2022年10月3日更新業種別M&A

不動産ファンドとは?特徴や仕組み、メリット・デメリット、注意点も解説

不動産ファンドでは、投資家から集めた資金により不動産を運用し、そこから得られる収益を投資家に分配します。この記事では、不動産ファンドの特徴や仕組み、メリットやデメリット、注意点などについて解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次
  1. 不動産ファンドとは
  2. 不動産ファンドの仕組み
  3. 不動産ファンドのメリット・デメリット
  4. 不動産投資における収益
  5. 不動産ファンドの注意点
  6. 不動産ファンドの成功と失敗を分ける要因
  7. 不動産ファンドのまとめ

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不動産ファンドとは

不動産ファンド(別名:不動産投資信託)とは、投資家から集めた資金をもとに不動産を運用し、その収益を投資家に分配する仕組み・組織のことです。このとき、投資にかかわるリスクやリターンはすべて投資家に帰属します。

本記事では不動産ファンドの特徴・仕組み・メリット/デメリット・注意点などを中心に詳しく紹介します。まずは不動産ファンドの概要として、ファンドの意味や不動産投資との違いなどを見ていきましょう。

ファンドは仕組み・組織を示す言葉

はじめに、「ファンド」の意味から整理します。ファンドとは、複数の投資家から資金を集めて運用し、そこから得られる収益を投資家に分配する仕組み・組織のことです。投資対象は「お金を生み出すモノ」であり、代表例は下記のとおりです。

  • 不動産(リート)
  • 株式
  • 債券
  • 太陽光発電施設
  • 船舶/航空機

このうち不動産を投資対象とするものを、不動産ファンドと呼んでいます。ファンドという表記については、仕組み自体を表現するケースと組織をさすケースの2種類に大きく分かれます。

例えば、「不動産ファンドに転職する」や「不動産ファンドの年収はいくら?」といった文脈においては、ファンドが組織として表現されるのです。

不動産ファンドと不動産投資の違い

投資した資金によって不動産を運用するのは不動産ファンド側であり、資金を出した投資家が直接的に不動産を運用するわけではありません。この点が、自身で不動産投資を行う場合との大きな相違点といえます。

そもそも不動産投資とは、マンションやアパートといった不動産を購入し、その不動産から収益を得る方法のことです。具体的には、自身で購入した不動産から賃料収入などの収益を得ます。つまり、自身で不動産を運用する行為です。

【関連】不動産投資とは?リターンとリスク、メリットとデメリットを解説

不動産ファンドの仕組み

ここでは、不動産ファンドの具体的な仕組みについて取り上げます。不動産ファンドの種類は、「不動産投資信託(REIT)」と「不動産特定共同事業」の2つです。以下、それぞれの特徴・仕組みを紹介します。

不動産投資信託(REIT)

不動産投資信託は、REITとも呼ばれています。Real Estate Investment Trustの略称です。不動産投資信託は、公募ファンドと私募ファンドの2つに分類できます。

公募ファンド

公募ファンドとは、広く一般に投資家を募集するファンドのことです。銀行や証券会社などで不特定多数の投資家を対象として販売しています。株式と同様に経済・需要・供給の状態に応じて価額が変化する特徴があるほか、換金しやすい点がメリットです。

個人では投資しにくい商品も取り扱っているため、個人投資家が活用しやすいです。小額の分散投資にも対応しているため、リスクを軽減したい投資家にも向いています。ただし、投資信託および投資法人に関する法律に基づいており、投資商品や配当などが制限される点はデメリットです。

私募ファンド

私募ファンドとは、一部の投資家を対象としたファンドのことです。証券市場には上場していません。基本的にはある程度の専門知識を持つ投資家を対象とするため、売却益を目的としたものも多く見られます。

また、公募ファンドのように最小投資額が低くない点が特徴的です。リスクの高い運用にも対応している反面、その分ハイリターンを期待できるケースが多く見られます。法律による制限が緩い点も特筆すべき点です。そのおかげで運用の自由度が高まり、高収益が見込まれやすいでしょう。

不動産特定共同事業

不動産特定共同事業とは、複数の投資家が出資し、不動産会社などが不動産事業を行い、その収益を投資家に分配する事業のことです。不動産特定共同事業は、「不動産小口化商品」と呼ばれる商品の販売によって行われます。投資家は不動産小口化商品を買い、その持分により不動産からの収益を得る仕組みです。

契約形態は、大きく分けて4種類です。まず匿名組合契約では、投資家が匿名組合に出資し、出資金で入手した不動産を運用します。任意組合契約では、投資家が不動産の共有持分を任意組合に出資し、その不動産を運用する契約です。

匿名組合契約では金銭を出資するのに対し、任意組合契約では投資者が現物不動産を取得して現物出資を行う点が大きく異なります。続いて賃貸借契約とは、共有持分にあたる不動産を事業者に運用してもらう方法のことです。

対象不動産変更型匿名組合契約には、契約期間中に事業者の判断で不動産を変更できる点に特徴があります。

不動産投資信託と不動産特定共同事業の違い

不動産投資信託の場合、不動産投資法人が投資証券を発行します。投資家は投資証券を購入することで不動産投資法人に投資できる、株式会社の株式と同じような仕組みです。投資証券は、証券取引所で売買できます。

一方で、不動産特定共同事業の場合は、株式や投資証券のような仕組みがありません。不動産小口化商品を購入し、その持分によって不動産からの収益を得ますが、こちらは営業者買取または第三者譲渡で売買する仕組みです。

初期費用

現物不動産投資では、投資物件となる戸建て住宅やアパートなどを買わなければ始められません。初期費用として数百万円や数千万円などを要し、不動産所有には印紙税や登録免許税などもかかります。

複数人の投資家が資金を出し合って利益を作る不動産ファンドでは、初期費用をかなり減らせるでしょう。安価な場合は1万円から、不動産ファンドを始められます。

利回りの高さ

不動産ファンドでは、ファンドの組成費用や運用会社に送る運用費の送金などが必要です。そのため、利回りを低く設けているところが少なくありません。ただし、4~6%台を越した7~9%、高いもので10%以上の利回りで運営を実施しているファンドもあります。

現物不動産投資は、物件の管理や運用を所有者が行うので、高い利回りで収益を得られるでしょう。

収益の種類

現物不動産投資は、物件に入居者がいれば毎月一律で賃料が入ります。しかし、入居者が退去すると、次の入居者が決まるまで家賃収益が得られません。ハイリスク・ハイリターンといえます。

不動産ファンドは、事業者側が管理する物件に少額から投資を行い、そこから生じる利益を配当金として投資家に振り込みます。その金額は、運営や管理をとおして生じた利益の一部で、家賃収益ではないのです。

物件の運用・管理

現物不動産投資では、所有者が物件の運用や管理を行ったり管理手数料を支払い業者へ管理を依頼したりします。不動産ファンドでは、運用会社が物件の運用や管理を行うので、投資家は資金を投じると、運用や管理にかかわりません。

不動産ファンドのメリット・デメリット

不動産ファンドを利用しても、思ったとおりの結果が得られないケースもあり得るため注意が必要です。本章では、不動産ファンドを活用して後悔しないよう、不動産ファンドのメリット・デメリットについて整理します。

不動産ファンドのメリット

不動産ファンドは、自身で不動産をすべて購入するわけではありません。投資証券や不動産小口化商品の購入を通じて投資を行います。そのため、実際に不動産を購入するよりも少額で投資を開始できる点が、不動産ファンドにおける大きなメリットです。

自身で不動産投資を行う場合においても中古マンションなどは比較的安価で購入できますが、不動産の購入にはある程度まとまった資金が必要です。そこで不動産ファンドを活用すれば、少額で投資をスタートできるメリットを享受できます。

不動産ファンドを活用すると、複数の物件に分散投資しやすくなる点もメリットです。ここでは、同じ金額でマンションを一つ購入する場合と不動産ファンドで分散投資する場合を比較して検討します。

マンションを一つ購入した場合、災害などでマンションに大きな被害が発生すれば収益が大きく低下します。一方、同じ金額で不動産ファンドを活用して複数の物件に分散投資をしておくと、特定の物件から収益が激減しても他の物件からも収益を得られるためリスクヘッジが可能です。

不動産ファンドのデメリット

少額投資が可能な点は不動産ファンドの大きなメリットですが、リターンが少なくなる可能性がある点はデメリットといえます。そもそも不動産ファンドは出資者が多いため、分配金が少額になりやすいです。

また、ファンドの運営には、ランニングコストの発生が伴います。例えば、投資家に対する報告書の作成や契約書の保管などにかかる費用です。自身で不動産投資を行わないものの、投資家はファンドの運営にかかる費用を負担しなければなりません。

不動産ファンドのデメリットとして、運用に自身の意向を反映しにくい点も把握しなければなりません。プロに任せても、運用がうまくいっていなければ不満を抱くケースも大いに想定されます。

そのほか、ファンドが破たんした場合に配当金がもらえないリスクの存在や、ファンドによっては売却制限が設けられている点もデメリットです。特に売却制限については、期間中の解約が禁止されていたり資金に対して数%の買取手数料が必要になったりするケースが見られるため注意しましょう。

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不動産投資における収益

不動産ファンドについて検討する際、不動産投資の収益の仕組みが参考になるため、本章で詳しく紹介します。不動産投資はマンションやアパートなどを購入し、その不動産から収益を得ますが、収益は大きく「賃料収入」と「売却益」の2つに分類可能です。

中でも、賃料収入を狙って不動産投資を行う方が多い傾向にあります。とはいえ、適切な売却タイミングの見極めなど専門的な知識や経験があれば、売却益を狙うことも可能です。ここからは、賃料収入と売却益についてそれぞれ解説します。

賃料収入

賃料収入の代表例は、マンションを購入して賃貸し、家賃収入を得るといったケースです。不動産投資の例として、一般的にもイメージしやすい収益の仕組みといえます。こうした収益はインカムゲインと呼ばれており、保有する資産によって安定的に得られる収入です。

不動産投資においては、不動産の保有によって得る賃料収入が該当します。インカムゲインは、比較的安定した収入である点が特徴的です。家賃収入を例に挙げると、一定の入居者さえ確保できれば定期的に収益が発生します。

売却益

購入した価格よりも高い価格で売却できれば差額は利益となりますが、こうした差益を売却益(キャピタルゲイン)といいます。簡単にいうと、安く購入して高く売ることで利益を出す仕組みです。不動産投資においても、不動産を購入した価格よりも高く売却できれば、その差益が売却益となります。

不動産投資では賃料収入と売却益の2種類を狙えますが、一般的には賃料収入を狙うケースが多く見られます。不動産は価値が下がりやすく、年月が経過すればするほど高い価格で売却しにくいためです。

不動産投資の収益として、賃料収入の他に売却益も存在する点を把握しておきましょう。

【関連】キャピタルゲインとは?意味や計算方法、課税、M&Aとの関係をわかりやすく解説

不動産ファンドの注意点

不動産ファンドを活用する際は、自身で不動産投資を行う場合と比較し、十分に検討を重ねておく必要があります。不動産ファンドは少額から投資をスタートできるメリットもありますが、ファンドの運営コストによって分配金が少なくなりやすい点はデメリットです。メリットだけでなくデメリットも十分に把握しましょう。

不動産ファンドといっても、不動産投資信託と不動産特定共同事業で特徴や仕組みは大きく異なります。中には上級者向けの商品もあるため、自身の専門知識をあらかじめ把握し、慎重に商品を選ぶことも必要です。

安易に活用しても、かえってリスクが発生する可能性もあるため注意しなければなりません。

投資物件のリスク

不動産ファンドの注意点として、投資物件のリスクがあります。不動産ファンドは、不動産投資に属する投資方法なので、同じ不動産投資に属する現物不動産投資と共通したリスクがあるのです。

それらは、「賃料の下落リスク」「空室リスク」「物件価格の下落リスク」「災害・瑕疵リスク」になります。現物不動産投資と同じく、物件に空室ができたり、物件価値そのものが下落したりすると、投資家に配当される分配金の額も少なくなるでしょう。

自然災害による被害や老朽化による瑕疵の影響を受け、多大な損失を受けることも考えられます。

商品のリスク

商品のリスクにも注意してください。不動産ファンドは、商品関係において「法制度の改定リスク」「元本割れリスク」「流動性リスク」が生じます。

不動産ファンドが取り扱う多くのファンドは、元本割れに対する保証を設けてなく、空室や自然災害の被害を被ると、大きな損失を生じる可能性が高いです。

商品にかけられた決まりによっては、途中解約や売買ができないなど、流動性の低さも目立ちます。また、不動産特定共同事業法などの法律改定や税制変更などがあると、手数料や分配金の額面が大幅に変わるでしょう。

運営のリスク

不動産ファンドの注意点として、運営のリスクも考えられます。ファンドの収益が悪くなり経営に支障を生じると、運営元が倒産することもあるでしょう。

運営元が倒産してしまうと、所有する物件を売却し、そこから生じた売却益を投資家に分配します。そして、事業を解散させるか、他社に事業の引継ぎを依頼するかの対応を取るのです。

倒産後に物件を売却し、そこから生じた収益を投資家へ分配しますが、投資額を全額返金してくれる保証もないので注意しましょう。

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不動産ファンドの成功と失敗を分ける要因

不動産ファンドを活用して成功するかどうかは、不動産ファンドの選定に左右されます。実績などを踏まえて信頼できるファンドを活用できれば、それだけ成功しやすいです。具体的にどのような商品を扱っているのか、どの程度の実績があるのかを事前にきちんと分析し、慎重に選びましょう。

不動産投資は対象物件にも大きく左右されるため、実際に物件を自分で確かめる必要があります。慎重な検討を経て、適切な不動産ファンドを活用することが、成功のポイントです。

安易な気持ちで十分な検討をせずに不動産ファンドを選んでしまうと、失敗の大きな原因となります。不動産ファンドは少額から投資をスタートできるためハードルが低いと思われがちですが、投資を行う以上はリスクも当然発生します。

慎重に判断しないと、収益を上げるどころか大きな損失が発生しかねません。着実に収益を積み重ねるためにも、不動産ファンドの選定や物件の確認など、慎重に分析を進める必要があります。

【関連】M&A成功事例とは?大手・中小企業、スタートアップやベンチャー企業のM&A成功事例を解説

不動産ファンドのまとめ

不動産ファンドとは、投資家から集めた資金によって不動産を運用し、そこから得られる収益を投資家に分配する仕組み・組織のことです。不動産投資では自身で購入した不動産を運用できますが、不動産ファンドを活用した投資もできます。

特に不動産ファンドの場合、少額から投資を開始できる点にメリットがあり、分散投資によってリスクを減らすことも可能です。一方で、ファンドの運用コストなどが発生するほか、リターンが少ないデメリットも見られます。

自身で不動産を購入して収益を狙うケースと比較し、どちらの方法を活用すべきか慎重に検討することが大切です。また、不動産ファンドは種類が多いため、信頼できるファンドかどうか、さまざまな視点から十分に検討を重ねましょう。

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