M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年7月13日公開会社・事業を売る
税務DDの目的や手順・調査範囲を徹底解説!M&Aにおけるリスクは?
M&Aの成功のためには、税務DD(デューデリジェンス)が重要です。税務DDとは、企業が他の企業を合併や買収する際に行う重要な調査の一つです。本記事では、税務DDの目的、手順、調査範囲、実施しない場合のリスク、そして専門家に依頼するべきかどうかを解説します。
目次
税務DD(デューデリジェンス)の基本概要
それでは税務DD(デューデリジェンス)とは何か、その目的について解説します。
税務DD(デューデリジェンス)とは
税務DD(デューデリジェンス)は、企業が他の企業を合併や買収する際に行う重要な調査の一つです。この調査では、対象となる企業の税務状況を詳しく調べ、将来的な税務リスクを事前に見つけ出せます。
デューデリジェンスは税務・労務・人事・法務・ビジネス・IT・不動産・環境など多くの分野で利用されています。今回のM&Aにおいての税務DDは売り手の企業に対して税務調査を行うことを意味します。
税務DD(デューデリジェンス)の目的
税務DD(デューデリジェンス)の目的は、税務リスクの把握、譲渡企業の経営状態の把握、そしてM&A後のPMIのプラン作成の3つが挙げられます。
①税務リスクの把握
税務DD(デューデリジェンス)の一つの目的は、税務リスクの把握であり、対象企業が過去に適切な税務処理を行ってきたか、または将来的に税務問題が発生する可能性があるかを評価します。
税務リスクとは、税法違反による罰則、追徴税、税務調査による税金の追加徴収など、企業の財務状況や評価に影響を及ぼす可能性のあるリスクを指します。
この税務リスクは早めに解消させておけば、大きな事態へ発展しないため、事前に税務DD(デューデリジェンス)を綿密に行っておくことが必要でしょう。
②譲渡企業の経営状態の把握
税務DD(デューデリジェンス)のもう一つの目的は、譲渡企業の経営状態を理解することです。これにより、買収後の経営計画や事業戦略を策定するための重要な情報を想定できます。
譲渡企業の経営状態とは、その企業の財務状況、業績、事業の展望、組織体制、人材、技術力など、企業全体の状況を総合的に評価したものを指します。経営状態の把握は、次のアクションを起こす際に必要な情報となるため、しっかり押さえておく必要があるでしょう。
③M&A後のPMI画策
税務DD(デューデリジェンス)の3つの目的は、M&A後の組織統合、またはPMI(Post Merger Integration)の計画を策定することです。
PMIとは、組織体制の統合、業務プロセスの統合、システムの統合などを含む、M&Aが完了した後に行われる組織の統合プロセスをスムーズに進めるための重要なステップです。
税務DDを通じて、経営統合を効率的に進めるための計画の作成に役立てましょう。
税務DD(デューデリジェンス)の手順
税務DD(デューデリジェンス)を実施する際の手順と、その調査範囲について説明します。
①税理士など専門家へ依頼する
税務DD(デューデリジェンス)は、企業の税務状況を詳細に調査・分析するための専門的な知識と経験が必要とされます。
そのため、税務DDをスムーズに進めるためにも税理士やM&A仲介会社などの専門家に依頼するとよいでしょう。
これらの専門家は税法や会計原則に精通しており、企業の財務状況を正確に理解し、潜在的な税務リスクを明らかにする能力を持っています。
さらに、専門家は税務調査のプロセスを効率的に管理し、必要な情報を迅速に取得するためのネットワークとリソースを有しています。
税務DDは税務に留まらず、法務や税務も調査する可能性があるため、一括で調査できる専門家に依頼すると、効率良く進めることができるでしょう。
②調査範囲や内容を決定する
税務DD(デューデリジェンス)にて専門家への依頼が完了すれば、まずは調査範囲と内容を決定しましょう。これにより、調査の効率と有効性を上昇させることができます。
調査範囲は、対象企業の業種、規模、事業の性質、過去の税務履歴などをもとに設定され、具体的な調査内容には、財務報告、税務申告、税務調査の記録、税務リスク管理のポリシーと手順などが含まれるでしょう。
③必要資料の開示・調査
税務DD(デューデリジェンス)では、対象企業の税務状況を詳細に理解するため、前のステップで決定した調査範囲をもとに、売り手企業に対して必要な資料の開示請求を行われます。
基本的には、売り手企業に資料を送付してもらい調査を進めますが、確認しなければならない紙媒体の資料が膨大に存在し、送付することが困難な場合には、現地に赴いて資料を閲覧・調査することがあります。
必要な資料が揃い次第、資料の確認・調査が行われ、完了するまでに約2〜4週間の期間を要します。譲渡企業の規模が大きい場合や繁忙期と重なった場合には、調査の完了までに1ヶ月以上かかることもあります。
この調査を通じて、企業は税務リスクを適切に把握し、M&Aの成功に向けた戦略の策定ができるでしょう。
税務DD(デューデリジェンス)の調査範囲
税務DD(デューデリジェンス)の調査対象となる法人の範囲や税金について詳しく見ていきます。
対象となる法人の範囲
税務DD(デューデリジェンス)の対象となる法人は、主に企業の合併や買収(M&A)の対象となる企業です。
また、重要性の高い子会社がある場合や、税制の異なる海外に子会社がある場合には、調査範囲が拡大されることがあります。
しかし、調査範囲を広げ過ぎると莫大な費用と時間が必要になり、経営の負担も大きくなってしまいます。
税務リスクは解消しておきたい問題ですが、経営のバランスを踏まえ、適切な調査範囲で税務DD(デューデリジェンス)を実施するようにしましょう。
対象となる税金
ここでは、税務DD(デューデリジェンス)で調査対象となる税金について説明します。
法人税
法人税は、法人が得た所得に対して課される税金であり、企業の売上から経費を差し引いた利益に対して課されます。法人税は、企業の経済活動に対する公平な負担を求めるための重要な税源であり、国や地方自治体の財政を支える重要な役割を果たしています。
法人税については、適切な税率の適用、繰越欠損金、申告書などの正確性が見られ、税務DD(デューデリジェンス)の中で最も入念に調査されます。
法人事業税
法人事業税は、法人が行う事業活動に対して課される地方税であり、企業が地方で事業を行うことにより得た利益に対して課されます。法人が事業を営むにあたって、地域の行政サービスの提供を受けることから、地方自治体は、法人事業税を通じて、地域の経済発展に貢献する企業からの税収を得ています。
法人事業税は、企業の所得によって計算されますが、地域によって異なる税率が課せられることもあります。
税務DD(デューデリジェンス)では、正しく法人事業税が納付されていることを確認します。
法人住民税
法人住民税は、法人がその住所地に対して支払う地方税です。これは、企業も地方自治体に所属している構成員であるとされ、その構成員である企業も個人と同様に負担をすべきとして課されます。
法人住民税は、法人の所得によって計算され、税率は地方自治体によって異なる場合があります。
税務DD(デューデリジェンス)では、法人住民税の計算や納付状況について調査します。
特別法人事業税
特別法人事業税は、法人事業税の一部を国が徴収する税金です。これは、地方税の一部を国が徴収し、全国均一の公共サービスの提供を支えるためのものです。特別法人事業税は、地方間の公共サービスの均等化を図るために重要な役割を果たしています。
消費税・地方消費税
消費税は、商品やサービスの消費に対して課される国税で、地方消費税はその一部を地方自治体が徴収する税金です。これらは、消費に応じて課され、消費の多い人ほど多くの税金を支払うという公平性を保つための重要な税源です。
税務DD(デューデリジェンス)では、適切な税率が適用されているか、申告が正確にされているかを調査します。
税務DD(デューデリジェンス)を実施しなかった場合のM&Aにおけるリスク
ここでは、税務DD(デューデリジェンス)を実施しなかった場合にM&Aにどのようなリスクが生じるのかを見ていきましょう。
追徴課税の負担
税務DD(デューデリジェンス)を行わない場合、企業は追徴課税のリスクに直面する可能性があり、M&Aの過程で大きな問題となりうるでしょう。
追徴課税とは、税務調査により過去の税金の未納が明らかになった場合に、その未納税金に対して追加で課される税金のことを指します。税務DDを実施することで、これらの未納税金や不適切な税務処理が事前に発見され、追徴課税のリスクを回避することが可能です。
税務DDを行わなかった場合、これらのリスクを事前に防げず、M&A後に追徴課税の負担が発生する可能性があります。負担額が多いと経営にも影響を与え、成長するどころか共倒れになるリスクもあるため、十分注意すべきポイントです。
M&Aの手法の誤選択
税務DD(デューデリジェンス)を行わない場合、企業はM&Aの手法の誤選択というリスクに直面する可能性があります。M&A手法の誤選択によって支払う必要のない税金が発生するリスクもあるため注意が必要です。
なお、M&Aの手法とは、企業の合併や買収の方法を指します。これには、株式取得、資産取得、合併などが挙げられます。これらの手法はそれぞれ異なる税務処理や税務影響を伴います。
税務DDを実施することで、これらの税務影響を事前に把握し、最も適切なM&Aの手法を選択することが可能となります。
税務(デューデリジェンス)実施にかかる費用と相場
税務DD(デューデリジェンス)を実施する際の専門家へ支払う費用や相場は具体的に検討するにあたって気になる点でしょう。
ここでは、税務DD(デューデリジェンス)の費用や相場について説明します。
専門家へ支払う費用
税務DD(デューデリジェンス)を行う際には、専門家へ依頼するための費用が必要です。この費用は、専門家のスキルや経験、そして調査の複雑さにより変わる可能性があるでしょう。
目安としては1日あたり2~5万円程度と言われており、調査期間が延長するほど総額が増していきます。しかし、適切な専門家を選ぶことで、税務リスクを正確に評価し、M&Aの成功につながる可能性が高まるでしょう。
専門家への費用は、M&Aの全体的なコストの一部を占めるため、その管理はM&Aの財務的成功にとって重要となります。さらに、専門家への費用は、税務DDの品質と範囲を決定する重要な要素でもあります。
したがって、専門家への依頼費用を適切に管理し、適切な税務DDを実施することは、M&Aの成功にとって重要事項となります。
税務DD(デューデリジェンス)の相場
税務デューデリジェンス(税務DD)の費用や相場は、案件のボリュームや種類によって異なります。たとえば、海外企業が関わるような大きな案件だと、専門性が求められるため、最終的に1,000万円以上の費用がかかるということも珍しくありません。
もちろん小さな案件であれば、安価で済む場合もあるため、事前に相談することをおすすめします。
税務DD(デューデリジェンス)実施の注意点
ここでは、税務DD(デューデリジェンス)を実施する際の注意点を詳しく解説します。
全体的な税務状況を正確に把握する
税務DD(デューデリジェンス)を行う際の重要なポイントは、企業の全体的な税務状況を正確に理解することです。これにより、潜在的な税務リスクを適切に評価できます。
なお、全体的な税務状況とは、企業の税務履歴、現在の税務状況、将来の税務リスクなど、企業の税務に関連する全ての情報を指します。これらの情報を正確に理解することで、企業は税務リスクを適切に管理し、M&Aの成功に向けた戦略を策定することが可能です。
潜在的な税務リスクも調査する
一見、問題がないように見えていても、税務リスクが潜んでいる場合があります。それゆえに未解決な問題点や将来発生しうる問題点を洗い出すことで潜在的なリスクを事前に回避、解決できるでしょう。
潜在的な税務リスクは、細かなヒアリングを行うことが効果的です。
M&Aの専門家・仲介会社へ依頼する
税務DD(デューデリジェンス)は専門的な知識を必要とするため、M&Aの専門家や仲介会社への依頼が推奨されます。これらの専門家は、適切な調査を行い、税務リスクを明らかにします。
また、専門家や仲介会社は、企業の税務状況を深く理解し、複雑な税法や規制を解釈する能力を持っています。企業の税務状況を詳細に分析し、潜在的な税務リスクを特定するための専門的なツールや手法を使用するため、安心して任せられるでしょう。
税務DD(デューデリジェンス)は専門家へ依頼するのがおすすめ!
税務DD(デューデリジェンス)はM&Aの成功にとって重要なプロセスです。その目的、手順、調査範囲、そして実施しなかった場合のリスクを理解することで、より効果的なM&Aを実現が可能です。
しかし、税務DDでは複雑な知識が必要とされ、適切にリスクを把握するためにも、専門家への依頼をおすすめします。専門家は適切な調査を行い、潜在的な税務リスクを明らかにし、M&Aの成功に向けた適切な戦略を提案してくれるでしょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。