2024年11月22日更新業種別M&A

調剤薬局の事業承継の相場は?事業承継のメリットや注意点・事例も紹介

調剤薬局の事業承継時の価格相場や注意点を解説します。調剤薬局業界における事業承継の増加は、度重なる調剤報酬改定や後継者不足などで経営が難しくなっている状況が背景にあります。調剤薬局のM&A・事業承継の動向や売却相場も解説します。

目次
  1. 調剤薬局の市場動向
  2. 調剤薬局の事業承継が行われる理由5選
  3. 調剤薬局の事業承継の案件例
  4. 調剤薬局の事業承継・M&A事例
  5. 調剤薬局の事業承継の相場
  6. 調剤薬局を事業承継する適切なタイミング
  7. 調剤薬局を事業承継する際の注意点5選
  8. 調剤薬局の事業承継時におすすめの相談先
  9. 調剤薬局の事業承継まとめ

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調剤薬局の市場動向

調剤薬局業界では、大手企業による中小薬局の買収が増えています。新型コロナウイルスの影響で、消費者が病院での受診を控える傾向が強まり、小規模薬局が経営困難に陥るケースが相次いだことが背景にあります。この流れを受け、大手調剤薬局が中小薬局を次々と買収する動きが加速しました。

また、調剤薬局とドラッグストアの提携や、ドラッグストアを傘下に持つ商社による調剤薬局の買収といった新たな動きも見られます。一方、薬価改定が2021年度から毎年行われるようになり、2024年4月の改定では薬剤費が平均4.67%引き下げられました。薬価の引き下げは、調剤薬局の収益減少につながる大きな要因となっています。

調剤薬局の事業承継が行われる理由5選

この章では、調剤薬局の事業承継が行われる理由を解説します。調剤薬局が事業承継される主な理由主な原因には、少子高齢化による人材不足から引き起こされているものと、度重なる調剤報酬改定をはじめとした業界の変化によるものが存在します。

【事業承継が行われる主な理由】

  • 経営者の高齢化
  • 後継者問題の解決
  • 薬剤師不足の解決
  • 経営状態の悪化
  • 競合の増加

経営者の高齢化

現在、調剤薬局の経営者は全体的に高齢化が進んでいます。年齢に比例して、病気のリスクや体力的な問題も浮き彫りになってきており、経営を続けることが難しいと考える経営者も少なくありません。

自身が動けるうちに事業を引き継ぐために、近年では事業承継を検討する経営者が増えてきています。

後継者問題の解決

先述の通り、現在調剤薬局業界では、度重なる報酬改定や大手チェーンの参入などが原因で、小規模薬局の経営が難しくなってきています。

結果、経営者の子供が薬局を引き継ぐケースが減少しており、調剤薬局業界は慢性的な後継者不足に陥っている状態です。

また、従業員から経営者を探そうにも元々女性の比率が多く、家庭との両立が難しいなどの理由により、なかなか適正な人材を探し出すことができません。後継者がいない薬局を残すためにも、近年ではM&Aによる事業承継の事例が増えています。

薬剤師不足の解決

薬剤師の資格取得率は年々増加傾向にあるのですが、大手チェーンが次々と事業拡大をしていることもあり、薬剤師不足が発生しています。

また、女性大比率が高い調剤薬局業界では、出産や結婚を機に退職する薬剤師も多いことも、業界全体で薬剤師が不足している大きな原因になっています。

また、近年では若者が仕事の安定性を求めていることもあって、若手の薬剤師の多くは大手に就職してしまい、小規模の薬局まで人員が回っていません。

結果的に小規模の調剤薬局を手放したいという人が増えており、事業承継の件数が増えてきています。

経営状態の悪化

経営状態の悪化から、事業を引き渡したいと考えている人も多いです。現在調剤薬局業界は、調剤報酬改定による収益の低下や、調剤薬局自体が増えすぎていることが原因で、経営状態が悪化している企業が増えています。

また、調剤薬局の店舗数を減少させ、かかりつけ薬局を増やしたい政府の方針により、今後も調剤報酬改正によって調剤技術料が減少する可能性が高いです。

上記のような状況を危惧し、今のうちに事業を他人に引き渡したいという経営者が増えているのも、調剤薬局の事業承継が増えている原因といえるでしょう。

競合の増加

近年、調剤薬局業界には他業種からの参入が相次いでおり、資本力を充分に持った競合が増加しています。

資本が潤沢な企業は急速な事業拡大が可能であり、調剤報酬の改定にも柔軟に対応することが可能です。

対して小規模の調剤薬局では、先に述べた薬剤師不足や調剤報酬改定への対応の遅れなどが問題となりやすく、新たに増加した競合に打ち勝つことが難しくなっています。

結果的に、事業承継によって調剤薬局を手放したいと考える人が増えてきています。

調剤薬局の事業承継の案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている調剤薬局の事業承継の案件例として、四国で調剤薬局を複数店舗運営している企業をご紹介します。

地域密着型の薬局であり、患者様の家族構成や生活習慣まで把握して処方を実施しています。薬剤師が直接対面で服薬指導を行い、薬の効果・副作用・服用方法を丁寧に説明しています。

エリア 中国・四国
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1000万円〜5000万円
譲渡理由 事業存続に対する不安

【地域密着】四国 × 調剤薬局を複数店舗運営(医療・介護) | M&A総合研究所

調剤薬局の事業承継・M&A事例

近年の調剤薬局の事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。

ファーマライズHDによる寛一商店グループの調剤薬局事業の承継

2024年9月24日、ファーマライズホールディングスは、会社更生手続き中の寛一商店グループから一部の事業を譲り受ける契約を締結しました。ファーマライズグループは調剤薬局事業を中心に、物販や医学資料管理も展開しています。一方、寛一商店グループは調剤薬局チェーンを運営していましたが、2024年7月に会社更生法を申請していました。

今回の事業譲受は、ファーマライズが公表している中期経営計画「LSG 2024」の一環で、調剤事業を軸とした収益拡大や経営基盤強化を目的としています。この取引により、調剤薬局事業での規模のメリットを活かし、さらなる競争力と成長を目指します。

寛一商店グループからの一部の事業譲受に伴う子会社への会社分割(簡易吸収分割) に関するお知らせ

メディカル一光グループによる三重県薬剤師会の薬局2店舗の譲受

2024年9月9日、メディカル一光グループの子会社であるメディカル一光は、一般社団法人三重県薬剤師会から2つの調剤薬局を譲り受けることを決定しました。メディカル一光は、調剤薬局事業や医薬品卸売事業を展開しています。

この事業譲受は、メディカル一光グループの薬局事業をさらに強化し、地域医療の充実を図ることを目的としています。また、経営基盤の安定化を目指し、より強固な事業体制の構築を進める狙いがあります。

当社連結子会社による事業譲受けに関するお知らせ

クオールホールディングスによるダイナの事業承継

2024年5月16日、クオールホールディングスは、山梨県甲府市に本社を置くダイナの全株式を取得し、グループ化しました。クオールホールディングスは「クオール薬局」を展開する調剤薬局事業や医療関連事業を行っており、ダイナは山梨県内で18店舗の調剤薬局を運営しています。

今回の株式取得は、地域密着型の「かかりつけ薬局」を目指すクオールグループの方針に沿ったものであり、山梨県における地域医療や在宅医療への貢献を強化する狙いがあります。この取引により、クオールホールディングスは山梨県への初進出を果たし、全国規模での医療提供体制の拡充を目指します。

クオール調剤薬局18店舗を運営する有限会社ダイナの株式取得に関するお知らせ

調剤薬局の事業承継の相場

調剤薬局の承継は、親族間承継の場合に限っては金銭的なやり取りをせずに承継を行うケースが多いです。しかし、親族外への承継やM&Aによる承継の場合、譲渡価格をしっかりと定める必要があります。

金銭のやり取りが発生する承継で、調剤薬局の価格相場を決める基準には以下の3点があり、その合計額が 譲渡価格の相場となります。

【調剤薬局の価格相場を決める基準】

  • 時価純資産価額
  • 営業権
  • 月の技術料と処方箋応需枚数

時価純資産価額

時価純資産価額は、対象の調剤薬局の企業価値を時価で測る方法です。調剤薬局の資産には、薬局で使用するレセコンなどの専用機器や調剤機器・在庫の医薬品・建物などが該当します。

純資産とはすべての資産から負債の金額を差し引いたものになります。つまり、時価純資産価額とは、現時点でのすべての資産から負債の金額を差し引いた金額を指します。

営業権

営業権とは、承継する調剤薬局の営業利益から割り出される価格基準です。基本的には、調剤薬局が一年に得た利益を企業価値として算出しますが、価格相場を決める際は3~5年の営業権から譲渡価格価値を決定します。

月の技術料と処方箋応需枚数

月の技術料と処方箋応需枚数は、月間の売り上げに算出に大きく影響するため、価格相場を決める際にも重要な要素になります。

一か月の調剤技術料がわかると売り上げに占める技術料を算出することができ、処方箋の枚数が分かれば売り上げが把握できるので、価格相場の決定では最も重要視されます。

M&Aの譲渡価格の相場については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aの譲渡価格の相場はどれくらい?価格の決め方・高値で売却するコツも紹介【事例付き】

調剤薬局を事業承継する適切なタイミング

調剤薬局を事業承継するタイミングには、大きく分けて2つあります。1つ目は、経営から身を引きたい年齢の5年前です。

事業承継を行うには、後継者探しや後継者の育成や引き継ぎ作業などが必要です。M&Aによる承継を考えている場合でも、事業情報の整理や承継先の選定に時間がかかることも考えられます。

スムーズな事業承継のためには、準備期間を含め事業承継を行う5年ほど前から、余裕を持って進めることが大切です。

2つ目のタイミングは、経営状況が悪くなる前です。薬局の財務状況は、譲渡価格を決定する重要な要素になります。

経営状態が悪くなってから承継を行おうとすると、希望する金額では売却できない可能性が高くなります。近々の経済状況も考慮して、事業承継は経営が安定しているうちに行うようにしましょう。

調剤薬局の売買については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】調剤薬局の売買を徹底解説!流れ・手数料・相談先は?【東京/大阪】

調剤薬局を事業承継する際の注意点5選

調剤薬局を承継する際は、どのような点に注意して進めればよいのでしょうか。ここでは、特に意識しておくべき5つのポイントについて解説します。

【調剤薬局を承継する際の注意点】

  1. 最良の承継方法を選ぶ
  2. 後継者の育成を行う
  3. 計画的に準備を行う
  4. 引き継ぐ内容を確認する
  5. 信頼できる相談先を見つける

最良の承継方法を選ぶ

まず注意しなければならないのが、承継の方法です。事業承継をM&Aで行う場合、主に株式譲渡と事業譲渡の2つの方法があります。どちらの手法を選択するかによって、契約成立後の譲渡にかかる期間や双方の状況が変わってきます。

株式譲渡を選択した場合、対象企業の株式を譲渡することによって事業承継するため、売り手側には譲渡金額しか残りません。

一方で、事業譲渡の場合は事業のみを引き渡すので、会社自体は売り手の手元に残ります。事業譲渡は引き継ぐ項目が多いため、株式譲渡に比べると手続きに時間を要します。

また上記以外にも、グループ会社などに事業の一部を移転し、組織再編をする会社分割などが行われるケースもあります。

後継者の育成を行う

親族内承継あるいは親族外承継を行う場合、後継者の育成が重要になります。そのためには、事業を引き継ぐにふさわしい人物を早い段階でみつけることが必要です。

後継者に、経営者として必要な視点や業務をあらかじめ身に付けさせることによって、承継後もスムーズに経営を行うことが可能です。

計画的に準備を行う

事業承継を行うのであれば、入念な準備は欠かせません。スムーズに承継を行うためには、承継する薬局の情報をまとめておく必要があります。

特に、財務情報や組織情報など譲渡価格や承継後の経営に関わる情報は、資料にまとめておくようにしましょう。

そのほか、後継者の育成や事業承継後の従業員の待遇など、承継後の経営を円滑に行うための準備も必要です。可能であれば5年程度の期間を掛け、着実に承継のための準備を行うようにしましょう。

引き継ぐ内容を確認する

事業承継を行う前に、引き継ぐ内容を確認しておくことも重要です。特に、時間がかかるのが財務状況の整理です。

個人経営で公私の財務情報が混同している場合、事前に整理して正確な資産額と負債額を算出する必要があります。

自家用車やパソコンなどについては、事業用と個人用の境界があいまいなことが多いので、明確に分類しましょう。

また、ほとんどの場合、専門家や仲介会社のサポートを受けるとはいえ、当事者自身も事業承継における取引の流れを把握しておくことが必要です。

どのような情報がどのタイミングで必要か、契約書の締結における注意点があるのかなど、事業承継の取引におけるポイントをできる限り勉強しておきましょう。

信頼できる相談先を見つける

事業承継の取引は長期間かかるうえ複雑な手続きが必要になるため、当時者のみでの取引を完遂することは困難といえるでしょう。

事業承継を滞りなく終わらせるためには、信頼できる相談先をみつけることがポイントです。特に、調剤薬局の事業承継においては、調剤薬局業界の動向や薬機法などに精通している必要があるため、相談先の選定は一般的な業種以上に大切なものとなっています。

 

調剤薬局のM&A・事業承継ならM&A総合研究所

調剤薬局の事業承継時におすすめの相談先

調剤薬局の事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

最近、金融機関が企業のM&A(合併・買収)を支援するために専門部署を設置する動きが活発化しています。特に、大手投資銀行やメガバンクは、資金調達のアドバイスや取引戦略の立案といったサービスを提供し、M&Aのプロセスを円滑に進めるための支援体制を整えています。

これらのサービスを利用することで、企業は事業承継や資金調達といった複雑な課題を効率的に解決できるほか、専門家のサポートを受けながら取引を成功させる可能性を高めることができます。

一方で、大規模案件が優先されることが多く、中小企業が十分な支援を受けにくい場合もあります。そのため、企業の規模や目的に合った支援機関を選ぶことが重要です。また、これらのサービスには高額な費用が伴う場合があるため、料金体系を事前に確認し、コストに見合った支援を受けられるか慎重に検討する必要があります。

公的機関

近年、事業承継やM&Aをサポートする公的機関の取り組みが大幅に充実しています。全国に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に直面する中小企業に向けて、事業承継やM&Aに関する無料の相談サービスや情報提供を行っています。

さらに、企業間のマッチングを支援する仕組みも整備されており、地方企業も専門的なサポートを受けやすい環境が整っています。また、個人事業主向けの支援も強化されており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介も可能です。

ただし、公的サービスは民間の仲介会社に比べ、対応の迅速さや柔軟性に限界がある場合もあるため、利用を検討する際にはその点を踏まえた判断が求められます。

これらの公的支援は、リスクを抑えつつ事業承継やM&Aを進めるうえで、有力な選択肢の一つといえるでしょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の売買を効率的に進めるための専門サービスを提供しています。単なる仲介にとどまらず、交渉の進行管理、企業価値の算定、契約書の作成など、取引を成功させるために必要な多岐にわたる業務をサポートします。このため、M&Aに不慣れな企業でも安心してプロセスを進められる体制が整っています。

特に注目すべきは、幅広いネットワークを活用して、適切な取引相手を迅速に見つける能力です。このネットワークの存在が、取引成功率を高める大きな要因となっています。また、初心者にもわかりやすく丁寧に説明し、取引に伴う不安を軽減する姿勢も強みの一つです。

一方で、仲介サービスには着手金や中間報酬などの費用がかかる場合があり、事前に料金体系を確認することが不可欠です。費用を抑えたい場合には、成功報酬型サービスを選ぶことで、コスト効率の高い支援を受けることが可能です。

【関連】M&Aの相談先|メリットデメリットや選び方とよくある相談内容を紹介
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調剤薬局の事業承継まとめ

今回は、調剤薬局の事業承継における相場や事例についてお話ししてきました。調剤薬局の事業承継を成功させるには、事前の準備とタイミングが重要です。

【調剤薬局の承継が行われる理由】

  1. 経営者の高齢化
  2. 後継者問題の解決
  3. 薬剤師不足の解決
  4. 経営状態の悪化
  5. 競合の増加

【調剤薬局を承継する際の注意点】
  1. 最良の承継方法を選ぶ
  2. 後継者の育成を行う
  3. 計画的に準備を行う
  4. 引き継ぐ内容を確認する
  5. 信頼できる相談先を見つける

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