2024年4月16日更新業種別M&A

旅行代理店業界のM&Aの現状と動向は?相場や事例についても紹介【2024年最新】

本記事では、旅行代理店を対象とするM&Aについて、業界の現状や最新の動向から事例まで詳しく紹介します。近年、旅行代理店業界でもM&A事例が多く見られ、事業の強化・拡大などを図る目的でM&Aを検討する企業が増えています。M&Aを検討している方は必見です。

目次
  1. 旅行代理店業界の現状と動向
  2. 旅行代理店業界のM&Aについて
  3. 旅行代理店のM&Aの相場
  4. 旅行代理店のM&Aのメリット
  5. 旅行代理店のM&A案件一覧
  6. 旅行代理店のM&Aの事例7選
  7. 旅行代理店のM&Aのまとめ

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旅行代理店業界の現状と動向

旅行代理店業界とは、旅行者と事業者を仲介するサービスを提供する企業群のことです。

「事業者」に該当するのは、宿泊施設や交通機関などで、提供する業務内容には、ホテル・旅館などの宿泊施設の予約および宿泊券の販売・旅行の企画や手配・交通機関の乗車券販売なども含まれます。

旅行代理店業界の特徴

旅行代理店業界の大きな特徴として、「ホテル・航空会社などから部屋・座席を仕入れてツアーのパッケージを作り、自社の店舗・インターネットサイト・旅行代理店業などを通じて商品を販売する」点が挙げられます。

商品開発の過程では、テーマパーク・レジャー施設・商店街・土産物店・特産物の製造会社・地方自治体などとの幅広いネットワークを活用して、綿密な連携が必要とされる点が特徴的です。

旅行代理店業界の現状と動向

旅行代理店は、旅行者と事業者を仲介し、ホテル・旅館の予約や旅行の企画・手配、交通機関の乗車券販売などの業務を行います。近年はインターネットの普及によって、個人旅行の計画や手配が簡易化していることもあり、旅行代理店を利用しない顧客も多く見られます。

また、近年は訪日外国人数が増加傾向にあるため、以下では現状と動向を解説します。

旅行代理店の現状

もともと旅行業界は、新型インフルエンザや災害の影響を受けやすく、2010年までは大幅な市場規模の縮小が起こっていました。しかし、2014年以降は業界に活気が戻ってきており、2018年には訪日外国人数は3,000万人突破を記録しています。

観光庁の調査によると、2016年の旅行市場の総計は26.4兆円にのぼります。そのうち旅行消費額の国内市場は16.5兆円、海外旅行の国内消費分が1.4兆円、国内日帰り旅行が4.9兆円です。

旅行代理店は、ホテル・旅館・航空会社からの委託手数料(コミッション)を収入源のひとつとしています。その一方で、近年はホテル・旅館や航空会社の収益が減少していることもあり、旅行代理店が受け取る委託手数料も減少傾向です。

また、インターネットの普及により、個人で航空券や旅行の手配をする流れが増加しています。業界として収益を上げている一方で、航空会社から得られる利益が減少している旅行代理店は、時代にあわせて顧客の満足度をどう高めていくかが今後の課題といえるでしょう。

参考URL:日本旅行業協会「数字が語る旅行業2019」

旅行代理店の動向

出典:https://www.tdb-di.com/2023/08/sp20230814.pdf

インターネットの普及により、従来の窓口業務だけではない販売方法も登場し、旅行代理店をはじめとする旅行業界は近年大きく変化しています。インターネット専業旅行会社と大手旅行会社との競争も激しく、それが業界再編につながっています。

外国人旅行者向けのビジネスモデルを整えていくことが、インバウンドの増加につなげるための課題とされています。

帝国データバンクが2023年8月に発表した「旅行業界の景況感に関する動向調査」によると、2019年度に4兆5,695億円の旅行総取扱額は、2020年度には78.3%減の9,922億円まで激減しました。それによって主要旅行業者の多くが最終赤字となり、店舗の閉鎖や人件費の削減などが行われました。

そして2022年度の国内旅行の取扱額は2兆3,899億円とコロナ禍前に迫る勢いまでに戻りました。ただし、海外旅行は 4,546億円で前年度からは回復しつつあるものの、2019年度比では74.6%減の水準です。これは、為替の円安進行や欧米の物価高騰が影響しているもので、海外旅行については本格的な回復にはなっていません。

ビジネスモデルを整えるために、M&Aを活用して問題解決を図るケースも今後ますます増加するものと見られます。

旅行代理店におけるM&Aについては下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】旅行代理店における事業売却(M&A)とは?メリット・デメリットを解説

旅行代理店業界のM&Aについて

本章では、業界動向を踏まえて、M&Aがどのように業界の問題を解決に導くのか、旅行代理店業界のM&Aで見られるケースを整理します。

同業者同士によるM&A

旅行代理店の収益が減少する傾向も見られる中で、同業者同士がM&Aを行うことで事業の強化・拡大につなげるケースが見られます。同業者同士のM&Aによって、双方が持つノウハウやサービス体制を生かすことで、事業の幅を広げることが可能です。

例えば、特定の地域への旅行に強みがある会社を買収すれば、カバーできる分野を拡大し、より多くの利用者を取り込めるメリットが考えられます。

異業種も含めたM&A

旅行代理店業界は、比較的参入しやすい業界であり、近年のインターネット普及による影響で、インターネット業界からの参入も増えています。このような異業種からの参入を図る際に、M&Aを検討するケースもあります。

新規事業への参入を実現したい場合、当然ながら自社のみで新しく事業を開始することも可能です。ただし、自社でゼロから事業を始めると、軌道に乗せるまでに多くの時間・手間がかかります。

一方、すでにその事業分野で実績のある企業を買収し、グループ事業として事業展開を進めれば、比較的短期間で手間をかけずに新規参入を実現できるのです。

旅行代理店のM&Aの相場

旅行代理店のM&Aは、異業種を含めた事例などもあり、近年特に多様化している傾向にあります。事例ごとに目的も多岐に渡りますが、本章では旅行代理店のM&A相場を紹介します。

旅行代理店のM&Aの相場

旅行代理店のM&Aとして相場・費用を一概に述べることは、当事者となる旅行代理店の規模がさまざまであるために困難です。しかし、M&Aにより取引を行う以上、相場・費用を考慮しないわけにはいきません。

また、M&Aでは取得価格が億を超えることも珍しくなく、相場・費用を深く考えずに実行すれば、想定外の費用が発生しかねません。実際に、旅行代理店のTETをアドベンチャーが子会社化した際の取得価格は、2億8,000万円であったと報告されています。

M&Aを行う場合、その後の事業展開に支障をきたすような事態を防がなければなりません。そのためにも、自社の状況と似たM&A事例を徹底的に分析し、さまざまな観点から相場・費用の目安を付けておく必要があります。

旅行代理店の売却額は下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】旅行代理店の売却額は?売却交渉のコツや注意点を紹介

旅行代理店のM&Aのメリット

ここでは、旅行代理店を取引対象とするM&Aに期待されるメリットを、買収側・売却側それぞれの立場から紹介します。

買収側のメリット3選

まずは、旅行代理店がM&Aを行った際の買収側のメリットを整理します。買収側の主なメリットは、以下の点です。

  1. 事業の強化・拡大
  2. 短期間で参入可能
  3. ノウハウ・システムの取得

①事業の強化・拡大

同業者同士のM&Aでは、旅行代理店を買収し、事業の強化・拡大を図るなどのケースが考えられます。また、特定の地域への旅行に強みがある会社を買収すれば、ターゲット層を拡大できるメリットにつながります。

しかし、単純にM&Aを行えば良いわけではなく、対象企業を慎重に選ばなければなりません。旅行代理店の買収を通じて、自社の成長につなげられるのか、M&Aの当事会社双方の事業内容やサービス体制などから総合的に判断することが大切です。

②短期間で参入可能

異業種企業が旅行代理店を買収するケースもあります。これは、新規参入の一環として買収を活用する典型例であり、自社のみでゼロから事業を開始するよりも比較的短期間で参入できるメリットがあります。

特に旅行代理店業界は、参入障壁が低い傾向があるため、異業種の企業が参入を考えるケースも少なくありません。その際にM&Aを活用して、新規参入につなげるケースが今後増える可能性もあります。

しかし、こちらも、やみくもに旅行代理店を買収すれば良いわけではありません。候補企業の事業と自社の事業を照らし合わせ、シナジー効果が生まれるのかを判断し、検討を進める必要があります。

③ノウハウ・システムの取得

旅行代理店を買収すると、これまで長年にわたり培ってきたノウハウやシステムを取得できるメリットがあります。また、ノウハウを持った従業員をそのまま引き継げば、新規参入の場合でもスムーズに事業を開始可能です。

売却側のメリット3選

旅行代理店のM&Aにおける売却側の主なメリットは、下記のとおりです。

  1. 事業の継続
  2. 売却金の取得
  3. 従業員の継続雇用

①事業の継続

まず経営上の問題を解決するため、旅行代理店を売却するケースが考えられます。例えば、経営が厳しくなった企業が資金力の豊富な企業に売却すれば、安定した財務基盤のもとで事業を継続できるメリットがあるのです。

もちろん、旅行代理店同士のM&Aとして、事業の強化・拡大を図るために売却を検討するケースもあります。いずれの場合も、売却して経営を任せる以上、単純に買ってくれるのであればどのような企業を相手にしても良いわけではありません。

買い手の事業内容・業績などを確認し、信頼できる相手かどうか、総合的な観点から判断する必要があります。また、売却を成功させるには、自社の強み・魅力・得意エリア・主なターゲット層を明確に示すことが大切です。

②売却金の取得

旅行代理店の事業売却により事業の継続が可能となるケースがあるほか、売却したことで得られるまとまった資金を新規事業の費用に充てられる点もメリットのひとつです。事業の内容に固執せずに経営再建を図るための資金を得られることは、すべての業種で魅力的なメリットといえます。

③従業員の継続雇用

事業を廃業すると従業員を解雇しなければならないデメリットがありますが、M&Aによる事業売却の場合、従業員の継続雇用が実現するメリットがあります。また、買収先企業の規模によっては、従業員の待遇がこれまでよりも向上する可能性もあるのです。

旅行代理店のM&A案件一覧

本章では、旅行代理店のM&A案件一覧をご紹介します。

【中国地方】独自のツアーを展開する旅行代理店業

中国地方にて独自のツアーを展開する旅行代理店業のM&A案件です。

独自のツアー内容と法人をターゲットにした事業活動により粗利率15-20%と高利益率を維持しています。オーナー継続勤務希望されており引き続き売り上げに寄与できる想定です。コロナの影響により売上幅は大幅に減少したものの直近期から回復傾向にあります。

売上高 1億円〜2.5億円
営業利益 1,000万円〜5,000万円
譲渡希望金額 1円(備忘価格)
譲渡理由 後継者不足(事業承継)

本M&A案件の詳細は、以下のリンクからご覧ください。

【中国地方】独自のツアーを展開する旅行代理店業

旅行代理店のM&Aの事例7選

近年、旅行代理店のM&A事例が多く報告されていることもあり、現時点では各事例のM&A後の事業展開に注目されている段階です。そのため、現段階で成功事例・失敗事例を明確に分類することは難しいです。

さまざまな事例を確認し、その後の事業展開・業績面などから、M&Aの成功を判断することが重要です。このことから、なるべく多くの事例を把握しておく必要があり、直近の事例や動向を逐一確認することをおすすめします。

本章では、近年実施されたM&A事例をピックアップし紹介します。

①HISアメリカ法人がSpace Perspective社へ出資

2023年9月、エイチ・アイ・エスのアメリカ法人であるH.I.S. U.S.A. Holding, Inc.は、フロリダに拠点を置くSpace Perspective, Inc.のSAFE型新株予約権の発行による出資を行いました。

HISは大手旅行会社であり、旅行事業、テーマパーク事業、ホテル事業、ロボット事業、保険事業など幅広い事業を行っています。Space Perspective社は宇宙飛行体験会社です。

今回の出資によりHISは宇宙旅行を多くの顧客に体験をしてもらうため、Space Perspective社の事業をサポートし、宇宙旅行の促進、日本での商業フライトなどを目指します。

HISアメリカ法人、Space Perspective社に出資

②AZITOがエスクリへ事業譲渡

2023年3月、AZITOはエスクリへ旅行事業の事業譲渡を行いました。

エスクリは、主にブライダル事業の企画運営を行っている企業で、全国にて30会場のブライダル施設があります。対象会社のAZITOは、旅行業者代理業を主に行っている企業です。

今回のM&Aにより、顧客へのハネムーン商品やゲストの移動手段・宿泊手配、法人顧客への出張手配、海外旅行カタログギフトの販売など、ブライダル事業と旅行事業を掛け合わせたシナジー効果を目指します。

③アソビューがそとあそびを買収

2021年1月、アソビュー(東京都渋谷区)は、アカツキからそとあそび(東京都渋谷区)の株式すべてを取得し完全子会社化しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。

買収側のアソビューは、レジャー・遊び・体験 スポットを検索・予約できる、日本最大級の遊び予約サイトを運営する企業です。

そのほか、体験ギフト販売サイト、レジャー・観光・文化施設様向けDXソリューション、購買データ分析BIツール、アクティビティ・体験教室様向けDXソリューション、中央省庁・自治体向け地域活性化ソリューションなども提供しています。

対する売却側は、アウトドア・レジャーの予約サイトを運営する企業です。「アウトドアレジャーそとあそび」事業の主催および運営を手掛けています。

本件M&Aの主な目的は、アクティビティ領域のコンテンツ拡充およびユーザー基盤の拡大、事業者の共同開拓とサポート体制の共通化などにあります。

「withコロナ」においてアウトドアアクティビティの需要が高く、今後も市場の拡大が見込まれるなか、一体的なシステム開発体制の構築などでのシナジーが見込まれることから、M&Aによるグループ化を決定しました。

子会社(株式会社そとあそび)株式の譲渡に関するお知らせ

④エアトリがFAST JAPANの事業承継

2020年3月、エアトリ(東京都港区)は、グループ会社「インバウンドプラットフォーム」を通じて、FAST JAPAN(東京都渋谷区)より、訪日観光客向けのチャット型コンシェルジュアプリ「Tabiko」の事業を譲受しました。これに伴い、買収側では、リニューアルリリースを行っています。

買収側のエアトリは、「One Asia」のビジョンを掲げ、アジアを舞台にエアトリ旅行事業・訪日旅行事業・ITオフショア開発事業・ライフイノベーション事業・投資事業の5事業を展開する企業です。

売却側のFAST JAPANは、訪日観光客向けチャットコンシェルジュアプリ「Tabiko」を運営しています。

「Tabiko」は、国内旅行の計画から予約までコンシェルジュから手厚いサポートをチャットで簡単に受けられるサービスで、英語と中国語に対応しており、2017年2月の公開以降、15万人以上の訪日観光客の利用会員を獲得していました。

本件M&Aの主な目的は、ユーザビリティの改善による提供サービスの充実化および、インバウンドプラットフォーム社の既存サービスとの相互連携によるサービスの強化にあります。

インバウンドプラットフォームの運営する訪日観光客向けWebメディアとの連携で、訪日観光客が収集したいタイミングに、パーソナライズされた情報をダイレクトに届けられるようになり、レストラン・アクティビティなどの販売強化の実現に期待されています。

当社子会社のインバウンドプラットフォーム社にて インバウンド向けコンシェルジュアプリ「Tabiko」事業の 事業譲受に関するお知らせ~インバウンドのお客様へ、更なる安心・快適なサービスの提供を目指す~

⑤第一交通産業が西日本日中旅行社を買収

2019年12月、第一交通産業(福岡県北九州市)は、西日本日中旅行社(福岡県福岡市)の株式99.8%を取得し、子会社化しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。

買収側の第一交通産業は、タクシー・ハイヤー事業のほか、路線バス・不動産・貸金業事業などを運営する企業です。

一方、売却側の西日本日中旅行社は、中国専業旅行社として、日中間の旅行を中心とした各種国際航空券の発券、査証・ホテルの手配及び個人・団体旅行を取扱っている旅行業を手掛けています。

本件M&Aの主な目的は、ツアー業務の企画・募集を通じた外国人観光客の取り込みおよび、上海と大連にある中国子会社との連携によるシナジー効果の獲得などにあります。

⑥エボラブルアジアがセブンフォーセブンエンタープライズを子会社化

2019年5月、オンライン旅行事業や訪日旅行事業などを展開するエボラブルアジア(東京都港区、現:エアトリ)は、ハワイ旅行専門ブランド「ファーストワイズ」を展開するセブンフォーセブンエンタープライズ(東京都港区)の株式を取得し、子会社化することを発表しました。

それぞれの企業の強み

エボラブルアジアは、オンライン旅行代理店として、国内航空券・海外航空券販売を主軸に、サービスラインの多角化や主要ブランドの「エアトリ」の認知度向上などを通じて事業拡大してきました。

エボラブルアジアは、オンライン旅行事業・訪日旅行事業・投資事業など、幅広く展開しています。こうした事業展開を進める中で、エボラブルアジアは、オンライン旅行事業の戦略を加速するため、セブンフォーセブンエンタープライズの子会社化を決定しています。

セブンフォーセブンエンタープライズは、ハワイ旅行専門ブランド「ファーストワイズ」を30年以上にわたって展開しています。オンライン販売に特化し、ツアー企画・旅行のアレンジ・現地でのサポートなど、これまでの豊富な経験と専門知識をもとに手厚いサポートを実現しています。

セブンフォーセブンエンタープライズを子会社した目的

セブンフォーセブンエンタープライズを子会社とすることで、エボラブルアジアは、セブンフォーセブンエンタープライズの強みとなるハワイツアーを足掛かりとして、「エアトリ」の中長距離ツアーの拡大を図るとしています。

また、ハワイに現地法人を持つセブンフォーセブンエンタープライズのネットワークを生かし、ハワイでのラウンジ運営など多角的な事業拡大にもつなげたい考えです。

エボラブルアジア、セブンフォーセブンエンタープライズ社を子会社化

⑦三越伊勢丹ホールディングスがニッコウトラベルを買収

本事例の具体的な内容や流れを紹介する前に、2019年4月に三越伊勢丹旅行がニッコウトラベルを吸収合併し、三越伊勢丹ニッコウトラベルが誕生した経緯に関して解説します。

三越伊勢丹ニッコウトラベルの誕生

2018年2月、三越伊勢丹ホールディングスは、連結子会社である三越伊勢丹旅行・ニッコウトラベル・ニッコウ企画の3社が2019年4月1日付で合併することを発表しました。

これは、旅行情報誌・パンフレットの制作編集を行うニッコウ企画をニッコウトラベルが吸収合併した後、そのニッコウトラベルを三越伊勢丹旅行が吸収合併する形です。

また、存続会社となる三越伊勢丹旅行の社名を「三越伊勢丹ニッコウトラベル」に変更することも発表されました。そして、2019年4月1日を設立日(合併日)とし、三越伊勢丹ニッコウトラベル(東京都中央区)が誕生したのです。

ニッコウトラベルは、三越伊勢丹旅行に吸収合併されたため、三越伊勢丹旅行(三越伊勢丹ニッコウトラベル)が存続会社となり、ニッコウトラベルは消滅会社です。

しかし、ニッコウトラベルが長年培ったノウハウは、三越伊勢丹ニッコウトラベルの一部として現在も引き継がれています。

ニッコウトラベルを買収した背景

2017年2月、百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングス(東京都新宿区)は、老舗旅行代理店のニッコウトラベル(東京都中央区)の買収を発表しました。普通株式のすべて(自己株式を除く)を取得し、完全子会社化しており、取得額は約37億円です。

三越伊勢丹ホールディングスは、グループで百貨店業、クレジット・金融・友の会業、小売・専門店業、不動産業、そのほか5事業を主に行い、グループ全体が持つ顧客資産や拠点などを相互活用し競争優位を高めています。

旅行事業に対する取り組みも積極的に行い、事業拡大のスピードアップを図るために100%出資する旅行専門会社の「三越伊勢丹旅行」を2015年に新設しています。しかし、三越伊勢丹旅行は、既存の営業リソースのみでは不十分と判断しました。

旅行事業を早期に拡大するため、特に営業リソース確保のために、外部企業との提携や企業買収を検討していました。こうした中で、三越伊勢丹旅行による、ニッコウトラベルの買収が行われています。

ニッコウトラベルの顧客の約95%は60歳代以上で、シニアユーザーに対する高品質なサービスの展開に強みがあります。このニッコウトラベルを買収することで、三越伊勢丹ホールディングスは、シニア世代向けのサービスの充実を図りました。また、ニッコウトラベルの新規顧客獲得・大型投資の実現も目指しています。

旅行代理店の事業承継の事例は下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】旅行代理店の事業承継とは?事業承継課題や事例を解説

旅行代理店のM&Aのまとめ

昨今では旅行代理店業界でもM&A事例が見られ、事業の強化・拡大などを図る目的でM&Aを検討する企業が増えています。旅行代理店を利用せずに旅行する人も確かに見られますが、旅行代理店独自の強み・サービス体制に魅力を感じる利用者も依然として多いです。

こうした動向を踏まえ、同業者同士のM&Aにより、事業の幅を広げるなどのケースが見られます。また、旅行代理店業界は比較的参入しやすいため、M&Aを活用した新規参入を検討する企業も見られます。

旅行代理店のM&Aを検討する際には、このような業界動向やM&A事例などを把握したうえで、さまざまな観点から分析を進めることが大切です。

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