2022年7月4日更新会社・事業を売る

事業譲渡・事業売却の戦略策定方法まとめ!成功・失敗ポイントは?【事例あり】

事業譲渡・事業売却を成功させるには、戦略策定が必要不可欠です。戦略策定には多くの時間がかかるものの、得られるメリットを最大化できます。本記事では、事業譲渡・事業売却における戦略の成功・失敗ポイントやメリット・デメリットを解説します。

目次
  1. 事業譲渡・事業売却とは
  2. 事業譲渡・事業売却の戦略策定とは
  3. 事業譲渡・事業売却の戦略策定方法
  4. 事業譲渡・事業売却を戦略的に実施する流れ
  5. 事業譲渡・事業売却の戦略を策定する際の注意点
  6. 事業譲渡・事業売却の戦略を作成する際の参考事例
  7. 事業譲渡・事業売却の戦略に関する相談先
  8. 事業譲渡・事業売却の戦略策定方法まとめ
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事業譲渡・事業売却とは

事業譲渡・事業売却とは

M&Aスキームのひとつとして知られている事業譲渡・事業売却は、事業縮小につながるイメージを持っている方も少なくありません。実際に、事業譲渡は、事業の譲渡・売却を意味する行為であり、会社を廃業する前に行われるケースも存在します。

しかし、事業譲渡・事業売却は成長戦略にも利用でき、売却利益の最大化や事業規模の拡大などの目的を明確にしたうえで戦略的に実施すれば、企業を大きく成長させることも可能です。

事業譲渡と事業売却の違い

事業譲渡・事業売却とは、事業の全部あるいは一部を切り離して、他者に譲渡・売却するスキームです。譲渡対象は事業であり、会社の経営権は移転されない点に特徴があります。なお、事業譲渡と事業売却の間では言葉の意味やもたらす効果などに違いはなく、両者とも事業と引き換えに対価を得るものです。

株式譲渡・株式売却との違い

株式譲渡・株式売却とは、保有株式を譲渡・売却することで会社の経営権を他者に移転させるスキームです。株式会社は、議決権の1/2以上を保有することで、事実上経営権を取得できます。事業譲渡・事業売却と株式譲渡・株式売却の大きな違いは、譲渡範囲と売却益の取得者です。

  事業譲渡・事業売却 株式譲渡・株式売却
会社の経営権 移転しない 移転する(1/2を超える場合)
譲渡・売却範囲 事業・資産の一部 株式
売却益の取得者 会社 経営者(株主)
手続き内容 煩雑 比較的簡便

営業譲渡との違い

営業譲渡とは、旧会社法で使われていた事業譲渡の呼称です。2006年の会社法施行によって、営業譲渡から事業譲渡の呼称に改められました。営業譲渡という名称でも意味が通じるため、現在でも使われることがありますが、会社法上では事業譲渡と記載されており、正式な書類を取り交わす際は事業譲渡で統一されます。

会社分割・合併との違い

会社分割とは、1つの法人格を2つ以上の法人格に分割させるスキームです。会社分割は、既存会社に引き継ぐ「吸収分割」と、新設会社に引き継ぐ「新設分割」の2種類に分けられます。

また、合併とは、2つ以上の法人格を1つの法人格に統合させるスキームです。既存会社に統合する「吸収合併」と、新設会社に統合する「新設合併」の2種類に分けられます。事業譲渡・事業売却との違いは、取得対価の支払い有無や、債権・債務の移転時に所有者が同意する必要性の有無などです。

  事業譲渡・事業売却 会社分割・合併
対価の支払い 現金 現金・株式
従業員の同意 必要 不要(業種次第では許認可が必要)
債権・債務の継承同意 必要 不要(通知・公告は必要)

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事業譲渡・事業売却の戦略策定とは

事業譲渡・事業売却の戦略策定とは

事業譲渡および事業売却の戦略策定とは、これらを実施する目的や方向性を決めて、期待する結果と現状のギャップを埋めることを目的に策定される計画のことです。

戦略を策定する際は、自社・競合・業界の現状を分析しつつ、事業譲渡・事業売却を行う目的を定めます。そのうえで、自社が得られるメリットを最大化しつつ、実現可能性が高まるような戦略を絞り込んでいくことが大切です。

事業譲渡・事業売却の戦略を策定する必要性

事業譲渡・事業売却の戦略を策定する目的は、期待されるメリットを最大化することにあります。そもそも事業譲渡・事業売却は、他のM&A手法と比べて多くの手間と時間がかかります。そのため、戦略を策定し、手間・時間を削減することで、得られるメリットを最大化できます。

また、事業譲渡・事業売却にはさまざまなメリットがある一方で、リスクもあります。仮に戦略に失敗すると、事業譲渡・事業売却の成立までに多くの時間がかかったり、相場より安い金額での取引を強いられたりするおそれがあります。

したがって、戦略を策定する際は、M&Aの専門家に相談し、リスクを抑えることが大切です。専門家のサポートのもとで戦略を策定すれば、「譲渡資金を十分に得られる」「手続きにかかる手間や時間を短縮できる」「経営陣・従業員の不安・不満を減らせる」などのメリットが期待できます。

事業譲渡・事業売却の現状と課題

企業が抱える経営課題の解決を目的とする事業譲渡・事業売却は活発化しており、その背景には後継者不在や経営不振など企業が抱える経営課題があります。これらの問題を根本から解決できる手法としてM&Aの認知度が上がり、世間の関心も高まり続けています。しかし、事業譲渡・事業売却には課題があることも事実です。

事業譲渡・事業売却の大きな妨げとなっている要素は、その不透明さにあると考えられます。事業譲渡・事業売却の名称のみが先行し、どのような戦略でいかなる効果が得られるのかは、以前として認知されていません。

事業譲渡・事業売却は、基本知識を把握していたとしても、必ず成功するわけではありません。課題や問題点を踏まえたうえで戦略的に実施しなければ、失敗に終わってしまう可能性が高いです。

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事業譲渡・事業売却の戦略策定方法

事業譲渡・事業売却の戦略策定方法

事業譲渡・事業売却で得られるメリットを最大化するには、戦略策定が不可欠です。正しい手順で効果的な戦略を実施することで、目的達成率を大幅に高められます。

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント

事業譲渡・事業売却の戦略における成功・失敗のポイントには、以下のようなものが挙げられます。

  1. 譲渡/売却時期・タイミングを逃さない
  2. 事業譲渡・事業売却に関する意思・条件を決める
  3. 事業の状況や強み・弱み、将来性などを資料にする
  4. 広く限定せずに買い手候補探す
  5. 譲渡/売却価格や条件を柔軟に対応する
  6. 別の手法がないか検討する
  7. 財務・会計の視点も含めてチェックする
  8. 専門家に相談する

①譲渡・売却時期・タイミングを逃さない

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント1つ目は、譲渡・売却するタイミングを逃さないことです。会社や事業の価値は日々変化していくため、タイミングの見極めは重要なポイントです。

経営状態が赤字の場合、まともな売却額が付かないのではないかという不安もあると思いますが、譲渡・売却タイミングは経営状態のみが全てではありません。特に左右される要素は業界動向であり、業界全体で再編の動きが活発であれば、該当事業の技術・人材の需要が高まっていることがわかります。

需要の高まりは自社事業の評価を向上させることにつながるため、絶好の譲渡・売却タイミングだといえます。

②事業譲渡・事業売却に関する意思・条件を決める

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント2つ目は、事業譲渡・事業売却に関する意思・条件を決めることです。目的の明確化は、戦略を策定するうえで最も重要です。

売り手の場合、事業譲渡・事業売却で定める主な目的は「不採算事業を清算して残存事業へのリソース集中」や「売却益を活用した新事業の展開など」です。不採算事業を清算することに重きを置くならば、売却益にこだらずに、早期に処理してしまうことを優先するのも手段のひとつです。

しかし、売却益を活用した事業展開を想定しているならば、一定以上の売却額が求められます。新たな事業に必要とされる人材・資金などを把握したうえで、売却額の最低ラインを設けるなどの戦略が必要です。

③事業の状況や強み・弱み、将来性などを資料にする

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント3つ目は、事業の状況や強み・弱み、将来性などを資料にすることです。事業の状況を資料としてまとめておくと、さまざまな面で役立ちます。

交渉に提案する売却額は企業価値評価を用いて算出し、財務状況に特許や技術・ノウハウなどの無形資産を加味したうえで適正に行います。その際に事業状況をまとめた資料があると、円滑に進めることが可能です。

また、この資料は、買い手に対して事業の強みをアピールする際にも活用できます。具体的な情報を提出することで、売却額に対する納得感を演出することも可能です。

④広く限定せずに買い手候補探す

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント4つ目は、広い候補先から買い手を探すことです。理想とする取引相手を見つけるためには、多くの企業に向けてアピールする必要があります。

買い手に求める条件を定めることも大切ですが、最初から絞り込みすぎると、良い条件を提示してくれる企業を見過ごしてしまう可能性があります。M&A仲介会社・金融機関・士業事務所などの専門家が独自に保有するネットワークを頼り、広い候補先からピックアップしてから厳選していくのが効率的です。

⑤譲渡・売却価格や条件を柔軟に対応する

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント5つ目は、譲渡・売却価格や条件を柔軟に対応することです。買い手との交渉では、ときには譲歩することも必要です。断固として拒否という姿勢は、事業譲渡・事業売却のチャンスを逃してしまいかねません。

しかし、事業譲渡・事業売却は、対等な立場で行われるものです。双方に利益をもたらすものですから、必要以上に下手に出る必要はありません。この辺りのさじ加減は難しいものの、仲介会社に任せるとスムーズに進むことが多いです。

⑥別の手法がないか検討する

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント6つ目は、別の手法がないか検討することです。M&Aには株式譲渡や合併などの手法が存在し、それぞれに特徴があるため、自社の状況や条件に合わせたM&A手法を選択することが重要です。

そのうえで事業譲渡・事業売却が最適という答えにたどり着いたとしても、検討したことが無駄になることはありません。事業譲渡・事業売却やその他の手法のメリット・デメリットを知ることは、成功率を高めることに直結します。

⑦財務・会計の視点も含めてチェックする

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント7つ目は、財務・会計の視点も含めてチェックすることです。事業譲渡・事業売却では、売却側に法人税、譲受側に消費税が課されますが、それ以外に不動産取得税・登録免許税などが譲受側に課されるケースもあります。

こうした税金の支払いは、譲渡企業・譲受企業の双方にとって大きな負担となり得るので、事業譲渡・事業売却の交渉をスムーズに進行させるためにも、税金の額の目安を事前に把握しておくとよいでしょう。

もし税務や法務などに不安を感じるのであれば、専門家のサポートを得ることをおすすめします。

⑧専門家に相談する

事業譲渡・事業売却の成功・失敗のポイント8つ目は、専門家に相談することです。ここまで紹介したポイントは自分で実践できることもあるものの、事業譲渡・事業売却を進める手続きや交渉では、専門的な知識を要するものも多いです。

確実に実行していくためにも、M&Aに関する知識を備えた専門家に相談することを強くおすすめします。

事業譲渡・事業売却のメリット・デメリット

事業譲渡・事業売却の戦略策定を行ううえでは、その特徴を把握しておくことが大切です。ここでは、メリット・デメリットをそれぞれ紹介します。

メリット

事業譲渡・事業売却の主なメリットは、譲渡・売却対象を自由に選べることです。不採算事業の処分や獲得売却益の残存事業への投資など、選択肢が多い点は大きなメリットです。

  1. 会社の経営権が移転しない
  2. 譲渡・売却範囲を任意に選べる
  3. 不採算事業を清算できる
  4. 特定事業に集中できる
  5. 会社に売却益が入る

デメリット

事業譲渡・事業売却の主なデメリットは、手続きが煩雑であることです。譲渡・売却する事業1つ1つに対して手続きを取る必要があるため、手間と時間がかかってしまいます。

売却後は、同一事業を手掛けることを一定期間制限されるという、競業避止義務が課せられるデメリットも存在します。

この義務が生じる理由は、売り手が売却事業の技術・ノウハウを活用して競合行為を行うと、買い手が想定している買収効果を発揮できない可能性が生まれるためです。

  1. 手続きが煩雑
  2. 売却益に対して法人税が発生する
  3. 売却益の取得者は経営者ではなく会社
  4. 競業避止義務が課される

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事業譲渡・事業売却を戦略的に実施する流れ

事業譲渡・事業売却を戦略的に実施する流れ

この章では、事業譲渡・事業売却の流れを解説します。それぞれの工程で何が行われるか、詳しく取り上げます。

  1. 専門家に相談する
  2. 秘密保持契約を締結
  3. 買い手の選定・交渉
  4. 基本合意書の締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終譲渡契約の締結
  7. クロージング

①専門家に相談する

事業譲渡・事業売却の流れ1つ目は、専門家に相談することです。事業譲渡・事業売却を円滑に進めるためには専門家のサポートを受けるのがベストであるため、専門家への相談から始めます。事業譲渡・事業売却の相談先には、地元の金融機関・公的機関・M&A仲介会社があります。

地元の金融機関

金融機関は、事業譲渡・事業売却で「融資」と「M&Aアドバイザリー」の役割を果たします。地域密着型の地方銀行は地域の企業の内情も把握しており、独自のネットワークを保有しています。取引先の選定でも大きなアドバンテージを得ることが可能です。

地元の公的機関

地元の公的機関には、「事業承継ネットワーク」や「事業承継・引継ぎ支援センター」などが挙げられます。これらは政府と地方自治体との連携によって設立され、中小企業の経営相談を受け付けている公的機関です。

公的機関であるため秘密情報の扱いに関して安心できますが、あくまでもサポートの中心は相談対応のみである点には要注意です。事業譲渡・事業売却の一貫したサポートを希望する場合は、他の相談先を探す必要があります。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&A・事業譲渡・事業売却の仲介を専門的に請け負っている仲介会社です。各士業の専門家が在籍もしくはこれらの専門家と提携している仲介会社が多く、相談から成約までの一貫したサポートを実現している点に特徴があります。

過去の相談・仲介実績で培ったノウハウにより適格なアドバイスを行える仲介会社は、事業譲渡・事業売却の戦略を策定するうえで頼れる存在です。

②秘密保持契約を締結

事業譲渡・事業売却の流れ2つ目は、秘密保持契約を締結です。秘密保持契約とは、取引上で知り得た情報を第三者に開示しないことを誓約する契約書のことです。

事業譲渡・事業売却の交渉を進めるうえで、取引先に対して自社の情報を提供するタイミングが訪れます。それらの情報には、自社の事業の根幹をなす技術やノウハウが含まれることも珍しくありません。

万が一、機密情報が外部に漏洩することになったら、自社にもたらす被害は計り知れません。この事態を避けるために初期段階から秘密保持契約を締結し、秘密情報の安全確保に努めるのです。

秘密保持契約書を作成する際は経済産業省の雛形を利用する方法もありますが、基本的には相談した専門家の指示を仰ぐことをおすすめします。自社の状況を理解している専門家の方が、より適切な書類を作成できるためです。

【関連】秘密保持契約書(NDA)とは?書き方や有効期限、ひな形をご紹介| M&A・事業承継の理解を深める

③買い手の選定・交渉

事業譲渡・事業売却の流れ3つ目は、買い手の選定・交渉です。事業譲渡・事業売却の目的や希望売却額などの戦略策定を行ったうえで、買い手選定に移ります。選定で重要となるのはネットワークです。事業譲渡・事業売却の成否は相談先が保有するネットワークに大きく影響するといっても過言ではありません。

M&A仲介会社であれば、過去の仲介や相談をもとにネットワークを築いています。選定が終わると、仲介会社を通して交渉が始まります。より詳細な情報を提供することで、両者の条件や希望価格のすり合わせを進め、問題がなければトップ面談に移行する流れです。

意向表明書の提示

意向表明書とは、譲受側が譲渡側に対して譲り受けの意向を示す書面のことです。意向表明書の提出は義務づけられておらず、省略されることもありますが、譲受側の意向を明確に示すことで以降の交渉を円滑にする働きを持ちます。

意向表明書の主な記載内容は、以下のとおりです。ただし、あくまでも譲受側の意思を示すものなので、法的拘束力は持ちません。

  • 取引形態
  • 譲受価格
  • デューデリジェンスに関する取り決め
  • スケジュール

④基本合意書の締結

事業譲渡・事業売却の流れ4つ目は、基本合意書の締結です。基本合意書とは、現段階の交渉内容に関して双方が納得していることを示すための契約書です。事業譲渡・事業売却の本契約に先立って取り交わす書類であり、契約の詳細内容を記載して双方が確認します。秘密保持義務などを除き、法的拘束力を持ちません。

基本合意書の主な記載内容は、以下のとおりです。

  • 取引形態
  • 譲受価格
  • デューデリジェンスに関する取り決め
  • スケジュール
  • 独占交渉権の付与
  • 秘密保持義務

【関連】M&Aで基本合意書を締結する目的| M&A・事業承継の理解を深める

⑤デューデリジェンスの実施

事業譲渡・事業売却の流れ5つ目は、デューデリジェンスの実施です。デューデリジェンスとは、譲渡対象の価値・リスクを調査する活動です。譲受側が派遣する専門家によって実施します。

現在の譲受価格が適正かどうか測るのと同時に、買い手にとって価格交渉の材料を探す目的で実施されます。売却側では、買い手側から調査に必要な資料を請求されることもあるため、柔軟に対応できるよう準備しておく必要があります。

⑥最終譲渡契約の締結

事業譲渡・事業売却の流れ6つ目は、最終譲渡契約の締結です。デューデリジェンスが完了したら、基本合意書にデューデリジェンスの内容を落とし込んで、最終譲渡契約を締結します。

最終的な契約書であるため、全ての事項が法的拘束力を持ちます。契約後に一方的に破棄すると、破棄された側に賠償請求する権利が発生するため、全ての事項を理解しておく必要があります。不安・不明な事項がある場合は、相談先の専門家から説明してもらい、明確に把握しておきましょう。

最終譲渡契約書の主な記載内容は、以下のとおりです。

  • 取引形態
  • 譲受価格
  • 譲渡対象の引き渡し
  • スケジュール
  • クロージング前提条件
  • 表明および保証

⑦クロージング

事業譲渡・事業売却の流れ7つ目は、クロージングです。譲渡対象の引き渡しと取得対価の支払いをもって、事業譲渡・事業売却の契約が完了します。

事業譲渡・事業売却の場合は、移転する資産や権利義務に関して個別に手続きを取る必要があるため、最終譲渡契約書の締結日からクロージング日までの期間に時差が生じやすい特徴があります。

事業譲渡・事業売却の主なクロージング手続きは、以下のとおりです。

  • 資産や権利義務の移転
  • 従業員の移転
  • 財産登記

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事業譲渡・事業売却の戦略を策定する際の注意点

事業譲渡・事業売却の戦略を策定する際の注意点

最大の注意点は、「焦って戦略策定を行わない」ことです。戦略策定は非常に重要であるものの、焦ってしまうと正確な判断が難しくなります。

例えば、自社にとってふさわしい相手先企業を探すことに注力するあまり、税金の支払いや手続き面のリスクを意識できず、結果的に大きな損失を被ってしまった事例は少なからず報告されています。

事業譲渡は単純に手続きを済ませればよいのではなく、節税対策や手続き面のトラブルを未然に防ぐなど、さまざまな要素を検討したうえで、戦略に盛り込んでおかなければなりません。

また、焦らずに戦略を策定すれば、これまで気付いていなかった情報や発想を活用できる可能性もあるので、事業譲渡を行うべきかどうかを含めて、細かく検討することが望ましいでしょう。この際は、なるべく専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

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事業譲渡・事業売却の戦略を作成する際の参考事例

事業譲渡・事業売却の戦略を作成する際の参考事例

ここでは、実際に事業譲渡・事業売却が行われた事例を紹介します。どのような背景と目的をもとに実施されたの確認しておきましょう。

  1. 東芝のLNG事業の売却
  2. NTTの医療事業の売却
  3. 楽天のウエディング事業の売却
  4. サイバーエージェントの映像配信事業の売却
  5. ニチレイのアセロラ飲料事業の売却

①東芝のLNG事業の売却

東芝

東芝

出典:https://www.global.toshiba/jp/top.html

2019年6月1日、東芝は、LNG事業をフランスのトタルに譲渡することを発表しました。LNG事業は環境にやさしいエネルギーとして注目を集め、東芝は2013年よりLNG事業に参入しています。

当時は東日本大震災の影響から、原子力発電の代わりとして火力発電のLNG需要が高まりを見せていました。しかし、膨大な利益が見込める一方で、資源価格が乱高下する可能性もあるとして、LNG事業を手放すことを決定しています。

そして、中国のガス会社との破談を経て、フランスのエネルギー大手トタルとの譲渡・売却契約にこぎつけました。本件M&Aにより、最大1兆円が見込まれていた損失を、約930億円に抑えられると考えられています。

譲渡企業 東芝
譲受企業 トタル
譲渡価格 8億1,500万ドル

②NTTの医療事業の売却

NTT

NTT

出典:https://group.ntt/jp/

2019年4月1日、NTTは、西日本大阪病院を医療法人警和会へ事業譲渡することを発表しました。西日本大阪病院は、1942年2月10日に大阪逓信病院として設立されました。1999年には現在の西日本大阪病院に変更し、現在まで続いている長い歴史のある病院です。

大規模病院同士の事業譲渡で大きな話題となりましたが、患者の引継ぎも円滑に行われて、現在地のまま事業を続けています。今回の事業譲渡の目的は、「従前からの連携関係にある警和会に事業譲渡し、地域医療の貢献を果たすこと」にあると考えられています。

譲渡企業 NTT
譲受企業 警和会
譲渡価格 非公表

③楽天のウエディング事業の売却

楽天グループ

楽天グループ

出典:https://corp.rakuten.co.jp/

2018年4月1日、楽天(現:楽天グループ)は、ウエディング事業「楽天ウエディング」を子会社のオーネットに事業譲渡することを発表しました。楽天ウェディングは、披露宴会場や結婚指輪を探す情報サービスサイトです。多結婚式の準備に関する情報なども取りまとめており、多くのユーザに利用されていました。

結婚情報サービス事業を手掛けているオーネットは、楽天ウエディングを取り込むことで、さらなる事業領域の拡大を図っています。

譲渡企業 楽天
譲受企業 オーネット
譲渡価格 非公表

④サイバーエージェントの映像配信事業の売却

サイバーエージェント

サイバーエージェント

出典:https://www.cyberagent.co.jp/

2016年4月1日、サイバーエージェントは、映像配信事業「AmebaFRESH!」をAbemaTVに売却しました。AmebaFRESH!は、さまざまなジャンルを手掛ける生放送コンテンツで、高品質な映像と画質を楽しめる映像配信プラットフォームとして好評を得ていました。

AbemaTVが運営する「AbemaTV」との連携強化によって、シナジー効果の創出が期待できるとしています。今後は「AbemaTV FRESH!」に名称を変更し、ブランド統一を図ると発表しました。

譲渡企業 サイバーエージェント
譲受企業 AbemaTV
譲渡価格 非公表

⑤ニチレイのアセロラ飲料事業の売却

ニチレイ

ニチレイ

出典:https://www.nichirei.co.jp/

2009年7月28日、ニチレイは、アセロラ飲料事業をサントリーに売却することを発表しました。もともと飲料事業は、大手量販店やコンビニエンスストアの販売比率が高く、多くの経営資源の投入を必要とします。

ニチレイが手掛けている飲料事業は、アセロラ単品で採算が取れていませんでした。競争が激化する飲料事業において、これ以上の展開は難しいと判断し、サントリーへの事業譲渡を決断しています。事業譲渡されたアセロラは、2022年現在もサントリーよりニチレイアセロラドリンクとして販売されています。

譲渡企業 ニチレイ
譲受企業 サントリー
譲渡価格 非公表

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事業譲渡・事業売却の戦略に関する相談先

事業譲渡・事業売却の戦略に関する相談先

事業譲渡・事業売却は単純に相手先を見つけて、取引を行えば良いわけではありません。目的を明確にし、達成するために必要な戦略を策定したうえで、計画的に実施する必要があります。戦略性のある事業譲渡・事業売却を行うためにも、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。

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株式交付とは?株式交換との違いから手続き手順・メリット・デメリットを解説!

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株式交付は有効なM&Aの手法で企業の合併や買収の際に使用され、手続きが難しいので正しく把握しなければスムーズに取引を進めることはできません。 そこで本記事では株式交付を詳しく解説し...

兄弟会社とは?意味や関連会社・関係会社との違いを詳しく説明!

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本記事では、兄弟会社とは何か、その意味と構造、関連会社や関係会社との違いについて詳しく解説します。兄弟会社の役割、設立のメリットと課題、それぞれの会社タイプが持つ独自のポイントと相互の関係性につ...

法務デューデリジェンス(法務DD)とは?目的から手続きの流れまで徹底解説!

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M&Aは事業継続やシェア拡大の目的達成のために行われ、その取引を成功させるためにも法務デューデリジェンスは欠かすことができません。そこで本記事では法務デューデリジェンス(法務DD)を詳し...

トップ面談とは?M&Aにおける役割や進め方・成功のためのポイントも解説!

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トップ面談は、M&Aの条件交渉を始める前に行われる重要なプロセスです。当記事では、M&Aにおける役割や基本的な進め方を確認しながらトップ面談の具体的な内容と知識を解説します。トッ...

ディスクロージャーとは?M&Aにおける意味やメリット・デメリットまで解説!

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ディスクロージャーは、自社イメージの向上や株価の上昇を実現する目的として実施されることが多いです。 本記事では、そんなディスクロージャーの意味や種類、メリットとデメリット、実施のタイミングなど...

連結会計とは?連結財務諸表の作成方法から修正・おすすめ管理システムまで紹介!

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対象の財務諸表を連結修正を行って正しい金額(連結会計)に再計算をする必要があります。ここでは、そもそも連結会計とはどういうものなのか、連結決算には絶対必要な連結財務諸表の作成方法から連結修正の方...

【2024年最新】webメディア売却の事例25選!動向や相場も解説

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webメディアの売却・買収は、売買専門サイトの増加などの背景もあり年々活発化してきています。本記事では、webメディア売却の最新事例を25選紹介するとともに、売却・買収動向やメリット・デメリット...

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