M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年12月5日公開会社・事業を売る
M&AのSPA(株式譲渡契約書)とは?必要性や記載事項と契約時の注意点を解説!
M&AのSPAとは株式譲渡契約書のことです。株式譲渡はM&Aで最も多く用いられているスキーム(手法)であり、M&Aの当事者となれば目にする可能性が高いでしょう。本コラムでは、株式譲渡の契約書面であるSPAの必要性と注意点、記載事項などを解説します。
目次
M&AのSPA(株式譲渡契約書)とは
M&AのSPA(株式譲渡契約書)とは、Stock Purchase Agreementの略称です。株式譲渡はM&Aで多く用いられているスキーム(手法)であり、SPAには株式譲渡の成約内容が記載されます。
M&Aにおける株式譲渡とは、買収側が対象企業の過半数の株式を得ることで、その経営権を取得するスキームです。したがってSPAは、買収側となる企業または個人と、対象企業の株式を所有していてそれを売却する株主との間で締結されます。
M&AにおけるSPA(株式譲渡契約書)の必要性
株式譲渡に限らずM&Aでは、交渉過程でさまざまな取り決めをしていくため、それらをSPAとして書面化するのは必要性のあることです。
株式譲渡の当事者である買収側と株式譲渡側が、M&A交渉で合意した内容を文章で確認し、それらを順守することや保証することなどを約定するためにSPAは欠かせません。SPAによってM&Aの当事者それぞれの義務や責任が明確になり、仮に一方が契約に違反した場合に残りの一方が損を被らないようにできます。
M&AにおけるSPA(株式譲渡契約書)の基本的な記載事項
ここでは、M&AにおけるSPA(株式譲渡契約書)の基本的な記載事項を確認しましょう。細部の条項はそれぞれのSPAで異なるケースもありますが、M&AのSPAにおいて必ずある記載事項は以下の条項です。
- 合意内容
- 株式譲渡対価の支払い方法
- 譲渡側の表明保証
- 契約解除条件
- 損害賠償請求
- 競業避止義務
- 株式譲渡契約の合意管轄
M&AにおけるSPAの各記載事項の内容について説明します。
合意内容
SPAの記載事項における「合意内容」とは、M&A交渉において合意した株式譲渡の条件のことです。通常は以下の内容が合意内容として記されます。
- 株式譲渡者名
- 株式譲受者名
- 譲渡対象の株式(企業名)
- 譲渡株式の種類
- 譲渡株式数
- 譲渡対価
株式譲渡者名・株式譲受者名の記載では、住所や所在地も記載します。譲渡株式の種類は、通常、普通株式です。ただし、株式譲渡者が何らかの種類株式を所有していて、その種類株式も譲渡対象であれば、それも内容として記載します。
株式譲渡対価の支払い方法
M&AにおけるSPAの記載事項として「株式譲渡対価の支払い方法」も必須です。通常、振込先銀行口座として以下の内容が記載されます。
- 銀行名
- 支店名
- 口座番号
- 口座名義
- 振込金額
- 予定振込期日
振込期日については、M&A交渉で合意した付帯条件が満たされたときに実行されるため、あくまでも「予定」としての記載です。また、銀行振込以外の方法で対価が支払われる場合は、その内容が記載されます。
譲渡側の表明保証
M&AのSPAでは、「譲渡側の表明保証」も欠かせない記載事項です。SPAでの表明保証とは、以下の内容を表明し保証するという意味があります。
- 現在、株式譲渡に関わる情報として開示している内容に虚偽はないこと
- 現在、開示している情報以外に秘匿している情報はないこと
仮に株式譲渡側が何らかの重大な情報を隠していたり、虚偽の情報を伝えていたりすると、合意内容が変わったり買収側が株式譲受後、何らかの損害を被ったりする可能性があります。この条項は、そのような事態を防ぐことが目的です。
契約解除条件
M&AにおけるSPAに欠かせない記載事項には「契約解除条件」もあります。これは文字どおり、株式譲渡契約を解除する条件を示すものです。一例としては以下のようなものがあります。
- 株式譲渡側の表明保証違反
- 契約当事者の破産
- 株式譲渡の不成立
また、契約解除条件と合わせて契約解除後の事態収拾方法についても取り決めて記載します。一般的な例としては、対価の返還や株式の返却などです。
損害賠償請求
M&AにおけるSPAでは「損害賠償請求」も必ず記載される条項です。前述した契約解除が発生した場合、当事者はさまざまな意味で損害を被ります。また、契約解除以外でもSPAに記載されている内容にどちらかが違反すれば、相手方は損害を被る可能性もあるでしょう。
そこでSPAにおいて、過失者側に対して被害者側が損害賠償請求できる権利を認めることを記載します。
競業避止義務
M&AのSPAでは、買収側から株式譲渡側に対して「競業避止義務」が求められます。ただし、株式譲渡側が対象企業のオーナー経営者や役員の場合のみです。
競業避止義務とは、M&Aの譲渡対象となった企業と同一の事業を近隣地域で行わないことを意味します。これは、株式を譲渡した元経営者が新たに同一の事業を行う企業を立ち上げて、買収側の事業に悪影響が出てしまうのを防ぐためのものです。
株式譲渡契約の合意管轄
M&AのSPAで必ずある記載事項として「株式譲渡契約の合意管轄」もあります。これは、SPAの当事者間で法的トラブルが起こった場合に、どこの裁判所を管轄として審理を行うかを定めるものです。
一般的には、当事者の所在地にある地方裁判所とされます。ただし、SPAの当事者が同一都道府県の所在でない場合は協議が必要です。なお、裁判所の合意管轄はM&Aの契約書に限らず、どの契約書でも記載されます。
M&AにおけるSPA(株式譲渡契約書)の注意点
ここでは、M&AにおけるSPA(株式譲渡契約書)の注意点を確認しましょう。M&AのSPAについては、以下のような注意点があります。
- 事前の情報収集
- 印紙税が必要なケース
- 役員・従業員の処遇
- 競業避止義務への注意
- 契約内容の確認
- M&A専門家の起用
M&AにおけるSPAの各注意点について内容を説明します。
事前の情報収集
SPAに限らずM&Aの買収側では、最終合意に至る前までに譲渡側の情報収集と分析が重要です。そのためにM&Aでは、基本合意書の取り交わし後、最終交渉が行われるまでの間にデューデリジェンスが実施されます。
デューデリジェンスとは、買収側が譲渡側企業の経営状態を、専門家を起用して精査するものです。デューデリジェンスで問題が発覚しなければ、最終合意に至る流れとなります。
印紙税が必要なケース
SPAでは、収入印紙の貼付は必要ありません。つまり、印紙税はかからないのですが、例外となるSPAもあります。印紙税が発生するSPAのケースとは、SPAの作成・調印前にすでに対価が支払われているケースです。このようなケースのSPAでは、支払われた対価額に応じた所定の収入印紙を貼付しなければなりません。
役員・従業員の処遇
SPAに限らずM&Aでは、M&A成立後の譲渡側役員・従業員の処遇を明らかにしておくことも重要なポイントになります。
人口減少による人材不足が続く日本で、M&A後、人員整理が行われたり待遇が悪化したりすることは考えにくいですが、気をつけたいのは人材の流出です。M&Aに反発や不安感を持った人材が流出しないような処遇や対応を考えましょう。
競業避止義務への注意
SPAに競業避止義務が盛り込まれる場合、譲渡側としては、合意内容に注意する必要があります。買収側としては、できるだけ自社に有利な条件を求めるでしょう。
仮に譲渡側がM&A後、リタイアを決めているのであれば、どのような競業避止義務内容でも構いません。しかし、新たに同一事業を始めたい意思がある場合は、競業避止義務の条件をとことん協議する必要があります。
契約内容の確認
SPAに限らず契約書は、細部まで確認が必要です。口頭で合意していた内容が、文章化すると解釈の食い違いが発覚するケースもあります。
また、契約書は独特の表現や法律に基づいた内容などが記載されるものであり、法律の専門家でないと分からないこと、気づけないことが含まれているかもしれません。したがって、SPAの内容確認を行う際は、必ず弁護士にチェックを依頼することが肝要です。
M&A専門家の起用
SPAをはじめとするM&Aでは、専門家の起用が欠かせません。M&Aは専門的な知識を要するプロセスを経て進み、スキームが株式譲渡の場合、その集大成がSPAです。各M&Aプロセスを円滑に、そしてできるだけ自社が不利にならないように行うには、専門家の適切なアドバイスとサポートが必要になります。
M&AのSPA(株式譲渡契約書)で発生する手続き
最後に、M&AのSPA(株式譲渡契約書)で発生する手続きについて確認しましょう。M&AでSPAを進める場合、以下の手続きが発生します。
- 株式譲渡承認手続き
- 株主名簿の書換え請求と確認手続き
それぞれの手続き内容について説明します。
株式譲渡承認手続き
日本の非上場企業の株式のほとんどは、譲渡制限株式になっています。譲渡制限株式は、株主の自由意思で好き勝手に売買できません。M&Aのようなケースで譲渡制限株式を売却しようとする株主は、当該企業から承認を得なければならないのです。
非上場企業が自社株式に譲渡制限をかけている理由は、企業およびその経営陣が知らないところで株式の売買が行われ、企業にとって好ましくない相手が株主となることを防ぐ狙いがあります。
譲渡制限株式の譲渡承認手続きプロセスは以下のとおりです。
- 株主による企業への株式譲渡承認請求書の提出
- 企業側の決定機関による株式譲渡承認請求に対する決議の実施
- 企業から株主への株式譲渡承認請求に対する決議内容の通知
締役会設置企業の場合、決議は取締役会が行います。過半数の賛成で承認決議です。取締役会非設置企業の場合は、臨時株主総会を開催して決議しなければなりません。普通決議で株式譲渡が承認されます。
株主総会の普通決議とは、過半数の株主が出席し、出席株主の過半数が賛成する決議のことです。なお、必要な出席株主数(定足数)は定款での変更が認められています。
企業は、株主による株式譲渡承認請求を受けてから2週間以内に決議を行い、その内容を通知しなければなりません。2週間以内に通知が行われないと、自動的に株式譲渡が承認されたことになります。
また、株主は企業側が株式譲渡不承認の決議を行う場合に備えて、株式譲渡承認請求書に「企業または企業の指定する買取人による株式の買取り請求」を併記することが可能です。その場合、企業側による株式譲渡不承認の通知後、株主と企業または企業の指定する買取人による株式の買取り交渉が行われます。
株主名簿の書換え請求と確認手続き
株主名簿の書換え請求と確認手続きが必要な理由は以下のとおりです。2004(平成16)年の会社法改正により、現在、株式会社の株券は不発行が原則となっています。したがって、株券の所有による株主の証明ができません。
株主が株主であることを証明するには、企業が管理する株主名簿に名前が記載されている必要があるのです。M&AでSPAを締結した場合、株式を譲渡された買収側は新たに株主名簿へ記載されなければならず、そのための手続きを行います。
株主名簿の書換え請求と確認手続きのプロセスは以下のとおりです。
- 旧株主と新株主の連名による当該企業への株主名簿書換え請求書の提出
- 企業側による株主名簿書換え作業
- 新株主による株主名簿記載事項証明書発行請求書の提出
- 企業より新株主へ株主名簿記載事項証明書を発行
第1のプロセスである株主名簿書換え請求書提出の際、必ず旧株主と新株主の連名で行うことが必須のポイントです。
M&AのSPA(株式譲渡契約書)まとめ
M&Aを株式譲渡によって行う場合、SPA(株式譲渡契約書)は最重要の書類です。株式譲渡によるM&Aを検討している場合は、SPAの記載事項とその意味、注意点などを事前に把握しておくと役立つでしょう。いずれにしても、M&Aの検討・実施においては、専門家のアドバイスやサポートを得ながら進めるのが得策です。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。