2021年5月25日更新業種別M&A

空調会社の事業譲渡・売却と株式譲渡はどちらが節税できる?手法の違いを解説!

空調設備工事業界では、競争激化や中小企業経営者の高齢化により、M&A需要が高まっています。本記事では、空調工事会社がM&Aを行う際に多く採用される事業譲渡・事業売却と株式譲渡の違いや、メリット・デメリット、節税方法などについて解説します。

目次
  1. 空調工事会社の事業譲渡・売却と株式譲渡
  2. 空調工事業界を取り巻く状況
  3. 空調工事会社の事業譲渡・売却と株式譲渡はどちらが節税できる?
  4. 空調工事会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する理由
  5. 空調工事会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際の注意点
  6. 空調工事会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際の相談先
  7. まとめ

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空調工事会社の事業譲渡・売却と株式譲渡

空調設備工事業界は、東京オリンピック需要やインバウンド需要などにより上向きの市場である一方、大手企業の事業拡大や異業種からの参入などによって競争が激化しています。

また、中小空調工事会社の経営者が高齢化していることや、後継者となる若い人材が不足していることなどから、空調設備工事業界ではM&Aが増加傾向にあります。

本記事では、空調工事会社がM&Aを行う際によく用いられる、事業譲渡・事業売却と株式譲渡の手法の違いや節税について解説していきますが、まずは空調工事会社の定義や事業譲渡・事業売却と株式譲渡の意味にを簡単に説明します。

空調工事会社とは

空調工事会社とは、建築の中でも「建築設備」を担当する会社です。建築設備とは、空調・給排水・汚水などにかかわる設備を指し、具体的には以下の設備工事が該当します。

  1. 冷暖房や換気などの空気調和設備工事
  2. 排水や給湯・給水などの給排水衛生設備工事
  3. 汚水処理などの環境衛生設備工事
  4. スプリンクラーや消火栓などの消火設備工事
  5. 冷蔵・冷凍などの特殊管設備工事

事業譲渡・売却とは

事業譲渡・事業売却とは、事業部門や資産の一部または全部を譲渡・売却するM&A手法です。

事業譲渡は、株式を発行できない個人事業主などがM&Aを行う際によく用いられます。事業譲渡は、売買する事業部門や資産を個別に選択できますが、手続きに手間がかかり税負担も大きくなることがデメリットです。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、株主が発行済株式を買い手に譲渡・売却することで、経営権を移行するM&A手法のことです。

株式譲渡は、手続きの負担が少ないことから、企業のM&Aで積極的に採用されています。しかし、株式が多くの株主に分散している場合は、株式の集約に手間がかかる場合もあります。

また、中小企業が身内間で株式譲渡を行う際などに、手続きの簡便さから逆にトラブルにつながるケースも少なくありません。

空調工事業界を取り巻く状況

近年の空調工事業界には、以下のような特徴がみられます。

  1. 市場規模は巨大も競争が激しい
  2. 多くの中小企業で成り立っている
  3. 大手企業によるワンストップサービスが増加傾向
  4. 後継者問題が表面化するケースも増加

1.市場規模は巨大も競争が激しい

空調設備は、現代の建築物には欠かせない設備であるため、その市場規模は巨大です。さらに近年は、東京オリンピックや災害復興などによって、需要が増しています。

その分競争も激しく、業界各社はM&Aによって営業エリア拡大や技術・サービスの向上を図っています。

一例として、東証一部上場企業で建築や空調衛生などの建設業を営むヤマトは、2017年に大手空調設備工事会社の高砂熱学工業と資本業務提携を締結しました。

ヤマトと高砂熱学工業は、業界環境が異業種からの参入増加や受注競争の激化により、さらに厳しくなると予測しています。

そのため、両社のノウハウを活かした新しいビジネスモデルへの取り組みや、IoT・AI技術を活用した新サービスを顧客に提供することで、事業基盤の強化と事業の拡大を図っています。

2.多くの中小企業で成り立っている

空調工事業界の企業割合は、中小企業・小規模事業者が多くを占めています。空調工事業界は東京オリンピック需要やインバウンド需要の増加によって盛り上がっていますが、需要増加による恩恵のほとんどを大企業が享受しているのが現状です。

また、同じ中小企業でも地域によって大きな格差が生まれており、地方の中小空調工事会社では厳しい経営状態に置かれている会社も多く存在します。

今後も、大企業によるエリア拡大や技術・サービスの向上は加速していくとみられており、多くの中小空調工事会社はさらに厳しい経営を迫られることが予測されます。

3.大手企業によるワンストップサービスが増加傾向

近年は、総合設備企業として事業基盤を強化するため、空調工事会社をM&Aによって買収する大手企業が増加傾向にあります。

四国電力グループ会社であり、電気設備工事や電力関連工事などを行なっている四電工は、2019年、空調設備工事や給排水・衛生設備工事事業を営む関西設備の株式を取得し、子会社化しました。

関西設備は、高知県内で豊富な設備工事実績を持つ、ブランド力のある企業です。四電工は関西設備を子会社化することで、設備工事事業全般を取り扱う総合設備企業としての基盤固めを図っています。

また、ラックランドは冷凍冷蔵設備業から始まった会社ですが、事業領域を拡大し続け、現在では店舗施設・商業施設の企画制作から建築事業、建築設備事業まで幅広く手がけています。

そのラックランドは2019年、空調・給排水衛生工事事業を営む、環境装備エヌ・エス・イーの株式を取得し、子会社化しています。これによりラックランドは、自社グループ内でトータルサービスを提供できる体制を強化しました。

4.後継者問題が表面化するケースも増加

空調工事業界は、経営者の高齢化が進んでいると同時に、中堅層の技術者数が少ないという構造的な問題を抱えています。

経営者の引退年齢が差し迫っているにもかかわらず、十分な空調工事の経験を持った中堅層にあたる後継者候補がいないことが、空調工事業界の課題です。

中小空調工事会社は経営状況に余裕のない会社も多く、事業承継の準備に割く十分な時間がないことも後継者問題を深刻にしています。

地方では大手による空調工事サービスが行き届いていない地域も多く、地場の空調工事会社が廃業してしまうと地域の衰退にもつながります。

そのため、地域の各機関が連携して、後継者問題をどこまで迅速に解決できるかが地方の課題となっています。

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空調工事会社の事業譲渡・売却と株式譲渡はどちらが節税できる?

空調工事会社を譲渡・売却する場合の手法は、事業譲渡・事業売却か株式譲渡を選ぶのが一般的ですが、どの手法にもそれぞれメリット・デメリットがあるので、状況に応じて選択する必要があります。

ここでは、事業譲渡・事業売却と株式譲渡のメリット・デメリット、節税方法について解説します。

事業譲渡・売却の特徴

事業譲渡・事業売却の大きな特徴は、事業や資産を個別に譲渡・売却できることです。事業譲渡・事業売却には、個別に譲渡・売却できるからこそのメリット・デメリットがあります。

メリット

事業譲渡・事業売却のメリットは、無駄なく事業を売買できる点です。譲渡・売却側は、不要な事業や資産を切り離すことで会社をスリム化できます。

事業や資産を譲渡・売却した資金で他の事業をはじめたり、小さい規模で細々と事業を続けたりするといった選択肢を増やすことができます。

一方、買収側は、負債などのリスクを減らすことが可能です。また、買収したい事業や資産が小規模の場合は、会社ごと買収するよりも小資金で取得することができます。

デメリット

事業譲渡・事業売却は、許認可や契約を引き継ぐことができません。買収側は事業を行うための許認可を取り直し、土地・建物の賃貸契約、従業員との雇用契約などを結び直す必要があります。

そのため、事業譲渡・事業売却の規模が大きいほど、手続きの負担も大きくなります。

また、譲渡・売却益に対して法人税が課せられるほか、買収側は課税対象資産に対して消費税が課せられ、譲渡・売却側に支払う必要があります。

その他の課税や、許認可・契約などにかかる費用をあわせると、負担が大きくなることが難点です。

株式譲渡の特徴

株式譲渡は、株主の移動だけで経営権も移行できる簡便さが特徴です。株式譲渡には、以下のメリット・デメリットがあります。

メリット

株式譲渡は経営権が移行するだけなので、許認可や各種契約も原則そのまま引き継がれます。

また、株式譲渡の場合は変更登記も必要もないので、株式譲渡の手続き中も会社の通常業務に支障が出にくいこともメリットです。

税金面では、事業譲渡・事業売却に比べて譲渡・売却側の課税率は低く、買収側は特殊なケースを除いて株式を取得した際の課税がありません。

デメリット

株式譲渡は引き継ぐ事業や資産を選択できないので、必要のない資産と簿外債務などのリスクも引き継ぐことになります。

デューデリジェンス(企業内監査)や、PMI(M&A後の統合作業)によってリスクを下げることはできますが、いずれも入念な準備が必要です。

また、株式譲渡は手続きが簡便な分、省略できてしまう手続きもあるので、親族内での事業承継や小規模のM&Aの場合、後々問題が発生するケースもあります。

そのほか、株主が分散している場合は、株主の同意を得られない可能性も出てきます。

事業譲渡・売却と株式譲渡の節税方法

事業譲渡・事業売却と株式譲渡では、節税の方法も変わります。ここでは、それぞれの節税方法について解説します。

事業譲渡・売却の節税方法

事業譲渡・事業売却では、棚卸資産が多いと消費税も高くなります。棚卸資産にかかる消費税額は事業譲渡・事業売却が完了した日を基準に算出されるので、事業譲渡・事業売却のタイミング調整や、棚卸資産の削減などの対策が必要です。

課税対象となる資産と課税対象外の資産があるので、本当に必要な資産か、税負担も含めてよく検討することが大切です。

また、そもそも事業譲渡が最適なスキームなのかを検討することも重要です。会社分割など他の手法と比較して、総合的なメリット・デメリットを検討することも方法のひとつです。

株式譲渡の節税方法

株式譲渡で節税するには、株式の評価を下げる方法があります。株式の評価を下げるにはさまざまなアプローチ方法がありますが、以下4つが代表的な方法です。

  1. 経営者と役員に役員報酬や退職金を支給する
  2. 優遇税制などを活用する
  3. 資産価値の見直し
  4. 債権や不良在庫の整理

つまり、利益を圧縮するか、資産を整理することが株式譲渡の節税につながります。ただし、節税対策は慎重に行わなければ企業価値の低下にもつながるため、独断では行わず専門家によく相談しながら行うことが大切です。

空調工事会社の節税におすすめの手法とは?

空調工事会社が節税も考えながらM&Aを行うのであれば、会社の規模や保有資産を考慮する必要があります。中小企業の場合、一般的には株式譲渡が手続き面・費用面ともに有利です。

しかし、事業譲渡の場合、消費税は棚卸資産や土地以外の有形固定資産などに課税されますが、大量の商品在庫や広い店舗が不要な空調工事会社は、消費税負担を抑えることが可能です。

また、少人数で事業を行っている小規模空調工事会社の場合は、契約手続きの手間も少なく済みます。そのため、小規模の空調工事会社の場合は、事業譲渡も選択肢に入るでしょう。

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空調工事会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する理由

空調工事会社は主に以下の理由で事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行います。

  1. 後継者問題の解決 
  2. 競争激化による影響
  3. 大手の事業規模の拡大に参加

1.後継者問題の解決

日本には、まだ事業の継続が可能な経営状態であるにもかかわらず、後継者が見つからない、育成できないまま経営者が高齢になってしまった中小企業が多く存在します。

空調設備工事業界でも後継者問題は深刻であり、親族内や社内に後継者がいない中小企業は、M&Aによって第三者へ事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行うケースが増えています。

新事業承継税制の活用や、地域の事業承継ネットワークによるサポートがさらに浸透していくことで、空調設備工事業界での事業承継もさらに進んでいくことが期待されています。

2.競争激化による影響

大企業によるエリア拡大やサポート範囲の拡充、異業種からの参入などにより、空調設備工事業界の競争は厳しいものとなっています。

特に中小企業は、中堅技術者の慢性的な人材不足や技術進化への対応に苦労し、事業継続の見通しが立たないケースも少なくありません。

先行きの見えなさから廃業を選ぶ企業が増えるとともに、M&Aによって第三者へ事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行う企業も増えています。

一方で、競争の激化に対応するためや人材不足を解消するための買収需要も高まってきています。

3.大手の事業規模の拡大に参加

業界大手や異業種の大手企業は、M&Aによって積極的に事業規模の拡大を進めています。大手の事業規模拡大が進むにつれて業界内の寡占化が進み、今後中小の空調工事会社は厳しい環境に置かれることが予測されます。

そこで、大手企業に対して競合するのではなく、協業によってともに事業規模を拡大していく戦略をとる企業も出てきています。

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空調工事会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際の注意点

空調工事会社が事業譲渡・事業売却や株式譲渡を実行する際は、以下の点に注意が必要です。

  1. 有資格者を保有しているか 
  2. すべての従業員が雇用できるか
  3. 予測される収益性があるか
  4. 適切なスキームを選んでいるか
  5. 専門家に相談したか

1.有資格者を保有しているか

空調設備工事を手がけるには、複数の資格が必要です。さらに近年はサービスの付加価値が求められるようになっていることから、周辺分野の資格も複数保有している人材が求められています。

即戦力となる人材の確保に苦慮している買収側企業にとっては、複数の関連資格を持った人材がいる空調工事会社を求めています。

2.すべての従業員が雇用できるか

売却側企業にとって、自社従業員の雇用確保はM&Aの売却条件で高い優先順位に位置づけられます。

買収側企業が、従業員の雇用契約に関して誠実に対応してくれるかどうかをしっかりと見極め、M&A契約に明確に盛り込みことが大切です。

3.予測される収益性があるか

買収側は、買収先の空調工事会社が今後数年でどれくらいの収益を出せるかも基準のひとつとして、買収価格交渉を行います。

買収後、想定よりもシナジー効果が得られなかった場合、M&Aは失敗とみなされます。したがって、建築設備業界の動向も的確に読みながら、将来性を分析・判断することも重要です。

4.適切なスキームを選んでいるか

ここまで述べたように、事業譲渡・事業売却と株式譲渡では特徴が大きく異なります。また、同じ手法を選択しても、目的や案件規模、地域などによって戦略は変わります。

状況に応じて、自社にとって適切なスキームを選べるかどうかもM&Aの成否を左右します。

5.専門家に相談したか

ここまで取り上げた課題をクリアし、メリットを最大化するためには、M&A仲介会社など専門家によるサポートが欠かせません。

M&Aは準備に十分な時間をかけ、会社の経営状態や経営者の精神状態に余裕があるほど成功しやすくなります。

空調工事会社のM&Aを検討しはじめたら、まずは専門家に相談しておくことも大事なアクションのひとつです。

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空調工事会社を事業譲渡・売却と株式譲渡する際の相談先

空調工事会社が事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行い、計画的に節税も行うには、M&Aと会計・税務に精通した専門家によるサポートがおすすめです。

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無料相談は随時受け付けておりますので、空調工事会社の事業譲渡・事業売却、株式譲渡をご検討の際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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まとめ

本記事では、空調工事会社がM&Aを行う際によく用いられる、事業譲渡・事業売却と株式譲渡の違いをメリット・デメリットや節税面から解説してきました。

【空調工事業界の現状】

  1. 市場規模は巨大も競争が激しい
  2. 多くの中小企業で成り立っている
  3. 大手企業によるワンストップサービスが増加傾向
  4. 後継者問題が表面化するケースも増加

【事業譲渡・事業売却の特徴】
  1. 事業部門や資産を個別に譲渡・売却できる
  2. 許認可や契約を引き継げない
  3. 税負担が大きい

【株式譲渡の特徴】
  1. 手続きが簡便
  2. 税負担が比較的少ない
  3. 不要な資産やリスクも引き継ぐことになる

【空調工事会社がM&Aを行う主な理由】
  1. 後継者問題の解決 
  2. 競争激化による影響
  3. 大手の事業規模の拡大に参加

【空調工事会社がM&Aを行う際の注意点】
  1. 有資格者を保有しているか 
  2. すべての従業員が雇用できるか
  3. 予測される収益性があるか
  4. 適切なスキームを選んでいるか
  5. 専門家に相談したか

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