M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年7月30日更新業種別M&A
保険代理店業界の動向とM&Aのメリット!流れや注意点と売却・買収事例10選を解説【2024年最新】
保険代理店業界は、市場規模が縮小傾向にある一方、保険ショップ型店舗やインターネットを活用した契約などで競争は激化している状況です。この記事では、本記事では、保険代理店のM&Aを実施する際のポイントや方法などを紹介します。
目次
保険代理店の概要
保険代理店のM&Aについて述べる前に、業界定義や保険代理店の業務内容など、概要を解説します。
保険代理店業界の定義
保険代理業界とは、顧客と保険会社の間に入り、保険に関するさまざまなサービスを提供する業界を指します。保険代理店は家を買うケースに置き換えると、不動産業者に近いイメージで「保険の仲介会社」の役割を果たします。
保険契約は契約者本人と保険会社が結びますが、保険会社に代わって顧客に対して保険の紹介や保険契約の手続きの説明などをするのが保険代理店です。そのため、保険代理店は専門性の高い内容を扱うこともあります。
保険代理店の業務内容
保険代理店は、主に下記のサービスを顧客に提供します。
保険商品の紹介・アドバイス
保険代理店では、取り扱う保険商品の紹介やアドバイスのほか、重要説明事項の説明、商品によっては補償が受けられない場合などの注意喚起もします。
保険代理店で取り扱う保険商品は主に以下の2種類です。保険代理店は、このうちのいずれかあるいは両方の代理業務を行います。
- 医療保険、がん保険、死亡保険、介護保険などを取り扱う「生命保険」
- 自動車保険、火災保険、地震保険などを取り扱う「損害保険」
保険契約の締結、契約内容の変更・解約
保険契約締結に関する手続きを代行する業務です。契約後も契約内容の変更・契約解除の受け付けなど、保険会社の代わりに保険契約に関する手続きも含まれます。
保険金の請求
保険会社に代わって保険金の請求を行うのも業務のひとつです。契約者は給付金などの手続き内容を把握していないこともあるため、保険代理店が給付金・保険金の請求案内などのサポートなども行います。
また、保険契約の被保険者が事故に遭った場合や死亡した場合などはアドバイスを行い、適切な給付金・保険金の受取りへとつなげます。
顧客にとって保険代理店は、さまざまなリスクに対処するうえで頼れるパートナーです。幅広い状況に適切に対応できる従業員を多く抱えている保険代理店は、M&Aの買収側にとって魅力的に映ります。
保険代理店の種類
保険代理店は、以下のように種類分けできます。
①業務形態:専業代理店と副業代理店
保険代理店は、「専業」または「副業」で大別できます。
「専業代理店」とは、保険の販売を専門に実施している会社でを指し、一方の
「副業代理店」は、ほかの事業を手掛けながら保険商品の販売も行う会社です。
主力事業に関連する保険のみを取り扱っている保険代理店であれば、専業に分類され、旅行保険を取りそろえる旅行業者は副業代理店となります。
②商品提供:専属代理店と乗合代理店
別の視点では、保険代理店は「専属」と「乗合」の2つに大別されます。ここでいう「専属代理店」とは、特定の保険会社一社から商品販売を委託されている会社です。ある一社の商品のみを販売しているため、顧客はきめ細やかなサポートを受けられます。
一方で「乗合代理店」は、複数保険会社の商品を取り扱う保険代理店です。顧客側は、複数企業の商品から自分に合った保険を選択できる点にメリットがあります。
計4パターンの代理店が存在する
①と②は異なる分類の仕方であるため、保険代理店には「専業で専属」「専業で乗合」「副業で専属」「副業で乗合」4パターンがあります。
例えば、大手の「ほけんの窓口」や「保険見直し本舗」は、「専業・乗合」の業者です。保険代理店にはさまざまな種類があるため、保険代理店を売却したい場合は自社の種類を確認しておく必要があります。また、保険代理店を買収したい場合は自社に必要な種類はどれなのかをよく検討しなければなりません。
保険代理店のM&Aをご検討されている場合は、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼することがおすすめです。M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを活かしてM&Aをサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aをご検討される際にはお気軽にご相談ください。
保険代理店の市場動向
保険代理店の市場規模
2022年度においての生命保険の市場規模は共済各団体と民間各所の年間生命保険料ベースでは約31兆円となりました。
ユーザーニーズとしては高額な死亡保障は低下しており、個人保険の保有契約高は1996年度をピークに減少傾向が続いています。ニーズとしては医療保険やがん保険へと変わってきています。
一般社団法人日本損害保険協会 「日本の損害保険 ファクトブック2023」
出典:https://www.sonpo.or.jp/report/publish/gyokai/ev7otb0000000061-att/fact2023_full.pdf
一方、損害保険の市場規模は正味収入保険料で9兆1,195億円となっており増加傾向です。近年は大規模震災などが増加しており、火災保険のニーズが高まってきております。
参考:一般社団法人日本共済協会「日本の共済事業ファクトブック2023」
一般社団法人生命保険協会 「2023年版生命保険の動向」
一般社団法人日本損害保険協会 「日本の損害保険 ファクトブック2023」
保険代理店の減少
保険代理店の数は2015~2021年度にかけて減少傾向となっており、個人代理店は7年連続で減少しています。損害保険代理店の数をみると、2008年度には217,864店あったものが2021年度は160,463店までに減少しました。
縮小傾向が続いている保険代理店市場ですが、その大きな要因として考えられるのは少子化によるマーケット規模の縮小です。そのようななか一部形態の代理店は勢力を拡大しており、業界内では競争が激化してきました。
東京商工リサーチの「 2023年上半期(1-6月)「保険代理業の倒産動向」調査」によると生命保険、損害保険を扱う保険代理店業の倒産が2023年上半期で16件(前年同期比+166.6%)と大幅に増加しています。人口が減少しており、保険市場はネット完結型への移行や大手企業の出店に加えコロナ禍での対面による営業販売が難しくなったことが理由として挙げられます。
保険代理店のなかには、業界内で生き残るための戦略として、M&Aを行うケースも増えてきています。
参考:一般社団法人生命保険協会「2022年版 生命保険の動向」
参考:一般社団法人日本損害保険協会「日本の損害保険-ファクトブック」
ダイレクト販売型業者の台頭
ダイレクト販売型とは、ネットで保険商品を販売する形態です。ダイレクト販売型の業者は、約10年前から勢力を急成長させています。特に自動車保険業界ではその傾向が顕著にみられ、2005年から2012年までの8年間でダイレクト販売の売上高が急激に増加しました。
生命保険業界でもダイレクト販売のニーズは高まっており、近年はライフネット生命をはじめとしてダイレクト販売型の業者が多数参入しています。
ダイレクト販売が拡大した要因と考えられのは、気軽に保険商品を購入できる点です。今後はネットに親しみのある世代が増加していくため、ダイレクト販売のニーズはさらに高まると予想されます。
保険ショップの台頭
ダイレクト販売と同程度かそれ以上に勢力を拡大しているのが、保険ショップです。保険ショップとは、店舗を保有したうえで保険商品を取り扱う乗合型の業者をさします。
従来は、セールスマンが各家庭に訪問販売する形が一般的でしたが、近年は共働き世代の増加により訪問販売が困難になり、顧客自ら店舗に出向く形の代理店が人気を集めています。
存在感を急激に高めた点も、保険ショップが成功した理由です。テレビCMなどの広告宣伝や多数の店舗出店により、短期間で市場での存在感向上に成功しました。
CMでも有名な「ほけんの窓口」の急成長もあり、現在は多くの業者が保険ショップの形で新規参入しています。来店型保険ショップの市場規模は急速に拡大しており、この傾向は続く見込みです。
法改正による影響
ダイレクト販売型業者や保険ショップが売り上げを伸ばすなか、廃業を選択する事業者も少なくないのが保険代理店業界の現状です。
2007年には、金融機関での保険の取り扱いが解禁されたことで業界での競争が激化しました。さらに2016年には改正保険業法が施行され、体制整備が義務化されました。また、iDecoやNISAにより貯金型保険のニーズが減少したことも影響しています。
そのため、競争激化や管理コスト増加など変化に対応できない事業者のなかには、廃業を選択するケースもみられます。
保険代理店業界のM&A動向
本章では、保険代理店業界に関係するM&Aの動向を紹介します。保険代理店業界のM&A動向の大きなポイントは以下のとおりです。
①大企業のM&Aによる勢力拡大
近年は大企業のM&Aによって勢力拡大を図る動きがみられ、特に来店型保険ショップが勢いを増しています。大手保険会社「日本生命保険」は「ほけんの110番」や「ライフサロン」をM&Aにより買収しており、楽天が運営している「楽天生命」もM&Aによって会社化したものです。
大手企業は、M&Aによって事業を買収して豊富な経営資源で急成長させている状況であり、このようなM&Aによる多角化戦略が保険ショップ急成長の一因となっています。
②中小規模の保険会社同士のM&Aも増加
また、保険会社同士のM&Aも増加しています。少子化などの影響で保険代理店の市場は縮小していますが、その一方で大企業のM&A戦略などで競争は激化している状況です。
中小保険代理店は市場での生き残りをかけ、同業種間でM&Aを実施するケースも増えてきました。M&Aを行うことで事業規模の拡大ができ、販売コストの減少・販路の拡大・市場シェア拡大などのメリットに期待できます。
③事業承継目的のM&Aの増加
現在、国内の中小企業では経営者の高齢化が進んでいます。保険代理店業界でも事業承継のタイミングを迎えている中小規模の事業者は多いですが、後継者不在によって事業承継ができないケースも多いです。
もし事業承継しなければ廃業せざるを得ませんが、近年はM&Aが広く認知されたことなどもあり、M&Aによって第三者に事業を引き継ぐケースも増えてきています。
「保険代理店を経営しているけれど後継者がいない」という場合はM&Aによる事業承継を検討するとよいでしょう。
保険代理店のM&AはM&A総合研究所へご相談ください
M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中小・中堅企業のM&Aを主に取り扱っており、専門的な知識とM&Aの経験が豊富なアドバイザーがフルサポートします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。電話やWEBでのご相談は無料ですので、M&Aをご検討の際はお気軽にお問い合わせください。
保険代理店M&Aのメリット
まずは、保険代理店がM&Aを実施するメリットとして代表的なものをピックアップし、売り手側・買い手側の立場に分けて解説します。
売り手側のメリット | 買い手側のメリット |
・M&Aによる売却利益 ・事業承継問題の解決 ・大企業の傘下で効率的な事業運営 ・従業員の雇用を維持できる ・個人保証の解消 |
・迅速かつ低コストで事業を始められる ・規模の経済性による利益を獲得できる ・人材の獲得 |
売り手側のメリット
保険代理店の売り手側がM&Aで得られるメリットには、主に以下が挙げられます。
①M&Aによる売却利益
保険代理店を売却することで、経営者は現金を獲得できる点は大きなメリットです。売却により得た現金は、アーリーリタイアや新規事業などの資金に充てられます。
昨今は、市場の変化に応じて既存のビジネスモデルや経営を変革していかなければなりません。たとえ現時点では利益を得られていても、将来的に赤字に陥る可能性も十分あります。とりわけ保険代理店の場合、既存企業が生き残ることは非常に困難です。
そこで、M&Aにより多額の現金を得てリタイアした方が、長期的に見ると効果的な選択肢となる可能性もあります。「将来の経営に不安がある」という場合は、保険代理店を売却するのも1つの選択肢です。
②事業承継問題の解決
近年は後継者不在に悩む多くの中小企業も多く、それは保険代理店も同様です。会社を引き継ぐ人がいない場合、廃業もしくはM&Aによる譲渡という2つの選択肢が検討されることが多いですが、廃業すれば解散登記や清算登記などのコストもかかります。
経営してきた会社を廃業させることは経営者として寂しいものですが、M&Aによる譲渡は幅広いなかから後継者を探すことができ、安定した事業を行っている企業へ売却すれば自社の成長を見込めるのもメリットです。
③大企業の傘下で効率的な事業運営
訪問販売などをメインに事業を行っている保険代理店は、ダイレクト販売や保険ショップの台頭により、従来の戦略では十分な売上が見込めない状況です。
M&Aによって大企業の傘下に入れば、相手側の有するノウハウやシステムを活用でき、ダイレクト販売・保険ショップ型の事業運営が可能になったり、大企業の知名度・ブランド力も活用できたりもします。
大企業の傘下に入るメリットは多く、市場で生き残れる可能性が格段にあがることは、非常に大きなメリットといえるでしょう。
④従業員の雇用を維持できる
M&Aの活用では、従業員の雇用を守れる点もメリットです。会社を経営している以上、何らかの理由で廃業せざるを得ないこともあるでしょう。
廃業するとなれば従業員は解雇しなければなりませんが、保険代理店を売却することで従業員の雇用を守ることができます。株式譲渡の場合は雇用契約がそのままを買い手に引き継がれ、大手企業とのM&Aであれば従業員の待遇が現在よりもよくなる可能性も高いです。
⑤個人保証の解消
保険代理店会社に限らず中小規模の場合、金融機関などからの融資時に経営者が個人保証を負うケースが多いです。個人保証が設定されているということは、万一自社が倒産した場合は経営者個人が債務を返済しなければなりません。
M&Aによって保険代理店を売却した場合、株式譲渡を用いれば債務も買い手企業が引き継ぎます。経営者の個人保証も金融機関との交渉によって解除される可能性が高いです。
買い手側のメリット
保険代理店の買い手側がM&Aで得られるメリットは、主に以下のとおりです。
①迅速かつ低コストで事業を始められる
M&Aによって保険代理店を買収した場合、迅速かつ低コストで事業を開始できます。保険代理店業界で生き残るには、スピーディーな事業展開が必須条件です。
しかし、ゼロから事業を始めた場合、既存事業者・新規参入企業との競争に勝つことが厳しいケースも少なくないうえ、販路拡大や営業で多額の費用・時間がかかります。
特に保険代理店業界の場合、営業ノウハウの獲得には多大な時間がかかり、多額の費用と時間を費やすためリスクが高いです。
M&Aによって既存の保険代理店を買収することで、迅速かつ低コストで事業を開始できます。M&Aは、お金で時間を買う戦略ともいわれており、初期段階で多額の費用はかかるものの、短期間で競争優位性を得られる点は大きなメリットです。
②規模の経済性による利益を獲得できる
規模の経済性による利益を獲得できる点も、買い手側のメリットです。規模の経済性とは、事業規模の拡大によって得られるさまざまな利益のことで、保険代理店同士が統合した場合は営業コストの削減や販路拡大にもつながります。
また、現在、中小保険代理店が勝ち残るのは困難な状況です。しかし、複数の保険代理店が1つになることで、生き残れる可能性が高まります。市場シェアの拡大も実現でき、さらなる事業の発展を図ることも可能です。
③人材の獲得
保険代理店の運営には、保険商品を販売する「保険募集人」が必要です。保険募集人には金融商品の知識や販売スキルだけでなく、生命保険協会や日本損害保険協会の一般課程試験に合格している必要があります。
試験に合格して初めて保険募集人として登録するかたちとなるため、新規採用した場合はスキルや有資格者の十分な確保が難しいケースも多いです。M&Aで保険代理店を買収すれば教育する時間や手間を削減でき、経験をもつ人材を確保できます。
保険代理店のM&Aの3つのデメリット
保険代理店M&Aには多くのメリットがありますが、当然デメリットもあることも理解しておくことが大切です。本章では、保険代理店のM&Aにおける売却側で問題となりやすい主なデメリットを3つ解説します。
希望する条件で売却できるとは限らない
M&Aでは、「可能な限り高い取引価格で売却したい」「従業員の雇用条件を維持する条件で売却したい」など、売り手側は何らかの希望条件を掲げるケースが多くみられます。しかし、買い手が条件に合意しなければ、売却側の希望どおりにM&Aを行うことは不可能です。
強硬な姿勢で希望条件を叶えようとすると交渉が決裂するおそれがあり、逆にほとんどの条件を妥協してしまうと一方的に不利な条件での売却を強いられかねません。
納得のいくM&Aを実現させるためには、事前に妥協できる条件と譲れない条件をはっきりさせ、買い手との交渉に臨むことが大切です。
相手先企業が見つからないリスクがある
自社が債務超過に陥っていたり、ニーズの高い経営資源を持っていなかったりすると、買い手候補がみつからないことも考えられます。もしも買い手候補がみつからない状態が続き、事業を続行できない事態となれば結果的に廃業を選択せざるを得ない状況に陥りかねません。
保険代理店のM&Aで買い手を円滑にみつけるためには、自社の磨き上げを行うことが大切です。自社の売却前に企業価値を高める取り組み(例:自社の強みとなる技術やノウハウの創出、不必要な資産の処分、負債の返済など)を実施することが望ましいでしょう。
関係者に不利益を与えるリスクが生じる
M&Aによって保険代理店を売却すると、買収側の意向によっては、取引先や従業員との契約内容・事業の運営方針などが変更されるケースがみられます。
従業員や取引先などを大切にしてくれる売却先を見つけることが大切です。
保険代理店業界のM&A流れ
M&Aの意思確認・目的の明確化
M&Aを行う場合、具体的な戦略策定や相手先への条件を決める前に、自社がM&Aを行う目的を明確にします。その際は、今後の方向性や自社の課題だけでなく、M&Aの必要性(ほかの方法がないか)も含めて考えることが重要です。
検討の末、M&Aを行う意思が固まったら、M&Aの相手先への希望条件などをある程度決めておくとM&A仲介会社への相談がスムーズに進みます。
M&A仲介会社などの専門家へ相談
M&A工程には専門的な知識や経験が必要となるものも多いため、ほとんどの場合はM&A仲介会社などの専門家へ支援業務を依頼してともにM&A成約を目指します。
M&A仲介会社などの専門家はぞれぞれ得意業種や規模、手数料体系などが違うため、支援実施機を併せて判断材料とするとよいでしょう。
支援業務を依頼する専門家が決まったら「アドバイザリー契約」を締結しますが、その際は同時に「秘密保持契約」も締結します。M&Aでは自社の財務情報・主要取引先・ノウハウや技術に関する内容など秘密情報を開示するため、情報漏洩を防止するため秘密保持契約を結び、責任所在を明確にしておくことが重要です。
M&A候補先の選定
次はM&A交渉を行う相手先を探します。交渉先探しは「ノンネームシート」という資料を用いますが、これは社名や詳細な住所など対象企業が特定されるような情報は記載せず、業種・事業内容・おおまなか地域・売上高・買収理由(目的)などM&A交渉を行うか否かを判断できる必要最低限の情報がまとめられたものです。
担当M&Aアドバイザーが目的など条件に合った企業をリストアップしてくれるので、ロングリストからショートリストへと段階的に絞り込み、最終的に交渉を行いたい相手先を決定します。その際は価額や条件だけでなくM&A後に想定されるシナジーを加味して検討することが重要です。
その後はM&A仲介会社などの専門家を介して相手先に交渉を打診し、双方がM&A交渉に進む意思が確認できたら売却側・譲受側とのあいだで秘密保持契約を締結してから企業概要書を提出します。
トップ面談
企業概要書を確認し、売却側譲受側が双方ともM&A成立に前向きであれば、交渉に先駆けてトップ面談を行ないます。トップ面談は経営理念や社風、互いの人柄、企業概要書での質問点などを確認し、相互理解を深め信頼関係を構築する場です。
そのため、科学や条件など具体的な交渉は一般的に行われません。そして、トップ面談後に譲受側から「意向表明書」という買収に関して前向きであることを示す書面が提出されることが多いです。これは意向表明書の提出は義務付けられているわけはありませんが、提出することにより以降の交渉がスムーズに進みやすくなります。
基本合意書の締結
トップ面談後、売却側・譲受側の双方がM&A成立に向け交渉を続ける意思が確認できたら、売却価額・条件、完了までのスケジュールなどさらに細かな部分を話し合います。
そして、その時点での交渉内容に双方が大筋合意した段階で基本合意書を締結しますが、注意すべきは基本合意書そのものには法的な拘束力がないということです。
基本合意書には使用するM&A手法・売却価額・諸条件・クロージング実行予定日・独占交渉権などに関する事項が記載されますが、独占交渉権の付与など一部事項を除き法的拘束力はありません。
つまり、この時点ではM&A成立が約束されたわけではなく、以降のデューデリジェンスの結果などによってはM&A取引が中止となる場合もあります。
デューデリジェンスの実施
基本合意締結後は、譲受側によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンは買収リスクの有無や程度、事前開示された情報の正確性などを把握するために行う調査です。
譲受側はデューデリジェンスの結果をもとに最終的なM&A実行の可否や譲受価額の妥当性を判断するため、売却側は追加資料の提出など協力を求められた際は誠実に対応しなければなりません。
最終交渉・最終契約書の締結
譲受側がデューデリジェンスの結果から買収実行判断したら、最終契約書の締結に向け交渉へと進みます。最終交渉はデューディリジェンスの結果を踏まえて行われるため、価額の変更や条件の追加・変更がなされる場合もあることを覚えておきましょう。
そして、取り決めた全ての内容に売却側譲受側が最終合意した段階で最終契約書を締結し、 M&Aは成立となります。なお、最終契約書に記載された事項はすべてが法則拘束力を持ち持つため、契約以降に変更や破棄を一方的に行うことは認められません。
そのため、最終契約書の締結に際しては、記載内容をしっかりと確認しておくことが重要です。また、売却側はクロージング条件についてもしっかり確認しておくことがしておく必要があります。クロージング条件とはクロージング実行の前提となるもので、実行日までに条件を満たせない場合はクロージング行うことはできません。
クロージングの実行
クロージングとは、M&A対象の経営権を売却側から譲受側へ移転させ、対価の支払い決済手続きを行うM&Aの最終手続きです。前述したように、クロージングを実行するためにはクロージング条件を満たしていなければなりません。
クロージングで行う手続きは使用したM&Aスキームによって変わります。例えば株式譲渡では株式の移動・株主名簿の書き換えなどが必要です。漏れや抜けなくクロージングが行えるよう、事前に担当アドバイザーへ確認しておくとよいでしょう。
保険代理店のM&A・売却価格の相場
保険代理店のM&A・売却には相場があるのでしょうか。ある程度の相場や価格の算定方法を知っておくことは、M&Aでの売却を検討している経営者の方だけでなく、買収側にとっても役立ちます。本章では、保険代理店を対象とするM&Aにおける売却価格の相場に関する基本的な情報をみていきましょう。
大型案件のM&A相場
保険代理店のなかでも上場企業や大手企業などの場合、M&Aにおける取引価格の大まかな相場は、数億円〜数十億円程度と考えられています。実際の事例では、全国規模で事業を手掛けている企業の場合、100億円を超える金額で売却契約を締結したケースもありました。
中小規模のM&A相場
保険代理店のなかでも中小規模をM&Aにより売却する場合、大まかな相場は「純資産に3年分の営業利益を足した金額」といわれています。
たとえば、純資産2,000万円、平均営業利益が1,000万円の保険代理店の場合は、およそ5,000万円で売却できるという計算になります。
とはいえ、企業全体ではなく一部の権利のみを売却する場合や、多額の負債を抱えている場合などでは、相場よりも低い金額で成約する可能性が高いです。一概に相場どおりにM&Aが成約するとは限らないため注意しましょう。
大まかな売却価格の計算
M&Aの価額は最終的に交渉で決まりますが、大まかな売却価額は簡単な計算で把握することができます。保険代理店の売却価額は「時価純資産+営業利益の数年分(2〜5年程度)」と考えることができ、営業利益を何年分とするかは任意ですが、2〜5年で設定することが多いです。
また、株式譲渡あるいは事業場の場合、以下の式を使用すると実際の金額により近い相場を知ることができます。
- 株式譲渡の場合:時価純資産+ (営業利益+役員報酬) ×2〜5年
- 事業譲渡の場合:事業資産+事業利益×2〜5年
相場を把握しておけば、適正価額でのM&A成立が目指しやすくなるので、あらかじめ計算しておくとよいでしょう。
企業価値評価の算定方法
売却価額は譲受側との交渉によって決まりますが、企業価値評価額は交渉時のベースとなるものです。企業価値評価とは対象企業(あるいは事業)の経済的価値を数字に表したもので、その算定方法にはいくつかの種類があります。
コストアプローチ
コストアプローチは対象企業の純資産額をベースに企業価値を算定する方法です。貸借対照表の純資産額を簿価のまま使用する「簿価純資産法」と、時価に換算して算定する「時価純資産法」の2種類があります。
コストアプローチのメリットは貸借対照表上の数字(金額)をベースとするため客観性が高いことです。一方でデメリットとしては、超過収益力や企業の固有性質が算定に反映されないことが挙げられます。
インカムアプローチ
インカムアプローチは、対象企業の将来の予想配当や収益予想をベースとして企業価値を算定する方法で、代表的なものにDCF法や配当還元法があります。
企業がもつ固有性質や将来期待できる収益力などが算定に反映される点が大きなメリットであり、なかでもDCF法は投資効率を測るうえで最も合理的といわれる算定方法です。
その一方で、将来の収益力予想は対象企業の事業計画書などをもとに行うため、主観が入りやすく客観性に乏しい評価となり得るというデメリットもあります。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチ、対象企業と類似する上場企業を選び、類似企業の時価総額やM&A事例をベースに企業価値を比較算定する方法です。マーケットアプローチの場合、類似する上場企業は、業種・事業内容・規模・ビジネスモデルなどを基準に選定します。
上場企業の株価などをベースとするため客観性が高く、また市場トレンドなどが反映された評価となる点がメリットです。
しかし、類似する上場企業を選ぶ基準には恣意性が入りやすく、市場株価が大きく変動したタイミングであれば適切な評価とならない可能性もあります。また、類似する上場企業がみつからない場合、マーケットアプローチによる企業価値算定は行うことができません。
保険代理店を高値で売却するポイント
保険代理店のM&Aでは、まず自社の純資産額や収益性などを基に企業価値評価を行い、その金額をベースとして買い手企業と交渉して最終価額を決定します。
つまり、企業価値が高いほど、高値で売却できる可能性があがるということです。自社の企業価値の評価を高める要素には主に以下があり、これらがクリアになっていれば高い評価につながりやすくなります。
- ストック収入割合が多い(多くの保険加入者をもっている)
- テコ入れすれば収益性改善が見込める
- 優秀な保険募集人・接客ノウハウ・高い顧客満足度をもっている
- 買い手が未進出エリアに商圏がある
- 独自性の高い販売方法をもっている
売り手側は改善できる部分はM&Aを行う前に対応しておくこともポイントです。これらをすでにクリアしているのであれば、買い手候補にアピールできるよう資料をまとめておくとよいでしょう。
保険代理店のM&A手法(スキーム)
保険代理店がM&Aを実施する方法は、大きく分けて2種類あります。保険代理店のM&Aをスムーズに進めるために、基本的な知識を理解しておきましょう。
株式譲渡(会社売却)
まず、株式譲渡(会社売却)について解説します。
株式譲渡とは
会社を丸ごと売却する場合、株式譲渡と呼ばれるM&A手法を用います。株式譲渡とは、売り手側の株式を買い手側に売却することで、経営権を譲渡する手法です。
株式譲渡の場合、過半数を超える株式を売却すれば売り手企業は買い手企業の子会社(グループ会社)となり、全株式を売却すれば完全子会社となります。
株式譲渡を用いるメリット
株式譲渡の最も大きなメリットは、M&Aに要する手続きが簡便な点です。特別決議や債権者保護の手続きが不要なため、迅速にM&Aを実行できます。
中小企業のM&Aでは最も用いられている手法であり、保険代理店のM&Aでも株式譲渡によるM&Aは多いです。また、一部の事業のみを売買する場合と比べて売却金額が高くなりやすいため、売り手側は多額の現金を獲得できることもメリットといえます。
株式譲渡を用いるデメリット
株式譲渡は売り手側にとってメリットが多いですが、買い手側にとってはデメリットもあるM&A手法です。売り手企業が複数事業を手掛けている場合、事業譲渡のスキームを用いれば買い手側は保険代理店業務のみを買収することができます。
しかし、株式譲渡では保険代理店の業務のみを買収することできません。また、包括承継であるため、買い手は売り手の資産だけでなく負債も引き継がなければならず、簿外債務まで引き継いでしまう可能性もあります。
もし売り手企業に未払い給与があったり訴訟トラブルを抱えていたりする場合は、そのリスクも買い手企業は負わなければなりません。買収後の経営に影響がでるおそれもあるため、買収前のデューデリジェンスを徹底して行うことが重要です。
商権譲渡(事業譲渡)
次に、商権譲渡(事業譲渡)に関して解説します。
商権譲渡(事業譲渡)とは
保険代理店のM&A特有の手法として、商権譲渡があります。商権譲渡とは、保険代理店の運営権利のみを売買する手法です。
商権譲渡によるM&Aの際は、債権者保護や特別決議が必要になる場合があります。従業員を引き継ぐ場合、個別に契約の結び直しが必要です。
商権譲渡(事業譲渡)を用いるメリット
最も大きなメリットは、買い手側からすると保険代理店事業のみ獲得できる点です。株式譲渡では、不要な資産や簿外債務も引き継いでしまいます。
しかし、商権譲渡では保険代理店事業に必要な権利のみ引き継げるので、代理店の運営に必要な従業員や資産を選択することが可能です。
売り手側のメリットには、保険代理店事業を売却することで主力事業に注力できる点があげられます。売却資金を主力事業に集中させることで事業の強化が可能です。
商権譲渡(事業譲渡)を用いるデメリット
商権譲渡は、手続きが煩雑になりやすい点がデメリットです。商権のみを売買する場合や商権の価値が非常に低い場合は、手続きはそれほど面倒ではありません。
しかし、商権の価値が高かったり引き継ぐ資産に雇用契約なども含まれたりする場合は、手続きが煩雑になりやすいです。各従業員と再度雇用契約を結ぶ必要があり、従業員が雇用契約の締結を断った場合はM&A後の経営に支障がでるおそれもあります。
合併
次は、あまり多く用いられることはありませんが、合併について説明します。
合併とは
合併とは、2つ以上の企業の法人格を統合するM&A手法で、グループ企業内の経営再編で主に用いられます。保険代理店業界の場合は、大手代理店同士が経営統合を行うケースなどに適した手法です。
合併には「吸収合併」と「新設合併」の2種類があり、吸収合併では存続会社が消滅会社の権利義務をすべて承継します。新設合併の場合は、新たに設立した会社が消滅会社の権利義務をすべて承継するかたちです。
合併を用いるメリット
合併では当事者企業は完全に1つの法人格となるため、シナジーが創出しやすいのが最大のメリットです。そのほかには、迅速な意思決定が可能になる点や権利義務を包括承継できる点なども挙げられます。
また、合併は対外的に「対等な立場でのM&A」であることをアピールしやすいのもメリットのひとつといえるでしょう。
合併を用いるデメリット
合併を行うためには、原則として債権者保護手続きや株主総会による特別決議などが必要です。手間・時間のかかる手続きが多く煩雑になりやすい点がデメリットといえ、保険代理店事業を迅速に売却したいと考えている場合はあまり適しません。
保険代理店M&Aを成功させるポイント
本章では、保険代理店のM&Aを成功させる4つのポイントを解説します。
保険会社へ確認する
保険代理店を買収する際、事前に販売委託契約をしている保険会社に対し契約の移管が可能であるか事前に確認する必要があります。場合によっては、保険会社がその代理店から契約を買い上げる意向があというケースも起こり得るためです。
そのため、保険会社への相談・確認を行いましょう。また、保険会社へは代理店のノルマ達成状況なども確認しておきましょう。ノルマを果たす能力がない代理店を買収してしまった場合、保険会社が販売権を取り上げる可能性もあります。
長期的な目線で行動する
保険代理店のM&Aを成功させるためには、長期的な目線で行動することが必要不可欠といえます。なぜなら、短期的な利益を目的にM&Aを行ってしまうと、売却側である自社の従業員が買い手企業に馴染めず離職してしまったり、より高値で売却できるチャンスを逃してしまったりするためです。
また、海外進出の足がかりとして、M&Aを実施する経営者も存在します。さらに、縮小する市場で今後の競争優位を築くうえでも、M&Aは有効手段です。そのため、短期的な利益を目的とせず、将来を見据えてM&Aを行うべきといえます。
売り手企業のニーズを理解する
M&Aを行う際、買い手企業は売り手企業のニーズを理解しなければなりません。なぜなら、買い手・売り手それぞれがM&A後の戦略やビジョンを掲げており、お互いの考えがズレているとM&A後の事業運営が円滑に進まないためです。
さらに、M&A後の統合がスムーズに進まないリスクもあり、統合が上手くいかなければ保険代理店の業務にも影響が出てしまいます。そのため、M&Aの交渉段階で、両社の経営方針やビジョンを確認し、ズレが無いか確認する必要があるのです。
M&Aによる社員への影響を考える
事業承継目的など従業員の雇用継続を考えている場合は、買い手候補を選ぶ際に経営理念やM&Aの事業計画だけでなく、自社の従業員への影響も考慮することも大切です。
M&Aは従業員にとって少なからず不安があり、影響も非常に大きなものとなるため、自社の従業員を大切にしてくれる相手先へ売却すると安心できるでしょう。
保険代理店業界のM&Aに精通した仲介会社に相談する
保険代理店業界に精通したM&A仲介会社を選ぶこともポイントです。なぜなら、保険代理店業界に精通したM&A仲介会社を選ぶことが、円滑な取引m適正価格での売却に向けて必要不可欠であるためです。
M&A仲介会社ごとに得意とする分野、M&Aの種類は異なります。保険代理店のM&Aを行う際は、保険代理店業界に詳しいM&A仲介会社を起用しましょう。近年は、保険代理店のM&Aに特化しているM&A仲介会社も存在します。
また、全国に広範囲のネットワークを保有するM&A仲介会社に依頼すれば、幅広い範囲から買い手を探せて、早期でのM&A成約につなげられる可能性が高まります。
保険代理店のM&Aで注意する点
ここでは、保険代理店のM&Aで注意する点を買い手の立場から解説します。
顧客の年齢構成
買収側は、売手保険代理店の保有契約に関して顧客の年齢構成をしっかり見極めることが重要です。保険代理店の収入源は販売手数料ですが、これは契約者の死亡によって終わるため、顧客の高齢者割合が高い場合は将来的な販売手数料は減少します。
反対に、若年層の契約者割合が高い保険代理店であれば、販売手数料による収入を長く見込むことができるため、買収するメリットも大きいといえるでしょう。
顧客の居住地分布
一般的に契約者の割合は会社員が圧倒的に高いですが、なかには転勤がある企業へ勤めている会社員もいるでしょう。すべての会社員に当てはまるわけではありませんが、仮に転勤の可能性がある顧客が多ければ時間経過とともに居住地が全国に散らばる可能性が考えられます。
保険代理店は顧客をずっとフォローしなければなりませんが、遠方者の割合が高ければ業務負担は大きくなり、対面での保全業務を義務付けている場合はコスト(交通費)も必要です。そのため、買い手側は売り手側の顧客の居住地分布をよく確認する必要があります。
顧客の属性
買い手は売り手顧客の居住地分布だけでなく、属性もあわせて確認することが必要です。売り手が特定の大手企業などを対象に営業を行っている場合は、販売手数料による収入や新規契約もある程度安定して見込めます。
しかし、飛び込み営業を中心としている保険代理店の場合、顧客属性はさまざまです。その場合は、新規契約の獲得が難しくなることも多いです。
取り扱いの保険会社
保険代理店同士でM&Aを行う場合、相手企業が扱っている保険会社を確認しておくこともポイントです。保険会社によって手続き・手順などが違うため、売り手が自社で現在扱っていない保険を中心としている場合、買い手はマニュアルをそろえ保険募集人が対応できるよう準備しなければなりません。
時間と手間がかかるため、業務効率を考えるのであれば自社で扱っている保険会社と同じ会社を扱っている売り手がよいでしょう。
保険販売員の継続雇用
保険代理会社のM&Aでは従業員を継続して雇用できるかは売上に直結するため重要です。保険商品の販売には、指定の試験合格や募集人としての登録がされていることなどが条件としてあります。
M&Aの際に、販売資格を持った保険販売員が社風、働き方報酬などの変更から辞めてしまうと事業が行えなくなります。M&A実施後も継続して従業員が雇用できるかを確認しておきましょう。
月次試算表の確認
保険は、月払いによって毎月販売手数料の収入があります。買収時は、直近も含めた月次試算表の確認が不可欠です。買収検討時の販売手数料による収入は、買収実行時に顧客が解約してしまい減少している可能性も考えられます。
また、代理店によっては販売手数料の高い契約1年目のものばかりを狙い、2年目になると顧客に乗り換えさせる方針をとっているケースもあり、その場合は長期的な安定した販売手数料を見込むことはできません。
買収時のリスクを抑えるためには、事前に月次試算表の確認を行い、よく検討することが重要です。
保険代理店のM&A成功事例
本章では、保険代理店のM&A成功事例として、代表的な3つのケースをピックアップし解説します。
①東京エレクトロンBPによる東京エレクトロンエージェンシーの吸収合併
2023年4月、東京エレクトロン子会社の東京エレクトロンBPは、同社の子会社の東京エレクトロンエージェンシーを吸収合併しました。
東京エレクトロンBPは物流サービス事業を主軸とし、そのほかに保険代理店事業・施設管理事業なども行っています。東京エレクトロンエージェンシーは、保険代理店業務が専門として手掛ける企業です。
本合併により、東京エレクトロンBPは業務の効率化向上を図り、両社の人材を有効活用することを目的としています。
参考:東京エレクトロンBP株式会社「連結子会社間の合併に関するお知らせ」
②ブロードマインドによるセゾン保険サービスの持ち分法適用関連会社化
2023年3月、ブロードマインドはセゾン保険サービスの株式を取得して持分法適用関連会社すると発表しました。ブロードマインドは、保険・資産形成・ローンなどフィナンシャルプランニングに関連したコンサルティング業務を手掛けています。
売却側のセゾン保険サービスは、生命保険の募集事業や損害保険代理店業などを行う企業です。今回の持ち分法適用関連会社化は、両社の強みやリソースを相互活用することが主な目的であり、ブロードマインドはフィナンシャルパートナー事業の拡大・成長を図るとしています。
参考:ブロードマインド株式会社「株式会社セゾン保険サービスの株式取得に伴う持分法適用関連会社化に関するお知らせ」
③エムエスティ保険サービスによる東西実業の保険代理店業の譲受
2023年2月、西華産業は子会社の東西実業が手掛ける保険代理店事業をエムエスティ保険サービスへ譲渡すると発表しました。西華産業は、プラント、環境保全設備、機械装置・機器類などの輸出入および販売を手掛けており、東西実業は保険代理店業を行う西華産業完全子会社です。
事業を譲受するエムエスティ保険サービスは、生命保険の募集業務や損害保険代理店業を手掛けています。本M&Aは、西華産業の経営資源の選択と集中が目的で行われました。なお、実行日は2023年4月の予定としており、譲渡価額は7000万円です。
参考:西華産業株式会社「当社子会社の事業譲渡に関するお知らせ」
④マネーフォワードによるNext Solutionの子会社化
2022年5月、マネーフォワードはNext Solutionの全株式を取得して子会社化しました。マネーフォワードは、法人・個人向け金融系ウェブサービスを提供している企業です。
子会社となったNext Solutionは東京都千代田区の企業で、損害保険代理店業や生命保険の募集業務、ファイナンシャルコンサルティング業を手掛けています。
マネーフォワードは自社の既存サービスとの連携強化や、自社の保有データとNext Solutionのもつ情報を組み合わせることでユーザーの利便性向上を目的として本M&Aに至りました。
参考:株式会社マネーフォワード「株式会社 Next Solution の株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ」
⑤エムエスティ保険サービスによるバーンの保険代理店事業の譲受
2022年9月、カンセキは完全子会社のバーンが手掛ける保険代理店事業を、エムエスティ保険サービスへ譲渡すると発表しました。使用スキームは事業譲渡、譲渡価額は8000万円です。
カンセキは、ホームセンターや専門店などの小売店・飲食店の運営および管理を行っています。バーンは生命保険の募集業務と損害保険代理店業を行う企業です。譲渡先のエムエスティ保険サービスは、生命保険・損害保険の代理店業を行っています。
本事業譲渡は、カンセキの事業の選択と集中により収益構造の改善が目的です。なお、本件と併せて、カンセキはバーンおよび茨城カンセキ(ともにカンセキの子会社)を吸収合併することも発表しています。
参考:株式会社カンセキ「連結子会社の事業譲渡及び特別利益の計上 並びに連結子会社2社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ 」
⑥朝日生命によるNHSインシュアランスグループの子会社化
2021年1月、朝日生命は、NHSインシュアランスグループの株式すべてを取得し、完全子会社化しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。
買収側は、相互会社形式の生命保険会社です。東京都多摩市に本社を構え、「生命保険の販売および引受け」「資産運用業務」「他の保険会社の業務の代理および事務の代行」などを主要な業務として手掛けています。
対する売却側は、東京都中野区に本社を置き、保険代理店企業です。「お客様中心主義」「たゆまぬ向上心」「誠実さと高い倫理観」「Win-Winの精神」「ダイバーシティ(多様性)の推進」などを行動指針を掲げながら、保険代理店を主軸としたコンサルティング事業を展開しています。
買収側はWithコロナ・Afterコロナに適した新たな営業スタイルの構築を目指しており、非対面でも確度高く営業を行うノウハウを有する売却側の買収に至りました。
参考:「NHSインシュアランスグループ株式会社の株式取得・子会社化について」朝日生命保険相互会社
⑦トータル保険サービスによる信和実業の保険代理店業の譲受
2021年1月、トータル保険サービスは、白洋舎より傘下企業である信和実業の保険代理店事業を取得しました。本件M&Aの取得価額は2億2,000万円です。
買収側は、東京都中央区に本社を置く総合保険代理店です。生命保険の募集に関する業務および損害保険代理業を手掛けており、ブランドコンセプトとして、「Your-side Solution」を掲げています。対する売却側(信和実業)は、白洋舎の子会社であり、不動産事業・保険代理店事業・商品販売などを手掛ける企業です。
本件M&Aにより、売却側では、信和実業における事業の選択と集中のほか、グループ全体の業務効率の改善が図られました。なお、本件M&Aに伴い、白洋舎は信和実業を吸収合併しています。
参考:株式会社白洋舎「事業譲渡契約締結、及び 特別利益(事業譲渡益)計上に関するお知らせ」
⑧新生銀行によるファイナンシャルジャパンの子会社化
2019年4月、新生銀行は、ファイナンシャルジャパンの株式すべてを取得し、同年5月に連結子会社化しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。
買収側は、東京都中央区に本店を置く、SBIホールディングス傘下の普通銀行です。1952年に長期信用銀行法にもとづき、北海道拓殖銀行と日本勧業銀行の信用部門を分離して設立されました。
対する売却側は、東京都千代田区を拠点に、生命保険の募集に関する業務・損害保険代理業・自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業などを手掛けています。
買収側は個人向け保険ビジネスを強化する目的を掲げていたことから、保険乗合代理店の販路を持っているファイナンシャル・ジャパンとのM&Aを決めており、M&A後は顧客の多様なニーズに応える販売チャネルの拡大および構築を目指すと発表しました。
また、売却側からすると、保険代理店の枠組みを超え総合的な金融コンサルティング事業を展開する目的のもと、革新的な金融サービスの提供に注力するため会社売却を決めています。
参考:株式会社新生銀行「会社分割(簡易吸収分割)契約書の締結に関するお知らせ」
⑨日本社宅サービスがリスクマネジメント・アルファから保険代理店事業の譲受
2019年4月、日本社宅サービス株式会社は、株式会社リスクマネジメント・アルファから保険代理店事業を譲り受けることになったと発表しました。譲受け価格は5325万円ほどです。
リスクマネジメント・アルファは愛知県名古屋市に本社をおき、保険代理店事業を主な事業としている会社です。
これにより、日本社宅サービスをはじめとするサンネクスタグループの事業展開と収益拡大がさらに進むことが期待されるとしています。
参考:事業譲受けに関するお知らせ
⑩山口フィナンシャルグループによる保険ひろばの株式取得(子会社化)
2016年9月、山口フィナンシャルグループの子会社である株式会社ワイエムライフプランニングは保険ひろばの全株式を取得することを発表しました。
山口フィナンシャルグループはお客さま一人ひとりの人生に寄り添う信頼できる相談相手として、ファイナンシャル・プランニング事業を強化し、ワンストップでニーズに応える体制整備に取り組んでいます。
株式会社保険ひろばは、中国地方・九州地方を中心にショッピングセンターに出店する保険代理店です。お客さまのライフプランに合った保険商品の提案を行っています。
保険ひろばの子会社化により、人材・ノウハウ・店舗網を山口フィナンシャルグループの信用力と金融商品供給力と融合。ライフ・プランに基づくワンストップ金融サービスを迅速に展開し、企業価値向上を図るとしています。
参考:株式会社保険ひろばの株式取得(子会社化)
保険代理店のM&A・買収・売却のまとめ
今回の記事では、保険代理店のM&Aに関して紹介しました。少子高齢化などの影響により、保険代理店の市場規模は縮小傾向にあります。しかし、ダイレクト販売・保険ショップ型の保険代理店はむしろ勢力を拡大しており、保険代理店業界は競争が激化しているのが現状です。
大手企業はM&Aの活用により、保険代理店市場での勢いを増しています。中小保険代理店は生き残るために、M&Aの活用が今後も増加する見込みです。中小保険代理店同士でのM&Aによって、生き残りを検討することも有効です。
もしくは大企業とのM&Aにより、傘下に入る戦略も効果的であると考えられています。どのような経営判断を行う場合でも、将来を見据えたうえでM&A活用を選択肢の1つとして頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
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