2022年6月6日更新業種別M&A

IT企業の事業譲渡・事業売却の流れやチェック項目を解説!事例も紹介

事業譲渡・事業売却を行うIT企業は多くありますが、流れをしっかりを理解していないと、思わぬところでつまずいてしまう可能性があります。当記事では、事業譲渡・事業売却の流れやチェック項目などを事例を交えて解説します。

目次
  1. IT企業の現状と動向
  2. IT企業の事業譲渡・事業売却
  3. IT企業の事業譲渡・事業売却が求められる理由
  4. IT企業の事業譲渡・事業売却のメリット
  5. IT企業の事業譲渡・事業売却のデメリット
  6. IT企業の事業譲渡・事業売却の流れ
  7. IT企業の事業譲渡・事業売却する前に確認すべき点
  8. IT企業の事業譲渡・事業売却を行う際の注意点
  9. IT企業の事業譲渡・事業売却の事例
  10. まとめ

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IT企業の現状と動向

IT企業とは、情報技術(Information Technology)に関する事業を行う企業を指します。情報技術に該当するものは多種多様であり、ハードウェアやソフトウェアの開発・プログラム処理・アプリ開発・システム開発・システムエンジニアの派遣などがあります。

また、最近はWEBサービス・メディアの運営を行っているIT企業が増えていますが、このようなIT企業は「WEB業界」に属するものとして扱うこともあります。

IT企業の現状

経済産業省による分類の「情報サービス業」に相当するIT業界は、1990年頃から全体の売上高・従業員数が急激に増加し、現在も伸び続けている状況です。

経済産業省による調査によると、2017年の情報サービス業における売上高は約18兆円で、過去最高の水準となりました。

情報サービス業は、主にインターネット付随サービス業・情報処理および提供サービス業・ソフトウェア業の3業種に分類されます。

そのなかでも、受託開発ソフトウェア業の売上が伸びている傾向にありますが、IT業界では全ての業種において増加傾向にあるのが現状です。

IT企業の動向

一般的に、IT業界は景気の動向に影響される傾向があります。業績がよくなれば新しいシステムの導入を行うという企業も少なくないため、景気が回復してしばらくすると需要が伸びる傾向があることもIT業界の特徴といえるでしょう。

近年では、パーソナル・ビジネスを問わず、私たちの生活においてIT技術は欠かせないものになっています。

また、金融機関のシステム更新やマイナンバーの導入など大型案件の需要も伸び、今後もIT業界の業績は増加傾向にあると予測されています。

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IT企業の事業譲渡・事業売却

近年売り上げが増加傾向にあるIT企業ですが、さまざまな理由により事業譲渡・事業売却を行うIT企業も多く存在します。

IT企業の事業譲渡・事業売却が求められる理由を説明する前に、まずは事業譲渡と事業売却の意味の解説します。

事業譲渡とは

事業譲渡はその名の通り「事業を譲渡する」ことを指し、不採算事業やノンコア事業の売却に用いられることがあります。

一般的にM&Aというと、会社自体を売買するイメージがあるかもしれませんが、事業譲渡は事業のみを売買するため、会社の独立性は失われません。

事業譲渡は、ほかのM&Aの手法と比べると異なる点が多くあります。まず、会社を売買する株式譲渡や合併と違い、事業譲渡は法人税ではなく消費税が課税されるというところも異なるポイントだといえるでしょう。

事業譲渡により消費税が課税される理由は、事業譲渡で売買される事業は「資産」として扱われるからです。

また、事業譲渡は契約の範囲内で承継するものを選ぶことができます。株式譲渡や合併は、売り手の会社が持つ負債や資産を買い手が全て引き継ぐ「包括的承継」ですが、事業譲渡はあらかじめ承継するものを選べるため、引き継ぎたくない資産や負債を除くことができます。

この点は買い手にとって大きなメリットになりますが、事業譲渡は事業の許認可や雇用契約、不動産の名義などが全て白紙になり改めて手続きする必要があるため、時間と手間がかかるというデメリットもあります。

事業売却とは

事業売却は事業譲渡と似ている言葉であるため、混同されることも多いです。しかし、事業譲渡はM&Aの手法を指すのに対し、事業売却は「事業を売却する」という行為自体を指す言葉です。

また、事業売却というくくりでみるなら、事業譲渡とは別に会社分割という手法も該当し得るでしょう。会社分割は会社から事業を切り離して、他の既存会社に承継させたり、新規に独立させる手法です。

事業売却は事業譲渡とよく似ていますが、一つの会社で完結させられるうえに包括的承継が発生するなど、異なる点が多くあります。

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IT企業の事業譲渡・事業売却が求められる理由

1990年頃から成長率の著しいIT業界ですが、さまざまな理由から事業譲渡・事業売却が求められる場合もあります。この章では、なぜ事業譲渡・事業売却が求められているのか、その理由を解説します。

【IT企業の事業譲渡・事業売却が求められる理由】

  1. 業界全体の人材不足
  2. 事業規模の拡大
  3. 事業の内製化

①業界全体の人材不足

IT業界は慢性的に人材不足に陥っている傾向があり、とりわけITやIoTのような最先端の技術の専門家は常に不足している状態です。

そのため、新たな人材を確保することを目的として、事業譲渡・事業売却を行うケースが多くみられます。

②事業規模の拡大

楽天やソフトバンクのように、ITをベースにさまざまな事業分野に進出しているIT企業は多くあります。

事業規模を多角化すればそれだけ会社の体力も増えるため、事業譲渡・事業売却は事業規模の拡大を進めるうえで効率的な手段となり得ます。

③事業の内製化

従来のIT企業は、特定のプロセスを下請け業者に回していくことで業務を進めていましたが、近年はその構造が問題視されて改善が求められています。

そのため、事業譲渡・事業売却を行うことにより、会社の内部でプロセスを完結させられる体制作りにシフトしているIT企業が増えています。

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IT企業の事業譲渡・事業売却のメリット

前章では、IT企業の事業譲渡・事業売却が求められる理由を紹介しましたが、事業譲渡・事業売却を行うとどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、主な5つのメリットを解説します。

【IT企業の事業譲渡・事業売却のメリット】

  1. 後継者問題の解決ができる
  2. 従業員の雇用先ができる
  3. 中心事業を選別できる
  4. 安定的なビジネスパートナーを得る
  5. 譲渡・売却益を獲得できる

①後継者問題の解決ができる

後継者不在の会社の場合、事業譲渡・事業売却は解決の糸口になります。事業をほかの会社に託すことができれば、たとえ会社が廃業したとしても事業はそのまま継続できるため大きなメリットといえるでしょう。

②従業員の雇用先ができる

自社の事業の存続が危ぶまれている場合、経営者として憂慮すべきことが従業員の雇用です。

しかし、事業譲渡・事業売却であれば、ほかの会社に経営してもらうことができるため、従業員の雇用先を確保することができるというメリットがあります。

③中心事業を選別できる

先に述べたように、事業譲渡・事業売却はノンコア事業を整理し、コア事業へ集中できる体制を作るうえでも使われます。

コア事業へ集中できる体制を作ることができれば、より効率的な経営が実現できるようになります。

④安定的なビジネスパートナーを得る

事業譲渡・事業売却を行い、買い手の会社とよい関係を築くことができれば、安定的なビジネスパートナーを得ることにつながります。

実際、事業譲渡・事業売却をきっかけに、よい取引関係を築いたというケースは多く見受けられます。

⑤譲渡・売却益を獲得できる

事業譲渡・事業売却を行えば、まとまった資金を獲得することができます。事業譲渡・事業売却を行った会社は、譲渡・売却益を経営資金に回したり、新たな事業を打ち立てる資金にするなど、さまざまな形で活用することが可能です。

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IT企業の事業譲渡・事業売却のデメリット

IT企業が事業譲渡・事業売却を行うと多くのメリットが得られる一方で、デメリットも当然存在します。この章では、IT企業の事業譲渡・事業売却で生じ得るデメリットを解説します。

【IT企業の事業譲渡・事業売却のデメリット】

  1. 債務・債権などを引き継げない可能性がある
  2. 事業引継ぎ後に拘束される可能性がある
  3. 一定期間は同事業を行えない

①債務・債権などを引き継げない可能性がある

先述のとおり、事業譲渡は買い手が契約の範囲内で承継するものを選ぶことができます。しかし、これは裏を返すと買い手が不利益と判断したものは、引き継いでくれない可能性があることを示しています。

とりわけ売り手の債務などは、買い手が引き継いでくれない可能性が高いため、交渉の際は気を付けておく必要があります。

②事業引継ぎ後に拘束される可能性がある

事業譲渡・事業売却を行った後、最終契約の内容によっては引き継ぎ関連の条項により、経営者が拘束を受ける可能性があります。

もし、最終契約で設けられた条項を違反すると損害賠償が発生することもあるため、最終契約の締結をする際は条項を正確に認識しておく必要があります。

③ 一定期間は同事業を行えない

事業譲渡・事業売却を行うと、売り手は一定期間だけ同一の事業を行えなくなるなど、規制を受けることがあります。

そのため、売り手の今後の経営に制限がかかってしまう可能性が高くなる点には、十分注意しておきましょう。

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IT企業の事業譲渡・事業売却の流れ

この章では、IT企業が事業譲渡・事業売却を行う際の全体の流れを具体的に解説します。

【IT企業の事業譲渡・事業売却の流れ】

  1. 相談者・仲介者との契約
  2. 事業譲渡・事業売却先の選定
  3. 経営者同士の面談
  4. 基本合意書の締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終交渉
  7. クロージング
  8. 各種手続き・引継ぎの遂行

①相談者・仲介者との契約

事業譲渡を行う際、まずは相談者・仲介者と契約を締結し、サポートを得ておくようにしましょう。

もちろん当事者同士だけでも事業譲渡・事業売却はできますが、専門的な知識を持つ相談者・仲介者のサポートがあれば成功率も高まります。

また、事業譲渡・事業売却は専門的な知識も必要となってくるため、サポートを受けることでスムーズにプロセスを進められるようになります。

相談者・仲介者を選ぶ際は、報酬やノウハウはもちろん、お互いの相性もチェックしておくようにしましょう。

秘密保持契約の締結

契約を結ぶ際、相談者・仲介者とは仲介契約だけでなく、秘密保持契約も締結することになります。

秘密保持契約とは、M&Aを進めていく際に重要な秘密情報を漏洩させないためのさまざまな条項を盛り込んでいる契約です。

情報が漏洩すれば従業員や取引先に動揺を与えかねず、また同じ相手とM&Aを考えている他社に先を越される可能性が出てくるため情報の秘匿は非常に重要です。

そのため、情報の扱いを厳密に行っている相談者・仲介者のサポートを得るようにした方がいいでしょう。

②事業譲渡・事業売却先の選定

相談者・仲介者と契約を結んだ場合、そのサポートを得ながら事業譲渡・事業売却先の選定を行います。

その際、ロングリスト(買い手の一覧)とショートリスト(一定条件で絞り込んだもの)を作成し、条件と照らし合わせながら候補を絞り込んでいく作業をスクリーニングといいます。

スクリーニングの際は、候補の会社を多角的に分析することを心がけましょう。事業譲渡・事業売却に限らずM&Aは相手との会社の相性だけでなく、経営方針や事業分野、ノウハウなどといったさまざまなファクターが重要となります。

高値で買収してくれることのみを条件にしていると、理想的なシナジー効果を得られない可能性が高いため、注意しておきましょう。

③経営者同士の面談

事業譲渡・事業売却先が定まったら、M&Aを打診し、経営者同士の面談を行って実行につなげていきます。

この交渉で失敗すると、事業譲渡・事業売却があっという間に破談になるため、慎重に行うようにしましょう。

また、この経営者同士の面談は秘密裏に行われなければなりません。M&Aでは情報漏洩が命取りになるため、面談を行ったことが外部に漏れないように注意しましょう。

意向表明書の提示

経営者同士の面談でM&Aを行う方針が固まった場合、意向表明書の提示が行われることがあります。

意向表明書とは譲受側のみが提示するもので、M&Aを行うという意思や、その方向性などをまとめた書類です。

このプロセスは必ず行われるものではなく、意向表明書に法的拘束力はありません。しかし、これを行うだけでもM&Aの方向性が固まりやすくなります。

④基本合意書の締結

買い手と売り手の間でM&Aを行うことが完全に決定された場合、基本合意書が締結されます。

基本合意書とは、M&Aを行うにあたってベースとなる条件や方針などをまとめたもので、基本的にM&Aは基本合意書の内容に沿って進められることになります。

ただし、基本合意書を締結したからといってM&Aが成約したわけではありません。その後のデューデリジェンスを経て、基本合意書の内容が変わることがあるため、基本合意書が絶対的ではないことも認識しておきましょう。

⑤デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは売り手の会社のリスクを精査するプロセスであり、M&Aにおいて非常に重要です。

デューデリジェンスには、財務・税務・法務などさまざまな種類があり、必要があれば複数のデューデリジェンスが行われることがあります。

デューデリジェンスはM&Aの成否を大きく左右するものであり、結果次第ではM&Aが破談したり、譲渡価格が大きく低下することもあります。

⑥最終交渉

デューデリジェンスが終わった後、その結果を元に最終交渉が行われます。最終交渉を通じて、事業譲渡・事業売却の最終的な譲渡価格や条件が決定されます。

最終譲渡契約(最終売却契約)の締結

最終交渉がまとまった際に締結するものを最終譲渡契約といい、事業譲渡・事業売却の最終的な条件や譲渡価格、表明保証などさまざまな条項が記載されます。

最終譲渡契約は最終譲渡契約書という形でまとめられます。また、最終譲渡契約には法的拘束力があるため、一方的な破棄は認められません。

⑦クロージング

クロージングは、最終交渉後に事業譲渡・事業売却を完了させるうえでの必要な手続きを行うプロセスです。

事業譲渡・事業売却の場合、さまざまな契約の再締結や事業許認可の取り直し、移転する不動産の登記などが行われることになります。

⑧各種手続き・引継ぎの遂行

クロージングと並んで行われるのが、経営統合に伴う各種手続き・引継ぎの遂行です。このプロセスは「PMI」や「アフターM&A」と呼ばれており、非常に重要なものとなっています。

そもそも事業譲渡・事業売却に限らず、M&Aは異なる組織が統合するものであるため、業務やルールなどのすり合わせが必要になります。そのため、このプロセスを怠るとシナジー効果が得られなくなります。

【関連】事業譲渡契約書のポイント

IT企業の事業譲渡・事業売却する前に確認すべき点

IT企業が事業譲渡・事業売却を行う際、以下のようなチェック項目を確認しておきましょう。事前に確認しておくことで、事業譲渡・事業売却による失敗を避けることに繋がります。

【IT企業の事業譲渡・事業売却する前に確認すべき点】

  1. 事業譲渡・事業売却を行う目的
  2. 事業譲渡・事業売却先の選定方法
  3. 事業譲渡・事業売却の範囲
  4. 事業譲渡・事業売却で発生する税金
  5. 事業譲渡・事業売却のタイミング
  6. 自社の事業の強み

①事業譲渡・事業売却を行う目的

初歩的なことですが、「どのような目的で事業譲渡・事業売却を行うか」はしっかり決めておく必要があります。

例えば「赤字の事業を売却したい」「資金を得たい」という安直な目的だけだと、買い手が事業譲渡・事業売却に乗ってくれません。

買い手が獲得し得る利益も踏まえたうえで、合理的な目的を持っていることで、事業譲渡・事業売却は成功につながります。

②事業譲渡・事業売却先の選定方法

事業譲渡・事業売却先を選ぶ際、その条件をどうやって設定するかも重要なポイントです。資金が豊富だったり、会社のブランドやネームバリューが有名なだけで買い手を選ぶことはおすすめできません。

事業譲渡・事業売却は自分の事業を買い手に託す行為であり、理想的なシナジー効果を得るには相性のみならず、買い手のさまざまな要素が重要になります。

そのため、理想的なシナジー効果につながるよう、厳密に条件を設定したうえで事業譲渡・事業売却先を選ぶようにしておきましょう。

③事業譲渡・事業売却の範囲

事業譲渡・事業売却は、契約の範囲で買い手が承継するものを選べるため、売却する範囲も決めておく必要があります。

とりわけ売り手にとって渡したくない資産や人材がいる場合は、あらかじめ選別しておくことがおすすめです。

しかし、交渉の過程で買い手の方から承継したいものや、逆にしたくないものを提示してくることがあるので、買い手が提示したものが売り手のそれと食い違っている場合、いかに交渉で優位に立つかが重要となります

④事業譲渡・事業売却で発生する税金

事業譲渡・事業売却で発生する税金はそのままコストにつながるため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

特に、事業譲渡は消費税が発生するタイプのM&Aスキームであるため、どれだけ課税されるかを踏まえておかないと、負担が大きく変わることがあります。

⑤事業譲渡・事業売却のタイミング

事業譲渡・事業売却を行うのであれば、タイミングも意識することが大切です。M&Aのニーズが高まっている時期に事業譲渡・事業売却を行えるように、業界の動向を見据えておくようにしましょう。

⑥自社の事業の強み

事業譲渡・事業売却を行うのであれば、自社の事業の強みを適切に把握しておくことも重要です。

事業譲渡・事業売却の際、その強みが譲渡価格に影響を及ぼすものであり、買い手が事業譲渡・事業売却に乗ってくれるかどうかにも左右します。

【関連】事業譲渡における消費税

IT企業の事業譲渡・事業売却を行う際の注意点

この章では、IT企業の事業譲渡・事業売却を行う際に注意しておきたい点を紹介します。事業譲渡・事業売却を行う際は、特に以下の3つポイントに注意しておきましょう。

【IT企業の事業譲渡・事業売却を行う際の注意点】

  1. 従業員・取引先への事情説明
  2. 事業譲渡・事業売却後の計画
  3. 相談先の選定

①従業員・取引先への事情説明

事業譲渡・事業売却を行う際、従業員や取引先への事情説明は欠かさないようにしましょう。事業が他社に委託される以上、従業員や取引先への影響は大きいものであり、場合によっては相手の心証を悪くする可能性があります。

特に、従業員は事業譲渡によって雇用契約が白紙になるため、離職する可能性が高まります。事業譲渡・事業売却に反発する従業員が大量離職するリスクも想定されるため、事前に説得の材料を揃えておく必要があります。

②事業譲渡・事業売却後の計画

事業譲渡・事業売却はあくまで経営戦略の一つに過ぎず、今後も会社が存続していくのであれば、事業譲渡・事業売却後の計画もきちんと立てておかなければなりません。

売り手は事業譲渡・事業売却を踏まえたうえで、今後の計画を立てておく必要があります。事業譲渡・事業売却は譲渡・売却益を得られるため、その資金をベースにした経営計画を立てておくようにしましょう。

③相談先の選定

相談者・仲介者のような相談先の選定にも注意しておきましょう。決して多くはありませんが、相談者・仲介者のなかには、報酬目当てでクライアントの利益を考えない悪質な業者も存在します。

事業譲渡・事業売却を検討されている場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中堅規模のM&A案件を主に手掛けており、さまざまな業種で成約実績を有しています。

M&A総合研究所では、案件ごとに知識・経験が豊富なアドバイザーがつき、丁寧にフルサポートをいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)

無料相談は随時お受けしていますので、事業譲渡・事業売却をご検討の際は、ぜひ一度、M&A総合研究所へご相談ください。

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IT企業の事業譲渡・事業売却の事例

最後に実際にIT企業で行われた事例を2つご紹介します。事業譲渡・事業売却を検討する際に、過去の事例を確認することは取引を成功させるため、そしてリスクを避けるためにも重要です。

PoliPoliと毎日新聞社による事例

気軽に俳句を投稿できる「俳句てふてふ」は、当時19歳の伊藤氏が個人で開発したアプリです。その際に伊藤氏が創業した企業「PoliPoli」に対して、毎日新聞社から事業譲渡の話をもちかけました。

毎日新聞社は、長年俳句のコンテンツを提供しているノウハウがあり、「俳句てふてふ」事業の成長のためには資本などのリソースを活用した方が有効という理由から事業譲渡を提案したといいます。

2018年6月に事業譲渡が正式に行われ、毎日新聞が「俳句てふてふ」を運営し、伊藤氏はアドバイザーとなりました。事業が一定のステージに達して、その後の成長に必要なリソースを割けないときに、事業売却は有効な手段といえるでしょう。

クラウドワークスとコーチ・ユナイテッドによる事例

クラウドワークスは、企業と個人が直接繋がり仕事を受注できるサイト「クラウドワークス」などを運営する企業です。

クラウドワークスは、2017年12月にコーチ・ユナイテッド(クックパッド子会社)から、「サイタ」事業を譲り受けました。マッチングサイトの「サイタ」は、170種類以上もの習い事で生徒と講師を繋ぐサイトです。

個人取引に関するサービスを強みとしているクラウドワークスは「サイタ」の譲受により、スキル共有サービスの利用者増加を目指しています。

まとめ

IT企業が事業譲渡・事業売却を行う際は、そのスキームをよく理解していないと失敗する可能性が出てきます。

また、事業譲渡・事業売却を行う目的やメリット・デメリット、注意すべきポイントも踏まえておかなければ、なかなか成功につながりません。

【IT企業が事業譲渡・事業売却を行う際のポイント】

  • 現状と動向:全ての業種において売上増加傾向、今後もIT業界の業績は増加傾向
  • 事業譲渡・事業売却が行われる理由:業界全体の人材不足、事業規模の拡大、事業の内製化
  • 企業の事業譲渡・事業売却前に確認すべきこと:目的、選定方法、範囲、税金、タイミング、自社の強み
  • 事業譲渡・事業売却を行う際の注意点:事情説明、事業譲渡・事業売却後の計画、相談先の選定

IT企業の事業譲渡・事業売却を成功させるためには、事前の入念な準備と戦略的な実行が必要です。M&AY使い会社などの専門家と相談するなどして、積極的に情報や知識を集めておくようにしましょう。

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