M&Aとは?目的・メリットから手法、最新動向までわかりやすく解説
2022年12月1日更新会社・事業を売る
M&A・買収後の社員モチベーションを保つには【注意点/対策方法】
M&Aの際に社員は大きな不安を感じることが多く、モチベーションの低下につながることがあります。M&A後、円滑に統合プロセスを進めるには、適切な対策が必要です。今回は、M&A後に社員のモチベーションを保つための注意点や対策を解説します。
目次
M&A・買収後に社員のモチベーションを保つには
M&Aによる買収は社員にとって大きな変化であるため、適切に対処しなければ社員のモチベーションが下がり、さまざまな弊害が生まれる可能性があります。M&Aを実施する前は、その後起こりうる変化にはどのようなものがあるのかを、よく検討しておく必要があります。
M&A・買収後に起こる社員のモチベーションの変化
M&A後の統合がうまくいけば、社員同士の一体感が生まれる、統合作業がスムーズに進む、社内ルールが違和感なく浸透する、システム統合がスムーズに進むなど、社員のモチベーションアップにつながる変化が起こります。
しかし、M&A後の統合がうまくいかなければ、意見が食い違って話が進まない、統合のための無駄な作業が増える、社内ルールの策定やシステム統合が進まないなどによって社員のモチベーションが下がってしまいかねません。
M&A後、社員のモチベーションが上がるかあるいは下がってしまうかは、社員個人個人の問題ではなく、経営陣が社員のモチベーションを上げるような環境を適切に作り出せるかどうかにかかっています。もしもM&A後に社員のモチベーションアップに失敗してしまうと、さまざまな弊害が生まれる可能性があります。
M&A・買収後に社員のモチベーション低下により起こること
M&A後に適切な環境作りができず、 社員のモチベーションが下がってしまうと、 以下のような弊害が生まれる可能性があります。
- 優秀な社員の離職が続く
- 業務の非効率化
- 社員同士の対立
- 経営陣と社員の対立
- 慣れたやり方を変えられない
- 諦めの気持ちが出てくる
M&A後社員のモチベーションが下がることによって、
社員のモチベーション低下によって、
なかなか統合が進まない様子をみて、経営陣が強引に統合を
M&A・買収後に社員のモチベーションを保つことが最重要
M&A後に社員のモチベーションを保つためには、戦略的に施策を打つ必要があります。具体的には、以下のような手順で統合を進めていくとよいでしょう。
- 人材交流・面識・理解
- 業務プロセスの結合
- システム統合・ITシステム・人事・給与各種・体制の統合
- 文化融合・一体感を感じさせる
M&A後に社員のモチベーションを保つには、まず人材交流を通じて社員同士が面識と理解を深める必要があります。M&A後の統合作業では人材交流が重要なカギです。人材交流がしっかりとできていれば、社員のモチベーションを下げることなく、業務プロセスやシステムを統合していけます。
人材交流や業務プロセス、システム統合を順番に実施することができたら、最後は文化融合を行います。文化融合は目には見えにくいものであるため、統合が難しい要素です。そのため、他の統合要素をしっかりと終えた後に行う必要があります。
M&A・買収後、社員のモチベーションに対する注意点
この章では、M&A・買収後、社員のモチベーションに対する3つの注意点を解説します。
- M&A・買収されたことに対してストレスを与えない
- 新しい経営者はきちんと説明をする
- 部署や待遇面に対して慎重に決める
M&A・買収されたことに対してストレスを与えない
M&Aによる変化は社員にとって大きなストレスともなり、それがモチベーションの低下につながります。変化によるストレスを抑えながら統合を進めていくためには、急がず少しずつ変えていくことが大切です。
経営陣はなるべく早くM&Aの効果を得たいと考えるため、統合作業を急いでしまいがちです。M&Aによって会社が混乱している様子をみれば、なおさら統合を焦って進めようと考えてしまいます。
しかし、焦って統合を進めてしまうと余計に混乱が大きくなる可能性もあります。統合作業には順番があり、すべての土台となる人材交流をしっかりと固めておかなければ、業務プロセスやシステムの統合などもうまくいかない可能性もゼロではありません。まずは社員にストレスを与えないよう、人材交流ができる環境を作ってから進めていくと効果的です。
新しい経営者はきちんと説明をする
M&Aに対して、社員は大きな不安を抱えています。頭ではM&Aの必要性やM&A後の変化を理解していたとしても、感情がついていかない社員も少なくありません。経営陣はM&Aによる変化の魅力を丁寧に繰り返し伝えることが、社員のモチベーション低下を防ぐことにつながります。具体的には、以下の魅力をしっかり伝えるとよいでしょう。
- 待遇や諸条件の魅力
- 組織風土・人材の魅力
- 事業・仕事内容の魅力
多くの社員はM&Aによって待遇や諸条件が悪くなるのではないかと不安を感じるため、経営陣はM&A後の待遇や諸条件の説明を丁寧に行う必要があります。社員のモチベーションを保つ要素は待遇だけではありません。たとえ待遇がよくても、組織の風土や仕事内容に納得がいかなければ、モチベーションは少しずつ下がってしまいます。
部署や待遇面に対して慎重に決める
社員の部署や待遇を決める際は効率を重視しがちですが、効率重視で半強制的に部署や待遇の決定を進めようとすると、さまざまな悪循環を生みかねません。人事や待遇の決定に関しては、効率とモチベーションのバランスが重要です。効率とモチベーションのバランスを保ちながら決定していくには、社員をよく観察したうえで対話する必要があります。
どのようなことに興味があるのか、どのようなことに不安を感じているのかなどを、繰り返し丁寧にヒアリングすることが大切です。
M&A・買収後に社員もモチベーションを保つ対策方法
M&A後に社員のモチベーションを保つ対策方法にはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、M&A・買収後に社員もモチベーションを保つ方法を5つ紹介します。
- M&A・買収後、経営方針を伝える
- オフィスの移転や備品の交換など気分を変える
- 新しい名刺やメールアドレスなどを与える
- 新しい経営者との面談を行う
- 待遇の改善などを行う
M&A・買収後、経営方針を伝える
社員に経営者のビジョンを伝えることは、最初に行うべき重要なプロセスです。ビジョンを伝えなければ社員の共感を得られず、一体感を生み出すことはできません。ビジョンを伝える際は、わかりやすく魅力的に伝えることがポイントです。そのビジョンを達成するために、それぞれの社員が持つ役割がどれだけ重要かを感じてもらう必要があります。
社員が当事者意識を持てるようにビジョンを伝えられれば、その後の統合プロセスもスムーズに進めやすくなります。
オフィスの移転や備品の交換など気分を変える
精神的な面からモチベーションのアップを図る以外に、オフィスを移転したり備品の新調したりして物理的に社員のモチベーションを上げる方法もあります。精神論だけでなく、環境などの仕組みも整えていくことも効果的な方法です。ただし、何でも行えばよいわけではありません。
物理的な環境に手をつけ始める前にまず現場の状況を把握し、社員の話をしっかり聞いたうえで変えていく必要があります。
新しい名刺やメールアドレスなどを与える
社員に新しい名刺やメールアドレスを渡すことも、モチベーションを変えたり保ったりすることにつながります。M&A後に名刺やメールアドレスがバラバラでは、意識の面での統一が難しいです。物や環境を統一することで、社員同士の意識も統一されやすくなります。最近では、社員同士の交流を促すために、職場をフリーアドレスにするケースも珍しくありません。
フリーアドレスにする場合はうまくいけば社員同士の交流が進みますが、交流する社員が偏ることで逆効果になることも考えられます。新しい仕組みを取り入れる場合は、社員の意見も聞きながら慎重に検討していく必要があります。
新しい経営者との面談を行う
M&A後社員のモチベーションを保つために、経営者と面談の機会を設けることも効果的です。面談の機会は1回だけではなく、何度も繰り返すことでより効果が得られます。最初のうちは社員の反応が悪く、思っていることを話してくれない可能性もありますが、こまめに面談の機会を設けることで、徐々に本音がみえるようになってきます。
社員から声をかけてくるのを待つのではなく、経営者から踏み込んでいくことが重要なポイントです。面談といった堅苦しい場だけでなく、普段からちょっとしたコミュニケーションのチャンスを作ることも大切です。
社員のなかには、経営者に考えを伝えるチャンスがあるというだけで安心する人も少なくありません。時間がかかる可能性はありますが、こまめに続けていくことで効果が表れる方法です。
待遇の改善などを行う
待遇改善は、社員のモチベーションアップを考えた場合に1つのポイントになりますが、待遇を改善すれば必ずモチベーションが上がるわけではありません。例えば、昇格がモチベーションにならない人もいれば、給与のアップよりも昇格がモチベーションになる人もいます。
モチベーションの源泉は人によって違い、ある人にとってはモチベーションアップにつながっても、ある人にとってはストレスの素になる可能性もあります。給与と売上を連動させてモチベーションにつなげる方法もありますが、成果主義は会社が右肩上がりの時は効果がでやすいものの、会社が不調の時は逆に社員のストレスが大きくなりやすいです。待遇を改善する際は、タイミングも重要です。
M&A・買収後の社員モチベーションを保つには人事制度の統合が必須
M&A後に社員のモチベーションを高めていくには適切な仕組み作りが重要であり、そのひとつに人事制度の統合があります。人事制度の統合がうまくいかなければ社員のモチベーションを下げてしまうことになりかねないため、なるべくわかりやすくシンプルな人事制度にすることがポイントです。
M&A後に人事制度を構築していくのではなく、M&Aの初期段階からM&A後を考えて準備しておくことも必要ですが、M&Aの専門家のサポート下で進めると効率的に行えます。M&A総合研究所はさまざまな業種で豊富なM&A成約実績を有しており、豊富な経験を持つアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は随時受け付けておりますので、M&Aでお悩みの際は、M&A総合研究所までお気軽にご相談ください。
M&A・買収後の社員モチベーションを保つ方法まとめ
M&Aの際、社員は大きな不安を感じるため、M&A後にモチベーションが下がらないよう対策をしっかり立てておくことが大切です。M&A後に社員のモチベーションを保つには、焦って統合を進めていくことはせず、時間をかけることも意識しておくとよいでしょう。
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短43日、平均7.2ヶ月のスピード成約(2025年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
あなたにおすすめの記事
M&Aとは?目的・メリットから手法、最新動向までわかりやすく解説
M&Aは、事業承継や事業拡大の有効な手段として注目されています。しかし、成功には目的や手法の正しい理解が不可欠です。本記事では、M&Aの基礎知識から目的、メリット・デメリット、最...
買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説
買収には、友好的買収と敵対的買収とがあります。また、買収に用いられるM&Aスキーム(手法)は実にさまざまです。本記事では、買収の意味や行われる目的、メリット・デメリット、買収のプロセスや...
現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説
M&Aや投資の意思決定するうえでは、今後得られる利益の現時点での価値を表す指標「現在価値」についての理解が必要です。今の記事では、現在価値とはどのようなものか、計算方法や割引率、キャッシ...
株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説
株価算定方法は多くの種類があり、それぞれ活用する場面や特徴が異なります。この記事では、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセス、株...
赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説
法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。しかし、会社は赤字だからといって、必ず倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリット...
関連する記事

M&AのSPA(株式譲渡契約書)とは?必要性や記載事項と契約時の注意点を解説!
M&AのSPAとは株式譲渡契約書のことです。株式譲渡はM&Aで最も多く用いられているスキーム(手法)であり、M&Aの当事者となれば目にする可能性が高いでしょう。本コラムで...

財務アドバイザーとは?M&A仲介との違いや役割についても解説!
M&Aの検討や実施をする際に財務アドバイザーに相談するのも1つの手段です。本コラムでは、財務アドバイザーの概要やM&A仲介との違い、財務アドバイザーがM&Aで担う役割など...

M&Aのタームシートとは?重要性や記載内容と作成メリットについて解説!
M&Aにおけるタームシートは、合意内容を確認しながら交渉を円滑に進めるために役立つものです。本コラムでは、タームシートの概要と重要性、タームシートの項目内容と作成する際のポイント、ターム...

個人保証とは?経営者のメリットやデメリットとガイドラインについて解説!
これまで中小企業が金融機関から経営資金を借金しようとする場合、多くは経営者の個人保証(連帯保証)を求められてきたのが実態です。本コラムでは、個人保証の概要やメリット・デメリット、個人保証の撤廃を...

MOU(Memorandum of Understanding)とは?基本合意書の内容と他の契約書との違いを解説!
M&AにおけるMOU(Memorandum of Understandingの略称)とは基本合意書のことであり、M&Aの成立に向けた重要なプロセスです。本コラムでは、MOUを他の...

不動産デューデリジェンスの目的は?不動産DDの流れや種類を解説!
不動産デューデリジェンスは不動産投資を行うときや、M&Aでの譲渡対象に不動産が含まれている場合に必要な調査です。この記事では、不動産デューデリジェンスの目的や調査項目の種類、実際の調査が...

事業デューデリジェンスの目的は?ビジネスDDの調査・分析の流れやメリットを解説!
M&Aを実施するときには、必ず事業デューデリジェンス(ビジネスDD)を実施します。事業デューデリジェンスはどうして必要なのでしょうか。この記事では、事業デューデリジェンスの目的や分析手法...

海外M&Aのメリットや手法は?買収の目的や事例10選を解説!
国内企業が海外企業とM&Aを行う場合がありますが、海外企業とのM&Aには地政学リスクなどの国内企業とのM&Aとは違った注意点があります。この記事では、海外企業とのM&am...

税務DDの目的や手順・調査範囲を徹底解説!M&Aにおけるリスクは?
M&Aの成功のためには、税務DD(デューデリジェンス)が重要です。税務DDとは、企業が他の企業を合併や買収する際に行う重要な調査の一つです。本記事では、税務DDの目的、手順、調査範囲、実...













株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。