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2022年9月27日更新節税
赤字でもかかる税金とは?赤字繰越・法人税還付による税金対策も開設
赤字と税金には密接な関係があり、税金対策を行ううえで赤字に関する知識は必要不可欠です。本記事では、赤字でも課税される税金・課税されない税金・赤字経営における税金対策・赤字の際に活用できる法人税還付・赤字繰越による税金への影響などを解説します。
赤字でも税金が課される
会社経営において税金は必ず発生し、支払う義務が伴います。たとえ経営不振に陥り赤字となった場合でも、一部の税金は納税する必要があるため注意しなければなりません。
そこで本記事では、赤字でもかかる税金・赤字でかからない税金・赤字経営における税金対策とメリット/デメリットをはじめ、赤字と税金の関係などについてわかりやすく解説します。
赤字とは
収入が支出を下回って損失を生じることを、赤字決算といいます。赤字決算のメリットとデメリットを、見ていきましょう。
赤字決算のメリット
赤字決算のメリットは、下記の3つです。
- 法人税を減らせる
- 赤字分を繰越して翌年度以降の黒字と相殺すれば将来の法人税を減らせる
- 法人税の還付金を受け取れる
法人税は利益(所得)が生じたときのみ課されるので、赤字決算であれば利益が生じていないため、法人税の支払いがありません。
赤字分は翌年以降に繰越せ、税務会計上では繰越欠損金として扱えます。翌年以降黒字でも繰越した赤字は課税所得から控除できるので、翌年以降の法人税も抑えられるのです。
③については、中小企業は資本が充実していないため、赤字が生じたときは前期に支払った法人税の還付を受けられる制度があります。
赤字決算のデメリット
次に、赤字決算のデメリットを見ていきましょう。
- 金融機関からの信用がなくなって融資を受けられないことがある
- 毎年赤字の場合は債務超過となって倒産する
金融機関からの融資が受けられなくなると、運転資金が不足して倒産となるリスクが高まるでしょう。また、赤字決算を続けるのは経営において好ましくなく、会社を存続させるには利益を出す会社になる必要があります。
赤字でも課される税金
赤字でも課税される税金は、以下のとおりです。
- 消費税
- 法人住民税(均等割)
- 法人事業税(資本金1億円超の法人)
①消費税
赤字でも納税義務がある税金のひとつに、消費税が挙げられます。消費税は事業者ではなく消費者が納税する税金ですが、事業者が代わりに納税する仕組みです。
事業者は消費者から税金を預かっている立場にあるため、原則として赤字であっても納税する必要があります。
消費税は、事業年度末(決算期)から2ヵ月以内に納付しなければなりません。消費税は納付期限に一定の猶予があるため資金準備について失念しやすく、事業資金不足の要因となるため十分に注意しましょう。
消費税の納税が免除されるケース
消費税の納税は、以下のケースにおいて免除されます。
- 2年前の課税売上高が1,000万円以下
- 事業開始から2年間以内の法人・個人事業主
- 消費者から預かる税金の額よりも事業者が仕入れなどで支払った税金の額が多い
消費税は2年前の売上高を基準に納税義務が決まるため、2年前の課税売上高が1,000万円以下の場合には納税する必要はありません。
2年以内に事業を始めた場合も、基準となる売上高が存在しないために納税義務が生じない仕組みです。消費税の納付金額は以下の計算式で求められます。
- 消費税の納付金額=課税売上高にかかる消費税の金額-課税仕入高にかかる消費税の金額
②法人住民税(均等割)
法人住民税とは、事業者の所在する地方自治体に納税する税金のことです。法人住民税は、以下の2種類に分類されます。
- 法人税割=法人税のうち一定割合発生する
- 均等割=資本金などに応じて一定金額生じる
このうち法人住民税の均等割は資本金や従業員数などに応じて発生するため、赤字でも納税義務が生じます。
③法人事業税(資本金1億円超の法人)
法人事業税とは、都道府県に納税する税金のことです。法人事業税は、資本金の金額によって赤字の際における納税義務の有無が異なります。
- 資本金1億円以下の法人:赤字の際は納税義務なし
- 資本金1億円を超える法人:赤字でも納税義務あり
ここからは、資本金1億円を超える法人の課税の仕組みについて紹介します。資本金1億円以下の法人についても後述しますのでご確認ください。
資本金1億円超の法人
資本金1億円超の法人の場合は、外形標準課税と呼ばれる課税方式が適用されます。外形標準課税とは、以下の2種類の税金で構成される課税方式です。
- 付加価値割
- 資本割
外形標準課税のうち資本割は資本金額をベースに算定される税金であり、赤字でも納税義務が発生します。
赤字で課されない税金
次に、赤字の場合は課税されない税金を3つ取り上げます。
- 法人税
- 法人住民税(法人税割)
- 法人事業税(資本金1億円以下の中小法人)
①法人税
法人税は、事業による利益を得た法人に対して課される税金です。つまり、利益にもとづいて課税される税金であるため、赤字であれば納税義務は発生しません。法人税の対象となる法人は、株式会社や合同会社といった普通法人などです。
一般的には年に1回の決算日を設けたうえで、決算日までの1年間の期間を区切って法人税を計算します。具体例を挙げると、3月31日を決算日に設定した場合は、4月1日から3月31日までの1年間の所得(利益)をもとに法人税を計算し、決算日の翌日から2ヵ月後(5月31日)までに申告・納税します。
また、会社設立した第1期目の場合は、設立日から決算日までの期間で法人税の申告と納税を行う仕組みです。この法人税を計算する際は、「会計ルールに沿って算出した利益と税務ルールに沿って算出した利益に差が生じる」点に注意しましょう。
上記2つの利益は以下のように計上できる減価償却費が異なるため、金額に差が生じるケースがあります。
- 会計上は減価償却費を全額費用計上できる
- 税務上は損金算入できる減価償却費に制限がある
法人税は税務上の利益にもとづいて課税されるため、会計上赤字であっても税務上黒字であれば法人税が課税されます。
②法人住民税(法人税割)
法人住民税(均等割)は赤字でも納税義務が発生しますが、法人住民税の法人税割は、税務上の利益が赤字であれば発生しない税金です。
- 均等割=資本金にもとづいて生じる税金
- 法人税割=法人税額に住民税率を掛けて算出する税金
つまり、法人税が発生しない赤字の場合は、法人住民税の法人税割も納税は不要です。法人住民税の中でも法人税割と均等割では、算出方法が全く異なるため注意しましょう。
③法人事業税(資本金1億円以下の中小法人)
法人事業税は、資本金の金額により課税の仕組みが異なります。資本金1億円超の法人は外形標準課税にもとづくため、赤字であっても課税が発生する仕組みです。資本金1億円以下の中小法人では、所得金額を基準にする所得割にもとづいて税金を計算します。
ここでは所得金額を基準とするため、赤字であれば課税が発生しません。このように、法人事業税については、資本金額によって赤字の場合における課税の有無が異なるため注意が必要です。
赤字経営の税金対策としてのメリット・デメリット
企業経営では基本的に赤字経営の回避を図るケースが多いものの、税金対策を行うためにあえて赤字決算する企業も存在します。赤字経営における税金対策のメリットとデメリットは、主に以下のとおりです。
- メリット:納税額を低くして還付制度を活用できる
- デメリット:金融機関や株主の印象を下げる
ここからは、赤字経営による税金対策のメリットとデメリットについてそれぞれ詳しく解説します。
①赤字経営による税金対策のメリット
赤字経営による税金対策のメリットは、以下の3つです。
- 法人税がかからない
- 繰越欠損金を利用可能
- 法人税還付を利用可能
それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。
法人税がかからない
税法上の所得が赤字になると、原則として以下2つの税金の支払い義務がなくなります。
- 法人税
- 法人住民税(法人割)
支払う税金の額が少なくなるため、より多くのキャッシュを手元に残すことが可能です。不要資産の購入による赤字化は本末転倒ですが、将来に向けた投資による赤字化は効果的な戦略といえます。利益の赤字化は、活用方法次第で有益な税金対策となるのです。
繰越欠損金を利用可能
赤字となった場合、その赤字を来期以降に繰り越せます。この来期以降に繰り越す赤字は「繰越欠損金」と呼ばれ、将来的な節税対策につなげることが可能です。赤字の繰越に関しては、後ほど詳しく解説します。
法人税還付を利用可能
法人税還付とは、前期が黒字で今期が赤字の場合において、今期の赤字に相当する法人税を還付してもらえる制度をさします。赤字になると、法人税の還付を利用できるメリットがあるのです。法人税還付についても、後ほど詳しく紹介します。
②赤字経営による税金対策のデメリット
赤字経営による税金対策にはメリットがある一方で、3つのデメリットが存在します。
- 金融機関からの融資が不利になる
- 金融機関・株主に不満が生まれる
- 所得税や社会保険料の負担増
それぞれの項目について順番に詳しく見ていきましょう。
金融機関からの融資が不利になる
金融機関は、損益計算書に記載された財務状況をもとに融資するかどうかを決定します。そのため、税金対策を目的に赤字経営をしていると、金融機関からの融資を受けにくくなるおそれがあるのです。また。これまで低金利で融資を受けていた会社では、金利を引き上げられる可能性があります。
融資が受けられなくなったり金利を引き上げられたりした場合は、運転資金不足によって倒産のリスクが高まるでしょう。
赤字になると、銀行は信用格付け(債務者区分)を落とし、正常先からランクダウンして要注意先に分類するため、新規の融資を受けることが非常に困難となるケースが多いです。
また、金融機関は表面的な数字のみで判断するため、税金対策目的の赤字経営だとしても事情を考慮してもらえないケースがほとんどです。とはいえ、赤字であっても、以下のケースでは正常先とみなされます。
- 一過性の赤字の場合(一時的な要因による赤字で翌期意向は黒字化できる)
- 創業赤字の場合(設立5年以内であり、おおむね5年以内での黒字化が見込まれる)
- 会社に売却可能資産などがあり返済能力に問題がない場合
金融機関・株主に不満が生まれる
従業員からすると、「一生懸命働いても赤字」の状況は、仕事に対するモチベーションを低下させる要因といえます。加えて金融機関や株主にとっても、赤字経営は好ましい状況ではありません。多方面の関係者から不満を抱かれた結果として、思わぬトラブルを招くおそれもあるため要注意です。
所得税や社会保険料の負担増
手っ取り早く赤字にする方法のひとつに、役員報酬の引き上げが挙げられます。役員報酬の引き上げにより利益を減少させれば、容易に赤字化させることが可能です。この方法では、赤字による税金対策を実施できるうえ役員の報酬が増加するため、一見すると損がないように感じる経営者の方もいます。
しかし、役員報酬を増加させると、その分所得税や社会保険料も増加します。所得税や社会保険料の負担が増加することから、赤字による税金対策のためだけに役員報酬を増額する選択はそれほどおすすめできません。
また、赤字決算を続けていると累積赤字が増えて、結果的に債務超過に陥り倒産するリスクが高まります。漫然と赤字決算を続けることは経営上好ましくなく、会社を存続させるには利益を出さなければなりません。
赤字で活用できる法人税還付
本章では、赤字の際に活用できる法人税還付の制度について取り上げます。法人税還付とは、前期に納付した法人税から今期の赤字に相当する法人税の一部を還付してもらえる制度です。例えば、急激な経営の悪化により赤字化してしまった場合などに、法人税還付を受ければ現金が得られます。
ここからは、「法人税還付を利用するメリット・デメリット」と「法人税還付を受けるための要件」について順番に見ていきましょう。
法人税還付を利用するメリット・デメリット
法人税還付利用には、以下のとおりメリットとデメリットの双方が存在します。
- メリット:資金繰りの悪化を食い止める
- デメリット:税務調査が入りやすくなる
大きなメリットがある一方でデメリットも存在するため、注意が必要です。
法人税還付を受けるための要件
法人税還付を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 資本金が1億円以下の法人である
- 黒字事業年度から赤字事業年度の前事業年度までの各事業年度について、連続して青色申告により確定申告している
- 赤字事業年度の青色申告による確定申告書を提出期限までに提出している
- 確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出する
簡単にいうと、「資本金1億円以下」であり、なおかつ「前期までは黒字で今期から赤字となった」法人が還付の対象に該当するのです。
赤字繰越による税金への影響
この章では、赤字繰越による税金への影響について取り上げます。赤字を繰り越すと、次期以降の税金対策につなげられる点がメリットです。この次期以降に繰り越す赤字のことを「欠損金」といい、赤字を繰り越す制度のことを「欠損金の繰越控除制度」といいます。
ここからは、「欠損金の繰越控除制度」の内容・利用する要件について順番に見ていきましょう。
「欠損金の繰越控除制度」の内容
「欠損金の繰越控除制度」において赤字を繰り越せる期間は、以下のとおりです。
- 個人事業主:3年間
- 法人:9年間
例えば、「1年目は100万円の赤字」「2年目と3年目はそれぞれ50万円の黒字」となったケースを想定します。このケースにおいて1年目の赤字を繰り越すと、2年目と3年目の税金を抑えることが可能です。
1年間の経営状態 | 赤字を繰り越した場合の状態 | 納税義務 | |
1年目 | 100万円の赤字 | ほとんどなし | |
2年目 | 50万円の黒字 |
黒字相殺 50万円(黒字)-50万円(赤字)=0円 赤字の残り50万円が繰り越される |
ほとんどなし |
3年目 | 50万円の黒字 |
黒字相殺 50万円(黒字)-50万円(赤字)=0円 赤字の残りが0円となる |
ほとんどなし |
赤字の繰り越しで黒字と相殺すると納税義務を減らせるため、大きな節税効果が期待できます。新規事業の開始当初は多額の赤字が計上されるケースが多い一方、数年後に急激に黒字化する可能性も珍しくありません。こうした場合に赤字の繰越制度を利用すると、大きな節税効果が期待できるのです。
赤字繰越は基本的な会計処理ですが、実施の有無によって節税面で大きな違いが現れます。
「欠損金の繰越控除制度」を利用する要件
「欠損金の繰越控除制度」を利用するための要件は、以下2つのいずれも満たしていることです。
- 赤字となった年に青色申告を行っている
- 翌年以降も必ず確定申告を行っている
赤字の年に青色申告を行っていれば、翌年以降は白色申告でも問題ありません。ただし、毎年必ず確定申告を行う必要があります。確定申告を行っていない年があれば、さかのぼって申請を求められるため、注意しましょう。
赤字と税金のまとめ
本記事では、赤字と税金の関係について紹介しました。赤字と税金には密接な関係があり、税金対策を適切に行うためにも赤字に関する知識を把握しておきましょう。赤字の繰越や法人税の還付は節税に欠かせない処理とされているため、ぜひ活用してください。
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