M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年12月31日更新節税
会社分割と消費税の関係は?会社分割の課税・税務を解説
会社分割は、M&Aを含む組織再編行為の1つです。複数の実施方法が存在しますが、消費税は不課税です。この記事では、会社分割の分類を確認するとともに、類似する手法である事業譲渡と対比させながら消費税不課税の実態に迫ります。
会社分割とは
会社分割とは、会社の事業の一部(場合によっては全部)を別組織として切り分け、新しい会社として設立させたり、別の会社に承継させたりすることです。そして、経営学では、会社分割のような手法を組織再編行為と呼びます。
この会社分割を含む組織再編行為とは、M&Aの手法の1つに他なりません。M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略称ですから、組織再編行為とは専らその主力となる手法といえます。
そして、企業再編・事業分割の目的として用いられる会社分割には、消費税は不課税扱いであることも大きな特徴です。その理由を解明すべく、まずは会社分割の詳細を解説します。
会社分割の分類
ひとことで会社分割といっても、その内容に応じて大きく分けると、「分社型分割」と「分割型分割」と呼ばれる2種類があります。
さらに、その2つの会社分割は、新設分割の場合と吸収分割の場合に区分されるため、計4分類です。そ会社分割の分類である「分社型分割」と「分割型分割」を、順を追って解説します。
分社型分割(新設分割/吸収分割)
会社分割の1つの手法である分社型分割の特徴を端的にいえば、分割された事業を承継した会社の株式が事業を分割した会社に対価として交付されることです。このとき、分割された事業を承継した会社が新規設立された会社であるなら新設分割の分社型分割になります。
より具体的に言えば、事業を分割した会社が100%親会社となって、当該事業の子会社を設立するケースが該当します。分割された事業を承継した会社が新設ではなく既存の会社だった場合は、吸収分割の分社型分割です。
このケースでの対価は、事業を承継した会社から事業を分割した会社に株式が交付されます。この場合、状況次第では合わせて現金が支払われることもあります。
分割型分割(新設分割/吸収分割)
会社分割のもう1つの手法である分割型分割の特徴は、分割された事業を承継した会社の株式が事業を分割した会社の株主に対価として交付されることです。
その分割された事業を承継した会社が新たに設立された会社の場合は、新設分割の分割型分割に該当します。わかりやすく株主の視点から述べると、事業を切り分けることで会社を2分割させたと受け取ればよいです。
そして、分割された事業を承継した会社が既存の会社だった場合が、吸収分割の分割型分割に該当します。このケースでの対価は、事業を承継した会社の株式が事業を分割した会社の株主に交付されます。
つまり、事業を分割した会社の株主は、新たに事業を承継した会社の株主にもなったことを意味します。その対価が現金となる可能性はあるものの、実態としてはほとんどのケースで株式が選択されています。
会社分割と消費税
会社分割をはじめとするM&Aの実施時は、会社のリソースが他の会社に移転されます。リソースが移転され、そこに対価が発生するのであれば消費税が課税されると考えるのが通常です。
しかし、会社分割に限っていえば、不課税取引とされ消費税はかかりません。この会社分割が不課税取引とされる理由を明らかにするために、会社分割とよく似たM&A手法である事業譲渡を取り上げて比較します。
M&Aで関わりがある税金は消費税だけではありません。法人税をはじめとした様々な税金が発生するため、その対策には大きな負担がかかります。
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会社分割と事業譲渡の比較
会社分割も事業譲渡も、1つの事業を切り出し、そのリソースごと別の会社に承継させる点では類似しています。しかし、会社分割は不課税取引であるにもかかわらず、事業譲渡では消費税は課税されます。
これは、類似して見える会社分割と事業譲渡には、細かい点で違いがあることの証しです。実際に経営学上では、会社分割の別称は包括承継といわれますが、事業譲渡のそれは特定承継と呼ばれています。
この別称の違いが、会社分割と事業譲渡の相違点を如実に表しており、承継方法自体が違うことを意味します。組織再編行為である会社分割では、事業承継にあたってすべての事柄を一括して手続きが進められます。
しかし、事業譲渡の場合は、債務や従業員・所有不動産の移転などの各手続きについて、個別に同意を得ながら話を進めねばなりません。この場合の手続きの煩雑さは会社分割のそれとは大きな差があります。
そして、この点が会社分割は組織再編行為といわれるのに対して、事業譲渡は組織再編行為に該当しないとされる理由です。もう1点、会社分割と事業譲渡には大きな違い(債権者との関係性)があります。
会社分割では、分割される該当事業の債務を移転させることについて債権者の同意を必要としません。しかし、事業譲渡の場合は、債権者から同意を得なければ債務を自由に移転できません。
ただし、会社分割の場合でも、債権者保護手続きについて遂行する義務が課せられています。債権者保護手続きとは、異議を申し立てる債権者が現れたときに、その債権者に対して担保提供や弁済措置等を講ずることです。以上が会社分割と事業譲渡を比較した際の相違点になります。
会社分割で消費税がかからない理由
会社分割と事業譲渡の違いの中で、その承継方法について会社分割と事業譲渡は別扱いであることを指摘しました。すなわち、会社分割は包括承継であり、事業譲渡は特定承継であることです。
この点が、まさにそのまま消費税の課税に関係しています。事業譲渡では、その言葉のままに資産は譲渡され、そこに対価が発生します。これは、一般生活で商品を買うことと同等の行為です。
したがって、事業譲渡における事業承継の場面では消費税が課税されることになります。一方、消費税が課税されない取引には、非課税取引と不課税取引の2種類があります。
非課税取引とは、課税対象になじまないものや社会政策的配慮を理由として、対価を得て行う資産の譲渡であっても消費税を課税しないと定められた取引です。全部で15種類の取引が挙げられていますが、その主なものとしては、土地の譲渡や貸付・有価証券・商品券・預貯金・社会保険医療にかかる費用などです。
不課税取引とは、はじめから消費税がかからない取引とされているものです。具体的には、国外取引、対価を得て行うことに当たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などが該当します。会社分割は企業の組織再編行為であり、その対価は株式または社債や新株予約券で構わない取引であるため、不課税取引に該当します。
会社分割の税務ポイント
会社分割の際は、消費税の他にも主として以下の税務ポイントを留意しておくことが大切です。
- 適格分割と非適格分割:適格分割とは税制上一定の要件を満たした税務のことで、非適格分割とは適格分割の要件を満たさない税務のこと
- 不動産取得税の発生:会社分割の不動産は課税対象となるため、不動産所得税が発生する
- 登録免許税の発生:会社分割では法人登記または不動産登記が課税対象となり、登録免許税が発生する
会社分割と消費税の関係まとめ
会社を承継したり、合併したりと企業の存続方法はさまざまです。それに伴い、必要な費用や手続き等も大きく変わってきます。消費税が不課税である会社分割は、それが大きなメリットの1つといえます。
しかし、それのみで短絡的に決断することは危険です。会社分割のやり方自体にもいくつかの分類がありますし、会社分割以外の方法も存在します。事業を承継したい理由や、希望する条件に応じてM&Aの手法を選びましょう。
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