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2022年10月24日更新節税
相続税の節税のための方法一覧を徹底解説
事業承継を実施すると多額の相続税がかかるので、節税対策は必須といえます。相続税を節税するには、事業承継税制を活用したり財産を減らすなどの対策が有効です。そのほか、生命保険を孫や子供にかけたり、非課税枠を活用したりすることも有効です。
相続税の節税方法一覧
いずれ後継者に事業承継したいと考えている経営者の方は多く、その際に気を付けておきたいのが相続税です。事業承継も一種の相続であるため、相続税が発生します。余計なコストをかけないためにも、節税対策が必要です。今回は、事業承継に伴う相続税の節税対策の方法を紹介します。
相続税の基礎知識
後継者に事業承継する場面で、相続税は発生します。そもそも、相続税は相続が発生してから10カ月以内に申告するように義務付けられています。相続税を節税したいならば、何らかの施策をその間に完了させなければなりません。
相続税は、法定相続される取得分の金額に課税されます。その課税対象となる取得分の金額には、事業承継を行う上で必要な株式や資産等も含まれます。
そして、相続税は、取得分の金額に一定の相続税率と控除額を含めて計算する決まりです。金額ごとに発生する税率と控除額の一覧は、2015年1月1日以降の相続に関しては以下のとおりです。
法定相続される取得分の金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円より上 | 55% | 7,200万円 |
例えば、法定相続される取得分の金額が1億円の場合は、以下の計算式です。
- 1億円×0.3―700万円=2,300万円
取得分の金額が1億円の場合、発生する相続税は2,300万円です。上記のとおり、相続する取得分の金額が上がれば上がるほど、発生する相続税の金額は大きくなります。したがって後継者の負担を減らすうえでも、相続税の節税対策は必須です。
節税対策には、ある程度長い時間が必要です。よって、相続を実施する前から準備を進めておかなければなりません。事業承継自体、相続税の節税のみならず、後継者の選定や育成、引き継ぎの手続き等様々なプロセスを経て実施します。いざ相続場面になって後継者が困らないように、しっかり準備しておきましょう。
相続税の節税のための方法20選
一般家庭で行われる相続税の節税と違い、会社の経営者だからこそ可能な相続税の節税方法があります。政府も日本の会社の9割以上を占める中小企業向けに「事業承継税制」を実施するなど、相続税の節税をしやすい状況を作っています。ここでは、さまざまな相続税の節税の中から、代表例を紹介します。
- 事業承継税制を使う
- 財産を減らす
- 基礎控除を増やす
- 債務やお葬式などの支出を増やす
- 子供や孫に生命保険をかける
- 生命保険金等の非課税枠を上手に活用する
- 生命保険金を一時所得として受け取る
- 養子縁組で法定相続人を増やす
- 小規模宅地等の特例を利用する
- 家なき子特例を利用する
- 地積規模の大きい宅地の評価を利用する
- 更地に賃貸アパートを建築する
- タワーマンションを買う
- 生前に墓地・仏具を買う
- 相続税申告の税理士報酬を前払いする
- 会社への貸付金債権を整理する
- 教育資金贈与信託を利用する
- 相続時精算課税制度を利用する
- 収益不動産を贈与する
- 死亡退職金等の非課税枠を利用する
①事業承継税制を使う
事業承継を実施する際に、「事業承継税制」を活用すると節税が可能です。厳密には、事業承継税制で設定されている「非上場株式に発生する相続税の支払い猶予・免除」制度を使います。この制度は、以下の条件を満たすと活用できます。
- 中小企業法で設定されている中小企業に該当する会社である
- 事業承継を実施した相続人が会社の代表になっている
- 雇用の8割以上を保持しており、相続した非上場会社の株式を継続所有している
この制度を活用すれば、相続税の支払いを猶予または免除できます。課税されている金額の80%に相応する分の相続税が対象となります。支払い猶予は、先述した条件を満たしていれば使用可能です。
免除したい場合は、前述の条件に加えて、以下の条件も満たす必要があります。
- 後継者が死亡している
- 相続税の申告期限から5年経過した後、次の後継者に猶予対象となる株式を生前に贈与した事によって、贈与税の納税猶予を受けている
相続税の免除の方が条件は厳しく、どちらかというと猶予に重きを置いた制度です。相続税猶予となっている場合、あくまでも「猶予」であって「免除」ではない点には注意が必要です。
相続税の猶予が続く期間は、所定の条件を完全に満たしている必要があります。条件を満たさないと猶予期間は終了し、利子を含めて全額あるいは一部を納付する義務が発生します。雇用の8割維持など、変動しやすい条件には注意しましょう。
事業承継税制は手続きが煩雑であり、非常に手間取るものです。通常相続税の手続きは、税務署だけで済みます。しかし、事業承継税制を活用する場合は、相続発生から8カ月以内に経済産業局に申請を出す必要があります。さらに、申告と同時に担保の提供も必要です。
5年間は1年ごとに税務署へ継続届出書、経済産業局に継続報告書を提出する義務も発生します。認定書面審査は2カ月もかかるなど、時間がかかるのも難点です。事業承認税制を活用する際は、申告期限に注意しながら余裕を持って実施しましょう。
②財産を減らす
一般的な相続税の節税方法といえば、「財産を減らす」ことです。例えば、相続税の評価が有利になるように、現金を不動産などに変えることで財産を減らします。その結果、相続税の対象となる法定相続される取得分の金額それ自体を減らせます。ほかにも、財産を減らすために以下の対策が有効です。
- 墓石、仏壇など相続税がかからないものを購入する
- 生命保険に加入して非課税限度額を利用する
生前贈与の形で、あらかじめ財産を減額する方法もあります。ある程度の金額の財産を所持している経営者なら、より効果的に実施できます。「財産を減らす」ことは、相続税節税のなかでも最もメジャーな方法です。相続税の節税と聞いて、まずこの方法を考える人が多いです。
③基礎控除を増やす
養子縁組等の活用により、基礎控除を増額して相続税を節税する方法です。基礎控除とは、相続人の数だけ発生する相続税控除のことで、以下の算式で計算します。
- 3,000万円+(財産の相続人の数×600万円)=基礎控除
裏を返せば相続人が多ければ多いほど基礎控除が増え、相続税を節税できます。養子縁組を活用すれば、相続税を節税可能です。
しかし、養子縁組は何人でもできるわけではありません。実子がいる場合は1人まで、いない場合でも2人までしか養子縁組は実施できません。孫養子は、逆に相続税を2割も増やしてしまいます。この方法で基礎控除を増やすのは、あくまで最終手段と考えましょう。
④債務やお葬式などの支出を増やす
債務やお葬式の支出を増やせば、相続税を節税可能です。債務やお葬式等の支出は、相続税の課税対象となる財産から差し引かれます。その結果、相続税を節税できます。しかし、お葬式等の支出はあくまで常識的な範囲に限定されており、非常識な出費は対象にならない可能性が高いです。
⑤子供や孫に生命保険をかける
子供や孫に生命保険をかけることで、相続税を節税できます。一般的には、子供や孫の生命保険料は親や祖父母が支払っているケースが多くみられますが、その場合は生命保険の相続税に対する評価額は解約返戻金扱いとなります。
ここでいう解約返戻金とは、仮に生命保険を解約した場合に返戻される金額のことです。生命保険の解約返戻金といえば、契約時は低額なのが一般的です。将来的に解約返戻金の額が上がっていく仕組みですが、もともと生命保険は低年齢であれば保険料は低額である特徴があります。
子供や孫に生命保険をかけておけば、解約返戻金額が低い状態で相続させることも可能で、結果的に節税につながります。
⑥生命保険金等の非課税枠を上手に活用する
相続税の節税は、生命保険の非課税枠を上手に活用することでも可能です。具体的な金額は、次の公式に当てはめて算出します。
- 法定相続人の人数×500万円
生命保険金の金額から、上記の公式で算出した金額を差し引いて相続税を計算します。例えば、法定相続人が3人いれば、「3人×500万円」で1,500万円です。そして、生命保険金が6,000万円だとした場合、「6,000万円ー1,500万円」で4,500万円の金額が相続税として課税されます。
生命保険金が500万円を下回る場合、相続税は課税されません。生命保険金の額を非課税枠で調整するなどして、上手に活用すれば相続税の節税につながります。
⑦生命保険金を一時所得として受け取る
生命保険金を一時所得として受け取れば、相続税の節税につながります。生命保険の金額は、受取人と負担者の関係によって課税される税金が異なってきます。以下に、母親が被保険者で子供が受取人であるケースをまとめました。
母親が生命保険の被保険者となり、子供が受け取る保険料を三者が負担していたケースを想定します。このときの課税される税金の種類は下図のとおりです。
被保険者 | 保険料の負担者 | 保険料の受取人 | 税金 |
母親 | 母親 | 子供 | 相続税 |
母親 | 子供 | 子供 | 所得税 |
母親 | 父親 | 子供 | 贈与税 |
上図のとおり、保険料の受取人と負担者が同じ場合は一時所得となり、所得税が課税される仕組みです。このようにして、生命保険金を一時所得として受け取れば、相続税が節税できます。
⑧養子縁組で法定相続人を増やす
養子縁組とは、血縁関係にない人同士が法律上の親子関係を結ぶための制度のことです。養子縁組を実施すると法定相続人の数が増えることから、下記の規定の金額が増えて相続税の節税効果が見込めます。
- 相続税の基礎控除額
- 生命保険金などの非課税枠の額
- 死亡退職金などの非課税枠の額
⑨小規模宅地等の特例を利用する
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度のことです。亡くなった人が住んでいたり事業をしていたりした土地のすべてに相続税が発生すれば、それを引き継ぐ相続人が土地を失うおそれがあります。こうしたトラブルを回避するための制度です。
⑩家なき子特例を利用する
家なき子特例とは、同居していなかった親族でも小規模宅地等の特例が受けられる制度のことです。一定の要件を満たせば、非同居親族が宅地を相続した際に「小規模宅地等の特例(土地評価額を最大80%減額できる制度)」を適用でき、土地の評価額を減額できます。
⑪地積規模の大きい宅地の評価を利用する
非常に広大な土地は宅地としての売却が困難であるため、大規模な宅地開発を手掛ける業者に売却するケースがあります。開発業者は土地を区切り、住宅・道路などの開発を手掛けますが、土地に道路・公園などの公共施設があれば、宅地として利用できる土地面積が減ることから、広大な土地は相続税評価額の低下につながる可能性があります。
⑫更地に賃貸アパートを建築する
更地を所有している場合、賃貸アパートを建築することで相続税の節税につながります。しかし、賃貸アパートに空室が発生すれば、それだけ家賃が得られなくなるため注意しましょう。
⑬タワーマンションを買う
一般的に、タワーマンションは購入価格と相続税評価額の差が大きくなる傾向にあるため、相続税の軽減につながります。
⑭生前に墓地・仏具を買う
前述のとおり、墓地・墓石・仏壇・仏具に対しては相続税が課されないことから、これらを生前に購入しておくことで相続財産の減少につながります。
⑮相続税申告の税理士報酬を前払いする
相続発生前に税理士報酬を支払っておくことで、相続財産の減少につながります。なお、報酬額は相続する遺産総額の0.5%から1.0%が相場です。
⑯会社への貸付金債権を整理する
会社が債務超過の状態であるとの理由のみでは、回収可能性があると判断されてしまい、相続税の課税対象に含まれます。回収不可能であることの立証は非常に困難であることから、生前に貸付金債権を整理することが望ましいです。
⑰教育資金贈与信託を利用する
教育資金贈与信託とは、信託銀行などに子供・孫の教育資金を信託すると、1,500万円まで贈与税が非課税になる制度のことです。相続税対策を即座に行わなければならない事情があるケースでは、節税効果が得られることがあります。
⑱相続時精算課税制度を利用する
この制度には、基本的に節税効果はありませんが、贈与時から相続時までに時価が上昇するような財産を贈与する場合、節税対策につながる可能性があります。
⑲収益不動産を贈与する
賃貸アパートや駐車場などを子供や孫に贈与すれば、相続財産の増加を防止することにつながります。
⑳死亡退職金等の非課税枠を利用する
これは、死亡退職金の一部を非課税とする規定のことです。非課税枠は、以下の計算式で求められます。
- 500万円×法定相続人の数
上記の法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人のことです。
相続税の節税のための方法一覧まとめ
事業承継するうえで、相続税は思わぬコストとなり得ます。何らかの節税対策を実施するのは、経営者にとって重要な課題の1つです。税理士等の専門知識に長けているエキスパートに相談しながら、自分の会社に合った相続税の節税方法を実践しましょう。
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