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2021年6月23日更新節税
株式の譲渡所得の税率は?申告分離課税、変遷、注意点や計算方法も紹介!
株式取引で得た譲渡所得に課せられる税金について、現在の税率も含め詳しく解説します。譲渡所得だけでなく配当金・分配金の税率や、株式譲渡所得への課税の変遷、申告分離課税の内容、譲渡所得の計算方法など、ぜひ参考にしてください。
目次
株式の譲渡所得にかかる課税とは
株式等の譲渡を行って利益が出た場合、その利益を譲渡所得といいます。この場合の利益とは、株式を譲渡・売却した金額から、株式を取得・購入したときの出費額を差し引いた金額です。法令により、株式の譲渡所得には課税されることになっています。
なお、株式等の譲渡所得への課税は、ほかの所得とは区分して税金を計算する申告分離課税です。
株式の種類と意義
株式等の譲渡所得は、上場株式等の譲渡所得と一般株式等の譲渡所得に区分されたうえで課税されることになっています。株式等の譲渡所得額の計算では、複数の取引を損益通算できますが、上場株式等の譲渡損益と一般株式等の譲渡損益は通算できないことです。
法令により、株式等、および上場株式等と一般株式等は定義づけされていますので、その内容を以下に掲示します。
①株式等
株式等として定められているものは以下のとおりです。
- 株式、株主あるいは投資主となる権利、株式の割当を受けられる権利、新株予約権、新株予約権の割当を受けられる権利
- 特別な法律によって設立されている法人の出資者の持分、合名会社や合資会社あるいは合同会社の社員の持分、協同組合などの組合員あるいは会員の持分やその他の法人の出資者の持分
- 協同組織金融機関の優先出資に関する法律に規定されている優先出資、または資産の流動化に関する法律に規定されている優先出資
- 投資信託の受益権
- 特定受益証券発行信託の受益権
- 社債的受益権
- 公社債
②上場株式等
株式等のうち、下記に該当するものが上場株式等になります。
- 金融商品取引所に上場されている株式など
- 店頭売買登録銘柄として登録されている株式
- 店頭転換社債型新株予約権付社債
- 店頭管理銘柄株式
- 日本銀行出資証券
- 外国金融商品市場において売買されている株式など
- 公募投資信託の受益権
- 特定投資法人の投資口
- 公募特定受益証券発行信託の受益権
- 公募社債的受益権
- 国債または地方債
- 外国あるいはその地方公共団体が発行している、それか保証している債券
- 会社以外の法人が特別の法律により発行する一定の債券
- 公社債であり、その発行の際に有価証券の募集が一定の公募によって行われたもの
- 社債のうち、その発行日前の9月以内(外国法人の場合は12月以内)に有価証券報告書などを内閣総理大臣に提出している法人が発行しているもの
- 金融商品取引所において、その規則に基づいたうえで公表された公社債情報に基づいている状態で発行している一定の公社債
- 国外において発行された特定の公社債
- 外国法人が発行した、あるいは保証する特定の債券
- 銀行など、あるいはその銀行等の関連会社が発行した社債
- 2015(平成27)年12月31日以前に発行された公社債
③一般株式等
上場株式等以外のものが、一般株式等です。具体的には、非上場株式や私募株式投資信託の受益権などが一般株式にあたります。
株式の譲渡所得にかかる税率
株式の譲渡所得に課税される税金は、所得税・住民税です。ただし、現在は2037(令和19)年までの時限措置として復興特別所得税が加算されます。復興特別所得税とは、東日本大震災の被害への復興施策を行う財源とするための税金です。
それぞれの税率は以下のように定められています。
- 所得税の税率=15%
- 住民税の税率=5%
- 復興特別所得税の税率=基準所得税額の2.1%=0.315%
したがって、2021(令和3)年6月現在の株式の譲渡所得にかかる税金の税率は、所得税、住民税、復興特別所得税の税率を合わせて20.315%になります。
株式の譲渡所得の計算方法
株式の譲渡所得金額の具体的な計算式は以下のようになります。
- 株式譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料など)
株式の譲渡損失に関する繰越控除
株式の取引では、必ずしも利益になるとは限りません。損失が出てしまう年もあるでしょう。その場合、その損失額を翌年以降、最大3年間にわたって繰越せることになっています。つまり、翌年以降の株式取引で利益が出た場合、繰越した損失額と相殺できるのです。
ただし、損失が出た年、およびそれ以降の3年間にわたって、確定申告を行わないとこの制度が利用できません。
株式譲渡と確定申告
証券会社に源泉徴収ありの特定口座を設け、そこで株式譲渡を行えば確定申告が不要になります。特定口座を使えば自動的に株式譲渡所得から所得税と住民税が差し引かれるため、簡単に納税を済ませられるのです。
ただし、特定口座を使用していても、年間取引報告書に基づいて簡単な報告を行う必要はあります。また、もし一般口座で株式譲渡(あるいは株取引)を行った場合は、自分で株式譲渡所得を計算し確定申告しなければなりません。
株式の配当金・投資信託の分配金にかかる税率
ここでは、株式譲渡所得関連の所得として、株式の配当金と投資信託における分配金の課税内容に触れておきます。まず、株式の配当金とは、上場株式等の配当金のことです。また、投資信託の分配金とは、投資信託の収益から投資家に還元される金額をさします。
基本的に配当金・分配金は源泉徴収されて支払われるので、確定申告は不要です(申告不要制度を選択している場合)。源泉徴収される際の課税内容と税率は、株式譲渡所得と全く同一で、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて20.315%になります。
なお、発行済み株式総数の5%以上を保有している個人株主の場合の配当金は、申告分離課税の適用外となり、総合課税で納税しなければなりません。
株式の譲渡損失との損益通算
配当金・分配金は、申告分離課税を選択したうえで確定申告すると、上場株式取引の損失額と損益通算するのが認められています。なお、株式取引に特定口座を用いている場合、下記の条件を満たすと確定申告せずに損益通算が可能です。
- 源泉徴収ありの特定口座
- 源泉徴収口座内配当など受入開始の届出済み
- 配当金受け取り方法に株式数比例配分方式を選択
配当控除の適用
配当金・分配金は、総合課税を選択して確定申告すると、配当控除の適用を受けられます。配当控除額は課税総所得額によって異なり、所得税は5%または10%、住民税は1.4%または2.8%です。また、総合課税ですから、その税率は累進課税になります。
外国株式の譲渡所得にかかる税率
外国株式とは、外国籍の上場企業が発行している株式をさします。この場合、上場とは国内の取引所でも国外の取引所でも、どちらでもかまいません。この外国株式を取引して利益が出た場合、国内の株式取引と同様の課税措置を受けます。
課税内容も全く同条件ですから、2021年6月現在では、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせた20.315%の税率です。
株式の譲渡所得にかかる税率の変遷
株式の譲渡所得に対する課税は、時代の流れとともに変遷を重ねてきました。第二次世界大戦後間もない時期からの、株式譲渡所得の課税に関するトピックを以下に掲示します。
時期(年) | 株式譲渡所得の課税内容 |
---|---|
1947(昭和22) | 総合課税扱い |
1948(昭和23) | 配当控除制度が創設 |
1953(昭和28) | 原則非課税となる |
1989(平成元) | 原則課税(分離課税)となる |
2003(平成15)~ 2013(平成25) |
10%の軽減税率制度が適用 |
2014(平成26)~ | 軽減税率制度撤廃、税率20% |
なお、近年、財務書では、株式譲渡所得の課税率を20% (復興特別所得税を除く)から25%に上げる議論が行われているといった報道もあります。今後の税制改正の際には、注意が必要です。
株式の譲渡所得の税率に関する注意点
実際に株式譲渡を行う際には、株式譲渡所得への課税の注意点に関しても理解を深めておきましょう。株式の譲渡所得への課税に関して気をつけなければならない点は、以下のようなものが考えられます。
- 上場株式と一般株式は損益通算できない
- 過去の申告の適正性を見る
①上場株式と一般株式は損益通算ができない
すでに述べたとおり、上場株式の譲渡損益と一般株式の譲渡損益は区分して納税するため、損益通算はできません。どちらかに損失であったとしても、それに関わりなく譲渡所得額に課税されます。
②過去の申告の適正性を見る
もし、過去の確定申告が間違っていて、本来、納めるべき税金と実際に納めた税金が異なっているとします。この場合は株式譲渡を受けた側が修正申告を行う必要があるため、事前に過去の確定申告の適正性を確認しておきましょう。
株式譲渡の特例
既述のとおり、上場株式取引に特定口座を用いて行うと確定申告不要となる特例があります。株式譲渡関連では、それ以外でも特例がありますので、主なものを以下にまとめました。
- 上場株式などに関係する譲渡損失と上場株式などに関係する配当所得などとの損益通算
- 上場株式などに関係する譲渡損失の繰越控除
- 特定管理株式などが価値を失った場合に株式などに関係する株式譲渡所得の課税の特例
- 非課税口座内の少額上場株式などに関係する配当所得または譲渡所得などの非課税措置
- 未成年者口座内の少額上場株式などに関係する配当所得または譲渡所得などの非課税措置
- 非上場の中小企業での事業承継で先代経営者から後継者に株式譲渡された際の相続税・贈与税の猶予および免除(事業承継税制としての特例)
株式の譲渡所得の税率に関する相談先
株式譲渡所得の税金に関しては、税理士など税務に詳しいプロに相談するのがおすすめです。また、個人の株取引であれば、証券会社のアドバイスを受けておいた方がいいでしょう。
株式譲渡所得にかかる税金に限らず、税務は正確さが求められる作業であるうえに公的機関に提出する書類もあるため、税務や手続きに関する知識があっても経験がなければ難しい場合もあります。
また、税務の知識に長けたプロフェッショナルの協力が得られれば節税に関するアドバイスももらえるため、株式譲渡を行った後の負担も大きく減らせる可能性が高まり、一度学んだノウハウを今後の経験に活かすことも可能です。
株式の譲渡所得の税率まとめ
上場株式の取引だけでなく、M&Aや事業承継での株式譲渡でも、譲渡所得を得たときに課税が発生します。その場合、課税額も高額となることが予想されますので、税率や計算方法を把握しておくのは有用です。
また、株式譲渡では特例が発生する可能性がありますから、専門家に相談するのをおすすめします。本記事の概要は以下のとおりです。
〇株式譲渡所得とは
→株式等を売却した際に発生する利益額
〇株式等の種類
→上場株式、一般株式
〇株式の譲渡益課税の注意点
→株式譲渡所得は申告分離課税
〇課税される税金の税率
→所得税、住民税、復興特別所得税を合わせて20.315%
〇株式譲渡所得の計算方法
→株式譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)ー必要経費(取得費+委託手数料など)
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