M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月11日更新業種別M&A
空調工事会社の事業承継マニュアル!市場動向や事例・相談先も解説
事業承継はどんな空調工事会社もいずれは経験するものですが、知識もなく取り組めるものではありません。また、業種ごとに注意すべきポイントも異なります。今回は空調工事会社の事業承継について、市場動向や事例・相談先などを解説していきます。
目次
空調工事業界の市場動向
2021年度における空調衛生設備工事の売上高(調査に回答した73社の合計)は、前年度比1.4%増の1兆2,388億円となりました。新型コロナウイルスによる経済活動の制限が緩和され、特に都市部での再開発や改修工事の需要が回復基調にあります。また、宿泊施設では、訪日外国人客(インバウンド)の需要が完全には戻っていないものの、リニューアルを中心に需要が増加している状況です。
これらの動きを背景に、2021年度には主要な空調衛生設備工事会社の受注件数が増加したと考えられます。ただし、受注した工事が実際に完了し、売上として計上されるのは2022年度以降が多くなる見込みです。そのため、2021年度の市場規模は前年度とほぼ同水準で推移しました。
空調工事会社を事業承継するメリット
空調工事会社を事業承継する場合、そこには以下のようなメリットがあります。
- 従業員の雇用を確保できる
- 事業拡大・新規事業の開始ができる
- 廃業することを防げる
- 承継先により利益を獲得できる
1.従業員の雇用を確保できる
経営者にとって、事業承継は従業員の雇用を確保できる有効的なプロセスです。後継者不在などで事業承継ができなくなり廃業することになると、従業員を路頭に迷わせることになります。しかし、事業承継がきちんとできるようになれば、従業員の雇用を継続することができます。
また、M&Aによる事業承継であれば買い手の会社に従業員が吸収されるため、より良い条件で雇用を続けられる可能性があります。
2.事業拡大・新規事業の開始ができる
M&Aによる事業承継であれば、事業拡大・新規事業の開始ができる見込みが出てきます。冒頭でも触れましたが、空調工事業界は中小企業が多く、それぞれが価格競争などで熾烈な競合を繰り広げています。しかし、中小企業は資金や規模の限界を迎えやすく、一定以上の成長ができなくなりがちです。
しかし、大手に買収されることで資本の傘下に入ることができれば、経営基盤の強化によって事業拡大・新規事業の開始を実現しやすくなります。
3.廃業することを防げる
経営者が引退する場合事業承継ができなければ廃業が選択肢に入ってきますが、これは必ずしも賢明とはいえません。
廃業は単純なものではなく、清算といったプロセスも伴うため、意外と手続きに手間がかかります。また時間もコストも要するものです。そのため、後継者不在でもM&Aによる事業承継をした方が良いケースが多くあります。
4.承継先により利益を獲得できる
M&Aによる事業承継であれば、承継先から利益(売却益)を獲得できますが、これも大きなメリットだといえます。
会社を売買する以上、M&Aによる事業承継はまとまった金額の利益を得られるため、経営者の引退後の生活資金にしたり、別事業の創業資金にしたりなど、様々な使い道があります。
空調工事会社の事業承継・M&Aの事例
空調工事会社の事業承継・M&Aの事例をピックアップしてご紹介します。
日本エコシステムによるエコベンの買収
2024年1月30日、日本エコシステムは、取締役会においてエコベンの全株式を取得し、グループ化することを決定しました。エコベンは、首都圏の空港や公共施設、商業ビルなどで全熱交換器の施工・販売・保守点検を手がけており、その高い技術力と参入障壁の高さから、業界内で高いシェアと収益性を誇る企業です。
今回のグループ化により、日本エコシステムはエコベンの人材力と営業ネットワークを活用し、管理業務の効率化を進めることを目指しています。さらに、エコベンの中部地方への進出を支援し、熱交換事業の商圏を拡大するとともに、関東地区ではグループの空調工事事業の展開を図る予定です。
また、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)戦略の一環として、エコベンの経理や財務、労務の管理業務を日本エコシステムとグループ会社である日本ベンダーネットに集約し、シェアードサービス化を進め、グループ経営体制の強化を図る方針です。
ETSホールディングスによるユウキ産業の買収
2021年11月12日、株式会社ETSホールディングスは、大阪市に拠点を置くユウキ産業株式会社の全株式を取得し、同社を完全子会社化することを決定しました。
ETSホールディングスは電力事業や設備事業、海外事業を展開しており、ユウキ産業は空調工事や水処理工事、電気工事、各種環境測定業務を行っています。
今回のM&Aにより、ETSホールディングスはユウキ産業の持つ顧客基盤を活用し、共同での営業体制を強化する方針です。また、ユウキ産業の得意とする空調工事とETSホールディングスの電気工事を組み合わせ、一括受注体制を整備することで、事業規模の拡大を図ります。これにより、両社の技術やリソースを効果的に活用し、さらなる成長と競争力強化を目指します。
空調工事会社の事業承継の流れ
空調工事会社の事業承継の流れで後継者の有無によって変わります。一つずつ詳しく解説します。
空調工事会社の親族間事業承継(親族外事業承継)
後継者がいる親族間事業承継、親族外事業承継の流れは以下4点です。
- 事業承継計画の策定
- 後継者の教育
- 資産・財産・株式等の引き継ぎ
- 個人保証・担保の処理
1.事業承継計画の策定
事業承継を行うのであれば、まずは事業承継計画の策定から始めます。
事業承継は長丁場になりやすいものであり、場合によっては10年もかかることは珍しくありません。そうでなくても、後述するように事業承継は様々なプロセスが山積となり、確かな計画性が求められます。そのため事業承継計画の策定が重要になります。
ただ、事業承継計画は事業承継のプロセスを理解していなければ策定できないものであり、具体的な数字を求めなければならない部分もあります。実際に事業承継計画の策定を行うのであれば、専門家の協力を得ておくことがおすすめです。
親族の理解(親族外事業承継の場合)
親族外事業承継を行う場合ある程度後継者に目星をつけているのであれば、事業承継計画を策定する前に親族の理解を得ておくようにしましょう。
後継者を従業員や外部の人材にする場合、親族が反発してくる可能性があります。そうなると親族外事業承継を円滑に行うことは難しくなるでしょう。
このような事態を防ぐうえでも、親族外事業承継を行うなら親族の理解は得ておくことが必要です。
2.後継者の教育
後継者の選定が完了したら、いよいよ教育に入っていきます。後継者の教育は業務や経営に対する知識や経験はもちろん、現場の従業員や取引先とのコミュニケーションも念入りに行えるようにしておきましょう。教育が上手くいけば後継者が経営権を引き継いでから、経営が上手くいくようになります。
また、後継者に外部のセミナーを受けさせることもおすすめです。経営コンサルティング会社や公的機関などが開催しているセミナーは様々な知識が学べますし、他の会社の人間とつながりを作れる良い機会になります。
3.資産・財産・株式等の引き継ぎ
教育が完了し、経営者への承継を行うタイミングが来れば資産・財産・株式等の引き継ぎを行っていきます。
これらの中でもとりわけ重要なのが株式の引き継ぎです。株式は経営権を司るものであり、一定数を後継者に引き継がせなければ事業承継は完遂しません。
ただ、株式の引き継ぎは相続・贈与・譲渡の3種類があり、課税を踏まえながら上手く調整するようにしなければなりません。
4.個人保証・担保の処理
資産・財産・株式等の引き継ぎを行う段階で、経営者は個人保証・担保の処理を行っておくようにしましょう。
個人保証・担保は事業承継を行うと、後継者が引き継ぐことになってしまいますが、これだと負担を増やしてしまうことになります。そのため、出来る限り個人保証・担保は処理しておくことがおすすめです。
空調工事会社のM&Aによる事業承継
M&Aによる事業承継を行う場合の流れは以下6点です。
- M&A仲介会社などへの相談
- 事業承継先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
1.M&A仲介会社などへの相談
M&A仲介会社などへの相談は、M&Aを行う前にしておくようにしましょう。
さきほどお伝えしたようにM&Aは成功率が高くないものであり、専門的な知識が必要な場面もあります。加えて条件の合う買い手を見つけることも決して簡単ではありません。そのため、経営者だけでM&Aを行うことは難しいでしょう。
しかし、M&A仲介会社などといった専門家の協力を得られれば、M&Aが成功する確率が引き上がります。
秘密保持契約書の締結
M&A仲介会社などと仲介契約を締結すると、秘密保持契約書を締結することもあります。
これは重要な情報(秘密情報)の取り扱いに関する契約書です。M&Aは会社の売買であるため、会社内の重要な情報を開示する場面もあります。
しかし、重要な情報を開示すれば漏出する恐れもあるため、秘密保持契約書を締結することで情報管理を厳密にしおく必要があります。
2.事業承継先の選定
事業承継先の選定はスクリーニングを通して行います。
スクリーニングとはロングリスト、続いてショートリストを作成し、そこから候補を絞り込んでいくやり方です。ロングリストは大まかな、ショートリストはより詳細な条件を設定することにより、条件とマッチした候補を絞り込んでいきます。
一定数の候補先に絞り込めたら、それぞれにM&Aの打診をしていきます。
承継先による意向表明書の提示
事業承継先が確定しM&Aを打診した結果、先方が前向きに検討するようになったら意向表明書が提示されることがあります。
これはM&Aを具体的に検討していく意向を示した書類であり、大まかな譲渡価格やM&Aのスケジュールなどが記されています。
意向表明書は法的拘束力がなく、提示すべき書類というわけではありません。
3.基本合意書の締結
買い手と売り手それぞれのトップ同士が面談してM&Aを行うこと決まれば、基本合意書が締結されます。
これはM&Aのプロセスのベースとなる書類であり、譲渡価格や独占交渉権などといった事項が記されています。
ただ、基本合意書は意向表明書と同様に法的拘束力を持たず、以降の交渉次第では内容が覆されることもあります。当然、基本合意書を締結してもM&Aが破談することもあるため、注意しておきましょう。
4.デューデリジェンスの実施
M&Aにおいて、デューデリジェンスは非常に重要なプロセスです。
これは売り手の会社のリスクを精査するものですが、これによって譲渡価格が決定されます。
当然、デューデリジェンスによって売り手の会社に看過できないリスクが発見された際にはM&Aが失敗に終わることもあり得ます。
5.最終契約書の締結
最終契約書はM&Aの最終的な条件が記された契約書ですが、これは便宜上の名前であり実際はM&Aのスキームに合わせた名前になります。
基本合意書や意向表明書とは違い、最終契約書には法的拘束力があるため、記された内容に違反すれば損害賠償が発生することになります。
6.クロージング
最終契約書の締結の後に行われるプロセスがクロージングです。
クロージングでは経営統合の実現に向けて役員の選任や対価の支払い、業務の引き継ぎなどが行われます。クロージングを完了して初めてM&Aは完遂します。
空調工事会社の事業承継・M&Aの相談先
空調工事の事業承継・M&Aの相談先としては以下のようなものが挙げられます。
- M&A仲介会社
- 地元の金融機関
- 地元の公的機関
- 地元の弁護士・税理士・会計士など
- マッチングサイト
1.M&A仲介会社
M&Aによる事業承継を行うのであれば、M&A仲介会社に相談する方が多いかと思います。どのM&A仲介会社にするか迷ってしまう場合は、各社が実施している無料相談を活用しましょう。
2.地元の金融機関
最近は地方銀行や信用金庫などといった地元の金融機関も事業承継をサポートしてくれるようになっています。中には事業承継やM&Aに多大な実績を残したとして表彰されている金融機関もあり、信頼できる専門家だといえるでしょう。
最近はM&A仲介会社と提携している金融機関も多くあり、M&A仲介会社を紹介されることもあります。そのため、金融機関を経由してM&A仲介会社を紹介してもらうことも一つの方法です。
3.地元の公的機関
商工会議所や事業引継ぎ支援センターのような公的機関もおすすめの相談先です。
ただ、これらの公的機関は直接的なサポートよりもM&A仲介会社などの専門家の紹介や、セミナーを通して情報・知識の提供が主な支援となります。地元の金融機関と同様にM&A仲介会社を探す際に公的機関を利用することも選択肢の一つです。
4.地元の弁護士・税理士・会計士など
弁護士・税理士・会計士などといった士業も事業承継の支援をしてくれるようになっています。
ただ、士業はいずれも相談料や報酬体系がバラバラであり、自分に合ったものを選ぶことは簡単ではありません。
しかし、さきほどご紹介したように、士業が運営母体になっているM&A仲介会社も多いため、それを利用した方が有効的な場合もあります。
5.マッチングサイト
事業承継やM&Aのためのマッチングサイトもおすすめです。
これらのようなマッチングサイトであれば、インターネット上でM&Aの交渉などを完結させられます。この手軽さはマッチングサイトならではだといえるでしょう。
しかし、マッチングサイトは専門家のアドバイスなどが得られず、当事者だけで交渉しなければならないケースもあります。そのため、直接的なサポートを得たいのならM&A仲介会社などに相談した方がいいでしょう。
空調工事会社の事業承継を成功させるためのポイント
空調工事会社の事業承継を成功させたいなら、以下のようなポイントを意識しておきましょう。
- 事業承継を計画的に準備する
- 自社の強み・アピールポイントを理解する
- 事業承継・M&A先は選定する
- 事業承継をした後に従業員・取引先に報告する
- 事業承継・M&Aの専門家に相談する
1.事業承継を計画的に準備する
「事業承継計画の策定」でもお伝えしましたが、事業承継は計画的に準備しておくことが重要です。
事業承継が長い時間を要するのも理由の一つですが、あらかじめ計画をしっかり組み立てておけば予期せぬトラブルがあった場合にも対応しやすくなります。
とりわけ引退を控えた経営者に万が一のことがあった場合、それだけで事業承継が頓挫するリスクがあります。そうならないためにも、事業承継のプロセスを明確化した事業承継計画の存在は非常に重要です。
2.自社の強み・アピールポイントを理解する
M&Aによる事業承継を行う場合、事業承継をしたい会社は必然的に売り手になります。その際は自社の強み・アピールポイントを理解し、的確に説明できるようにしておきましょう。
M&Aは会社の売買であり、当然買い手が興味を示し買収してもらえるようにPRすることが重要だといえます。結果を作りたいのであればどうすれば買い手が買収してくれるかを踏まえたうえで、自社の強み・アピールポイントをまとめておく必要があります。
3.事業承継・M&A先は選定する
事業承継やM&Aをする相手はしっかり選定するようにしましょう。
この際、相手との相性も考慮しておくことがおすすめです。M&Aを行うことは相手に会社を委ねることでもあるため、自社の将来を託せる相手でなければなりません。
しかし経営理念や業務への取り組み方、価値観が合致していない相手だと信頼することは難しいでしょう。
4.事業承継をした後に従業員・取引先に報告する
事業承継を行う際、従業員や取引先に報告しておくことは非常に重要です。
事業承継は経営者が変わることであるため、それによって従業員や取引先に影響が及ぶことがあります。とりわけ従業員は経営者が変わったことに不安が広がることもあるため、新しい経営者となる後継者と信頼関係を構築させるようにしておくべきです。
また、取引先に対しても後継者を紹介するなどして、これまでの関係を継続できるように下準備を進めておきましょう。
5.事業承継・M&Aの専門家に相談する
さきほどご紹介したような事業承継・M&Aの専門家には相談しておくようにしましょう。
事業承継もM&Aも専門的な知識が必要な場面があり、一定以上の時間を要します。そのため、経営者だけで取り組むことは難しいでしょう。だからこそ専門家のサポートは必ず得るようにするべきです。
専門家のサポートを得られればプロセスを円滑に進行させてくれるだけでなく、事業承継やM&Aに要する時間の短縮も可能です。
空調工事会社の事業承継マニュアルまとめ
空調工事会社に限らず、あらゆる会社にとって事業承継は乗り越えるべき課題の一つだといえます。他方で、事業承継の手法は多様化しており、M&Aも有効的な選択肢に含まれるようになっています。
【空調工事会社の事業承継の流れ】
- 事業承継計画の策定
- 後継者の教育
- 資産・財産・株式等の引き継ぎ
- 個人保証・担保の処理
- M&A仲介会社などへの相談
- 事業承継先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
- M&A仲介会社
- 地元の金融機関
- 地元の公的機関
- 地元の弁護士・税理士・会計士など
- マッチングサイト
- 従業員の雇用を確保できる
- 事業拡大・新規事業の開始ができる
- 廃業することを防げる
- 承継先により利益を獲得できる
- 事業承継を計画的に準備する
- 自社の強み・アピールポイントを理解する
- 事業承継・M&A先は選定する
- 事業承継をした後に従業員・取引先に報告する
- 事業承継・M&Aの専門家に相談する
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