M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新業種別M&A
駐車場業界のM&A・譲渡のメリットや注意点を紹介!
駐車場は土地があれば経営できるため参入しやすい事業とされています。近年は大手企業によるM&Aとして、規模拡大や好立地の駐車場を獲得するためのM&Aが増加中です。本記事では、駐車場業界のM&A・譲渡のメリットや注意点などを解説します。
駐車場業界とは
駐車場事業は、自動車を駐車するスペースを貸し出して、その利用料で収益を得ています。駐車場業界は、それらの事業を営む企業が属する業界を指します。
駐車場業界は、高度経済成長期から自動車の所有率が上がるにつれて需要が高まっていたこともあり、現在でも所有している土地を有効活用するために参入する個人事業主や中小企業が多くみられます。
駐車場業界について
近年の駐車場業界は好調です。自動車販売数の増加や公共投資の増加などの影響により売上は増加しています。一方で、駐車場業界には過剰供給という課題もあります。駐車場業界は土地などの資産を有していれば比較的参入しやすい業界です。
特に土地を有効活用できていない法人や個人が少しでも利益をあげるために駐車場業界に参入するケースはよく見られます。そのため、駐車場業界の大手企業は差別化を図るために駐車場シェアサービスや駐車場の自社保有割合の増加などの戦略を取っています。
駐車場業界のM&A・譲渡による再編動向
次は駐車場業界のM&A・譲渡による再編動向について紹介します。その特徴としては以下の3つがあります。ここからはその特徴について紹介します。
- 大手グループによるM&Aが増加していること
- 規模拡大を目指したM&Aが増加していること
- 好立地の獲得を目的としたM&Aが発生していること
1.大手グループによるM&Aが増加
駐車場業界のM&A・譲渡による再編動向1つ目は大手グループによるM&Aの増加です。駐車場業界の最大手はパーク24で、2018年の売上高は約3000億円です。以下、大きく差がついて日本駐車場開発や東京建物、パラカなどが続いており、2018年の売上高は約200億円~300億円となっています。
先ほども述べたように駐車場の過剰供給や少子化・車離れの影響により将来的に競争が激化すると予測されています。売上を継続的に増加させるための戦略として中小企業や個人事業主が所有している駐車場の譲渡や企業通しのM&Aが積極的に行われています。
2.規模拡大を目指したM&Aが増加
駐車場業界のM&A・譲渡による再編動向2つ目は規模拡大を目指したM&Aの増加です。駐車場業界の競争激化に打ち勝つためにはより多くの資本を集めて、投資する必要があります。その資本集めの戦略としてM&Aが行われています。
M&Aにより駐車場やその企業が保有している資金を得ることができます。また、被買収企業に属している優秀な人材を確保できる可能性があります。さらにM&A相手や譲渡相手が駐車場事業の経営で有していたノウハウなどが得られる可能性があります。
これらをM&Aにより獲得して規模を拡大し、企業の成長につなげるためにM&Aが積極的に行われています。
3.好立地の獲得を目的としたM&Aが発生
駐車場業界のM&A・譲渡による再編動向3つ目は好立地の獲得を目的としたM&Aが発生していることです。これは駐車場業界で生き残るための差別化戦略です。繁華街や大型量販店の近くなど自動車の駐車の需要が非常に高いエリアがあります。
そこに駐車場があるとある程度の駐車料金であっても継続的に売上を確保することができます。このような好立地での駐車場を数多く有している法人や個人事業主であれば、駐車場業界の競争が激化しても比較的経営が安定します。
好立地の駐車場を得るためにM&Aや駐車場の売買が積極的に行われています。
駐車場業界のM&A・譲渡のメリット
続いては駐車場業界のM&A・譲渡のメリットをこの記事では以下の3つを紹介します。
- 大手グループの傘下入りで経営が安定化すること
- 売却益・譲渡益が獲得できること
- 管理などの信頼度アップに繋がること
大手グループの傘下入りで経営の安定化
駐車場業界のM&A・譲渡のメリット1つ目は大手グループの傘下に入ることで経営が安定化することです。駐車場業界に参入しても好立地や価格が安いなど周辺との差別化を図れないと思うような収益を確保することはできません。
その差別化の手段の1つとして大手グループのブランド力を利用する方法があります。ブランド力には利用しやすさや価格面でのイメージがあるため、利用者はほかの駐車場と比較することなく駐車場を利用します。
このように大手グループの傘下に入り、ブランド力で差別化を図ることで駐車場事業の経営を安定化させることができます。
売却益・譲渡益の獲得
駐車場業界のM&A・譲渡のメリット2つ目は売却益・譲渡益の獲得です。当然ですが、駐車場という資産を売却することで売却益が得られます。また、その駐車場が好立地であったり、月極契約者などの固定客が多い駐車場であれば、付加価値が付くため、多額の売却益が得られます。
さらに大手グループの事業再編によるM&Aや譲渡であれば、通常よりも高値で買収してもらえる可能性があります。これらを総合的に考えると、駐車場事業を廃業するのであれば、M&Aや譲渡を行って売却益・譲渡益を獲得しましょう。
管理などの信頼度アップに繋がる
駐車場業界のM&A・譲渡のメリット3つ目は管理などの信頼度アップにつながることです。個人事業主であれば、日常的に管理を行うとコストがかかるため、一定期間でしか管理作業を行っていないところは多いです。
しかし、大手グループの傘下に入るなどのM&Aを行うことで管理作業に対する費用を補助してもらえるため、利用者に対して信頼度を向上させることができます。また、大手グループ傘下に入ることでブランド力も得られるため、こちらの面からでも信頼度を上げることができます。
駐車場業界のM&A・譲渡の注意点
M&Aや譲渡を行う際には注意するべき点もあります。駐車場業界のM&A・譲渡の注意点をこの記事では以下の3つを紹介します。
- 買い手となる企業の社風や風土をよく知ること
- 地域性を重視して買い手を選定すること
- 駐車スペースと不動産価値の変動に着目すること
買い手となる企業の社風や風土をよく知る
駐車場業界のM&A・譲渡の注意点1つ目は買い手となる企業の社風や風土をよく知ることです。M&Aで最も困難とされている手続きはクロージング後の統合プロセスです。経理や人事などのハード面は半年くらいで統合させることができます。
一方、売り手企業の従業員が買い手の企業の社風や風土を統合させるためには平均して1年以上かかります。買い手側はソフト面の統合プロセスを考慮してできるだけ自社と社風や風土が近い企業とM&Aを行おうとしています。
売り手側も譲渡される従業員のことを考えて、買い手企業の社風や風土を調査しておきましょう。そして、譲渡されても従業員が退職しない社風や風土の企業に買収・譲渡されるようにしましょう。
地域性を重視して買い手を選定する
駐車場業界のM&A・譲渡の注意点2つ目は地域性を重視して買い手を選定することです。大手グループの傘下に入るとブランド力は得られます。その一方で、経営の仕方など一律のマニュアルに従う必要があるため、今までの経営方法や地域性を無視した駐車場事業を行うことになります。
一律のマニュアルに従うと場合によっては既存の顧客が別の駐車場に乗り換える可能性があります。また、経営方法が変わると従業員に負担がかかるため、モチベーションを押し下げる要因になります。そのため、買い手企業の経営方針については調査しておく必要があります。
例えば、買い手企業の事業所の所在地が自社に近くにあることや地域性を重視してくれるような買い手企業とM&Aや譲渡を行うようにしましょう。
駐車スペースと不動産価値の変動に着目する
駐車場業界のM&A・譲渡の注意点3つ目は駐車スペースと不動産価値の変動に着目することです。駐車場の価格は景気の変動によって大きく左右されます。
直近ではアベノミクスによる好況やオリンピック需要による地価の高騰、さらには中国人による不動産の買い占めなどによって土地の価格は高騰していました。しかし、2020年はコロナショックによる不況やオリンピックの延期などによって不動産価格は低下しています。
このように不動産価格は大きく変動します。駐車場事業による多額の売却益・譲渡益を獲得するためには売却する時期を慎重に考えましょう。少なくとも2020年はコロナショックによって買い手企業が減少するため、駐車場事業を売却しないことが得策です。
駐車場業界のM&A・譲渡事例
最後に駐車場業界のM&A・譲渡の事例を4つ紹介します。紹介する事例は以下の通りです。
- 九州地方の駐車場事業および法人株式譲渡
- 三菱地所による駐車場綜合研究所の子会社化
- 駐車場綜合研究所(現 三菱地所パーク)によるMBOの実施
- 日本駐車場開発によるインドネシアの駐車場販売会社の子会社化
1.九州地方の駐車場事業および法人株式譲渡
1つ目に紹介する事例は九州地方で行われた駐車場事業と法人株式譲渡です。譲渡が行われた日時については公開されていません。譲渡した企業は福岡県内で20件のコインパーキングを展開している年商6000万円のP社です。
P社は駐車場事業とは別の新規事業を行う計画をしており、それに向けた事業のスリム化を目的にコインパーキング事業を売却されます。一方、譲受企業は鹿児島県内で不動産事業を行っている年商2億円のT不動産です。
T不動産は自社の今後の成長戦略としてM&Aを行おうとしていました。本案件の前には他の福岡県内の不動産管理会社とのM&Aを検討していましたが、いずれも断念していました。今回の案件では打ち合わせや面談を数回実施して、駐車場事業と法人株式の譲渡に至りました。
今回の譲渡ではP社の駐車場事業のノウハウや収益性を安定化させるため、P社社長が譲渡後1年間顧問として残留することになりました。今回は駐車場事業と不動産事業と類似性があったこと、また、両社の戦略がうまく協調したこともあって短期間で譲渡の話し合いがまとまりました。
なお、今回の事業および株式の取得価格は公開されていません。
売却企業 | 年商6000万円のP社(福岡県) |
買収企業 | 年商2億円のT不動産(鹿児島県) |
株式取得価格 | 非公開 |
目的 | 新規事業のためのスリム化(売却側) 事業拡大のため(買収側) |
2.三菱地所による駐車場綜合研究所の子会社化
2つ目に紹介する事例は2018年5月に行われた三菱地所による駐車場綜合研究所の子会社化です。本案件で駐車場綜合研究所は三菱地所の子会社である三菱地所リアルの子会社になります。両社とも駐車場の運営管理の事業を行っています。
今回の子会社化の目的は三菱グループでの駐車場事業の収益拡大と他の事業とのシナジー効果の創出です。
買収企業 | 三菱地所の子会社である三菱地所リアル |
子会社企業 | 駐車場綜合研究所(現 三菱地所パークス) |
株式取得価格 | 非公開 |
目的 | 収益拡大とシナジー効果の創出 |
3.駐車場綜合研究所(現 三菱地所パークス)によるMBOの実施
3つ目に紹介する事例は2015年11月に行われた駐車場綜合研究所(現 三菱地所パークス)によるMBOの実施です。本案件では駐車場綜合研究所の経営陣は特定目的会社株式会社アスパラントグループSPC2号を設立し、公開買い付けを実施します。
これにより、駐車場綜合研究所の株式は上場廃止になります。駐車場綜合研究所は駐車場管理運営事業の強化や中国での事業の確立を目指して事業を行っています。短期的な利益の確保を目的とする株主からの意見を排除する目的でMBOが実施されました。
MBO実施企業 | 駐車場綜合研究所(現 三菱地所パークス) |
株式取得価格 | 非公開 |
目的 | 中国での長期的な事業の確立 |
4.日本駐車場開発によるインドネシアの駐車場販売会社の子会社化
4つ目に紹介する事例は2013年10月に行われた日本駐車場開発によるインドネシアの駐車場販売会社の子会社化です。子会社となるPT. SUN SIFA NIPPONINDO(以下、SSN社)は、インドネシアで組立型の自走式駐車場の販売を行っている企業です。
本案件は日本駐車場開発が駐車場事業でのグローバル化を目指そうとしている戦略の一環で収益拡大とシナジー効果を期待しています。株式取得価格は公表されていませんが、本案件で日本駐車場開発はSSN社の株式の60%を取得することになります。
買収企業 | 日本駐車場開発 |
子会社企業 | SSN社(インドネシア) |
株式取得価格 | 非公開(SSN社の60%を取得) |
目的 | 駐車場事業でのグローバル化 |
そのほか不動産業界のM&A、譲渡の事例については以下の記事で詳しく紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
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まとめ
今回は駐車場業界のM&A・譲渡について紹介しました。駐車場業界は将来的に過剰供給となり、競争激化になると予想されている業界です。これを見越して大手グループは生き残るために業界再編を行っています。コロナショックが収束してもこの傾向が続くため、今のうちからM&Aや譲渡の準備を行っておきましょう。
【駐車場業界のM&A・譲渡による再編動向】
- 大手グループによるM&Aが増加していること
- 規模拡大を目指したM&Aが増加していること
- 好立地の獲得を目的としたM&Aが発生していること
【駐車場業界のM&A・譲渡のメリット】
- 大手グループの傘下入りで経営が安定化すること
- 売却益・譲渡益が獲得できること
- 管理などの信頼度アップに繋がること
【駐車場業界のM&A・譲渡の注意点】
- 買い手となる企業の社風や風土をよく知ること
- 地域性を重視して買い手を選定すること
- 駐車スペースと不動産価値の変動に着目すること
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