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2022年12月1日更新節税
無税償却とは?用語の意味、有税償却との違いや種類、要件を解説
無税償却は、M&Aや私的再生において不良債権を有効に処理するうえで欠かせない手法です。満たすべき要件は複雑かつ厳しいですが、要件を満たせばメリットを享受できます。本記事では、無税償却に関する基本的知識・要件・有税償却との違いなどを解説します。
無税償却とは
無税償却とは、債権に関する損失を損金として計上し、所得から差し引いて税負担のない方法で処理することです。そもそも銀行などの金融機関は企業に対して現金を貸しており、債権者としての権利を有しています。とはいえ、昨今の景気低迷の影響により、必ずしも債務の弁済が実現するとは限りません。
場合によっては、融資先の経営状況が悪化して債権に損失が発生するおそれがあります。債権の見込み損失金額を計上する際、通常は損金に算入できないため、余分に税金を支払わなければなりません。しかし、一定条件を満たせば、例外的に不良債権を無税償却できる決まりが設けられています。
無税償却は、事業再生時だけでなくM&Aシーンでも行われています。引き継いだ不良債権の有効活用を目的に、サービサー(債権回収会社)に債権を売却して無税償却を図るケースも少なくありません。
非課税で不良債権を処理できるため、M&Aでは非常に役立つ手法です。無税償却では専門的な知識が求められるので、実施する際は専門家からサポートを得るとよいでしょう。
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無税償却と有税償却の違い
無税償却と対になる償却方法として、有税償却が挙げられます。本章では、無税償却と有税償却の違いをまとめました。有税償却とは、「会計上は費用として処理できるものの、税務上は損金として認められない債権償却」を意味します。つまり、有税償却は、債権償却の税務上、利益とみなす償却方法です。
会計上では費用計上できるものの、税法上は損金として計上できないという違いによって、有税償却と無税償却は区別可能です。有税償却では損金不算入となるため、無税償却よりも多くの税金が発生します。また、無税償却と有税償却では、実施する目的にも違いが見られるため把握しておきましょう。
無税償却は「不良債権の有効活用」や「融資対応力の安定化」を目的に行われるのに対して、有税償却は「貸借対照表の健全性確保」を目的に実施されます。とはいえ、節税面では無税償却のほうが有利であるため、積極的に有税償却が実施されるケースは珍しいです。
無税償却の要件は厳しく、要件を満たさなければ全て有税償却となり、より多くの税金を支払う必要があります。以上のことから、財務状況の健全性を確保したい場合は有税償却を、それ以外の場合は基本的に無税償却を図るとよいでしょう。
無税償却の種類(直接償却と間接償却)
無税償却には直接償却と間接償却の2種類が存在します。本章ではそれぞれの債権償却方法を順番に詳しく紹介します。
①直接償却
直接償却とは、不良債権の全額をオフバランス化する形で行う無税償却をさします。オフバランスとは、事業で使用している資産を帳簿から切り離して貸借対照表に計上しないことです。貸借対照表から不良債権を切り離すために、企業価値の向上が期待できます。
直接償却の具体的な方法には、「私的整理」「法的整理」「債権売却」が挙げられます。「私的整理」とは債権者が無償で債権放棄する行為であり、無税償却を実行するには債権の不良性を証明しなければなりません。証明できない場合は、損金として処理できずに課税が発生します。
「法的整理」とは、裁判所管轄のもとで実行する倒産手続きであり、民事再生や破産などが該当します。「債権売却」とは、文字どおり不良債権を売却する行為であり、無税償却をするにはサービサーを売却先に選ばなければなりません。
②間接償却
間接償却とは、回収不能が見込まれる不良債権を貸倒引当金として費用計上する形で行う無税償却のことです。不良債権自体は貸借対照表に残るため、企業価値向上などのメリットは期待できません。間接償却は、融資先会社の経営状態が悪化した段階で実施されます。
具体的にいうと、経営状態が悪化した際に貸倒引当金として不良債権を計上し、経営破綻した時点で貸倒引当金が取り崩されます。そして、貸倒引当金が取り崩される時点で貸借対照表上の不良債権が消滅する仕組みです。
無税償却の要件
無税償却は銀行などの金融機関からすると有利な手法であるものの、適用するには要件を満たす必要があります。無税償却の要件は直接償却・間接償却ごとに異なるため、自身が採用する方法にもとづいて要件を満たさなければなりません。
本章では、無税償却の要件を直接償却と間接償却に分けて紹介します。
①直接償却の要件
直接償却では、主として下記の3つの要件を満たす場合に無税償却が認められます。
債権が更生計画により切り捨てられる
具体的な要件は、以下のとおりです。
- 直接償却を行う際は、会社更生計画等にもとづいて手続きを進める
- 計画等で切り捨てられる債権金額において原則的に無税償却が認められる
債務超過が長期にわたり継続し、債権弁済を受けることが不可能
具体的な要件は、以下のとおりです。
- 債務者が長期的に債務超過に陥っており、債権弁済を受けることが不可能である場合は無税償却を実行できる
- 無税償却が認められる金額は債務者に対して書面で提示した債務免除額となる
債務者の資産状況や支払能力などを見た場合、債権の全額を回収できないことが明白である
具体的な要件は、以下のとおりです。
- 債務者の資産状況や支払能力などから判断して、債権の全額を回収できないことが明白である際は、債権の全額を無税償却できる
②間接償却の要件
間接償却では、主として下記の4つの要件を満たす場合に無税償却が認められます。
更生計画により、決算日翌日から5年目以降に弁済が予定されている
具体的な要件は、以下のとおりです。
- 決算日翌日から起算して5年目以降に弁済が予定されている債権に関しては、無税償却が認められる
- 要件を満たすためには、更生計画等を経ている必要がある
債務超過が長期にわたり継続し、債権の回収見込みがない
具体的な要件は、以下のとおりです。
- 債務者が長期的に債務超過に陥っており、債権の回収見込みがない場合は回収できない金額分だけ無税償却できる
- 全額を無税償却できるわけではなく、回収が不可能である部分のみが要件となる
債務者に法的整理申立や銀行取引停止処分等の事態が発生
具体的な要件は、以下のとおりです。
- 債務者に法的整理申立や銀行取引停止処分等の事態が発生したケースも、無税償却の要件に含まれる
- 間接償却の要件では、債権(回収が見込まれる金額を除く)のうち50%相当のみが無税償却が認められる
貸倒引当金の無税償却が認められるのは税務上の中小法人等のみ
具体的な要件は、以下のとおりです。
- 税務上の中小法人等のみに、貸倒引当金の無税償却が認められる
- 中小法人等とは、資本金が1億円以下の法人(資本金が5億円以上の大法人の完全子会社等は除く)
- 税務上、中小法人等以外の法人が貸倒引当金を計上しても損金算入できない
無税償却と債権放棄
本章では、無税償却と債権放棄の関係について取り上げます。以前は、金融機関などによる債権放棄は、無税償却はできませんでした。無税償却できないことから、多くの中小企業が銀行などから債権放棄を認められないケースが多く見られたのです。
このように債権放棄を認められないケースが続出した影響により、中小企業の再生自体が抑制されていた点が改善されました。これにより、現在では、銀行は積極的に債権放棄を認めやすくなり、中小企業の再生も活況を呈しています。
サービサーを活用した無税償却
サービサー(債権回収会社)とは、法務大臣の許可を得たうえで債権管理回収を実施している民間の専門会社です。銀行などの貸付債権だけでなく、クレジット債権やファクタリング業者の金銭債権などもサービサーの回収対象です。
以前は弁護士(弁護士法人)以外がこの業務を手掛けることは禁止されていました。しかし、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」の施行によって、許可を得れば民間業者でも業務を実施できるようになりました。
不良債権をサービサーに売却すれば、売却価格と簿価の差額分を「売却損」として損金計上できます。つまり、売却により不良債権を手元から放棄しつつ、売却損の金額だけ利益を圧縮できるのです。
このように非常に有用な不良債権の処理方法であるため、M&A時もサービサーへの債権売却が実施されます。M&A時に不良債権を売却すると、経営状況の健全化が図れます。無税償却を行う手段として、サービサーへの債権売却は非常に有用な手法です。
無税償却のまとめ
本記事では、無税償却の基本的知識を中心に紹介しました。不良債権を有効に処理するうえで、無税償却は欠かせない手法です。満たすべき要件は複雑かつ厳しいものの、要件を満たせば多大なメリットを享受できます。無税償却は専門性の高い処理方法であるため、活用時は専門家に相談しましょう。
本記事の要点は、以下のとおりです。
・無税償却とは
→債権に関する損失を損金として処理すること
・直接償却とは
→不良債権の全額をオフバランス化する形で行う無税償却
・間接償却とは
→回収不能と見込まれる不良債権を貸倒引当金として費用計上する形で行う無税償却
・有税償却とは
→会計上は費用として処理できるものの税務上は損金として認められない債権償却
・無税償却の要件(直接償却)
→「債権が更生計画により切り捨てられる」「債務超過が長期にわたり継続し、債権弁済を受けることが不可能」「債務者の資産状況や支払能力などを見た場合、債権の全額を回収できないことが明白である 」
・無税償却の要件(間接償却)
→「更生計画により、決算日翌日から5年目以降に弁済が予定されている」「債務超過が長期にわたり継続し、債権の回収見込みがない」「債務者に法的整理申立や銀行取引停止処分等の事態が発生」「貸倒引当金の無税償却が認められるのは税務上の中小法人等のみ」
・無税償却と債権放棄
→銀行の債権放棄が無税償却として認められたために中小企業は債権放棄を認められやすくなった
・サービサーを活用した無税償却
→銀行側はサービサーに不良債権を売却すると無税償却を実行できる
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