M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年4月19日更新会社・事業を売る
M&Aのデューデリジェンスとは?目的や注意点、費用、種類、進め方を解説
デューデリジェンスは、M&Aの成り行きを左右する必須プロセスです。本記事では、デューデリジェンスの概要・目的・実施のタイミングや必要期間・種類・手続きの流れ・費用と会計処理・注意点などデューデリジェンスの全てを解説します。
目次
M&Aのデューデリジェンスとは?
M&Aを進めるうえでデューデリジェンス(due diligence)は、重要な役割を持っています。基本的に買収側企業にとって、売却側企業は見ず知らずの相手です。貴重な資金を投じるかもしれない相手を、表層的な情報やイメージだけでは判断できません。
そこで、売却側企業の実状をできるだけ知る必要が生じます。そのタイミングで行われる売却側企業に対する詳細な調査が、デューデリジェンスです。M&Aの現場では略して「デューデリ」、頭文字を取って「DD」とも呼ばれます。
元来、法律用語であるデューデリジェンスは、M&Aだけではなく、不動産取引や投資ファイナンス全般で使われる言葉です。一般的な日本語訳としては、資産の適正評価手続きということになっています。
つまり、M&Aにおけるデューデリジェンスとは、売却側に対して、その企業価値を適正に判定する手続きということです。そして、この判定は、会社の決算状況に加えて、財務、法務、税務など、ありとあらゆる面から多角的に行われます。
それら各種のデューデリジェンスでは、公認会計士、弁護士、税理士などの専門家を起用するのが常です。また、その調査の過程では、売却側企業の経営者にヒアリングが行われ、各種資料の提出も求められます。
確定申告時の決算書程度しか作っていない中小企業の場合は、デューデリジェンスの過程の段階で戸惑いを覚えるかもしれませんが、デューデリジェンスの実態を把握しておくことは有用となるでしょう。
デューデリジェンスの目的
ここでは、デューデリジェンスを実施する目的について、3つのポイントを掲示し明らかにします。
- リスクの把握
- リターンの把握
- スキームや経営方針の決定
①リスクの把握
デューデリジェンスを行う第一の目的は、リスクの把握です。一見、魅力的に見える売却側企業であったとしても、表面には出てこない何らかの問題、リスクを抱えているかもしれません。
特に中小企業の場合、意図的に問題を隠すのは論外としても、経営規模が小さい状況では発現しないような、自分たちでも気づいていない障害が、会社の中に埋もれている可能性もあります。
ちなみに、M&Aを中止、断念するようなレベルの重大な障害のことを、ディール・ブレイカーと言います。もし、デューデリジェンスの担当者がこの言葉を口にしていたら危険な兆候です。念のため、覚えておいてください。
また、ディール・ブレイカーほどのリスクは存在しないにしても、最終判断のために小さな問題をもリスクとして顕在化させるのが、デューデリジェンスの役割です。
②リターンの把握
M&Aでリスクを避けるのは当然のことですが、M&Aとは本来、収益の拡大を目論んで行います。したがって、デューデリジェンスのもう1つの大きな目的は、買収の成果として、どれだけのリターンが見込めるかの把握です。
このリターンとは、単に新事業が加わることでの収益増加だけではなく、既存事業との間でどれだけのシナジー効果があり、それによって、それぞれの事業がさらにどれだけの収益の伸びしろがあるかの予測まで行います。
多少のリスクを抱えている企業であったとしても、リターンのほうが大きいものであればM&A成約の可能性はグッと高まるでしょう。また、想定されるリターンの大きさによって、M&A成約時の買収額も左右されます。
③経営統合スキーム・経営方針の決定
M&Aのゴールは、売買契約の締結ではありません。企業経営の観点からすれば、M&Aの成立は新たなビジネス展開のスタート地点です。
デューデリジェンスでつかんだ、売却側企業のリスクとリターン、さらに既存事業とのシナジー効果、それら全ての情報を用いて、M&A後のビジネススキームや経営方針を定め、実行していくことになります。
その意味においても、デューデリジェンスは重要な役割を持っているのです。また、M&Aを実行する場合、買収側の経営陣には、株主を筆頭とするステークホルダー(利害関係者)への説明責任が生じます。
デューデリジェンスの実施タイミング
デューデリジェンスが行われるタイミングは、基本合意書の締結後です。基本合意書は、M&Aの条件交渉が大筋で合意したときに締結します。合意した条件内容が適正かどうかを、デューデリジェンスで確かめるという流れです。なお、基本合意書には法的拘束力がありません。
デューデリジェンス実施後、その結果を踏まえた最終交渉が行われます。最終交渉で合意ができれば、正式にM&Aの契約を締結します。
売却側における役割
デューデリジェンスは、買収側が実施するものですが、各種資料の提供やヒアリングへの対応など売却側企業が協力しなければスムーズに進みません。売却側としては多分にストレスもかかりますが、建設的な対応が円滑なM&A成約につながります。
また、デューデリジェンスの結果、売却側の評価が基本合意書締結時よりも高まり、売却価額の上乗せもあり得ますから、デューデリジェンスへの積極的な協力、できるかぎりの情報開示を進んで行うべきです。
セルサイドデューデリジェンスとは
昨今、セルサイドデューデリジェンスも行われるようになってきました。セルサイドデューデリジェンスとは、売却側企業自身が自社に対して行うデューデリジェンスです。M&Aの検討段階において、自社の企業価値を把握するために行います。
期待されるメリット
セルサイドデューデリジェンスは、以下のことを目的に実施します。
- 現段階での売却価額の把握
- 売却価額を上昇させるための改善点の把握
- M&A交渉で問題になりそうな課題の抽出
- M&Aスキームの選択などM&A戦略立案のための情報収集
デューデリジェンスのスケジュール・期間
一般的にデューデリジェンスに要する期間は、1~2カ月程度です。ただし、売却側の企業規模やM&Aスキームなどで変化するため、2週間程度で終わることもあれば2カ月以上かかる場合もあります。デューデリジェンスのプロセス別の目安期間は、以下のとおりです。
- 売却側の資料準備・買収側のデューデリジェンス準備期間:2週間程度
- 契約書・財務諸表・経営資源・その他の資料の調査、経営者や幹部社員へのヒアリング:2週間程度
- 分析および結果レポートの作成:1~2週間
- レポートの検証結果次第では追加調査・分析・レポート作成:1~2週間
デューデリジェンスの種類
実際のデューデリジェンスでは、多角的な観点から売却側企業を分析します。M&Aの状況に応じて、実施するデューデリジェンスは異なりますが、ここでは、実施される可能性のある11種類のデューデリジェンスの内容を確認しましょう。
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 税務デューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
- 人事デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
- 環境デューデリジェンス
- 知的財産デューデリジェンス
- 顧客デューデリジェンス
- 不動産デューデリジェンス
- 技術デューデリジェンス
①財務デューデリジェンス
企業の経営基盤は財務です。当然のことながら、M&Aでの売却側企業の財務状況について、徹底的なデューデリジェンスが行われます。それが財務デューデリジェンスです。
売却側企業が上場会社ではない中小企業であると、経理処理の仕方がアバウトであるケースも多々あります。意図的ではないにしても、誤った経理処理がなされているかもしれません。したがって、財務デューデリジェンスは最も注力されます。
貸借対照表は全て一から洗い直されますし、特に負債の部については、債務の内容や金額は厳正なチェック対象です。キャッシュフローの分析も当然、実行されますが、売上の入金タイミングなどは、事業特性があります。
どんな事業でも全く同じキャッシュフローというようにはなりませんから、これはデューデリジェンスする側も、該当する事業の特質を把握しなくてはならず、専門性が問われる場面とも言えるでしょう。
いずれにしても、財務デューデリジェンスが行われないことはあり得ないので、売却側企業では相応の準備が必要となります。
②法務デューデリジェンス
M&Aでは、法務に関するデューデリジェンスも欠かせません。その内容は売却側企業に対し、「契約や取引行為に違反はないか」、「訴訟はないか」、「事業の許認可は適正か」などについて法律の観点から調査を行うものです。
仮に、売却側企業に何らかの違法行為が認められたなら、それは即刻、ディール・ブレイカーとなります。また、訴訟については、現在係争中のものがないとしても、潜在的な訴訟リスクがないかどうかまで検証されるものです。
そのほか、売却側企業が保持している権利関係の正当性の判別なども、法務デューデリジェンスとして行われるでしょう。
③税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスとは、売却側企業において法人税をはじめとする納税が適正になされているかや、仮に合併を行った際に、売却側企業が持つ繰越欠損金に特例が適用されるかどうかの判断など、あらゆる税務調査のことです。
また、M&Aでの税務デューデリジェンスでは、M&A実行後の買収側企業における税務のシミュレーションも行われます。
M&Aの現場では、財務デューデリジェンスや法務デューデリジェンスのほうが重要度は高いとも言われますが、重加算税のリスクを排除するなどといった役割もあり、税務デューデリジェンスも必要なデューデリジェンスの1つであることに変わりはありません。
④ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスは、上述した3つのデューデリジェンスとは異なり、売却側企業内部の調査を行うのではなく、売却側企業が行っている事業の市場動向など、売却側企業の外部環境を調査するものです。
具体的には、売却側企業が行っている事業の市場そのものの先行きも調査しますが、その業界内において売却側企業がどのような立ち位置にあるかの確認などを行い、売却側企業の評価を導きます。
⑤人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスは、売却側業内における人事・労務や人材に関する調査を行うものです。M&Aのような経営統合や組織再編は人材流出のリスクが伴います。しかし、買収側は組織や人員も含めた投資としてM&Aを実行するのです。
それなのに、M&A後、退職者が続出したり、特に事業のキーマンとなる人材の流出があっては元も子もありません。そこで、特に念入りにM&A後の人材確保の可否について調査が行われます。
また、人事デューデリジェンスでは、上記以外にもM&A実施後に増えることになる人件費や社会保険費用、将来の退職金費用の算定なども調査内容です。
⑥ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスのITとは、information technologyのことです。この情報技術の発達は、企業の仕事の現場でさまざまな恩恵をもたらしています。
ただし、このITも一般的で普遍的な内容のものから、各企業ごとに自社内で特化した専用の管理システムなど幅広くなっているのが現状です。つまり、M&Aによって経営統合となった場合には、管理システムは一元化されねばなりません。
そこで、ITデューデリジェンスでは、ITが関連する売却側企業の管理システムなどを調査し、合併に際してどのように買収側企業の管理システムに統合するかを査定していくものになります。
また、ITデューデリジェンスは、合併によって一元化される管理システムが、当初の業務にどのような影響をもたらすかという面についても検証し、合併後の業務フロー決定への指針を提示する役目もあるのです。
⑦環境デューデリジェンス
昨今、日本国内だけでなく全世界的に、国をあげての環境対策が叫ばれるようになりました。環境対策を行っているかどうか、各企業に向けられる世間の目も厳しいものがあります。
このような社会情勢の下、行われるようになったのが、環境デューデリジェンスです。この環境デューデリジェンスの内容は、売却側企業が環境対策を行っているか、環境汚染に加担していないか、関連法令を順守しているかなどになります。
仮に何らかの環境汚染に関係してしまっている場合、その対策コストは膨大な金額になりかねません。これはディール・ブレイカーとさえ、なり得ます。したがって、近年、環境デューデリジェンスが取り入れられるケースが増えてきました。
⑧知的財産デューデリジェンス
売却側企業が特許権や著作権などの知的財産を所有していた場合、それは有望な資産であり、今後の事業展開をも左右する可能性があります。したがって、M&Aの現場では、そのような知的財産の実際の価値を判定しなければなりません。
それが、知的財産デューデリジェンスの役割です。現実に、特許権や著作権は取得、所有すること自体は難しいことではありません。肝心なのは、その知的財産が消費需要のある実用化や商品化のできる道筋があるものかということです。
したがって、知的財産デューデリジェンスの重要性も昨今、増してきていますが、これを行うには、相当の専門知識や経験を有した担当者がいないと判断ができません。
⑨顧客デューデリジェンス
顧客デューデリジェンスは、別称でカスタマーデューデリジェンスとも呼ばれています。売却側企業の該当事業における既存顧客や予想される新規顧客の身元確認などの調査を行うデューデリジェンスです。
その意図は、調査対象となる顧客がマネーロンダリングを行う可能性はないかを探ることにあります。主として、金融事業が関連するM&Aで行われるデューデリジェンスです。
⑩不動産デューデリジェンス
不動産の分析と調査を行うのが不動産デューデリジェンスです。M&Aにおける売却側企業の所有する不動産の調査だけでなく、不動産売買取引における不動産の査定の場合も不動産デューデリジェンスは行われます。
別称としては、不動産鑑定業務ということになり、この不動産デューデリジェンスについては、専門家である不動産鑑定士がその任を担うのが通常です。
⑪技術デューデリジェンス
技術デューデリジェンスでいうところの「技術」とは、ハードウェアに関する技術を意味しています。
ソフトウェアである知的財産と同様に、売却側企業が持つ特殊技術や制作工程と、所有している専門的で特殊性の高い機械設備類を調査するのが技術デューデリジェンスです。
売却側企業が、特殊技術を必須とする事業を行っている場合には、避けては通れないデューデリジェンスになります。
デューデリジェンスの進め方・手続きの流れ
ここでは、一般的なデューデリジェンスのプロセスの概要を説明します。
- 方針の決定
- 基本情報のチェック
- キックオフミーティングの開催
- 相手先に求める資料リストの作成
- 開示資料の整理・チェック
- 経営者へのインタビュー
- 最終報告・ディスカッション
- 結果をもとにM&A実施を検討
①方針の決定
まず、デューデリジェンスの実施概要を決める必要があります。具体的には以下のとおりです。
- 実施するデューデリジェンスの種類
- デューデリジェンスの実施期間
- デューデリジェンスを依頼する外部専門家の確認
- デューデリジェンス費用の予算決め
デューデリジェンスの取り仕切りはM&A仲介会社に任せられますが、起用する専門家の費用も含め、M&A仲介業務とは異なるため、別予算となります。そのため、方針決定時にコストの見積もりも欠かせません。
②基本情報のチェック
売却側企業との秘密保持契約後、一定の情報開示は受けているはずです。ここでは、現段階で提供されている情報・資料の確認を行います。確認する情報・資料例は、以下のとおりです。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
- 試算表
- 決算書
- 確定申告書
- 事業計画書
- 登記簿謄本
- 株主名簿
- 従業員名簿
- 事業内容説明書
- 取引先リスト
- 顧客リスト
- 契約書一式
③キックオフミーティングの開催
デューデリジェンスを委託する外部専門家を交えて、キックオフミーティングを開きます。実施するデューデリジェンスの種類ごとに個別開催するのが一般的ですが、認識の統一を図るため全体ミーティング形式を行うケースもあり、特に決まりはありません。
キックオフミーティングでは、M&A案件の内容、デューデリジェンスの方針、現在、開示されている情報・資料などを専門家に伝達します。
④相手先に求める資料リストの作成
デューデリジェンス実施にあたって、現在、提供されている売却側企業の情報・資料では足りないものを専門家にリストアップさせます。そのリストを売却側企業に提示し、期日を定めて提出してもらいましょう。
⑤開示資料の整理・チェック
追加請求したものも含め、開示されている売却側企業の情報・資料の内容を確認・チェックします。たとえば、以下のような内容です。
- 決算書・確定申告書は1期分だけでなく直近3期分そろっているか
- 事業計画書は1期分の計画書だけでなく中期計画書(3期程度)もあるか
- 従業員名簿はスキルや役割、主な経歴なども記載されているか
- 事業のキーとなる人物の場合は、さらに詳細な情報が用意されているか
⑥経営者へのインタビュー
デューデリジェンスで必ず行われるのは、経営者に対するヒアリングです。スムーズにヒアリングを行うため、事前にQ&Aシートを用いてポイントを明確化し、ヒアリングが短時間ですむようにするケースもあります。
また、デューデリジェンスの種類によっては、役員や幹部社員に対してのヒアリングが行われる場合もあり、売却側は対応しなくてはなりません。この場合、M&Aを進めていることが外部に漏えいしないよう、役員や幹部社員に理解させておきましょう。
⑦最終報告・ディスカッション
外部専門家は、情報・資料・インタビューの調査・分析結果をレポートにまとめます。レポート完成時に、その内容説明を行うのが最終報告の場です。レポートに沿って分析結果やリスクの有無・内容説明が行われ、ディスカッションします。
⑧結果をもとにM&A実施を検討
買収側としては、デューデリジェンス結果を踏まえてM&Aの最終判断を行います。最終判断は、以下のいずれかです。
- 問題がなかったので基本合意書の内容で最終契約を締結する
- 問題点が発覚したため、そのリスクを差し引いた買収価額での最終交渉を行う
- 大きな問題点が明るみになったためM&Aを中止する
デューデリジェンスに必要な費用・会計処理
ここでは、デューデリジェンスに要する費用と、その会計処理について確認します。
費用の相場・目安
何種類のデューデリジェンスを行うかによって費用が異なりますので、一概に相場は示せません。最もコンパクトなケースとして、中小企業を対象に財務・税務・法務デューデリジェンスを実施するとして、数十万~数百万円程度とされています。
海外の巨大企業などが対象のM&Aでは、デューデリジェンス費用が数千万円だったケースもありますが、一般的な例ではありません。
必要とされる会計処理
デューデリジェンス費用は、個別財務諸表と連結財務諸表で会計処理が異なるため注意が必要です。まず、個別財務諸表では、デューデリジェンス費用を取得価額として計上します。デューデリジェンス費用が取得価額に上乗せされるということです。
一方、連結財務諸表では、費用として一括処理です。2014(平成26)年の企業結合会計基準の改正により、個別財務諸表と連結財務諸表とで会計処理が異なるようになりました。
デューデリジェンスを実施する際の注意点
デューデリジェンスの場面における注意点を、売却側・買収側それぞれの観点でまとめました。
売却側の注意点
デューデリジェンスにおける売却側の注意点は以下のとおりです。
- 想定されるリスクを事前に伝えておく
- インタビューに協力する姿勢を取る
- 契約を開示する際は個人情報に注意する
①想定されるリスクを事前に伝えておく
不利な情報を隠したとしても、おそらくデューデリジェンスで発見されてしまうでしょう。したがって、買収側にとってリスクとなるような事象は、事前に開示しておくべきです。そうすることで誠実さが認められ、円滑な交渉につながるでしょう。
②インタビューに協力する姿勢を取る
専門家からのインタビュー・ヒアリングは、会社の内情を根掘り葉掘り聞かれるような印象を持つケースもあるため、経営者によっては気分を害するかもしれません。
しかし、それはデューデリジェンスとして当然のことであり、デューデリジェンス後の最終交渉を考えれば、誠意を持って協力することが肝要です。
③契約を開示する際は個人情報に注意する
デューデリジェンスでは、外部との契約書や取引先・顧客リストなども開示します。その際は、どうしても個人情報を明かすことが意味を持つ場合を除き、個人情報部分は黒塗りするなどして開示するとよいでしょう。
個人情報の取り扱いの重要さは買収側も理解していますので、納得してくれるはずです。
買収側の注意点
デューデリジェンスにおける買収側の注意点は以下のとおりです。
- 取引規模・予算に応じて優先順位を付ける
- 事前にチェックリストを作成しておく
- 相手側から得た情報の取扱いに注意する
①取引規模・予算に応じて優先順位を付ける
M&Aの規模に応じて、実施するデューデリジェンスの内容に優先順位を付け、予算に適応したデューデリジェンスを実施しましょう。
具体例としては、中小企業対象のM&Aで予定買収価額が数千万円程度の場合に、1千万円を超えるようなデューデリジェンスの実施は適切とはいえません。一概には言い切れませんが、この場合、300万円程度が適切でしょう。
②事前にチェックリストを作成しておく
M&Aアドバイザーに相談し、デューデリジェンスを実施する前にチェックリストを用意しておくとよいでしょう。M&A仲介会社によっては、デューデリジェンスのチェックリストのひな形を提供してくれるかもしれません。大いに活用しましょう。
③相手側から得た情報の取扱いに注意する
M&A交渉を進めるにあたっては、秘密保持契約を締結します。これは形式的なものではなく、契約書に記されているとおり、お互いに相手側から得た機密情報を外部にもらすようなことがあってはなりません。
仮に機密情報の漏えいがあった場合、M&Aが破談になるだけでなく、相手側から損害賠償請求されるかもしれません。売却側の機密情報の取り扱いには絶対的に注意が必要です。
デューデリジェンスでの専門家の必要性
上述してきましたようにデューデリジェンスはさまざまな観点から行われるため、その種類も多彩になります。買収側の社内において、それら全てのジャンルに精通しているような人材を用意するのは困難なことです。
したがって、デューデリジェンスでは、それぞれの分野の専門家に一任するのがほとんどと言っていいでしょう。しかも、その人選は、ただの専門家ではなくM&Aについての知識も持ち合わせた専門家でなくてはいけません。
ただし、専門家の人選にこだわったとしても、全くの丸投げのような姿勢では、デューデリジェンス後の最終決定の雲行きも怪しくなります。経営陣としては、経営戦略の意向が正しく専門家に伝わっているかどうか意思疎通に留意しましょう。
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M&Aのデューデリジェンスまとめ
デューデリジェンスは、M&Aにおいても投資の場でも、成否を占う重要なプロセスです。デューデリジェンスが適正に実施されなければ、それは誤った経営判断の引き金になってしまいます。
デューデリジェンスを任せられる信用のおける専門家を任ずるためにも、経営者としてはデューデリジェンス、そしてM&Aの見識を広げておきましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。