2021年4月28日更新節税

相続税と相続に伴う破産

相続の際には相続税だけでなく、相続に伴って発生し得る破産についても考慮しなければなりません。なぜなら、最悪の場合、相続放棄か自己破産のいずれかを選ぶ必要に迫られるケースがあるからです。そこで、この記事では、相続税と相続に伴う破産について解説していきます。

目次
  1. 相続破産とは
  2. 相続税の申告
  3. 相続税の納税義務者と課税財産
  4. 相続放棄と自己破産の違い
  5. 相続人が自己破産する場合
  6. 倒産・民事再生・会社更生・私的整理の費用
  7. まとめ

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相続破産とは

相続破産とは、相続に伴って発生し得る破産のことをさします。相続破産が発生すると、結果的に相続の対象となっていた家や土地を手放す必要に迫られる可能性があります。また、会社であれば倒産してしまう恐れもあるので注意が必要です。

相続破産は、一般家庭や富裕層、会社経営者を問わず発生するリスクがあり、相続を控えているのであれば慎重に対処する必要があるものです。相続破産は、主に以下の2パターンで発生します。

  1. 相続時の相続税が膨大であった場合
  2. 相続時に背負った負債が大きい場合

①相続時の相続税が膨大であった場合

1つ目は、相続税が予期せぬ税額にまで膨らんでしまったケースです。このケースは、平成27年の相続増税以後に頻出しているケースで、相続税の税率が引き上げられた影響を受け、相続税が予想以上に膨らんでしまった結果、相続を諦めてしまうケースが多発しています。

また、税理士が算定した評価額と実際の評価額にギャップがあり、結果として想定外の相続税が発生し、相続破産に陥るケースがあります。この場合は、不動産鑑定に疎い税理士が評価額を算定した際に発生しています。

②相続時に背負った負債が大きい場合

2つ目は、相続の際に負債を背負うケースです。相続の厄介な点は、相続の対象となる財産の中には負債なども含まれる点です。そのため、相続に際して負債を受け継いだものの、負債を返せるめどが立たないために相続破産に陥るケースが多発しています。

また、会社の事業承継を伴う相続の場合、負債だけでなく会社が持っている貸付金なども相続破産の引き金になるリスクがあります

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相続の流れと手続き
相続における負債

相続税の申告

相続税には、申告を実施しなければならない財産と実施しなくてもよい財産があります。これらを把握しておけば相続税の計算が楽になるでしょう。申告を実施しなければならない財産と実施しなくてもよい財産は以下のとおりです。

相続税の申告を実施しなければならない財産

  • 不動産(宅地、山林、田畑などの農地、敷地権や借地権など)、建物(区分建物、駐車場、倉庫、借家権など)
  • 金融財産(現金、預貯金、株式、投資信託など)
  • 自動車、家具、リゾート会員権、ゴルフ会員権、著作権、商標権、電話加入権、骨董品など

相続税の申告を実施しなくてもよい財産

  • 祭祀承継の対象となるもの(墓石、墓地、仏壇、仏具など。ただし投資価値が高いものに関しては骨董品扱いとなるため、相続税の対象となる)
  • 死亡保険金(500万円×法定相続人の数の範囲内が非課税となる。相続放棄をした相続人や死亡保険金を相続しない相続人も計算に入れることが可能。ただし、この範囲を超えると課税対象になるため注意が必要)
  • 死亡退職金(死亡保険金と同じ計算法で課税される)

相続税の納税義務者と課税財産

相続税がかかる人と相続税の課税される財産の範囲は、以下のようになっています。

相続税のかかる人 課税される財産の範囲
相続や遺贈で財産を取得した人。かつ、財産をもらった時点で日本国内に住所を有している人。 取得したすべての財産
相続や遺贈で財産を取得した人。かつ、財産をもらった時点で日本国内に住所を有しないが以下の条件にあてはまる人。
⑴財産をもらった時に日本国籍を有している人の場合は、次のいずれかの人
・相続の開始前10年以内に日本に住所を有していたことがある人
・相続の開始前10年以内に日本に住所を有していたことがない人
⑵財産をもらった時に日本国籍を有していない人
取得したすべての財産
相続や遺贈で日本国内にある財産を取得した人。かつ、財産をもらった時点で日本国内に住所を有している人 日本国内にある財産
相続や遺贈で日本国内にある財産を取得した人。かつ、財産をもらった時点で日本国内に住所を有しない人 日本国内にある財産
上記のいずれにも該当しない人。かつ、贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した人 相続時精算課税の適用を受ける財産
(参照:国税庁ホームページ「No.4102 相続税がかかる場合」、2020年3月現在)

このように、基本的に、相続税の納税義務者は、何らかの形で被相続人の遺産を受遺、あるいは承継していることが条件であることがわかります。

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相続放棄と自己破産の違い

相続によって不利益が生じる場合、特に負債を背負ってしまう場合には、相続放棄をするか自己破産をするかの選択を迫られる場面に遭遇するかもしれません。しかし、相続放棄と自己破産では意味合いが異なるため、検討する際にはきちんと理解しておく必要があります。

ここでは、相続放棄と自己破産の違いについて詳しく説明します。

自己破産とは

一般的にネガティブなイメージが強い自己破産ですが、自己破産とは、自己都合で背負った負債や相続の際に引き継いでしまった負債の返却を、特別に免除してもらうことをさします。しかし、自己破産では、相続税の免除までを保証してくれるわけではないため、相続税の義務は継続しています。

相続放棄とは

一方、相続放棄は、文字通り相続そのものを放棄することをさします。相続放棄においては、相続できる財産も負債もすべて放棄する形になるため、相続自体がそもそも発生しません。そのため、相続放棄を実施した場合は、相続税の納税義務自体がなくなります。

限定承認とは

相続放棄は、良くも悪くも相続自体を放棄するものであり、財産の相続を放棄するということに抵抗感を覚える人もいらっしゃるでしょう。そのような場合には、限定承認を活用することをおすすめします。

限定承認は、相続人の責任の範囲内で相続する財産を限定できる方法であり、相続する財産を超える分の負債の相続を避けることが可能です。ただし、限定承認は、共同相続人全員による手続きが必要であり、清算手続きや準確定申告などをしなければならない手続きも多いため、非常に手間がかかります。

加えて、共同相続人のうち、一人でも反対する相続人がいれば限定承認は成立しなくなってしまうため、実際に成功することは難しい方法でもあります。

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相続人が自己破産する場合

決して一般的なケースではありませんが、相続人が自己破産を実施した際に、遺産を承継、あるいは受遺すると、すべて借金の返済にあてられるため、遺産自体を失うことになります。しかし、そのような場合は、相続放棄を実施すれば、相続ができなくなるだけで、遺産自体は残ります。

ただし、相続が発生したタイミングによって手続きが変わるため、注意が必要です。

相続放棄を実施するタイミング

もし破産の手続きが始まる前のタイミングで相続が発生していれば、問題なく相続放棄できます。しかし、数年前に相続が発生していた場合は相続放棄ができなくなります

なぜなら、相続放棄とは、相続が発生してから3ヶ月以内に実施する必要があり、その期間を過ぎると相続放棄ができなくなるからです。

ただし、名義が特定の相続になっておらず、複数の相続人の共有になっている不動産などの場合は、遺産を取り上げられないため、慌てて対処する必要はありません。

破産手続きを控えている中で、相続登記を変更するような行為は財産逃れを疑われる可能性があります。破産管財人が否認権を行使し、相続登記の変更を含めた遺産分割協議すべてを無効にされる可能性があるため、注意が必要です。

また、最も厄介なタイミングは、破産手続きが開始される1週間のうちに相続が発生してしまうケースです。このようなケースに陥ってしまうと相続放棄自体ができなくなります。

さらに、遺産分割協議では問答無用で破産管財人に否認権を行使され、遺産を取り上げられることになります。そのため、自己破産手続きを検討している相続人候補には注意が必要です。

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倒産・民事再生・会社更生・私的整理の費用

会社の倒産、民事再生、会社更生、私的整理をする場合は、一定の費用がかかるため注意が必要です。ここでは、それぞれの手法を選んだ際にかかる以下の費用についてお伝えしていきます。

  1. 倒産
  2. 民事再生
  3. 会社更生
  4. 私的整理

①倒産の費用

倒産(会社破産)の場合、主に裁判所に納める費用として申し立ての際にかかる収入印紙や郵券、予納金が発生します。収入印紙や郵券に関しては2万円程度ですが、予納金に関しては負債の総額によって変化します

ただし、予納金に関しては裁判所ごとに異なるため、会社がある地域の裁判所に従う必要があります。しかし、少数管財事件である場合、負債の総額にかかわらず予納金は一律で20万円となっています。

②民事再生の費用

民事再生の場合は、倒産の際と同等の費用が必要です。民事再生の場合も、裁判所への申し立てに必要な収入印紙、郵券、予納金が費用として発生しますが、収入印紙や郵券に関しては倒産と同様に2万円程度です。

また、予納金に関しても負債の総額によって変化します。こちらも裁判所によって異なる場合があるため、事前にチェックしておく必要があるでしょう。

ただし、民事再生は倒産と違い、手続きが完了してからは会社を立て直すために事業を継続していくことになるものです。そのため、会社の経営を続けていくための運転資金や従業員への賃金など、ある程度の資金を保っておく必要があります。

③会社更生の費用

ここでご紹介する手続きの中で、最も費用がかかるものが会社更生です。会社更生でも、倒産、民事再生と同様に、裁判所申し立てのための収入印紙、郵券、予納金のための費用を用意しておく必要があります。ただし、会社更生の際は、収入印紙、郵券に関しては総額で6万円程度かかる傾向にあります。

また、会社更生時の予納金は、破産や民事再生のように負債総額によって比例するシステムではありません。会社更生では、負債総額ではなく、債権者数や会社の財産状況を裁判所が考慮して設定します。

そのため、明確な基準はありませんが、会社更生の際の予納金に関してはおおむね2,000万円程度が最低限度といわれています。

④私的整理の費用

私的整理の費用に関しては、倒産、民事再生、会社更生とは根本的に異なります。元来、私的整理とは、経営破綻を迎えている、あるいは経営破綻を迎えようとしている会社の経営者が、裁判所を介在させずに、債権者などの相手と事業再建のための協議を実施する手法です。

そのため、私的整理においては倒産、民事再生、会社更生のように裁判所に支払う費用が発生しません。実際に発生する費用は、協議するうえで弁護士などに協力を依頼している際に発生する報酬などに限られるでしょう。

ただし、私的整理の過程で、万が一訴訟に発展した場合は、弁護士などへの報酬も含め、費用が大きく変わる可能性があるため、注意が必要です。

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まとめ

相続税や相続に伴う破産に関する知識は、円滑な相続を実施するうえで不可欠なものです。

とりわけ自己破産手続きと相続の関係性については、正しい知識をあらかじめ押さえておかなければ、相続される遺産自体が取り上げられてしまう可能性があります。また、他の相続人に迷惑がかかる可能性もあるため、十分に注意しましょう。自己破産を検討している相続人については、細心の注意を払う必要があります。

要点をまとめると、下記のとおりです。

・相続破産とは?
→相続に伴って発生し得る破産のこと

・相続税の申告
→相続税には、申告を実施しなければならない財産と実施しなくてもよい財産がある

・相続税の納税義務者と課税財産
→相続税がかかる人と相続税の課税される財産の範囲は決められている

・自己破産とは?
→自己都合で背負った負債や相続の際に引き継いでしまった負債の返却を、特別に免除してもらうこと

・相続放棄とは?
→相続そのものを放棄すること

・限定承認とは?
→相続人の責任の範囲内で相続する財産を限定できる方法

・相続人が自己破産する場合
→破産法で定められたとおりに対応する必要がある

・倒産・民事再生・会社更生・私的整理の費用
→会社の倒産、民事再生、会社更生、私的整理をする場合は、一定の費用がかかるため注意が必要

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