M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月26日更新業種別M&A
SaaS業界のM&A・事業承継の動向!注意点や事例も解説【2024年最新】
SaaSの多様化に伴い、今後も多様なニーズを見据えたM&A・事業承継が実施される見込みです。SaaS業界でM&A・事業承継を考える際は、業界動向を分析しつつ、今後の展望を見据えることが大切です。SaaS業界のM&A・事業承継の最新動向や買収・売却事例を紹介します。
目次
SaaS業界の最新動向
まずは、SaaS業界の最新動向をお伝えします。
国内のSaaS業界の市場規模
日本のSaaS市場は2023年に1.4兆円に達すると予測されています。2020年以降、見通しが何度も上方修正されており、SaaS市場の拡大は今後も続く見込みです。2027年には市場規模が2兆円を超え、2023年から2027年までの年平均成長率(CAGR)は11%になると予想されています。
成長が特に顕著なカテゴリとして、ERPや会計ソフト、人事・給与管理ツールなどを含む「業務システム」分野のCAGRは15.5%と高い数値が見込まれています。これは、インボイス制度の導入や人的資本経営への転換が成長の後押しをしていると考えられます。
また、RPAやOCR、ローコード/ノーコードなどの「プラットフォーム/インフラ」分野もCAGR13.4%と高成長が期待されており、今後AI技術の普及によってさらに市場拡大が加速する可能性があります。
世界のSaaS業界の市場規模
総務省 「令和5年版情報通信白書」
出典:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/pdf/index.html
総務省による令和5年版情報通信白書では世界におけるSaaSの市場規模は2021年で1,399億ドルでした。ユーザーの継続的な利用傾向が強く今後も高い成長性が見込まれています。
ニーズの高まり
急速に成長しているSaaS市場ですが、既存の企業だけでなく新規企業も多く参入しており競争が激化しています。その中でM&Aの動きも活発化しています。
人材不足
様々なデータを扱うSaaSサービスはセキュリティ対策やユーザーニーズに応えるための優秀なエンジニアやセールス人材が必要ですが、人材が不足している状態です。今後、事業を拡大していくために人材の確保が重要になってきます。
SaaS業界のM&A・事業承継の動向
SaaS業界では、ニーズの高まりを踏まえて、サービス体制の強化・新分野への参入を目的とするM&A・事業承継の実施が増加しています。
同業者同士のM&A・事業承継
「同業者同士のM&A・事業承継により、双方の技術・ノウハウを生かす形でサービス体制を強化する」といった事例が典型的です。
特にIT関連分野では、ニーズの傾向が目まぐるしく変わるため、市場の動向や需要の増加などに関して、自社ですべてに対応することは難しいです。こうした状況では、「他社とのM&Aにより事業の強化・拡大につなげて、需要の取り込みを進める」選択肢が効果的だとされています。
新規事業参入のためM&A・事業承継
新分野へ参入したい場合、自社でゼロから事業に着手すれば、多くの時間・手間がかかります。そのため、「特定分野ですでに事業を軌道に乗せている企業とM&A・事業承継を行い、比較的短期間で新規参入を果たして需要の取り込みを狙う」ケースも増加中です。
イグジットによるM&A・事業承継
SaaS業界は短い期間で市場開拓を行い、M&A・事業承継によってイグジットを目指している企業も少なくありません。イグジットにより獲得した資金により、新しい事業を行ったり、老後の資金として活用したりすることができます。
SaaS会社をM&A・事業承継するメリット
SaaS業界でM&A・事業承継を行うメリットも把握しておきましょう。SaaS業界を対象とするM&A・事業承継は、当事会社の双方にさまざまな効果を与えます。ここでは、SaaS業界でM&A・事業承継を行うメリットをまとめました。
譲渡側のメリット
はじめに紹介するのは、譲渡側のメリットです。
後継者問題の解決
中小企業の多くは事業継続可能にも関わらず、後継者がいないため廃業の選択をしています。廃業の選択をした場合、自社の技術やサービスが失われるだけでなく、廃業の費用もかかります。
しかしM&Aによって事業承継ができれば、自社のサービスを継続できるだけでなく、従業員の雇用を守り、創業者利益を獲得することができます。
個人保証の解消
中小企業の経営者は業種を問わず、金融機関から借入の際に個人保証を負うケースは少なくありません。個人保証は資金調達ができメリットである一方で、経営者や家族にとっては大きなストレスや負担になります。
M&Aにより個人保証が解消されることは大きなメリットになります。
経営の安定化
M&Aにより会社を売却することで、買い手側とのシナジー効果によりコストを下げたり、売上アップが期待できたりするでしょう。
自社よりも大きな資本を持つ企業の傘下になることで、ネームバリューやリソースを得ることができ、資金調達などもしやすくなります。また、弱点を補うこともできるため競争が激化するSaaS業界で勝ち残ることも可能となります。
譲受側のメリット
次に紹介するのは、譲受側のメリットです。
新規事業への参入
SaaS事業を新しく立ち上げようとした場合、人材やノウハウ、取引先の開拓などが必要なため膨大な時間と費用が必要になります。M&Aによって経営資源を獲得することで、短い期間で新たな事業へ参入することができます。
シナジー効果
M&Aではシナジー効果を期待できます。自社と相手企業の強みや弱みをしっかり理解することで弱点を補強し成長スピードを短縮することが可能です。
人材の獲得
SaaS業界では人材不足が課題として挙げられますが、M&Aを活用することでこの課題を解消することが可能です。また、育成しなくても一定のスキルを持ったエンジニアやセールスを獲得することができます。
SaaS会社をM&A・事業承継するデメリット
SaaS業界のM&A・事業承継ではさまざまな恩恵が得られるものの、その一方でデメリットも少なからず存在するため注意が必要です。本章では、譲渡側・譲受側に分けて詳しく取り上げます。
譲渡側のデメリット
SaaS業界のM&Aで譲渡側が問題視するデメリットは、主に以下のとおりです。
- M&Aに不満を抱いた従業員が離職するリスク
- 従業員の待遇や雇用条件が悪化するおそれ
- 経営から離脱し肩書を消失する
上記のデメリットは、主として相手企業との交渉プロセスにおける失敗が原因となり生じます。交渉をスムーズに成功させるためにも、M&Aによる譲渡の際は専門家のサポートを得ると良いです。
譲受側のデメリット
SaaS業界のM&Aで譲受側が問題視するデメリットは、主に以下のような項目です。
- 想定していたシナジー効果が得られないリスク
- 生産性が低下するうえに買収費用ばかりがかさむ可能性
- 譲渡側企業の人材流出が起こるおそれ
上記のデメリットは、主にマッチングおよび経営統合プロセス(PMI)の失敗が原因となり発生します。自社が譲受するにふさわしい相手企業を見つけるため、そして経営統合をスムーズに進めてメリットを最大限に獲得するためにも、譲渡側と同様に専門家のサポートを得ると良いでしょう。
SaaS会社のM&A・事業承継における注意点
SaaS会社のM&A・事業承継における主な注意点をまとめました。
情報漏えい
M&A実施を公表するタイミングは最終契約締結後が一般的です。その前に会社売却の話が広まってしまうと不安に思った従業員の離職やや取引先との取引停止などを招く恐れがあります。
M&Aを勧める際は会話や資料の扱いには厳格に行いましょう。
M&Aのスピード
SaaS事業をはじめとするIT業界はM&Aの成約までの期間が早い傾向にあります。そのためM&Aでのスピード感を意識することが重要です。売り手、買い手の双方に大きな相違がない場合トップ面談からクロージングまで最短3ヶ月で成約する場合があります。
目的の明確化
M&Aでは全ての条件を希望通りに進めることは困難です。そのため、絶対に譲れない条件や妥協しても良い条件を決めておくことで、M&Aをスムーズに進めることができます。
目的が明確化していれば、具体的なM&A戦略のもとで適切なM&Aスキームを検討できるため、方向性が定まりやすいです。
M&A仲介会社へ相談
M&Aには交渉、契約締結、バリュエーション、デューデリジェンスといった専門的な作業が必要になります。そのため、M&A実行にはM&A仲介会社などの専門家のサポートを受けることが一般的です。
M&A仲介会社は相談無料であることが多いため、検討を始めたら相談してみましょう。
SaaS業界のM&A・事業承継の成功ポイント
多くの企業がM&A・事業承継の実施を検討していますが、成功させるにはポイントを押さえて実践しなければなりません。本章では、SaaS業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功ポイントを、「売却・買収」の2つのケースに分けて取り上げます。
売却を行うケース
売却を成功させるには、相手に自社の魅力を十分にアピールしなければなりません。買い手側から見て魅力的な事業やサービスを自社が手掛けていれば、多くの企業が買収に名乗り出る可能性があります。希望どおりの条件で売却するためにも、自社の魅力・強みを理解してもらう必要があるのです。
特にSaaS業界の場合、新分野への参入やサービス体制の強化を目的にM&Aを行うケースが目立っています。そのため、魅力的なサービス体制や技術などを有していれば、多くの買い手が見つかりやすいです。具体的には、自社が特化する事業やエリアなどの魅力・強みをわかりやすく伝える準備を進めましょう。
買収を行うケース
SaaS業界では、双方の技術・ノウハウを生かす形でシナジー効果の創出を図るM&Aが多く見られます。こうした目的を持つ買収を成功させるには、自社が強化すべき事業や分野を事前に整理したうえで、いかなる企業を買収するべきかを慎重に検討しなければなりません。
このとき、強化したい分野などの目的がはっきりしていれば、適切な相手企業を探しやすくなります。ニーズの動向も踏まえながら、「いかなる部分を強化するべきか」「いかなる分野に進出するべきか」といったポイントを再確認して、買収すべき企業を検討しましょう。
売却・買収を問わず、M&Aでは専門家のサポートを得ながら手続きを進めることも成功ポイントのひとつです。M&Aを進めるには税務・財務・法務だけでなく、SaaS業界特有の専門知識も求められます。希望どおりの条件で取引するには交渉能力も必要とされるため、経営者のみで進めるとリスクが大きくなります。
M&A仲介会社などの専門家に依頼してサポートしてもらうことで、リスクを軽減しながら成功確率を高められます。SaaS業界のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。
M&A総合研究所には、M&Aに関する知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、M&Aをフルサポートいたします。
通常、M&Aでは半年〜1年程度の期間が必要とされていますが、M&A総合研究所ではスピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月での成約実績も有しています。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ、じょう)。相談料は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
SaaS業界のM&A・事業承継の相場
SaaS業界では、技術やシステムの多様化や需要の動向などに応じて、M&A・事業承継の事例が多様化しています。そのため、M&Aの相場・費用を一概に判断することは非常に困難です。とはいえ、M&Aに際して相場・費用をまったく考慮しないとなると、想定外の費用が発生しかねません。
上記の事態を防ぐためにも、自社と類似する企業のM&A事例を分析し、相場・費用の目安を付けておく必要があります。具体的には、M&A事例の目的・M&A当事者となる会社の規模・対象事業の規模・会社の業績・従業員の数・M&Aスキームなどを確認し、自社の状況と類似する事例を徹底的に分析すると良いでしょう。
SaaS会社のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っているSaaS会社のM&A・事業承継の案件例をご紹介します。
システム開発・ソフトウエア業【SaaS系PMツール(業務・プロジェクト管理)】
昨今の社内DX化の波との親和性が高く、多くの高評価を受けています。競合サービスと比較し、高度なPMリテラシーを必要としないため幅広いユーザー層で利用可能です。
エリア | 東京都 |
売上高 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡希望額 | 応相談 |
譲渡理由 | 資金力や営業力、マーケティング力の獲得を主な目的として譲渡を検討。 |
【SaaS/高収益/クラウド型サービス】生産管理システムの開発・販売業
導入後のメンテナンスが必要なく、高いストック収入が見込めます(営業利益率80%越え)。様々な市場へのアプローチが可能であり、持続的成長が見込めます。
エリア | 近畿 |
売上高 | 〜1000万円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 戦略の見直し |
SaaS会社のM&A・事業承継の成功事例
本章では、SaaS業界のM&A・事業承継の成功事例を取り上げます。
fonfunによるイー・クラウドサービスの株式取得
2024年7月30日、fonfunはイー・クラウドサービスの全株式を取得し、完全子会社化することを決定しました。fonfunはインターネット対応携帯電話向けサービスを展開しており、イー・クラウドサービスは飲食店向け日次決算プラットフォームのSaaS事業を行っています。
この買収により、fonfunはテックカンパニーとして再成長を図り、DX事業を強化することを目指しています。特に、飲食業界向けのクラウドサービスに注力し、勤怠管理ソリューションを活用してスピーディーな損益計算を実現するなど、業界特化型のHRテック領域もカバーしています。
さらに、飲食業界の復調傾向を背景に、安定した収益貢献が期待できるとし、業績の成長に寄与すると判断してM&Aを進めたものです。
NTTデータグループによるProvenTech社の買収
2024年6月11日、株式会社NTT DATA, Inc.は、子会社であるNTT DATA Business Solutions AG(NDBS社)を通じて、インドのProvenTech Consulting Private Limited社を買収することで最終合意しました。
NTT DATA, Inc.は、グローバル事業の戦略策定や推進を担い、50カ国以上でITサービスを展開しています。NDBS社は、SAP関連のコンサルティングやシステム開発などを提供しています。
ProvenTech社は、製薬・ライフサイエンス分野向けにコンサルティングやシステム導入を行う企業で、SaaSソリューションも提供しています。
この買収により、NTT DATA, Inc.はProvenTech社の専門知識や顧客基盤を取り込み、グローバルなSAPケイパビリティを活用しながら、顧客の成長とイノベーションを促進することを目指しています。
fonfunによるゼロワンのSaaS事業取得
2024年3月、fonfunはゼロワンが営むノーコード業務アプリ開発SaaS事業を譲受することを発表しました。
fonfunは中期計画にてテックカンパニーとして再成長するため基盤強化に重点を置くとしています。
ゼロワンのノーコード業務アプリ開発SaaS事業は、顧客のDX推進におけるシステム開発の生産性を大幅に向上させるソリューションです。CRM領域での豊富な実績があり、当社のSMS事業との高いシナジー効果も期待できます。
今後、SaaS型サービス提供に加え、業務コンサルティングやインテグレーションを組み合わせて顧客の業務課題解決を支援していくとしています。
エフ・コードによるSAKIYOMI事業の新設分割
2023年3月、エフ・コードはSAKIYOMIが運営するSAKIYOMI事業を新設分割し新会社の全株式を取得することを発表しました。
エフ・コードはDX・デジタルマーケティング領域のCX SaaS事業およびその蓄積データのサービスを提供している会社です。
SAKIYOMIは、未経験者でもプロの運用が可能なInstagramマーケティングSaaS「SAKIYOMI」を提供しています。本質的な分析を可能とするダッシュボードや、運用セオリーのコンテンツ、デザインテンプレート、会員限定コミュニティを通じて、Instagram集客を支援しています。
今回の株式取得により、Instagramに関する支援を当社の既存顧客にも提供できるようになり、譲受事業の顧客にはより広範なマーケティング支援が可能となります。SAKIYOMI事業で蓄積したInstagramの分析データやノウハウを活用し、当社グループによる最適なCXの提供と顧客価値の最大化を目指すとしています。
リビン・テクノロジーズによるコスモテ クノロジーのSaaS事業取得
2023年2月、リビン・テクノロジーズはコスモテ クノロジーが運営する不動産管理会社向け業務支援 SaaS「BAIZO KANRI」を譲受することを発表しました。
リビン・テクノロジーズは「住生活領域でマッチングサービスとDXサービスを軸に不動産プラットフォーム事業を展開しています。
コスモテクノロジー社から譲受する「BAIZO KANRI」は、不動産管理会社が不動産オーナーへの営業アプローチやコミュニケーションを一元化し、新規管理物件獲得をワンストップでサポートする有益なWEBソリューションです。
今回の譲受により、これまでの不動産仲介会社向けのサービスだけでなく不動産賃貸管理という新たな事業への足掛かりになるとしています。
エフ・コードによるメディアリンクのSaaS型ウ ェブチャットシステム事業取得
2022年10月、エフ・コードはメディアリンクのSaaS型ウ ェブチャットシステム事業「sinclo」に関する事業の、マーケティング用途事業を譲受することを発表しました。
エフ・コードはDX・デジタルマーケティング領域のCX SaaS事業およびその蓄積データのサービスを提供している会社です。
メディアリンク株式会社からの事業譲渡により、顧客企業へのプロダクトやサービスが拡大し、CXデータの質と量が向上すると見込んでおります。また、当社のSaaS事業やデジタルマーケティング事業の知見を活用し、相互補完や顧客へのサービス提供によるシナジー効果も期待されるとしています。
エフ・コードによるコミクスが行うSaaS事業取得
2022年2月、エフ・コードによるコミクスが行うSaaS事業を譲受することを発表しました。
エフ・コードはDX・デジタルマーケティング領域のCX SaaS事業およびその蓄積データのサービスを提供している会社です。
コミクスからSaaS事業を譲り受けることで、顧客企業への提供プロダクトとサービスが拡大し、CXデータの質と量が向上すると見込んでおります。また、当社のSaaS事業とデジタルマーケティング事業の知見を活用し、相互補完や顧客へのサービス提供によるシナジー効果も期待されるとしています。
日立製作所によるFusionex International PlcのSaaS事業取得
2020年4月、日立製作所は、Fusionex International PlcのSaaS事業を承継した新会社を完全子会社化しました。本件買収価格は非公開です。買収側の日立製作所は、日本の電機メーカーであり、日立グループの中核企業です。世界有数の総合電機メーカーとして知られています。
対する売却側のFusionex International Plcは、マレーシアに主な拠点を持つ企業で、AI・ビッグデータのマーケットリーダーとしてアジア地域を中心にAIやデータアナリティクスのSaaS型サービスを提供しています。
本件M&Aの目的は、データサイエンティストやAI開発・構築エンジニアといったデジタル人財の獲得などによる、フロント機能およびデリバリー機能の強化にあります。
なお、日立製作所は従来、「2021中期経営計画」において社会イノベーション事業のグローバルリーダーを目指していました。ITセクターでは、北米・アジアを重点地域として積極的な成長投資を行う計画を掲げており、今回の投資はその一環であると発表されています。
SaaS業界のM&A・事業承継の失敗事例
SaaS業界のM&A・事業承継では、現段階で目立った失敗事例は報告されていません。しかし、過去には、優秀な従業員の離職を起こしてしまったSaaS企業が少なからず存在します。所属企業が変更になり待遇・環境などに変化が生じたことで不満を持った従業員が離職するケースは、SaaS業界のM&Aにおいて珍しくありません。
こうしたトラブルは、経営者からすると「M&Aで期待していたメリットを得られず、人手不足に陥ってしまい、事業運営が困難になりかねない」デメリットを引き起こします。人材流出を防ぐには、M&Aにおいて、待遇をはじめとする条件面・就労環境面などに十分に配慮しなければなりません。
加えて、自社と相性の良い相手企業を選ぶことも大切です。具体的には、意思決定のスピード感・志の高さ・組織の雰囲気などが同じ方向を向いている企業を選ぶと、M&A後に従業員から不満があがりにくくなります。企業文化や経営者同士の人間的な相性も吟味したうえで、最適なM&A相手を選びましょう。
SaaS業界におけるM&A・事業承継で人気のあるタイプ
昨今のSaaS業界を対象とするM&A・事業承継において、買収側企業からは以下の分野が特に注目を集めています。
- マーケティング
- データ解析
- 文章・プロセス管理
- EC(Electronic Commerce:電子商取引)
- ストレージ・システム管理
- 請求書作成
- セキュリティ
上記の分野は、近年急激に需要が高まっており市場の拡大が続いていることで共通点です。魅力的に感じる買収候補企業が多いため、これらの分野を手掛けているSaaS企業であれば、満足のいくM&A取引を行える可能性が高いと考えられます。
SaaS業界のM&A・事業承継に積極的な企業一覧
本章では、SaaS業界の積極買収企業を5社紹介します。これらの、企業はSaaS業界を対象とするM&Aで有力なパートナー候補に位置づけられているため、概要を把握して自身のM&A戦略策定にお役立てください。
企業名 | 事業概要 | アピールポイント |
ナレッジスイート | 中堅中小企業向けCRM/SFAクラウドサービス「ナレッジスイート」などのSaaSを提供するDX事業および、システム開発やIT技術者派遣を行うBPO事業を展開 | ・中小企業に的を絞ったCRM/SFAの導入や構築をサポートすることで安定した業績を実現可能 ・M&Aのほか、出資、事業提携も含めて迅速に判断可能 |
ウィクレソフト・ジャパン | Microsoft社のクラウドサービス導入コンサルティングのほか、構築サービスを行う「MS事業」、会計/生産管理/販売管理などシステム開発を行う「SI事業」、エンジニア派遣の「SES事業」などを展開 | ・世界23拠点のネットワークを持つWicresoftグループの日本法人 ・グループ力を生かしたエンジニアリソースやノウハウが特長 ・WicresoftはMicrosoft社とパートナー関係を構築 |
グッドパッチ | ・サービスや事業のUI/UXデザインを手掛け、戦略策定からソフトウェア開発まで一気通貫でサポート ・クラウドソーシング、キャリア支援などデザイン領域のさまざまなニーズに対応する自社プロダクトも展開 |
・国内では希少なデザイン専門人材が約200名在籍 ・デザインの力で顧客開拓、単価向上、サービス品質向上による価値提供が可能 ・広報、組織デザイン、上場準備の面でも経験にもとづく知見を保有 |
NHN テコラス | ・創業から20年間にわたり、ITインフラ・ソリューションを提供 ・パブリッククラウドと物理サーバーのいずれにも精通したプロフェッショナルとして、顧客のビジネスに新たな価値を提供 |
過去3,000社以上、10,000台を超えるサーバーを運用してきた実績とノウハウ |
イグニション・ポイント | ・戦略、企画から実行までを手掛けるコンサルティングのほか、AI/クラウド/ビッグデータ/IoTなどの先端テクノロジーを活用した自社事業展開を行う"ハイブリッド"スタートアップ | ・「働きがいのある会社」ベストカンパニーに4年連続で選出 ・6期連続で売上前年比150%超えのイノベーションファーム ・マッキンゼー、BCG、ATカーニー、アクセンチュアなどグローバルファーム出身者が集う |
SaaS業界のM&A・事業承継まとめ
企業の労働生産性の向上につながるSaaSは、近年さまざまなビジネス領域で導入されています。あらゆる分野での業務効率化を目的として、今後ともSaaSの需要はますます増加していく見込みです。
こうした動向の中、M&A・事業承継によって事業の強化・拡大やサービス体制の強化などを実現して、需要の取り込みを図るSaaS事業会社が増加しています。M&Aを用いれば、両社の技術・ノウハウを生かす形で事業の発展につなげられるため、さまざまなニーズへの対応力強化も期待可能です。
今後はSaaSの多様化に伴い、さまざまなニーズを見据えたM&A・事業承継が加速する可能性があります。SaaS業界でM&A・事業承継を考える際は、業界動向やM&A事例を分析しながら、今後の展望を見据えた検討を進めましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。