使えば、透明性を維持でき、経営者の思惑を排除した企業価値をはじき出せるといえます。
3.企業価値評価の場面以外にも使用可能
DCF法とは、M&Aでの企業価値評価で取り入れられる方法です。とはいっても、資産額を下回る収益性の調査(減損)や、債権が回収できない事態に備えた貸倒引当金の計算(金融機関が実施)、債権の評価、投資先の事業性評価を計算する際などにも役立てられます。
ちなみに、減損とは資産の収益性が下がった際の固定資産引き下げで、貸倒引当金とは債権が回収されない事態に備えた用意を表します。
また、債権の評価とは資産をキャッシュフローに置き換えた評価で、投資先の事業性評価とは投資先の現在・将来を含めた評価を指すので、企業価値をはじき出す場面を除いたケースでも使えます。
DCF法のデメリット
次は、デメリットの紹介です。割引率を乗じてはじき出すDCF法のデメリットとは以下の2つです。
1つは事業計画に高い信頼性が求められる点で、もう1つが税負担の公平性と将来の価値を加味した計算方法を要因とする相続・清算時の利用を不適当とする点です。
- ビジネスプランの影響を受ける
- 利用に適さない場面がある
1.ビジネスプランの影響を受ける
DCF法とは、将来手にできる現金を元に事業価値をはじき出す方法です。そのため、計算式には将来に得ると予想されるCFに割引率を乗じた方法が加えられ、ビジネスプランをつくる側の予測に左右されます。
作成側の意図によってはじき出す価値に開きが生じると、DCF法を利用すればより良いビジネスプランに仕上げることも可能なため、信頼に値する計画を立てないと、事業価値をはじき出しても信用されない事態に見舞われるのが実情です。
2.利用に適さない場面がある
DCF法とは、直近の財務諸表・作成するビジネスプランから事業価値を調べる方法です。作成側の意図により、事業価値が変わります。相続時にDCF法を使ってしまうと公平性を欠いた税金額の算出も考えられるので、相続での利用は適当とはいえません。
また、DCF法は将来価値を加味した計算のため、事業を止めた状態で行う清算も不適当と見なされます。
エクセルを用いたDCF法の計算式
エクセルでのDCF法の計算式とは、入力した数値を元にエクセルで計算できる式のことです。エクセルでの計算式では、前もって割引率・FCF・FCFの年数を元に事業価値をはじき出します。
エクセルでのDCF法の計算式は下記の通りです。
【DCF法の計算式】
- 事業価値=FCF/(1+割引率)
【2年目以後の計算式】
- 2年目の事業価値=FCF/(1+割引率)²
- 3年目の事業価値=FCF/(1+割引率)³
- 4年目の事業価値=FCF/(1+割引率)⁴
- 5年目の事業価値=FCF/(1+割引率)⁵
ちなみに、DCF法で必須なFCFをはじき出す際の計算は下記の通りです。
- FCF=EBIT×(1-法人税率)+減価償却費-設備投資̟±運転資本の増減分
エクセルでのDCF法の計算式
次はエクセルを利用したDCF法の計算式を紹介します。初めに必要な値をエクセルの表に挿入します。
【エクセルでのDCF法の計算】
A | B | C | D | E | F | |
1 | ||||||
2 | DCF法の事業価値 | |||||
3 | ||||||
4 | 年数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
5 | FCF | 10,000 | 12,000 | 11,000 | 20,000 | 15,000 |
6 | 割引率 | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% |
次に、2行目から挿入したいセルをクリックします。それから、クリックしたB2のセルに、=B5/(1+B6)^B4の計算式を入力すると、DCF法を駆使した事業価値が表示されます。
A | B | C | D | E | F | |
1 | ||||||
2 | DCF法の事業価値 | 95,238 | ||||
3 | ||||||
4 | 年数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
5 | FCF | 10,000 | 12,000 | 11,000 | 20,000 | 15,000 |
6 | 割引率 | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% |
そのほかの年度は、2行目のセルから、調べたい年度の列ごとに計算式のセルを換えれば、DCF法の事業価値をはじき出せるので試してみましょう。
DCF法の割引率
DCF法で取り入れる割引率とは、加重平均値(WACC)のことです。WACCは、資金調達でかかる株主・債権者へのコストを、値の重みを考慮し平均してはじき出します。
割引率がDCF法の計算式に盛り込まれる理由は、金利とリスクを反映させるためです。
現在の価値に利息が付けば将来の価値の方が高くなりますし、自然災害・事故・倒産などで資産価値が下がるリスクもあります。それゆえ、DCF法ではFCFに将来の年数ごとに割引率を掛けて事業価値をはじき出します。
割引率の計算式
ここまでの章で解説してきたDCF法の計算式を見ると、割引率を取り入れています。それゆえ、DCF法の割引率をはじき出す必要性も伴います。
DCF法の割引率をはじき出す計算式は下記の通りです。
【割引率の計算式】
- 割引率=E/(D+E)×株主資本コスト+D/(D+E)×負債コスト×(1-t)
ちなみに、株主資本コストとは評価企業の株式への投資で期待される収益率で、負債コストとは将来の時点における借入コストのことです。実効税率とは、法人・住民・事業税を元に計算される税率です。
DCF法の永久成長率
ここまで取り上げた割合は割引率のみでしたが、企業価値をはじき出すには、永久成長率の値も欠かせません。
DCF法の永久成長率とは、定めた年数を超えたFCFがそのまま成長すると仮定した際に取り入れられる成長率のことです。永久成長率を取り入れたDCF法の永続価値を求める際は、下記の計算式が用意されています。
【6年目以後も同様の成長を続けるケース】
- 永続価値=5年目のFCF×(1+永久成長率)/(割引率-永久成長率)
- 6年目以後の事業価値=永続価値/(1+割引率)⁵
また、永続成長率ではインフレ率と同じ値で0~1%の割合が多く見られる点と、成長率の維持は不可能に近いことを理由に低い永続成長率が定められる点を押さえることが肝要です。
DCF法の計算例題
DCF法の計算式を活かせるように、DCF法の計算例を取り上げます。事業価値を調べるための条件は下記の通りです。
- 割引率=5%
- FCFの予測期間=5年
- 残価価値の算定法=PA法
- 永久成長率=1%
計算例で定める条件の詳細は、事業価値を現在の価値に換える割引率は5%で、FCFの成長は5年まで続き、以降も引き続き成長するとしました。永続成長率は1%になり、年度ごとのFCFは下記の値を定めます。
【計算例の条件】
年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
FCF | 10,000 | 20,000 | 30,000 | 40,000 | 50,000 |
取り上げた計算式に条件の数値を当てはめると、計算例では下記のような事業価値がはじき出されます。
年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
DCF | 95,238 | 181,406 | 259,151 | 329,081 | 391,763 |
6年目以降のDCF | 9,892,018 |
6年目以降の残存価格 | 12,625,000 |
よって、1~5年と6年目以降のDCFを合わせた値は11,148,657です。計算しやすいように、FCFの値は定めた値を取り入れたため、本来ではもう少し手間がかかります。
事業価値の算出は専門家に協力を依頼する
DCF法での事業価値は、FCF・割引率・永続価値などを求めてから算出しなければなりません。また、事業計画の信頼性も重要視されるため、専門家へ算出依頼することをお薦めします。
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DCF法のまとめ
DCF法とは、FCFに割引率を乗じて事業価値をはじき出す方法です。事業計画を反映しやすく透明性の高い事業価値がわかる方法とされていますが、事業計画には高い信頼性が求められ、相続・清算での利用には適していません。
【DCF法のメリット】
- 将来性を加味した事業計画への反映
- 透明性を維持できるキャッフローの利用
- 減損会計の把握・貸倒引当金の計算などでも利用可能
【DCF法のデメリット】
- 事業計画ごとに得られる値に開きが生じる
- 相続・清算には適さない
また、DCF法の計算では、はじき出す際の値が欠かせません。そのため、DCF法は何かと手間がかかります。M&Aの過程でDCF法を取り入れるなら、会社のみで事業価値を計算せず、専門家に協力を求めることをお薦めします。
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