M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月23日更新業種別M&A
機械器具小売業界のM&A・事業承継の事例!案件例や売却相場や相談先も解説
本記事では、機械器具小売業界のM&A・事業承継について、売却相場や相談先、スムーズにM&Aを行うポイントなどを解説します。自動車・自転車および家電を販売する機械機器小売は、今後、M&A・事業承継が活発になると考えられる業種です。M&Aを検討中の方は必見です。
目次
機械器具小売業界とは
機械器具小売とは、自動車ディーラー、自転車販売店、家電量販店および小規模な街の電気屋をまとめた業界のことです。
リスクモンスターによる「業界レポート 機械器具小売業」では、業界規模は約54兆円となっています。業界規模は非常に大きいですが、上場企業は19社のみで残りの8万社以上は非上場企業です。
小規模な街の電気屋では、大手家電量販店の台頭と経営者の高齢化による廃業が問題になっています。
機械器具小売業界の市場動向
2023年上半期の商業販売額は前年同期比で1.9%増加し、約290兆円に達しました。このうち、全体の約70%を占める卸売業は前年同期比で0.5%増加し、約30%を占める小売業は5.9%増加しました。
小売業の詳細を業態別に見ると、百貨店、ドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーマーケットは前年同期比で売上が増加した一方、家電量販店とホームセンターは減少しました。
小売業の成長に最も貢献したのは「自動車小売業」で、その後に「飲食料品小売業」と「その他小売業」が続きました。逆に、「機械器具小売業」と「燃料小売業」は減少に大きく寄与しました。
「自動車小売業」は、2022年9月以降、主に供給制約の解消により数量が増加しており、2023年もその傾向が続いています。「飲食料品小売業」も2022年10月以降、主に価格上昇によって増加傾向が続き、2023年もこの影響が見られます。
一方で、「機械器具小売業」は2022年以降、主に数量減少により売上が落ち込んでいます。
機械器具小売業界のM&A・事業承継が行われる5つの理由
機械器具小売業界のM&A・事業承継が行われる理由としては、以下の5つが考えられます。
【機械器具小売業界のM&A・事業承継が行われる理由】
- 後継者問題の解決
- 承継の激化を懸念して
- 大手傘下に入り経営を安定させる
- 倒産・廃業をしない
- 従業員の雇用先を確保できる
①後継者問題の解決
機械器具小売業界では、小規模な家電販売店における経営者の多くが引退年齢を迎えていますが、少子化や家業を代々継ぐ価値観が薄れたこともあり、後継者がみつからないケースも多いです。
中小の家電販売店がM&Aで店舗を売却して廃業を避ける事例は増加しており、今後はさらに増えると考えられます。
②承継の激化を懸念して
機械器具小売業界では、小規模事業者の多くが事業承継の問題を抱えており、今後はさらに承継が激化していくと予想されます。
そのため、事業承継の激化を懸念して、早い段階で機械器具小売の会社をM&Aで売却する事例も、増加すると考えられるのです。
③大手傘下に入り経営を安定させる
機械器具小売業界では、大手家電量販店や自動車メーカーが出資するメーカー系企業の力が強く、小規模な街の電気屋や地域企業が経営する地場系のディーラーは苦戦を強いられています。
中小のメーカーがM&Aで大手に会社を売却し、安定した経営基盤を得るケースは今後も増えていくでしょう。
④倒産・廃業をしない
機械器具小売の会社を倒産・廃業してしまうと、今まで築き上げてきた顧客や取引先のネットワークを失います。
特に、小規模な街の電気屋は、家電量販店が苦手な高齢者にとって、安心して買い物ができる場であることも多く、家電販売店がなくなることは地域住民にとって大きな痛手です。
倒産・廃業の恐れがある機械器具小売会社をM&Aで売却すれば、地域や取引先のネットワークを維持できます。
⑤従業員の雇用先を確保できる
機械器具小売の会社を倒産・廃業してしまうと、そこで働いている従業員が雇用を失います。特に長く働いているベテラン社員は転職も難しく、生活に大きな影響があるでしょう。
従業員の雇用を確保する目的で、機械器具小売の会社をM&Aで売却するのは非常に有効な手段です。
M&Aで企業を買収するのは経営基盤のしっかりした大手が多いので、売却によって雇用を確保するだけでなく、雇用条件が改善される事例も多く見られます。
中小企業の後継者不足問題については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
機械器具小売業界のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている機械器具小売業界のM&A・事業承継の案件例として、「北陸の産業機械器具・貿易事業」をご紹介します。
自社工場を持たず、海外で製造を行うことで原価率を低減させ利益率を向上しています。工作機械のオーバーホール技術には定評があり、中国・韓国・タイなどアジア各国での販売実績もあります。
エリア | 中部・北陸 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円(応相談) |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
機械器具小売業界のM&A・事業承継の事例
この章では、機械器具小売業界のM&A・事業承継の主な事例をピックアップしご紹介します。
レダックスによる新興自動車の買収
2024年10月9日、レダックスは、新興自動車(千葉県千葉市)の全株式を取得し、連結子会社化することを決定しました。
レダックスは、子会社の管理や経営コンサルティング、M&Aアドバイザリー、業務受託、投資事業などを展開しており、2024年9月に「株式会社カーチスホールディングス」から商号変更しました。この変更は、事業の多角化や成長戦略の強化を目的としています。
新興自動車は、千葉県で長年にわたり整備事業を行う企業で、レダックスグループとのシナジー効果により、事業基盤の強化が見込まれています。今回のM&Aにより、レダックスはグループ全体でさらなる成長を目指します。
オートバックス・ディーラーグループHDによるPCTホールディングスの買収
2024年8月28日、オートバックスセブンの子会社であるオートバックス・ディーラーグループ・ホールディングス(東京都練馬区)は、PCTホールディングス(東京都港区)の全株式を取得し、完全子会社化することを決定しました。PCTホールディングスの子会社であるパワーコントロールテクニック(群馬県桐生市)もオートバックスグループの一員となります。
オートバックス・ディーラーグループ・ホールディングスは、オートバックスグループ内のディーラー事業を統括しています。PCTホールディングスは、資金調達や経営コンサルティング、投資業務を行う企業です。
今回のM&Aは、オートバックスグループの「モビリティライフの変化に対応した新たな事業ドメインの開拓」戦略の一環で、EVソリューション事業の強化を図るものです。
オートバックスセブンによるピューマの買収
2024年6月10日、株式会社オートバックスセブン(9832)は、関連会社である株式会社ピューマ(富山県射水市)を完全子会社化するため、株式交換契約を締結しました。オートバックスセブンが親会社、ピューマが子会社となる株式交換方式が採用されます。
オートバックスセブンは、カー用品販売、車検、車両販売、板金・塗装などを展開しています。ピューマは富山県内でオートバックスの店舗運営や車検、洗車、保険代理業務などを行う企業です。
今回の完全子会社化は、オートバックスセブンの資本力とピューマの地域での事業展開力を活かし、カーアフターマーケット市場での競争力と収益力を強化することを目的としています。
サンオータスによる新車自動車小売販売業の子会社株式の譲渡
2020年2月、サンオータスは、新車自動車小売販売業を手掛ける子会社のモトーレン東洋とメトロポリタンモーターズの全株式を譲渡しています。譲渡先は、モトーレン東洋がエー・エル・シー、メトロポリタンモーターズがダイワグループです。
これにより、サンオータスは、基幹ビジネスであるエネルギー事業とこれからの主力事業となるMaaS関連事業に注力する狙いです。
機械器具小売業界のM&A・事業承継のメリット
この章では、機械器具小売業界のM&A・事業承継のメリットを、売却側と買収側に分けて見ていきましょう。
売却側のメリット
売却側のメリットは、下記の5つです。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用継続
- 事業基盤の強化される
- 個人保証・担保の解消
- 譲渡・売却益の獲得
機械器具小売業界も、中小企業を中心に後継者問題が課題です。そのため、M&Aによる事業承継で後継者が見つかれば、廃業する必要がありません。事業が継続できれば、従業員の雇用問題も解決します。
大手企業とのM&Aにより大手企業の傘下に入ると、事業基盤が強化され、事業の成長と安定も期待できるでしょう。
また、M&Aで事業承継すれば個人保証や担保を解除できるので、経済的・精神的負担から開放されるメリットもあります。さらに、譲渡・売却益を得るので、それをリタイア後の生活費や新しいことへの挑戦資金などに活用もできるのです。
買収側のメリット
買収側のメリットは、下記の3つが挙げられます。
- 事業展開スピードの加速
- 人材・ノウハウなどの獲得
- 特許・製品の獲得
機械器具小売事業は、事業戦略において販売網が大切なので、M&Aで販売店舗を得れば事業展開の速度が速まるのです。また、機械器具小売業界は人材の確保や販売ノウハウなどの獲得も重要ですが、M&Aの買収であれば、短期間で効率良くそれらを得られます。
利益率が低い機械器具小売業界で利益率を上げるには、自社ブランド品を持つことが有効な手段の一つです。メーカーを買収してプライベートブランド商品を持つと、収益力が高まるでしょう。
機械器具小売業界のM&A・事業承継の売却相場
機械器具小売業界は、自動車業界・自転車業界・家電業界といった別々な業界の総称であり、さらに会社の規模も大企業から中小企業まで幅広いため、一概にM&A・事業承継の売却相場がいくらとはいえません。
オートバックスセブンやビッグカメラなど大手のM&A・売却・買収は情報が公開されていますが、取得価額については非公表が多いため、売却相場の実態は掴みづらいのが現状です。
売却価格の算出方法
機械器具小売の売却価格を算出する方法には、主に以下の3種類があります。
【売却価格の算出方法】
- コストアプローチ(時価純資産法など)
- インカムアプローチ(DCF法など)
- マーケットアプローチ(類似企業比較法など)
コストアプローチは純資産と負債の差を会社の価値とみなす手法で、会社の将来性が加味しづらい一方、計算が簡便で使いやすいメリットがあります。
インカムアプローチは会社の将来性から売却価格を算出し、算出方法としては最もよく利用されている方法です。
マーケットアプローチは似た会社の株価などを参考にする手法で、非上場企業における売却価格の算出に利用されます。
バリュエーション(企業価値評価)の方法・手法については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
個人で売却価格を求めることのリスク
機械器具小売における売却価格の算出には専門的な知識と経験が必要なため、M&A仲介会社などの専門家に依頼することをおすすめします。
簿価の純資産から負債を引いて大まかな算出をすることは個人でもできないことはないですが、簿価は時価と乖離していることも多く、正確な企業価値を見積もるのは難しいでしょう。
機械器具小売のM&A・売却・買収では、売却する会社の価値を正確に算定することが重要で、個人で売却価格を求めて、その価格をもとに交渉するのはリスクの高い行為です。
機械器具小売業界のM&A・事業承継をスムーズに行うポイント
機械器具小売業界のM&A・事業承継をスムーズに行うためには、以下のポイントを押さえましょう。
【機械器具小売業界のM&A・事業承継をスムーズに行うポイント】
- 買い手のニーズを理解する
- M&Aの目的や計画を明確に決める
- 売却のタイミングを逃さない
- 特徴ある製品や特許を持っている
- 機械器具小売に強いM&Aの専門家に相談する
①買い手のニーズを理解する
M&Aで機械器具小売を買収しようとする企業は、販売エリアの拡大や人材とノウハウの獲得など、それぞれが目的を持っています。
そういった買い手のニーズを理解して、自社の強みがそのニーズに合う買い手候補を選ぶことで、交渉がよりスムーズに進むのです。
売り手側の強みと買い手のニーズが一致すると、売却価格をより高く見積もってもらえる可能性が高まり、売却後はシナジー効果を発揮して事業をより発展できるでしょう。
②M&Aの目的や計画を明確に決める
M&Aで機械器具小売を売却する際は、目的を明確にすることが重要です。経営者の引退による事業承継、売却による資金獲得など、買い手候補に自社の目的をはっきり伝える準備をしましょう。
また、M&Aは最低でも3か月、長いと1年以上かかることもあるので、本格的な交渉に入る前に計画をしっかり練ることも重要です。
③売却のタイミングを逃さない
機械器具小売のM&A・売却は納得いくまで時間をかけて慎重に行うべきではありますが、あまり時間をかけ過ぎると売却のタイミングを逃してしまう可能性もあります。
特に、機械器具小売は商品におけるトレンドの移り変わりが早いので、交渉にあまり時間をかけ過ぎると、自社の強みが買い手側にとって魅力的でなくなる可能性もあるのです。
自社にとって最も良いタイミングを逃さないことも、M&Aの交渉において重要といえます。
④特徴ある製品や特許を持っている
一般に自動車ディーラーは販売する車種が決まっており、家電販売店も小規模事業者はメーカーと契約していることが多いため、商品ラインナップに個性を出しにくい傾向があります。
そういった業界で、自社が特徴ある製品や特許を持っている場合は、買い手側にとって大きな魅力です。オプション商品や中古車・中古家電の販売など、他社にない製品の販売網を持っている場合は、その点を買い手にアピールしましょう。
⑤機械器具小売に強いM&Aの専門家に相談する
機械器具小売のM&Aでは、財務や税務の知識に加えて、機械器具小売業界の動向に対しても知見が必要です。
M&Aで機械器具小売を売却する際は、M&A仲介会社などの専門家に相談しますが、機械器具小売に強い専門家を選びましょう。
どの専門家が機械器具小売に強いか判断するのは簡単ではないですが、例えばHPのプロフィールなどから自動車業界・家電業界・小売業界に強そうなところを選び、無料相談で実際に話を聞いて判断するのも一つの方法です。
M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中小・中堅規模のM&A案件を主に取り扱っており、知識・支援実績の豊富なアドバイザーが、ご相談からクロージングまで丁寧に案件をサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談を随時お受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
機械器具小売業界のM&A・事業承継でおすすめの相談先
機械器具小売業界におけるM&A・事業承継の相談先は、以下の選択肢が考えられます。
【機械器具小売業界のM&A・事業承継をする際におすすめの相談先】
- M&A仲介会社
- 地元の金融機関
- 地元の公的機関
- 地元の弁護士・会計士・税理士など
- マッチングサイト
①M&A仲介会社
M&A仲介会社とは、M&Aを専門に取り扱っている会社のことです。M&Aの知識と経験が豊富なスタッフが、面談から交渉、クロージングまでトータルでサポートします。
M&A仲介会社の数は非常に多く、東証一部上場の大手仲介会社から、社員数人程度で地域に根差したサービスを提供している仲介会社まであるのです。
得意業種もM&A仲介会社によってさまざまであり、医療やITなど特定の業種に特化した仲介会社もあります。
機械器具小売業界を専門としているM&A仲介会社は今のところ存在しないようですが、機械器具販売や小売業界を得意にしている仲介会社はあると考えられるので、そういったところを探して相談するのもおすすめです。
②地元の金融機関
銀行や信用金庫などの金融機関には法人向けの相談窓口がありますが、M&Aや事業承継の相談窓口を設けているところもあります。
適切なM&A仲介会社が見つからない場合や、普段から慣れ親しんでいるメインバンクに相談したい場合などは、こういった地元の金融機関に相談するのもおすすめです。
ただし、中小企業のM&Aに対応していない場合は、実際の仲介業務は提携の仲介会社へ依頼します。
③地元の公的機関
近年は中小企業の後継者問題が深刻化しており、国も公的機関を設置して支援に乗り出しています。国が設置する商工会議所や事業承継・引継ぎ支援センターなどを利用して、機械器具小売のM&A相談をするのもおすすめです。
公的機関では、地域に根差したネットワークや、自治体による補助金や助成金が受けられる点がメリットです。
ただし、M&A仲介会社のような経験やネットワークを有していなかったり、相談のみで手続きは提携のM&A仲介会社へ依頼したりすることが多いのがデメリットになります。
④地元の弁護士・会計士・税理士など
弁護士や会計士、税理士といった士業事務所の中には、M&Aや機械器具小売に詳しいところもあります。こういった地元の士業事務所に、機械器具小売におけるM&A・買収・売却の相談をするのも一つの選択肢です。
ただし、士業事務所はM&Aを専門にしていないため、M&Aの手続きをトータルでサポートできません。最終的にはM&A仲介会社に依頼するため、M&A仲介会社に相談するのが効率的といえるでしょう。
⑤マッチングサイト
M&Aマッチングサイトとは、M&Aによる買収・売却を希望する経営者・個人事業主が情報を掲載し、それを閲覧して売買相手を探せるサイトのことです。
M&Aマッチングサイトは仲介会社などの専門家をとおさず、自分で交渉を進められる点が特徴です。自分だけで進めるのが不安な場合は、専門家のサポートを受けながら利用できます。
M&Aマッチングサイトは、個人事業の飲食店売買といった非常に小規模な案件も揃っているのが強みです。
機械器具小売業界のM&A・事業承継のまとめ
機械器具小売業界では、大手による業界再編に加え、中小企業の事業承継も今後活発になることが予想されます。
機械器具小売の経営者にとっては、M&A・事業承継による買収・売却に関する知識を今のうちに蓄えることが重要といえるでしょう。
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