2021年5月28日更新業種別M&A

調剤薬局の今後の予測を発表!2020年の調剤改定でM&Aが増加?

近年、度重なる調剤報酬改定によって徐々に経営が難しくなっている調剤薬局業界ですが、今後も様々な理由から経営の難易度が上がり、M&Aの頻度が高くなることが予想されます。当記事では、調剤薬局業界の現状と今後の予測について解説します。

目次
  1. 調剤薬局業界を取り巻く現状
  2. 調剤薬局の今後の予測
  3. 調剤報酬とは
  4. 2020年の調剤報酬改定によりM&Aは増加するか
  5. 調剤薬局のM&Aの際におすすめ相談先
  6. まとめ

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調剤薬局業界を取り巻く現状

調剤薬局業界の今後を予測するためには、業界の現状を把握しておく必要があります。現在の調剤薬局業界は、いくつかの解決すべき課題を抱えています。

その背景には、少子高齢化による全体的な人材不足と、政府が進める調剤薬局業界の在り方の変化に対応できない薬局が増えてきていることがあります。

【調剤薬局業界を取り巻く現状】

  1. 慢性的な薬剤師不足
  2. 経営者の高齢化
  3. 大手チェーンの事業規模拡大
  4. 度重なる調剤報酬改定
  5. 調剤薬局のあり方の変化

1.慢性的な薬剤師不足

現在、調剤薬局業界では、慢性的な薬剤師不足が発生しています。薬剤師資格の取得率自体は年々増加していますが、大手チェーンによる事業拡大や他業種からの新規参入の影響で、すべての薬局に薬剤師がいきわたっていないのが現状です。

薬剤師は女性の比率が高いため、結婚や出産を機に離職してしまうケースも多いことも、従業員の確保が難しい要因のひとつです。

また、昨今は仕事に安定を求める若者が増えてきており、若手の薬剤師は大手企業を志望する傾向にあるため、特に小規模・個人経営の薬局では人材不足が顕著になっています。

2.経営者の高齢化

経営者の高齢化も、近年の調剤薬局業界を象徴する問題です。現在、調剤薬局の経営者の多くは、一般的な引退年齢と呼べる60代に差し掛かってきています。

昔は子供が「家業を継ぐ」ことは普通でしたが、生き方や仕事観が多様化してきた現代においては、子供が事業の引継ぎを拒否することも多いです。

調剤薬局の経営が難しくなってきていることもあり、後継者をみつけられない経営者が引退できずに仕方なく経営を続けているということが多くなってきています。

3.大手チェーンの事業規模拡大

近年、調剤薬局業界では、大手チェーンが急速な事業拡大を行っています。大手チェーンは豊富な資本を活かして、コンビニエンスストアなどと業務提携を行ったり、アプリを活用した利便性の高いサービス展開などを行うことが可能です。

また、本来「薬局医薬品」を販売することができない大手ドラッグストアが、都道府県知事の認可を受け、調剤薬局業界へと参入するケースが増えてきています。

次々と店舗数を増やしている大手チェーンは、小規模・個人経営の薬局には脅威であり、患者の分散により収益が低下し、徐々に経営が難しくなっているのが現状です。

4.度重なる調剤報酬改定の影響

冒頭でも述べたように、近年では調剤報酬についての制度が何度も改定されており、調剤薬局に経営にも大きな影響を及ぼしています。

近年の調剤報酬改定では、医療費の透明化や患者の負担軽減を目指す政府の方針により、経営側にとっては不利といえるような改定が多いです。

今後も薬剤師の技術料や調剤基本料は徐々に減額され、調剤薬局の経営が難しくなっていくことが予想されます。

5.厚生労働省通知「調剤のあり方について」

厚生労働省は、2019年4月2日に「調剤のあり方について」という通知を発表しました。0402通知とも呼ばれる「調剤のあり方について」では、今まで薬剤師のみが行えた調剤業務の一部を、薬剤師以外の人が行ってもよいと記述されています。

薬剤師の対物業務に対する負担は軽減されるので、今後は対物業務に対する調剤技術料がさらに低減される可能性が高いと考えられます。

0402通知が発表された背景には、先述した慢性的な薬剤師不足への対策と共に、地域密着型の「かかりつけ薬局」を増やしたいという意図があります。

現在、政府は地域医療の充実に力を注いでおり、対物業務よりも対人業務に対する調剤報酬点の加算を優遇しはじめているという状況です。

【関連】調剤薬局の経営が厳しいのは調剤報酬改定が原因?生き残りにはM&A?

調剤薬局の今後の予測

調剤薬局業界の現状が把握できたところで、今後業界がどのようになっていくのかについて、予測していきます。

総括的に見ると、今後は経営が難しくなった調剤薬局のM&Aが増加し、資本力のある企業が展開する調剤薬局が生き残っていく可能性が高いといえるでしょう。

1.今後も段階的に調剤報酬改定が行われる可能性

近年頻繁に行われる調剤薬局改定ですが、今後も段階的に行われる可能性が高いとみられています。

政府は、団塊世代と呼ばれる高人口世代が75歳に突入する2025年までに、医療制度の整備することを目指しているので、2025年までは調剤報酬制度もハイスピードで変化していくと考えられます。

今後の調剤報酬改定では、地域医療を重視する政府の方針により、今まで以上に薬剤師の対物業務に対する加点が減り、対人業務での加点が増えていくことが予想されます。

よって、今後の調剤薬局業界で生き残るためには、個々の患者の管理や薬の服用に関する指導、時間外・院外での業務対応を行い「地域支援体制加算」による加点を増やすことが必要になるでしょう。

2.後継者不足によるM&Aの増加

今後の調剤薬局業界では、今以上に経営者の高齢化が進むことになります。現状発生している後継者問題はより顕著になり、多くの調剤薬局が廃業を考える可能性が高くなると考えられます。

しかし、調剤薬局は医療機関の1つとして社会的責任が強いため、簡単に廃業するわけにはいきません。

そのような背景もあり、後継者のいない調剤薬局を存続させるために、M&Aによる事業継承が盛んに行われることが予測されています。

3.今後も続く薬剤師不足

少子高齢化が進む日本では、今後も薬剤師不足が続く可能性が高いです。先述したように、近年の若者は安定志向であるため、小規模・個人経営の調剤薬局は今まで以上に人手不足に悩まされることになるでしょう。

今後は、地域医療への貢献を視野に入れなければならないこともあり、薬剤師不足はより深刻な問題への繋がる可能性が高いと考えられます。

薬剤師不足から対人業務に対する教育ができず、結果的に調剤報酬点数が減り、経営難になるという悪循環により、今後は多く調剤薬局が淘汰されていくと予測されています。

4.新規参入企業の増加

異業種からの新規参入企業が増加する可能性も、今後の調剤薬局業界について語るうえでは欠かせない要素です。

調剤報酬改定によって、市場規模が縮小する可能性が高い調剤薬局業界ですが、高齢化の影響による医療費の増加により、ある程度の成長は見込むことができます。よって、今後も豊富な資本力を持つ企業の新規参入が増加する可能性が高いといえるでしょう。

既に参入してきているコンビニエンスストアや家電量販店はもちろん、電子処方箋が普及して処方箋を薬剤師の手から渡さなければならないというルールが改定された場合、物流業界からの参入が予想されます。

豊富な資金力を持つ他業種の大手企業は、急速な事業拡大が可能なため、小規模・個人経営の薬局の経営はさらに厳しくなるでしょう。

5.少子高齢化による医療費の増加

今後、少子高齢化の進行により、日本における医療費はさらに増加することが予想されます。

医療費の増加は国の社会保障制度の存続に大きな影響を及ぼすため、政府は医療費の削減のため、医療制度にメスを入れはじめている状況です。

今後、調剤薬局においては、薬剤師の対人業務の増加や薬価の見直しなどが行われ、薬剤師の業務や薬局の報酬体系が大きく変更することが予想されます。

上記のような変化についてこれず、薬局の数自体が減少する可能性も高く、事実、政府は現在6万軒ほど存在する調剤薬局を半分程度に減らすという方針を立てています。

今後、調剤薬局業界で生き残っていくためには、経営方針の柔軟性と制度変更に耐えられる資本力が必要です。

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調剤報酬とは

調剤報酬とは、健康保険法によって定められた報酬の1つで、処方箋に基づいて「薬局医薬品」を調剤した際に発生する報酬のことです。

調剤技術料・薬学管理料・薬剤料・特定保険医療材料料によって構成されており、薬剤師の業務によって細分化されています。

今までは、調剤技術料や薬剤料といった対物業務に対する報酬が全体の割合を占めていましたが、今後は薬学管理料に該当する報酬が増加する可能性が高いでしょう。

調剤報酬改定の流れ

調剤報酬の改定は、基本的に2年に1度行われています。2018年の改定では、「基準調剤加算」の代わりに「地域支援体制加算」が新設され、地域医療への貢献度か高いほど調剤報酬点数の面で有利になりました。

また、薬剤のアドバイザーとして対人業務を行うことができる「かかりつけ薬剤師」に認められる条件が厳しくなり、勤めている薬局の在籍期間が6カ月以上から1年以上に延長されています。

さらに、薬剤師の育児・介護休業法の変更もあり、週4日以上かつ24時間以上の勤務でも認められるようになりました。

かかりつけ薬剤師にはより専門性が求められるようになった代わりに、育児や介護中であっても働きやすい環境になったといえるでしょう。

調剤報酬改定が行われた理由

調剤報酬改定は度々行われていますが、その理由として医療費の透明化と増加抑制が挙げられます。先述の通り、今後の日本は高齢化が進行して医療費が増加することが予想されます。

医療費の増加は、社会保障制度による国の負担額増加にもつながるため、政府としても無視できません。特に調剤医療費は年々増加傾向にあり、今後も増加し続ける可能性が高いです。

医療費を透明化することによる薬価の見直しや、調剤報酬の加点方法の変更により、患者にとって有益な薬局づくりを促進しつつ調剤医療費を抑える必要があるため、調剤報酬改定が行われています。

2020年の調剤報酬改定によりM&Aは増加するか

前回の調剤報酬改定から2年後である2020年には、例年に漏れず調剤報酬改定が行われます。

この章では、今回の調剤報酬改定で調剤薬局業界にどのような変化が訪れるのか、詳しく解説します。

2020年に行われる調剤報酬改定の内容

2020年に行われる調剤報酬改定の具体的な内容は、以下のようになっています。

【2020年調剤報酬改定の内容】

  • 薬剤師の労働環境改善
  • かかりつけ薬剤師指導料の見直し
  • 調剤基本料の見直し

まずは、薬剤師の労働環境改善についてです。今までは、常勤の薬剤師を2人配置しなければなりませんでしたが、週3かつ22時間以上勤務している非常勤薬剤師に限り、常勤と同じ扱いで配置できるようになる予定です。

結果的に常勤の薬剤師の勤務時間を減らすことができ、常勤薬剤師の負担が軽減することが期待されています。

次に、かかりつけ薬剤師指導料の見直しについてです。地域医療への貢献を重視するため、かかりつけ薬剤師指導料の点数を見直しつつ、患者のプライバシーを守るようなカウンタ―の設置や医療機関への情報提供が要件に加わります。

最後に、調剤基本料についてです。調剤基本料は、前回の改定に比べ門前薬局と大手チェーンへの加点が減少しています。

また、患者が同一の薬局を繰り返し利用することによる調剤業務の負担軽減と、それに伴う技術料の減少を狙って、同一薬局の利用を推進するような見直しが行われます。

調剤薬局業界が2020年以降にM&Aによる再編が行われる理由

上記のような改定が行われることから、調剤薬局では2020年以降にM&Aによる再編が行われる可能性が高いです。

かかりつけ薬剤師の要件は年々厳しくなっており、特に施設に関する要件については、経営状況が悪い薬局では対応するのが困難になるでしょう。

今後は対人業務に向けた施策を行っていく必要があるため、資本力のない薬局はM&Aによる売却や継承を考えることが多くなると予想されます。

さらに、大手チェーンや門前薬局での調剤基本料の低減により、大手は新規出店よりも地域に密着した既存店舗の獲得を考える可能性が高いです。

地域に根付いた薬局を積極的にM&Aしていくことによって、門前ではない地域医療に貢献した薬局を展開していくことが予想されます。

総括すると、今後はM&Aによって小規模薬局が大手企業に統合されていき、業界全体が再編されていくことでしょう。

【関連】【2020年最新版】調剤薬局のM&A案件一覧!

調剤薬局のM&Aの際におすすめ相談先

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まとめ

今回は、調剤薬局の今後について解説しました。今後の調剤薬局業界は、全体的に縮小しつつ、地域医療に貢献している薬局が生き残っていくことが予想されます。

【調剤薬局業界を取り巻く現状】

  1. 慢性的な薬剤師不足
  2. 経営者の高齢化
  3. 大手チェーンの事業規模拡大
  4. 度重なる調剤報酬改定
  5. 地域医療への貢献を重視

【調剤薬局の今後の予測】
  1. 今後も段階的に調剤報酬改定が行われる可能性
  2. 後継者不足によるM&Aの増加
  3. 今後も続く薬剤師不足
  4. 新規参入企業の増加
  5. 少子高齢化による医療費の増加

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