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2021年5月19日更新業種別M&A
建築資材卸売業の売却額とは?売却の注意点や価額のあげ方を解説
建築資材の卸売業界は、これまでは成長軌道に乗っていたものの、オリンピック後の需要不透明化、政策の影響や競争環境の激化により、今後は企業再編が起きると予想されます。そこで今回は、建築資材卸売業の売却額について説明していきます。
目次
建築資材卸売業とは
建築資材卸売業は、建築用途の木材、プラスチック材、金属、ガラスといった基礎商材の卸売を実施する事業をさします。また、その他にも、住宅用途における水廻り設備・浴槽設備・空調設備などの住宅設備機器(以下「住設機器」)の卸売を生業としています。
建築資材卸売業は、住宅に関連するあらゆる種類の商品を取り扱う業界の集合体であり、商品を構成する部品点数も多岐に渡ります。そのため、住設機器の流通には多くのプレイヤーが関わり、複雑化しているように見えるでしょう。
しかし、一般的な流通形態としては、製造先も幅広く、需要先も多様であるため、卸売業者を介してサプライチェーンの下位工程に受け渡していくことになります。これらを総称して建築資材業者と呼びます。
建築資材卸売業の市場動向
日本の不動産投資市場は、2008年のリーマンショックにより一時的に悪化しました。しかし、2011年以降の東日本大震災後の復興需要や、その後のオフィス・商業・ホテル市場への開発需要増加を受け、2017年頃までは急激に成長し、その後も横ばいを続けています。
また、住宅市場についても2016年頃まで伸長し、その後はやや下落したものの、同水準で推移している状況です。ここでは、以下の観点から市場動向を詳しく説明していきます。
- 住宅施設用途の建築資材
- 住設機器の流通と業界再編
- 競合の可能性
①住宅施設用途の建築資材
主軸である新築住宅の建設動向は、消費税増税後の反動はあるものの、リーマンショック以降ゆるやかな回復を見せています。
一方、人口は2008年をピークに減少傾向にシフトしました。市場の縮小が懸念される中で、住設業界各社はリフォーム・リノベーション市場を新たな成長の軸に据えようとする動きを見せています。
加えて、日本では「中古住宅・リフォームトータルプラン(国土交通省)」を公表し、2020年までに中古住宅流通・リフォーム市場を20兆円に引き上げる目標を掲げています。
リフォーム減税・リフォームローンの拡充などの各種施策を実施することで、市場の成長を後押ししているため、住宅リフォーム市場は現在拡大傾向にあります。
また、新築住宅の購入やリフォーム・リノベーションには、高額な資金を要するため、一般消費者のコスト意識が高く、各種の施策などが消費行動に影響を与えます。加えて、住宅購入を考える消費者の多くは借入を伴うため、消費行動は金利情勢にも左右されるでしょう。
最近では、金融緩和、マイナス金利の導入などの緩和策により、借入金利の低水準推移が予想され、購買意欲の上振れが期待されています。しかし、不安定な市場環境や、昨年10月からの消費税増税などのネガティブ要因もあり、消費動向は今後も大きく変動していくと考えられるでしょう。
②住設機器の流通と業界再編
住設機器の流通は、卸売業者を介するものが主流となっています。建築資材卸は、地域密着型の小規模事業者を中心とした分散型構造となっているケースが多く、その多くは大手総合商社の流通ルートを活用し、総合商社と資本関係がある事業者が多数存在しています。
また、住設卸業の仕入先である住設機器メーカー市場では、これまで専門住設機器メーカーによる分業が実施されてきました。
しかし、リーマンショック直後には、新築住宅向け市場の縮小が懸念されたため、スケールメリットを求めた統合・提携が相次ぎ、巨大な総合住設機器メーカーに集約する形で業界再編が発生しました。
- 例1:YKKAP/TOTO/大建工業→TDYグループ(2012年提携関係を強化)
- 例2:INAX/東洋エクステリア/新日軽/トステム/サンウェーブ工業→LIXIL(2011年に経営統合)
- 例3:パナソニック電工/松下電工→パナソニックエコソリューションズで現在のライフソリューションズ(2012年にセグメント再編)
その結果、住設機器メーカーの価格競争が起こり、住設卸業者が住設機器メーカーに依存する業界構造となりつつあります。加えて、各住設機器メーカー系列の卸業者における販売エリアの重複が生じることとなり、営業拠点の統廃合を目的とした卸業者の再編へとつながっています。
③競合の可能性
ここでは、競合の可能性について建築資材卸売業の市場動向を見ていきます。
住設機器メーカーによる直販の拡大
大手住設機器メーカーは、リフォーム需要を見込み、店舗型の建材卸店やオンラインショップによる直販を拡大させています。住設機器メーカーによる直販は、価格面で有利なだけでなく、CMなどにより消費者に直接触れる機会を増やすことで、着実に市場での存在感を増加させています。
このように、自社の力で顧客基盤の拡充を実行する住設機器メーカーは、建築資材卸売業においても非常に脅威となります。
オンラインリフォームサービスビジネスの台頭
近年では、AmazonなどのEC事業者のガリバーや、グリーなどのネットビジネス業者がオンラインリフォームサービスへ進出し、間接コストが削減されている分、価格競争力が高く、今後の脅威になりうる存在となっています。
- 例1:総合オンラインストアAmazon.co.jpが、積水ハウスグループ、大和ハウスリフォーム、ダスキンのリフォーム関連商品を扱う「リフォームストア」を開設(2012年11月)。
- 例2:携帯ゲーム大手のグリーが、オンラインリフォームサービスを開始(2014年7月)。同年12月には、住設ECサイト運営会社セカイエを子会社化。
家電量販店による住設機器事業の参入
家電量販店のヤマダ電機は、2011年10月にエス・バイ・エルを子会社化、スマートハウス事業に参入しました。また、2012年6月には、住宅設備機器メーカーのハウステックHDを子会社化し、住設機器事業に参入しています。
家電量販店は、実店舗に多くの消費者が日々訪れるため、直接エンドユーザーに接する機会があります。さらに、販売拠点も全国にあって知名度も高いため、顧客への訴求がしやすい点が特徴です。
建築資材卸売業の売却額相場
建築資材卸売業は、一般的に不動産業界の景気に左右される傾向がありますが、競合の状況や金利状況にも影響を受けるため、2019年では、営業利益の5~7倍が企業価値評価として標準的な相場だと考えられます。
また、2020年のオリンピック需要後はさらに下落するリスクもあり、買手側のニーズに沿った売却戦略を立てることが重要になります。
さらに、建築資材卸売業のM&Aでは、引き継ぐ業種や契約内容によって価格が変動します。例えば、中小規模におけるM&Aの場合は、平均して数千万円から数億円あたりが相場であるとされています。
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建築資材卸売業で売却金額を引き上げるためのポイント
ここでは、建築資材卸売業で売却金額を引き上げるためのポイントについて解説していきます。
同業間または周辺領域とのM&Aを想定した場合、買手側のメリットには以下のようなものがあります。
- 販路の獲得(自社商品の販売拡大、地域に強い営業基盤の拡大)
- スケールメリットの追求(企業間交渉における発言力の強化、原材料などの共同購買による調達原価の低減)
- 重複部門の共通化によるコスト削減
- 新たな事業ノウハウなどの獲得
以上のメリットを踏まえると、買収候補がデューデリジェンスの際に確認したいポイントは以下の3つです。
- 事業特性
- 事業地域におけるプレゼンス
- 取扱商材
①事業特性
デューデリジェンスの際、事業特性について確認したいポイントには、以下のようなものがあります。
- 商業施設向けであるか、住宅向けであるか
- 住宅向けであれば、新築販売向けであるか、リフォーム事業向けであるか
- 買い手がメーカーの場合は、自社製品への切替余地があるか
- 主要事業以外の事業に関しての将来性はあるか
- 買い手事業とのシナジー効果(事業カルチャー含む)はどの程度あるか
②事業地域におけるプレゼンス
デューデリジェンスの際、事業地域におけるプレゼンスについて確認したいポイントには、以下のようなものがあります。
- 売手側の展開地域における知名度
- 売手側の展開地域におけるシェア
③取扱商材
デューデリジェンスの際、取扱商材について確認したいポイントには、以下のようなものがあります。
- 取扱商材数(SKU)と種類
- 買手が保有する商材との重複
- 商材の価格帯
このように、デューデリジェンスの際、買収側企業は細かく調査したうえでM&Aを検討します。そのため、建築資材卸売業で売却金額を上げるためには、上記のポイントについて自社はどのような状態であるかをしっかりと把握し、リスクがあれば整理しておくことが重要になります。
また、M&Aの基本的な部分になりますが、事業基盤、展開地域、役員や従業員の能力、商品ラインナップ、良い仕入先と顧客先などを上手にアピールすることで、売却額を引き上げられる可能性が高まります。
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建築資材卸売業における売却時の注意点
ここでは、建築資材卸売業における売却時の注意点について説明していきます。建築資材卸売業における売却時の注意点には以下の3つがあります。
- 自社の強みを把握しておく
- M&Aを実施する明確な目的を決めておく
- 売却時のプロセスを理解しておく
①会社の強みを把握する
建築資材卸売業同士であっても取り扱っている商材は多種多様であり、M&Aを実施する際には、他社と違う強みについて理解しておく必要があります。近年では、多くの建築資材卸売業が買収を希望しており、他社と同じような案件であれば、安価で買収される可能性があります。
そのため、安定した取引先を多数持っている、地方でトップシェアを持っているなど、安定した収益力を持った企業は高値で買収されています。また、市場需要が高い商材を多く取り扱っている、他社での取扱いがない商材で収益を上げているなどでも、買収側企業にとっては魅力的な会社であるといえるでしょう。
しかし、実際に自社の強みを証明するためには、事実に基づいた資料やデータをまとめておき、買収側企業に対して根拠を実証する必要があります。したがって、経営者個人で自社の強みを見出せない場合は、M&A仲介会社などに相談することをおすすめします。
M&A総合研究所では、M&Aの専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
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②M&Aを実施する明確な目的を決めておく
M&Aにおける交渉過程では、お互いが提案した意見を基に条件を調整します。特に譲れない条件がある場合は最初に明示して、相手企業から同意を得られるかを確認することが一般的です。
実際に重要となる条件は、売却する事業、会社の状況、何を目的としてM&Aを実施するかなどで変動しますが、高い売却益を得て早期リタイヤしたい場合は、リタイヤ後の生活が安泰なレベルの売却益を得ることが目標になるでしょう。
また、M&Aによって従業員が離職するリスクがある場合は、待遇を統一して従業員を引き留めるといった工夫も必要になります。
ただし、売却側企業が一方的に有利な条件を提案していると、買収側企業から悪い印象を持たれ、交渉が決裂しやすくなります。そのため、有利な条件で売却することは重要ですが、お互いに妥協点を探す工程であることを忘れないようにしましょう。
③売却時のプロセスを理解しておく
売手にとって、M&Aの意思決定を実行し、プロセスを開始するまでには、オーナー・役員・従業員に相応の負担が掛かっています。そのため、万が一プロセスが途中で頓挫してしまうような事態に陥った場合、全社の士気が落ちるリスクが非常に高いでしょう。
また、一度売却の交渉を外部と実施すると、秘密保持契約を当事者間で結んでいたとしても「あのオーナーは会社を売却しようとしている」という噂が立ってしまい、プロセスが進まなくなるリスクもあります。
そのため、今どの段階であるか、何に配慮しておく必要があるのかを把握したうえでM&Aを進めていくことが重要です。
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建築資材卸売業の売却はM&A仲介会社に相談
プロセスをスムーズに進めるためには、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。スケジュールや社内でのプロジェクトメンバーの決定、買手候補先に配布する売手側に関する事業概要資料の作成について相談することは、M&Aを成功させるために非常に重要な工程です。
また、M&A仲介会社活用の最大の利点は、自社にはない巨大なネットワークを使って、幅広く買手候補に声掛けしてくれるため、複数社が関心を寄せ、結果的にオークションのように価格が釣り上っていくことが期待される点にあります。
建築資材卸売業の売却をお考えの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には専門的な知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、M&Aをフルサポートいたします。
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まとめ
日本の不動産投資市場は、2008年のリーマンショックにより一時的に悪化しましたが、2017年頃までは急激に成長し、その後も横ばいを続けています。また、住宅市場についても2016年頃まで伸長し、その後はやや下落したものの、同水準で推移している状況です。
しかし、今後はオリンピック後の需要不透明化、金利や消費税などの政策マターに左右されるほか、競争環境は激化する環境にあるため、企業再編が起きると予想されます。
そのため、M&Aによる大きな負担を軽減し、より高い売却額を実現するためには、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。
要点をまとめると下記の通りです。
・建築資材卸売業とは
→建築用途の基礎商材の卸売を実施する事業のこと
・建築資材卸売業の市場動向が影響を受ける要素
→住宅施設用途の建築資材、住設機器の流通と業界再編、競合の可能性
・建築資材卸売業の売却額相場
→営業利益の5~7倍が標準的で、平均して数千万円から数億円あたりが相場である
・建築資材卸売業で売却金額を引き上げるためのポイント
→買収候補がデューデリジェンスの際に確認したいポイントを押さえる
・建築資材卸売業における売却時の注意点
→自社の強みを把握しておく、M&Aを実施する明確な目的を決めておく、売却時のプロセスを理解しておく
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