2021年4月22日更新節税

中小企業経営強化税制は令和3年まで延長!A類型、B類型ごとに解説

中小企業経営強化税制は、中小企業の積極的な設備投資を後押しする制度であり、適用期限が令和3年まで延長されました。適用される設備区分は、使用意図によってA類型・B類型に分けられます。そして税制優遇は、「即時償却」「税額控除」のどちらかが受けられます。

目次
  1. 中小企業経営強化税制
  2. 中小企業経営強化税制とは?いつまで延長?
  3. 中小企業経営強化税制の適用条件
  4. 中小企業経営強化税制を活用するメリット
  5. 中小企業経営強化税制の申請の流れ
  6. 先に設備を取得した場合は?
  7. まとめ

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中小企業経営強化税制

中小企業庁は、中小企業の経営方法の改善や安定、新たな事業の創出に関連することなどをサポートしています。そのひとつが「中小企業経営強化税制」であり、中小企業の経営者にとって大いに役立ちます。

中小企業の経営をサポートし、より活性化する目的で設置された中小企業経営強化税制ですが、実際はどのように活用できるのでしょうか。 大まかに言えば、設備投資を行う中小企業が、一定の条件を満たしていれば、法人税、所得税からその費用分を控除する制度です。

予算が限られている中小企業にとって、なかなか思い切った設備導入に踏み込めないという企業も多いのではないでしょうか。そのためこの制度は、中小企業の設備投資やサービス業等の生産性の向上を後押しするためのものです。

今回は、中小企業経営強化税制を使用した時のメリットや申請する場合の手続きの方法を紹介します。

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中小企業の税制

中小企業経営強化税制とは?いつまで延長?

中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法にある経営力向上計画の認定がされた中小企業が、設備投資をした際に様々な点から優遇してくれる税制です。

適用期限は、2017年(平成29年)4月1日から2019年(平成31)3月31日までの適用期限でしたが、税制改正により 2021年(令和3年)3月31日までと延長されることになりました。

中小企業経営強化税制は対象となる中小企業が、その設備を指定事業に使用した場合に適用されるものです。
事前の申請が必要になるものの、もし適用を受ければ法人税や所得税で税制優遇措置を受けられるため、会社の負担を軽減できます。  

中小企業経営強化税制は、元々機械装置の導入に向けたサポートが主でした。しかし最近では、サービス業等を営んでいる中小企業の設備導入も適用範囲内に含めるようになりました。農林水産業や商業、サービス業の中小企業も新しい施設導入をするにあたって、有効的な援助を得られます。

前述の通り中小企業経営強化税制は、令和3年までの優遇措置です。各種手続きには、一定の時間がかかりますので、設備投資の検討をしている経営者の方は、早めに申請の手続きをしましょう。

中小企業経営強化税制の適用条件

中小企業経営強化税制は、一定の適用条件を満たしていなければ申請出来ません。  

ここでは中小企業経営強化税制を活用するための条件を紹介します。

①対象者

中小企業経営強化税制は、青色申告書を提出しており、中小企業等経営強化法の認定を受けた以下のような中小企業に適用されるものです。  

  • 資本金または出資金が1億円以下の法人(大規模法人に支配されるものや出資を受ける法人を除く)
  • 常時使用する常時使用者数が1,000人以下の個人事業主
  • 協同組合等

②適用される設備

中小企業経営強化税制が適用されるには、以下の2つの条件を満たす設備である必要があります。 

  • 平成29年4月1日から令和3年3月31日までに取得されている
  • 取得した設備を事業に使用している  

適用される設備は、その使用意図によって「A類型」と「B類型」の2つに分けられます。A類型は、生産性向上を目的に取得された設備が該当します。  

A類型(生産性向上設備)

A類型は、生産性向上を目的に取得された設備が該当します。具体的には以下のものがあります。 

  • 160万円以上の機械装置 
  • 30万円以上の測定工具・検査工具
  • 医療機器やデータセンター業者が使う電子計算機を除く30万円以上の器具備品 
  • 医療保険業を除く60万円以上の建物付属設備 
  • 70万円以上のソフトウェア  

いずれも一定期間内に発売されたものであり、かつ生産性が年平均で1%以上改善できる設備であるのも条件に含まれています。また、確認者は工業会等になります。 

B類型(収益力強化設備)

対してB類型は、収益力強化に主眼が置かれた設備が該当します。A類型の測定・検査工具以外のものが該当します。  

  • 160万円以上の機械装置 
  • 30万円以上の工具
  • 医療機器やデータセンター業者が使う電子計算機を除く30万円以上の器具備品 
  • 医療保険業を除く60万円以上の建物付属設備 
  • 70万円以上のソフトウェア  

そして、年平均で5%以上の投資利益率が発生するのも条件です。また、確認者は経済産業局になります。設備の種類自体はA・B類型それぞれの違いはありません。「生産力強化か収益力強化のどちらを目的にしているか」に違いがあります。

一方で中古や貸付だったり、国外への投資だと適用外になるので気を付けてください。また、売り上げに直接寄与する設備であるのが第一条件です。 

③適用される指定事業と除外される事業

中小企業経営強化税制が適用される指定事業は決まっています。中小企業投資促進税制及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制のそれぞれの制度の対象事業に該当する事業が指定されています。しかし、以下の事業はについては除外されているので注意しましょう。
<除外される事業>

  • 電気業、熱供給業
  • 水道業
  • 銀行業
  • 航空事業
  • 鉄道業
  • 映画を除く娯楽業
  • 性風俗関連特殊営業に該当する事業
参照元:中小企業庁 「中小企業税制<令和元年度版>」

中小企業経営強化税制を活用するメリット

中小企業経営強化税制の税制措置は2つあり、いずれも中小企業が得られるメリットは大きいです。活用できる措置は、「即時償却」と「税額控除」です。ただし、申請する中小企業は2つの措置のうち、いずれかしか選べないので気を付けましょう。  

・即時償却

通常、設備を取得した際には減価償却が発生します。しかし、中小企業経営強化税制を活用した場合、減価償却を前倒ししたうえで、取得価額の全額を取得した事業年度の経費に計上できます。  

・税額控除

取得価額の10%の税額控除ができるのです。ただし資本金3,000万円超え1億円以下の法人については、7%の税額控除が受けられます。このように、どちらのメリットも中小企業にとってうれしいものです。即時償却が「短期的な資金のやりくりが楽になる」税制です。

一方で、税額控除は「長期的な資金のやりくりが楽になる」税制である点で、この2つは異なります。したがって、中小企業経営強化税制を申請する際には、自社の経営状況や資金の状態に合わせて税制を選択しましょう

参照元:中小企業庁 「中小企業税制<令和元年度版>」

中小企業経営強化税制の申請の流れ

中小企業経営強化税制の申請の流れは以下となります。一見単純そうに見えますが、公認会計士や税理士等の専門家のアドバイスが必要な場合があるので注意が必要です。 

①導入する設備の選定

まずは、中小企業経営強化税制を受ける際に導入する設備が適用内かどうかをチェックしましょう。前述の通り、中小企業経営強化税制の対象となる設備は、販売年数や金額が決まっており、そこから外れると適用外となってしまいます。  

またA類型とB類型のどちらにするかで悩むかもしれません。どちらにも該当するのであれば、A類型にするのがおすすめです。なぜなら適用範囲が広く、後述する申請の手続きが比較的簡単だからです。しかも結果的に得られる優遇措置にA類型・B類型の差はありません。

またA類型であれば、固定資産税の軽減が得られる可能性もあります。  

②必要書類の用意

A類型・B類型のどちらにするか決まった後は必要書類を用意します。まず用意するのは、経営力向上認定申請書とそのチェックシートです。どちらもネットからでも手に入ります。しかし細かな項目が多いので、税理士や公認会計士などの専門家のチェックを受けた方が良いでしょう。

まずはA類型・B類型のどちらかを選択し、それぞれに必要な書類を用意する必要があります。 

A類型の場合

  1. 設備メーカーに証明書の発行を依頼する(生産性向上設備については、要件を該当していることを確認した後、工業会等から証明書を発行)
  2. 経営力向上計画の策定

尚、生産性向上設備の認定を受けた場合は、生産性向上特別措置法による固定資産税の特例も適用できるケースがあります。

B類型の場合

  1. 投資計画を策定し、その内容について税理士や公認会計士に事前確認を行ってもらいます。投資計画案が無理のないものだと確認してもらい、事前確認書を取得する。
  2. 本社所在地を管轄する経済産業局に投資計画と事前確認書を持参し、説明を行う。
  3. 経営力向上計画を策定

③担当省庁に必要書類を提出・認定

必要書類が用意ができた後は担当省庁に提出し、認定を受けることになります。尚、気を付けておきたいのは、中小企業の事業分野によって担当省庁が異なる点です。事前に自社の担当省庁がどこになるのかは調べましょう。 

認定は受理されてから約30日で完了します。しかし、複数の事業分野で設備を取得する場合は、およそ45日かかる可能性があります。

認定が完了した後は、予定通り設備を取得すれば完了です。取得した設備が計画通り事業に使用されていれば、確定申告の際に税額控除等を受けられます。 

先に設備を取得した場合は?

何らかの事情で先に設備を取得してしまった場合でも、申請をすれば中小企業経営強化税制は活用可能です。ただし、手続きは通常の申請と異なる部分があります。主に異なるのは、B類型に該当する設備を取得した場合です。

先に設備を取得する場合でも、B類型の必要書類である確認書は、取得前に申請する必要があります。確認書自体は取得後に入手する形になっても問題ありませんが、申請は取得前にする必要があるので注意が必要です。

また、設備取得を先にしてから中小企業経営強化税制の申請をする際の期限は決まっています。設備を取得した事業年度内、そして設備を取得して60日以内に中小企業経営強化税制の申請を実施する必要があります。

この期限を超えてしまうと、中小企業経営強化税制は活用できなくなるので気を付けましょう。

まとめ

中小企業経営強化税制は今後も実施され、その都度適用条件が変わる可能性はあります。設備投資を考えている中小企業経営者の方は、ぜひ一度試してみては如何でしょうか。要点をまとめると下記になります。

・中小企業経営強化税制の適用期限が、2017年(平成29年)4月1日から2021年(令和3年)3月31日まで延長された。

・中小企業経営強化税制の活用により、「即時償却」や「税額控除」のどちらかの優遇を受けられる。

・中小企業経営強化税制の申請は、設備の区分をA類型・B類型にするかで手続きの手間が変わる。 

・先に設備を取得しても中小企業経営強化税制は活用できる。

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