M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年2月28日公開会社・事業を売る
株式譲渡と事業譲渡の違いは?税金、手続き、メリットについて解説【図解】
M&Aの主な手法は株式譲渡と事業譲渡ですが、両者は手続き・税金・メリット・デメリットなどあらゆる点で違います。本記事では、株式譲渡と事業譲渡の違いについて図解も交えながら解説しています。そのほか、買い手・売り手のメリット・デメリットなども紹介します。
目次
株式譲渡と事業譲渡
M&Aには多くの手法がありますが、大半は株式譲渡か事業譲渡で行われます。両者はさまざまな点で違いがあるので、正しく理解しておくことが重要です。まずこの章では、株式譲渡と事業譲渡の基礎的な内容について解説します。
株式譲渡とは
株式譲渡とは、会社の株式を他者に譲渡することで、その会社の経営権を譲り渡す手法です。
取締役や役員の選任・解任は、株主総会における過半数の議決権の賛成で決められるため、過半数の株式を持つ株主は事実上その会社の経営権を持つことになります。
株式譲渡による経営権の取得は、個人でも法人でもできます。法人が経営権を取得した場合は、取得された会社は子会社になります。
株式譲渡の方法
株式譲渡の具体的な方法には、相対取引(あいたいとりひき)・市場買い付け・TOB(株式公開買付け)の3つがあります。
【株式譲渡の方法】
- 相対取引
- 市場買い付け
- TOB
①相対取引
相対取引とは、売り手と買い手が個別交渉で株式を取引することです。買い手と売り手の合意により、売買する株式数と売却価額を決めて取引します。
非上場企業の株式は、相対取引でしか売買できません。また、株式市場に株式が流通している上場企業でも、相対取引を行うことができます。
特に、株式譲渡では大株主による株式の売却がよく行われるので、相対取引で売買されることが多いです。
②市場買い付け
市場買い付けとは、上場企業の株式を株式市場を通して買い付けることです。
ただし、株価が変動する市場では取得コストが見積もれないことや、市場での大量の株式の取得は他株主が不利益を被る可能性があることなどから、市場買い付けで株式譲渡が行われるケースはあまりありません。
③TOB
TOBとは、上場企業の株式を不特定多数の株主から株式市場を通さずに公告により売買することです。株式を買いたい企業が買い付け価格と株式数を公開し、その条件で株式を売ってくれる株主を募ります。
上場企業の株式を、大株主ではなく不特定多数の株主から取得して株式譲渡を行う時は、原則としてTOBが使われます。
事業譲渡とは
事業譲渡とは、株式ではなく事業資産を売買するM&A手法です。設備や商品、権利義務などの事業資産を買い手が買い取ることで事業を取得します。
事業譲渡は株式譲渡と違って、会社の経営権は譲渡されません。下の図でいうと、事業を譲渡したA会社の経営権はB会社には移らず、A会社の株主が引き続き保有します。
株式譲渡と事業譲渡の違い
株式譲渡と事業譲渡は、取引主体・譲渡対象など、あらゆる面で違いがあります。M&Aを行う際は、両者の違いをきちんと理解したうえで、適切な手法を選ぶことが大切です。
【株式譲渡と事業譲渡の違い】
株式譲渡 | 事業譲渡 | |
取引の主体 | 譲渡側:譲渡企業の株主(個人または法人) 譲受側:個人または法人 |
譲渡側:譲渡企業または個人事業主 譲受側:個人または法人 |
譲渡の対象 | 譲渡企業の株式 | 譲渡側の事業資産 |
契約の内容 | 株式譲渡契約 | 事業譲渡契約 |
主な実施目的 | 経営権の取得 | 事業の取得 |
譲渡・売却益の受取先 | 譲渡企業の株主 | 譲渡企業または譲渡側の個人事業主 |
1.取引の主体
株式譲渡の取引の主体は、譲渡側は譲渡企業の株主、譲受側は経営権を取得する個人または法人です。
一方、事業譲渡の取引の主体は、譲渡側は事業を譲渡する譲渡企業自身であり、譲渡企業の株主は取引に関係しません。
譲渡側の取引主体が、譲渡企業の株主か、それとも譲渡企業自身かというのが、株式譲渡と事業譲渡の大きな違いです。
2.譲渡の対象
譲渡の対象は、株式譲渡は譲渡企業の株式で、事業譲渡は譲渡企業または譲渡側の個人事業主の事業資産になります。
株式譲渡は経営権の取得のために行うものなので、経営権を取得するのに十分な一定割合以上の株式を譲渡します。
事業譲渡は、設備や商品などの具体的な資産以外にも、ブランド力やノウハウといった抽象的な資産を「のれん」として譲渡の対象に含めることもあります。
3.契約の内容
株式譲渡では株式譲渡契約書、事業譲渡では事業譲渡契約書を締結します。株式譲渡契約書は、譲渡企業が株券発行会社かどうか、譲渡制限株式かどうかなどによって契約内容に違いが出ることがあります。
事業譲渡契約書には、譲渡する資産を具体的に指定する必要があります。詳細についてまだ協議が必要な場合は、後日「引継書」を作成する旨を記載するなどの対応が必要です。
4.主な実施目的
実施目的は、株式譲渡は譲渡企業の経営権の取得、事業譲渡は事業の取得になります。
株式譲渡は過半数の議決権取得を目的としますが、全株式を取得することもあれば、過半数や3分の2などにとどめて全株式は取得しないことも可能です。
また、事業譲渡においては、譲渡企業の事業の一部だけを譲受することもあれば、全事業を譲受することもあります。
5.譲渡・売却益の受取先
売却益の受取先は、株式譲渡は譲渡企業の株主、事業譲渡は譲渡企業になります。株式譲渡と事業譲渡では、売却益の受取先が違うことを理解しておきましょう。
株式譲渡のメリットとデメリット
株式譲渡と事業譲渡を比較すると、買い手・売り手の立場ではそれぞれ違うメリットとデメリットがあります。まずは、株式譲渡について、買い手・売り手双方のメリットとデメリットを解説します。
【株式譲渡のメリット・デメリット】
メリット | デメリット | |
売り手 | ・自社の存続が可能(事業承継) ・手続きが簡便 ・経営者(株主)に利益が入る |
・株式をまとめる手間がかかる ・負債が大きいと買い手がつきにくい |
買い手 | ・契約や許認可を引き継げる ・株式を過半数取得すれば支配権を得られる |
・負債や簿外債務も引き継がなければならない ・株式が分散していると全株式取得が難しいケースもある |
売り手側のメリット
株式譲渡の売り手側の主なメリットは、自社の存続・手続きの簡便さ・経営者への利益などが挙げられます。
①自社の存続が可能(事業承継)
株式譲渡をすると会社の経営権は失いますが、会社自体は譲受側に引き継がれて存続します。よって、株式譲渡は事業承継の手段として使うことができます。
事業承継は経営者の親族などを後継者にする場合も多いですが、近年は株式譲渡を利用したM&Aによる事業承継が増えています。
②手続きが簡便
株式譲渡は株主名簿を書き換えれば行えるので、事業資産の売買を個別に行わなければならない事業譲渡よりも手続きが簡便になります。
ただし、株式譲渡でも株主総会の開催など各種手続きがあるので、手続き完了までにはそれなりの期間と労力が必要です。
③経営者(株主)に利益が入る
株式譲渡は譲渡益が譲渡企業の株主に入るので、たいていの場合経営者が利益を得ることになります。そのため、株式譲渡は経営者のイグジットの手段として使われることも多いです。
また、引退による事業承継の場合は、売却益を老後の生活資金に充てることもできます。
売り手側のデメリット
株式譲渡の売り手側のデメリットとしては、株式をまとめる手間がかかる場合があることや、負債が大きいと買い手がつきにくいことが挙げられます。
①株式をまとめる手間がかかる
譲渡企業の株主が複数いる場合、株式をまとめるのに手間がかかることがあります。もし一部の株主に譲渡を反対された場合、予定していた議決権が得られなかったり、納得させるために譲渡価格を引き上げることになる可能性もあります。
また、株券発行会社の場合、株主が株券を紛失していたり、誰が株券を持っているのか分からなくなってしまっていることもあり、こういったケースでは株式をまとめるのには手間と時間が必要です。
②負債が大きいと買い手がつきにくい
株式譲渡は会社の経営権の取得なので、負債も含めて包括的に会社を承継することになります。よって、負債の大きい会社は買い手に敬遠される傾向があります。
また、M&A仲介会社の成功報酬の計算では、譲渡企業の負債も含めて計算する方式があり、報酬が高くなる場合がある点も買い手が敬遠する要因です。
買い手側のメリット
株式譲渡の買い手側のメリットとしては、契約や許認可を引き継げることや、過半数の取得で支配権を得られることなどがあります。
①契約や許認可を引き継げる
株式譲渡は譲渡企業の経営権を得るものなので、譲渡企業が持っている契約や許認可をそのまま引き継ぐことができます。
包括承継であるため、許認可が必要な事業も新規取得は不要であり、従業員の雇用契約なども結びなおす必要はありません。
②株式を過半数取得すれば支配権を得られる
株式譲渡では必ずしも全株式を取得する必要はなく、過半数取得すれば事実上の支配権を得ることができます。
取得したい支配権の程度によって、保有比率を調整できるのは株式譲渡のメリットです。
買い手側のデメリット
株式譲渡の買い手側のデメリットは、負債や簿外債務の引き継ぎ、および株式が分散している時に全株式を取得できない場合があることです。
①負債や簿外債務も引き継がなければならない
負債や簿外債務の引き継ぎは、株式譲渡の買い手側にとって大きな問題となります。
特に、契約締結後に発覚する簿外債務は大きなトラブルになるので、デューデリジェンスを徹底してできるだけリスクを洗い出しておくことが大切です。
株式譲渡における買い手のリスクに関しては、取得価額を準備金にして簿外債務をリスクヘッジできる制度などもあるので、こういった制度も活用してデメリットをできるだけ少なくすることがポイントとなります。
②株式が分散していると全株式取得が難しいケースもある
株主が複数いる会社の株式を取得する際に、反対株主によって取得を阻止されるなど、全株式の取得が難しいケースもあります。
また、設立して長い年月が経っている中小企業では、株主と連絡がつかない、正確な株主が誰かもう分からなくなってしまっているといった理由で、全株式の取得が難しくなるケースも考えられます。
事業譲渡のメリットとデメリット
続いてこの章では、事業譲渡のメリット・デメリットを買い手・売り手双方の立場で解説します。
【事業譲渡のメリット・デメリット】
メリット | デメリット | |
売り手 | ・事業の選択と集中ができる ・会社の経営権が維持される |
・手続きが煩雑 ・競業避止義務を負う |
買い手 | ・必要な事業のみを取得できる ・負債や簿外債務の引継ぎリスクを回避できる |
・契約や許認可を引き継げない |
売り手側のメリット
事業譲渡の売り手側の主なメリットは、事業の選択と集中ができること、会社の経営権が維持されることです。
①事業の選択と集中ができる
複数事業を経営している会社の場合、不採算事業やノンコア事業だけを事業譲渡して、その資金でコア事業の経営を強化することができます。事業の選択と集中を行いたい場合は、事業譲渡が適した手法といえるでしょう。
②会社の経営権が維持される
事業譲渡は株式の譲渡は行わないので、譲渡企業の経営権は既存株主が引き続き保持します。
売り手側のデメリット
事業譲渡の売り手のデメリットとしては、手続きが煩雑であること、競業避止義務を負うことなどがあります。
①手続きが煩雑
事業譲渡は設備や商品といった事業資産を一つずつ売買しなければならないので、株主名簿を書き換えるだけの株式譲渡と比べると手続きが煩雑になります。従業員の契約もまき直しとなり、個別に同意が必要です。
②競業避止義務を負う
事業譲渡を行うと、譲渡側は最低20年間は同地域で同じ事業を行うことができません(競業避止義務)。
事業譲渡を行う際は、競業避止義務があることを踏まえて、将来の事業計画も勘案して実行すべきかの判断が必要です。
買い手側のメリット
事業譲渡の買い手側のメリットとしては、必要な事業のみ取得できること、負債や簿外債務の引き継ぎリスクが少ないことが挙げられます。
①必要な事業のみを取得できる
事業譲渡は株式譲渡と違って包括承継ではないので、必要な事業だけを取得できるメリットがあります。
ただし、あくまで契約は売り手との合意で行うものなので、買い手の都合だけで自由に選べるというわけではありません。
②負債や簿外債務の引継ぎリスクを回避できる
事業譲渡は包括承継ではないので、余計な負債や簿外債務のリスクが高い資産は譲受しないことで、引き継ぎリスクを軽減できます。
ただし、全ての簿外債務を見抜くことは難しいので、リスクを完全に回避できるとは限りません。
買い手側のデメリット
事業譲渡の買い手側のデメリットとしては、契約や許認可を引き継げないことが挙げられます。
①契約や許認可を引き継げない
事業譲渡は譲渡企業の契約や許認可は引き継げないので、買い手側で新規に締結・取得する必要があります。
許認可がないと営業できない業種の場合、事業譲渡完了までに許認可の新規取得をしなければ、事業は買い取ったものの営業開始できないという事態になるので注意が必要です。
株式譲渡に必要な手続き
株式譲渡に必要な手続きの大まかな流れは下のようになります。
【株式譲渡に必要な手続き】
- 株式譲渡(M&A)の大筋合意
- 株式譲渡の承認請求
- 取締役会または株主総会での承認
- 株式譲渡の承認通知
- 株式譲渡契約書を締結
- 株主名簿の書換え
- 役員選任の登記申請
1.株式譲渡(M&A)の大筋合意
株式譲渡では、株式譲渡契約書を締結するする前に、契約内容に大筋の合意がみられた時点で「基本合意書」という書面を締結するのが通例です。
基本合意書はまだ法的拘束力を持つ契約ではありませんが、ここから株式譲渡の具体的な手続きが始まっていきます。
2.株式譲渡の承認請求
多くの中小企業の株式は譲渡制限がついているので、株式を売買するには取締役会か株主総会の承認を得る必要があります。
承認をとる前の手続きとして、売り手側が譲渡企業に対して株式譲渡の承認請求を行います。承認請求の方法に規定はありませんが、「譲渡承認承諾書」という書面を提出するのが一般的です。
3.取締役会または株主総会での承認
株主の承認請求を受けて、譲渡企業は取締役会か株主総会を開き、株式譲渡を承認します。取締役設置会社の場合は取締役会、非設置会社の場合は株主総会を開きます。
4.株式譲渡の承認通知
株式譲渡が承認されたら、譲渡承認請求をした株主に対して承認された旨を通知します。
通知は譲渡承認請求が行われた日から2週間以内に行う必要があり、行わなかった場合は自動的に承認されたとみなされます。
5.株式譲渡契約書を締結
株式譲渡の承認とともにデューデリジェンスや最終交渉を行い、株式譲渡契約書を締結した時点で法的効力が発生し、M&Aが正式に成約したことになります。
6.株主名簿の書換え
株式の保有者の変更は、株主名簿の書き換えによって完了します。書き換えのためにはまず株主が譲渡企業に書き換え請求を行い、それを受けて譲渡企業が名簿の書き換えを行います。
ただし、株券発行会社の場合は、株券の交付が必要です。紛失などで交付が難しい場合は、株券不発行会社への変更手続きを行わなければならないため、手続きが複雑になります。
7.役員選任の登記申請
株式譲渡にともなって役員を新たに選任した場合は、選任の登記を行います。株式譲渡は経営権の保有者が変わるので、役員も刷新されることが多いです。
事業譲渡に必要な手続き
事業譲渡の手続きは、おおむね以下のように進んでいきます。
【事業譲渡に必要な手続き】
- 事業譲渡(M&A)の大筋合意
- 取締役会での承認
- 事業譲渡契約書を締結
- 各所へ必要事項の届け出
- 株主総会での承認
- 名義変更・許認可の手続き
1.事業譲渡(M&A)の大筋合意
事業譲渡の場合も株式譲渡と同様に、まずは売り手と買い手の基本合意を締結します。この時点では、まだ詳細について決まっていない事項があってもよく、また決まっている事項でも後で変更することができます。
2.取締役会での承認
事業譲渡では、譲渡企業側が取締役会による承認を得る必要があります。取締役会非設置会社でも、取締役の過半数による承認が原則として必要なのが注意点です。
3.事業譲渡契約書を締結
デューデリジェンスを行い事業譲渡の契約内容が固まったら、事業譲渡契約書を締結して事業譲渡が正式に締結されます。
事業譲渡契約書の記載内容は、株式譲渡契約書と似ている部分もありますが、事業譲渡では譲渡する資産の具体的な内容の記載が必要です。
また、従業員の雇用契約をどうするかなどについても、事業譲渡の場合は明記しておく必要があります。
4.各所へ必要事項の届け出
事業譲渡では、各所へ必要事項の届出を行う場合があります。どの届出を行うかは条件によるので、何が必要か確認しておくことが大切です。
公正取引委員会への届け出
国内売上高が200億円を超えている会社が事業譲渡を行う場合、譲渡する事業の内容によっては公正取引委員会への届出を行わなければなりません。
さらに、届出後30日は事業譲渡を行えないという規則もあるので、手続きの流れについてもきちんとスケジュールを立てておく必要があります。
臨時報告書の提出
上場企業や、上場していなくても規模が大きく有価証券報告書の提出義務がある企業は、事業譲渡を行う際に臨時報告書を提出しなければなりません。
5.株主総会での承認
株主総会で株主から事業譲渡の承認が必要です。ただし、次に解説する「簡易事業譲渡」「略式事業譲渡」の場合は、承認が必要ないこともあります。
簡易事業譲渡の場合
簡易事業譲渡とは規模の小さい事業譲渡に適用される制度で、譲渡価額が譲受会社の純資産の5分の1以下の場合に該当します。簡易事業譲渡の場合は、株主総会の特別決議は原則不要です。
略式事業譲渡の場合
略式事業譲渡とは、譲受会社と譲渡会社が90%以上の議決権を持つ親会社・子会社の関係(特別支配株主)の時に適用される制度のことです。略式事業譲渡では、株主総会の特別決議が不要となります。
6.名義変更・許認可の手続き
事業譲渡契約を締結したら、契約内容に従って事業資産の名義変更を行い、必要な許認可の手続きを行います。
財産などの名義変更
事業譲渡契約で譲渡された売り手側の財産を、買い手側に名義変更します。
許認可や契約の手続き
事業譲渡では売り手側の許認可や契約は買い手に引き継がれないので、新たに取得したり契約を結びなおしたりする必要があります。
株式譲渡と事業譲渡にかかる税金
株式譲渡と事業譲渡は売買の主体や対象が違うので、かかる税金の仕組みも違ってきます。それぞれの場合に、どのような税金がかかるのかを把握しておくことが重要です。
株式譲渡にかかる税金
株式譲渡にかかる税金は、株式の売却益に対して課せられます。課せられる税金の種類は株主が個人か法人かで違い、個人の場合は所得税と住民税、法人の場合は法人税です。
個人の株式売却益にかかる所得税と住民税は、売却益の額によらず一律で合計20.315%となり、ほかの所得と合算しない分離課税が適用されます。
法人の場合は、ほかの利益・損失と合算して、総合課税により法人税が課されます。
事業譲渡にかかる税金
事業譲渡では、売却した事業資産の譲渡益に対して、個人事業主の場合は所得税と住民税、法人の場合は法人税がかかります。
個人事業主の所得税が分離課税になるかどうかは事業資産の種類によるので、各資産ごとに確認しておくことが大切です。
M&Aは専門家に相談
M&Aは株式譲渡・事業譲渡それぞれにメリット・デメリットがあるので、適切なスキームの選択が重要になります。さらに、両者は手続きや税金面でも違いがあるので、専門家のサポートを受けながら進めていくことが不可欠といえるでしょう。
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まとめ
株式譲渡と事業譲渡はどちらもよく使われるM&A手法ですが、両者の仕組みは全く違います。違いを正しく理解して、適切なスキームを選択できるようにしましょう。
【株式譲渡の方法】
- 相対取引
- 市場買い付け
- TOB
株式譲渡 | 事業譲渡 | |
取引の主体 | 譲渡側:譲渡企業の株主(個人または法人) 譲受側:個人または法人 |
譲渡側:譲渡企業または個人事業主 譲受側:個人または法人 |
譲渡の対象 | 譲渡企業の株式 | 譲渡側の事業資産 |
契約の内容 | 株式譲渡契約 | 事業譲渡契約 |
主な実施目的 | 経営権の取得 | 事業の取得 |
譲渡・売却益の受取先 | 譲渡企業の株主 | 譲渡企業または譲渡側の個人事業主 |
【株式譲渡のメリット・デメリット】
メリット | デメリット | |
売り手 | ・自社の存続が可能(事業承継) ・手続きが簡便 ・経営者(株主)に利益が入る |
・株式をまとめる手間がかかる ・負債が大きいと買い手がつきにくい |
買い手 | ・契約や許認可を引き継げる ・株式を過半数取得すれば支配権を得られる |
・負債や簿外債務も引き継がなければならない ・株式が分散していると全株式取得が難しいケースもある |
【事業譲渡のメリット・デメリット】
メリット | デメリット | |
売り手 | ・事業の選択と集中ができる ・会社の経営権が維持される |
・手続きが煩雑 ・競業避止義務を負う |
買い手 | ・必要な事業のみを取得できる ・負債や簿外債務の引継ぎリスクを回避できる |
・契約や許認可を引き継げない |
【株式譲渡に必要な手続き】
- 株式譲渡(M&A)の大筋合意
- 株式譲渡の承認請求
- 取締役会または株主総会での承認
- 株式譲渡の承認通知
- 株式譲渡契約書を締結
- 株主名簿の書換え
- 役員選任の登記申請
- 事業譲渡(M&A)の大筋合意
- 取締役会での承認
- 事業譲渡契約書を締結
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