M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月7日更新業種別M&A
賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&Aの事例!案件やおすすめの相談先も紹介
不動産管理業界では今後の競争激化などを見据え、競争力の強化を図るためにM&A・事業承継を検討するケースが増えています。不動産管理会社のM&Aや事業承継を検討する際は、不動産管理業界の動向やM&A・事業承継の事例などを踏まえ、分析を進めていくことが重要です。
目次
不動産管理業界の動向
日本の賃貸管理・不動産管理市場では、参入企業が増加し、競争がますます激しくなっています。高齢化社会の進展や単身世帯の増加といった社会構造の変化が市場に影響を与え、管理戸数の増減に直接つながっています。加えて、賃貸管理会社のサービス品質が向上し、市場の成熟度も増してきています。
このような環境の中で、不動産管理会社が管理戸数を増やすためには、既存顧客の満足度向上、新規顧客の開拓、業務の効率化が鍵となります。まず、顧客満足度を向上させることでリピート率を上げることができます。
定期的なコミュニケーションやアフターサービスの強化、顧客の意見を反映したサービス改善が効果的です。次に、新規顧客を取り込むには、ターゲット市場を明確にし、オンラインマーケティングやイベントを通じてアプローチすることが必要です。
さらに、クラウドサービスやモバイルアプリの導入により業務の自動化を図り、管理業務の効率を向上させることも重要です。これらの戦略を組み合わせることで、管理戸数の拡大を効果的に実現できます。
賃貸管理・不動産管理業界における事業承継M&A
賃貸管理・不動産管理業界の特徴・動向も踏まえた上で、事業承継M&Aについて解説していきます。
賃貸管理・不動産管理業界における事業承継M&Aの目的
事業承継とは、会社の事業を後継者に引き継ぐことを意味します。親族や従業員が事業を承継する場合などのほか、M&Aによって事業承継が行われるケースも見られます。具体的には、M&Aによって他社に事業を売却することで、買い手に経営を任せ、事業を承継するケースが該当します。
たとえば、経営者が高齢になって引退を考えている場合に、後継者が不在であったとします。後継者がなかなか見つからないと、経営者が経営を続けるしかありませんが、年齢的に業務の継続は難しいでしょう。このような場合には、最終的には廃業せざるを得なくなってしまいます。
しかし、M&Aによって他社に売却し、他社が事業を承継できれば、後継者不在問題が解決し、経営者は安心して引退することができます。M&Aによる事業承継は、このような後継者不足問題や経営者の高齢化など、経営上の問題を解決するための手法として大きな意味があるのです。
賃貸管理・不動産管理会社においても、経営者の高齢化などの問題はしばしば見られ、後継者不足をM&Aによる事業承継で解決することは、業界全体にとっても大きな意味があります。
事業承継を成功させるポイント
事業承継を成功させるためには、買い手が求めるポイントを踏まえて検討することが重要です。たとえば、同じ不動産管理事業を手がける会社が買い手となる場合であれば、同業者同士のM&Aとして事業の強化・拡大、競争力の強化などを図るケースが多いでしょう。
この場合、買い手が強化したいと考えている分野に売り手が強みを持っていれば、事業を承継してもらいたい売り手にとっても、事業を強化したいと考える買い手にとっても、お互いにメリットがあります。
M&Aによる事業承継は、買い手あっての事業承継です。当然のことながら買い手にもメリットがないと成立しません。買い手が求めるポイントと自社の事業が沿っているかが重要になるのです。
自社にとって最適な買い手を見つけるためには、業界動向やニーズの動向などを踏まえ、買い手が求めるであろう主なポイントをあらかじめ整理しておき、自社の事業と照らし合わせて買い手候補を絞っていくことが重要です。
賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの案件例をご紹介します。
【好立地/カバーエリア23区内】都内の不動産賃貸管理・仲介業
需要が旺盛な23区内のマンション管理に特化し、約80棟、700戸のサブリース契約を保持しています。山手線内の駅から徒歩数分内の好立地に店舗を構え、顧客を確保しやすい環境を確立しています。
エリア | 東京都 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 他事業への注力 |
【北関東×不動産管理業】1,200戸以上の管理物件保有
管理戸数は約1,250戸(アパート、テナント、駐車場、土地など)で、テナント管理戸数は地域トップクラスです。地域密着の企業として長年の業歴があり、土地仕入・建築・管理まで行っています。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&A事例
賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&A事例をピックアップしてご紹介します。
アンビションDXホールディングスによるDRS含む3社の買収
2024年7月31日、アンビションDXホールディングスは、START(東京都港区)のグループ会社であるDRS、SPM、LTD(いずれも東京都港区)の全株式を取得することを発表しました。
アンビションDXホールディングスは、賃貸DXプロパティマネジメント事業を中心に、不動産仲介や売買DX事業、不動産関連事業などを展開しています。
今回のM&Aにより、賃貸DXプロパティマネジメント事業の領域をさらに拡大し、DRS・SPM・LTDが持つ顧客基盤を活用して、新たに少額短期保険事業やライフライン事業、内装工事業などの不動産関連事業での収益拡大を目指しています。
これにより、グループ全体の事業基盤を強化し、新たな収益源を創出していく方針です。
日動によるシティビルサービス札幌の買収
2024年5月30日、日動(北海道札幌市)は、シティビルサービス札幌(北海道札幌市)の全株式を取得し、完全子会社化しました。
日動は、分譲マンション「ラ・クラッセシリーズ」を展開し、賃貸事業や管理事業も行う不動産企業です。一方、シティビルサービス札幌は、賃貸管理業務を中心に、札幌市内4店舗の賃貸仲介「ピタットハウス」を運営しており、北海道内外で約5,000戸の建物を管理しています。
今回の買収により、日動グループはシティビルサービス札幌の賃貸管理ノウハウや資産を活用し、グループ全体でのシナジーを生み出し、顧客満足度のさらなる向上を目指します。これにより、日動は賃貸管理事業の強化とサービス拡充を図る方針です。
リログル―プによるステージプランナーの買収
2022年10月27日、リログループは、ステージプランナー(東京都渋谷区)の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。
リログループは、賃貸管理、借上社宅管理、海外赴任支援、福利厚生、観光など幅広い事業を展開しています。一方、ステージプランナーは約7,000戸の賃貸物件を管理し、特に住宅賃貸需要の高い東京およびその周辺エリアで賃貸管理業務を行う不動産管理会社です。
今回のM&Aにより、リログループは賃貸管理業務におけるノウハウ共有やサービス連携を強化し、顧客満足度の向上や事業間のシナジー効果を生み出すことを目指しています。これにより、賃貸管理事業のさらなる成長と拡大を図ります。
賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの課題
M&Aによる事業承継は、経営上の問題を解決するための手段という意味合いが強いです。なぜなら、賃貸管理・不動産管理業界は今後さらに競争が激化する可能性があり、同業の会社が他社を買収して事業の強化・拡大を図るケースが想定されます。
また、先述したように、M&Aによる事業承継は買い手にとってもメリットにならなければ成立しません。そのため、買い手が事業の強化・拡大、競争力の強化にしっかりとつなげることが大切です。
売り手の会社、そして買い手の会社にとってメリットのあるものであれば、同業他社同士のM&Aとしてさまざまなシナジー効果が創出され、結果的に業界の活性化にもつながります。
特に今後の賃貸管理・不動産管理会社は多様化するニーズに対応する必要に迫られているため、同業者同士のM&Aによってサービスの質を向上させることは大きな意味があります。
今後の賃貸管理・不動産管理会社の事業承継M&Aは、多様化するニーズの動向も踏まえ、売り手と買い手双方に対し、より大きなメリットのあるものでなければならないでしょう。
賃貸管理・不動産管理会社における事業承継・M&Aの注意点
事業承継M&Aにおいては、目的の明確化と対象企業の選定には特に注意しなくてはなりません。経営上の問題を解決できるといっても、「ただ買ってくれれば良い」というものではないからです。明確な目的と戦略を立て、最適なスキームを検討した上で、最適な対象企業を探す必要があります。
そもそも目的がはっきりしていなければ、事業承継M&Aの方向性が定まらず、最適なスキームの検討も難しくなります。また、目的や方向性がはっきりしていなければ、自社にとって最適な対象企業を探すことは困難でしょう。
このような事態を避けるためには、まずM&Aの目的や方向性を明確にしなくてはなりません。また、売却によって経営を任せる以上、信頼できる相手でなければなりません。万が一信頼できないような企業に買収されれば、その後の経営がうまくいく可能性は低くなります。
こうした事態を防ぐためにも、信頼できる買い手かどうかを、事業内容や業績などを踏まえて総合的に判断することが大切です。
同じ賃貸管理・不動産管理会社に売却する場合であれば、買い手が賃貸管理・不動産管理業界の動向を踏まえて明確なビジョンを持っているか、売り手側の事業も引き続き生かしてくれるのかなど、しっかりと判断する必要があります。
事業承継・M&A時におすすめの相談先
賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&A時におすすめの相談先を3つご紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設置するケースが増えており、特に投資銀行やメガバンクがファイナンシャルアドバイザー(FA)として重要な役割を担っています。M&Aを進める際、金融機関は資金調達や専門的なアドバイスを提供する欠かせないパートナーです。
特に買収側では、資金調達のために既存取引先の金融機関に最初に相談することが一般的です。金融機関のサポートは、事業承継時に親族や従業員が後継者となる際、株式取得資金の調達などに役立ちます。また、金融機関によってはM&Aに特化した部署や他の専門家との連携体制を持っており、適切な専門家を紹介してもらえることもあります。
ただし、大手金融機関は大規模案件を中心に扱う傾向があり、中小規模案件には対応しないことや、報酬が高額になることがデメリットとして挙げられます。
公的機関
近年、公的機関でも事業承継やM&Aに関する相談が可能になり、中小企業の後継者問題解決を支援しています。例えば、「事業承継・引継ぎ支援センター」は、全国47都道府県に窓口を持ち、専門家が無料で情報提供やアドバイス、企業間マッチングを行っています。国の運営する機関であるため、相談費用がかからず、公平なアドバイスが得られることが大きなメリットです。
また、M&A仲介会社や各種専門家の紹介も受けられ、個人事業主の事業承継にも対応しています。ただし、公的機関ゆえに対応のスピードに限界があったり、民間のM&A仲介会社と比較すると実績やサポート内容が劣る場合があったりすることがデメリットとして挙げられます。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の売買を専門に支援する企業で、売り手と買い手の双方と契約を結び、交渉や調整を行います。初期相談から相手企業の選定、企業価値評価(バリュエーション)、必要書類の作成まで、M&Aプロセス全体をサポートすることが特徴です。
仲介会社は、売り手と買い手の条件を調整し、双方にとって最適な合意点を見つけることで、スムーズなM&Aの実現を目指します。特に、多数の候補企業の中から最適な相手を選定できる点が大きなメリットです。また、M&Aの初心者でも安心して進められるよう、専門的なアドバイスやコミュニケーションを通じて成功率を高めます。
ただし、着手金や中間金などの費用がかかる場合があり、コスト面での負担がデメリットとなることもあります。そのため、成功報酬制を採用している企業を選ぶと、費用負担を軽減できます。
賃貸管理・不動産管理会社の事業承継・M&Aまとめ
賃貸管理・不動産管理業界では、今後の競争激化などを見据え、競争力の強化を図るためにM&Aを検討するケースが増えています。また、今後は、経営上の問題を解決するため、M&Aによる事業承継を検討するケースも増加するでしょう。
経営が悪化した賃貸管理・不動産管理会社であっても、買い手が求める賃貸管理・不動産管理事業の分野に強みがあれば、その買い手に事業を承継してもらい、経営を安定化させることができます。
また、今後は同じ賃貸管理・不動産管理会社が競争力強化のために賃貸管理・不動産管理会社を買収するケースも増える可能性があるため、事業承継を検討している不動産管理会社にとってはチャンスになります。
賃貸管理・不動産管理会社の事業承継M&Aを検討する際には、こうした業界動向やM&A事例などを踏まえ、分析を進めていくことが大切です。
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