2020年11月10日更新会社・事業を売る

インカムアプローチ

企業価値を算出する3大手法の1つがインカムアプローチです。企業の将来性に着目する評価方法が特徴であるインカムアプローチには、他の手法同様にいくつかの方法が属します。中でもDCF法は、M&Aにおいても広く用いられている計算方法です。

目次
  1. 企業価値評価(バリュエーション)
  2. インカムアプローチの手法
  3. インカムアプローチのメリット
  4. インカムアプローチのデメリット
  5. まとめ
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企業価値評価(バリュエーション)

企業価値評価(バリュエーション)

M&Aを実施する際は、買収対象候補の会社に対し、当然ながら企業価値評価を行います。この企業価値評価のことをバリュエーションと呼びます。バリュエーションの目的は、最終的には買収価格を決めることです。

従って、バリュエーションにおいて文言だけのレポートだけでは不十分であり、企業価値を具体的な価額として算定することになります。この算定方法には実にさまざまなものが開発されてきていますが、それらは大きく分けて3つのカテゴリーに分けられます。

まず、その企業の過去の実績をベースとして価額算定を行うのがコストアプローチです。また、近似する上場企業の情報を参照して価額算定を行うマーケットアプローチもあります。そして、将来の収益予測に着目し価額算定をするのがインカムアプローチです。

バリュエーションでは、複数の手法を用いるのが常套手段になっています。その中でも現在のM&Aの現場では、最もトレンドなバリュエーションとして用いられているのがインカムアプローチです。このインカムアプローチに焦点をしぼり、その詳細を解説します。

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インカムアプローチの手法

インカムアプローチの手法

数あるバリュエーション方法の中でインカムアプローチが多用されている理由は、企業の価値に値段をつけるという目的に対して、その企業の将来性が加味された算定方法が合理的と思われているからです。

複数あるインカムアプローチの中でも、とりわけDCF法は、企業が将来的に獲得すると予想されるキャッシュフローや利益などの収益予測をベースにして、企業価値を算定します。つまり、その企業の将来性や期待値を企業価値に価額として反映させているのです。

DCF法だけでなくいろいろなインカムアプローチがあり、それぞれ算定のベースとなるものが異なります。その中でも代表的なものは配当還元法でしょう。ここでは、その配当還元法とDCF法について、具体的な内容を見ていくことにします。

①DCF法

DCF(=Discounted Cash Flow)法は、インカムアプローチの中で最も代表的な存在であり、最も多用されている算定手法です。M&Aにおいても同様に重用されています。DCF法は、正式名称を見ればわかるとおり、キャッシュフローを基に企業価値を算定します。

DCF法でベースとするキャッシュフローは、フリーキャッシュフローと呼ばれるものです。フリーキャッシュフローとは、企業が事業によって得たキャッシュフローから、その事業を保持するために投資することになるキャッシュフローを差し引いたものが該当します。

つまり、企業が真の意味で自由に使えるキャッシュのことです。以下で、DCF法による企業価値の算定を手順ごとに説明していきます。会計上の専門用語などもあり、わかりづらい点を補うため、手順ごとに見出しを分けて記します。 

各年の「フリーキャッシュフロー(FCF)」を算定

インカムアプローチであるDCF法では、将来の収益予測がわからないと計算が始められません。まずは、向こう3年度分の中期事業計画策定を行います。その事業計画に基づいた収支予測から、各年のフリーキャッシュフローを算出します。フリーキャッシュフローの計算式は、以下のとおりです。

  • FCF=税引後営業利益+減価償却費−運転資本増価額−設備投資額

「割引率」=加重平均資本コスト(WACC)を算出

次に、DCF法の計算上、必要となる割引率を別途算出します。DCF法では、WACC(=Weighted Average Cost of Capital=加重平均資本コスト)が割引率に用いられます。WACCを求める計算式は、以下のとおりです。

  • WACC ={株主資本総額×資本コスト+負債総額×負債利子率×(1−実効税率)}÷株主資本総額+負債総額

各年の「FCF」を、「割引率」を用いて「現在価値」に割り引く

各年のFCFを、割引率(WACC)を用いて現在価値に割り引く計算を施します。その計算式は以下のとおりです。

  • 現在価値=FCF÷(1+割引率)

なお、2年目以降は(1+割引率)の部分に年数と同じ数を乗じます。

算出した各年の「現在価値」の数値を足していく

前述の各年度の「現在価値」の数値を足します。この和こそ、DCF法によって算出された企業価値の価額です。実際のM&Aの現場では、この計算そのものはM&A仲介会社などの専門家に任せてしまって差し支えありません。

しかし、算定された数値について、ただ鵜呑みにするのではなく、このようなプロセスを経て計算されているということだけは理解しておきたいものです。

②配当還元法

配当還元法は、将来的な配当の期待額をベースに企業価値を算出するインカムアプローチです。基本的な計算理論についてはDCF法と変わりません。ただし、配当金額とは企業が決定する配当政策によって変動するものです。確定的な数値を出しにくいという面があります。

そのため、大企業のM&Aではあまり活用されません。そもそも配当還元法が用いられる局面としてはM&Aではなく、その企業の株式の利回りを見定めるような投資の現場で用いられることが多いコストアプローチです。

いずれにしても、M&Aで最適な企業価値評価を得るためには、M&A仲介に確かな実績を持つ専門家の存在が不可欠です。どのM&A仲介会社に依頼するかお悩みでしたら、ぜひ一度、M&A総合研究所にご相談ください。

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インカムアプローチのメリット

インカムアプローチのメリット

M&Aでは特に有効性が高いインカムアプローチですが、そこにはメリットとデメリットの両方が存在します。現実にインカムアプローチを使用する場合には、メリット・デメリットの両方をよく把握したうえで実施するのがよいでしょう。

万が一、デメリットのほうが大きいと判断した場合は、コストアプローチやマーケットアプローチなど他の企業価値評価方法を選択することが適切です。それでは、まずインカムアプローチのメリットについて掲示します。

①将来性やシナジー効果も評価に反映できる

インカムアプローチの最大のメリットは、その企業の固有的な将来性や成長性をしっかり企業価値評価に含められる点です。今現在、目立った利益を出していない企業でも、今後急成長を遂げる可能性はあります。

そうした将来性を企業価値に反映できる点が、インカムアプローチの特徴性あるメリットです。コストアプローチやマーケットアプローチでは、過去から現在までだけのデータを基に企業価値を評価します。従って、将来的に成長が見込める企業の評価には不向きです。

しかしインカムアプローチは、将来的なシナジー効果なども含めて企業価値を評価できるため、M&Aの際には非常に高い効果を持ちます。また、キャッシュフローをベースに算定するため、会社の実態も忠実に反映可能です。

②M&A以外でも活用可能

インカムアプローチの中でもDCF法は、M&Aのみならずさまざまな場面で活用できます。具体的には、以下の場面でもインカムアプローチ(DCF法)を応用可能です。

  • 金融機関での貸倒引当金の算定
  • 減損会計の減損認識 
  • 事業や設備への投資評価 
  • 資産の価値評価

上記のとおり、DCF法は多種多様なシーンで応用できることを覚えておきましょう。このようにインカムアプローチは、対象企業の成長性を加味した企業価値を算定できるうえ、それに加えてさまざまなシーンで活用可能なのです。

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インカムアプローチのデメリット

インカムアプローチのデメリット

優れた計算方法で活用しやすいインカムアプローチにもデメリットがあります。インカムアプローチのデメリットとして指摘されている3つの事項について見てみましょう。そして、これら3つについては忘れずに頭に入れておいてください。

①主観的な評価になりやすい

インカムアプローチは、企業の将来性や成長性を評価に反映させるため、翌年度以降の事業計画書や収支予測表を計算のベースに使います。それらは、あくまでも将来の予測であって確定された出来事、数字ではありません。

あくまでも、事業計画を策定した人物の主観のもと、書かれた数字なのです。この場合の主観とは、わかりやすく言えば希望的観測と言えるでしょう。現実に根差した予測ではなく、こうなったらいいなという願望や、こうなるはずだという思い込みに左右されている可能性があります。

つまり、インカムアプローチのデメリットの1つは、事業計画などで将来性を検討しても、計画策定者の主観が入り込んでいる場合、客観性を欠いてしまう点です。

②恣意性を排除できない

インカムアプローチに用いる事業計画書について、前項以上にうがった見方をしてみましょう。それは、主観による予測というレベルを飛び越えて、できるだけよく見えるようにしようという意思が働いて書かれた数字であることも否定できません。

つまり、計画を策定する人によって自由に企業価値を操作できてしまうわけです。インカムアプローチによって算出した価値を信じてM&Aを行い、計画を実施したものの全く利益を得られないなどの事態に陥るリスクがあります。

従って、固定された数字が必要となる相続場面には向いていません。M&Aでインカムアプローチを実施する場合は、このような恣意性や前項のような主観が入っていないことがうかがえる、客観的な資料や裏づけを合わせて提出してもらいましょう。

③活用できないケースがある

将来の収益予測を注視した手法であるインカムアプローチは、企業が解散するような前提は考えられていません。そのため、企業が存続し続けるための合理的な事業計画を組む必要があります。万が一、企業の継続性に疑問が残る場合、インカムアプローチの適用は厳しいでしょう。

従って、清算などの企業が存続しないケースでは、インカムアプローチは活用できません。企業を清算する場合に行う現在価値の算定には、もっぱらコストアプローチが用いられます。

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まとめ

まとめ

将来性を企業価値に反映できるインカムアプローチは、特にM&Aにおいては非常に有効です。しかし一方で、客観性を欠く点や、恣意性が残るなどのデメリットもあります。インカムアプローチの有効性を担保するには、ベースとなる事業計画の合理性を正確に見極めなくてはいけません。

本記事の要点は以下のとおりです。

【インカムアプローチとは 】
  • キャッシュフローや配当をベースに企業価値を計算する手法
【インカムアプローチの代表例】 
  • DCF法、配当還元法
【インカムアプローチのメリット】
  •  将来性重視の企業価値算出
【インカムアプローチのデメリット 】
  • 主観的さ、恣意性という側面がある
  • 企業が存続しないケースでは活用できない

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