M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月27日更新業種別M&A
通訳・翻訳会社の事業承継の動向!事例や案件例・相談先も紹介
他国の言葉を自国の言葉へと変換したり、他国の言語で書かれた書類などを自国の言葉に置き換えたりする業務を担うのが通訳・翻訳会社です。近年、通訳・翻訳会社の事業承継が盛んです。通訳・翻訳会社の事業承継について、成功のポイントや事例、おすすめの相談先を紹介します。
目次
通訳・翻訳業界が直面している問題
通訳・翻訳会社の業界では、下記のような問題に頭を悩ませています。
- 競合が増えて競争が激化している
- 国際的な人材を集めたいが難しい
- 機械翻訳の導入を検討するも投資負担が大きい
①競合が増えて競争が激化している
株式会社矢野経済研究所による2018年度の調査では、通訳・翻訳会社の市場は3,000億円としています。また、日本国際連盟による第5回目の翻訳・通訳業界調査結果報告では、年商が3億円を下回る企業の割合が調査に答えた企業のほぼ半分だとしています。
データからは通訳・翻訳会社の業界では、中小規模の会社が多いことが窺えますし、翻訳事業に通訳事業を加えた体制に移行している企業も目立っています。
そのため、通訳・翻訳会社の市場は、苛烈を極める他社との競争に勝つために、周辺事業を加えた事業体制の移行が求められている市場だと捉えられます。
②国際的な人材を集めたいが難しい
通訳事業では主力の人材を45歳前後とし、翻訳事業では3年未満の実務経験者が減っているとのデータから、若い人材が足りていないことが窺えます。
また、英語の翻訳事業には対応しているものの、アジアエリアの言語には対応しきれていない会社が見られますし、英語から日本語への翻訳に比べて日本語から英語への翻訳は需要に対応しきれていません。
通訳・翻訳会社では、20・30代で英語以外の言語に対応できる人材や、日本語から英語への翻訳を可能とする人材が足りていないため、該当するスキルを備えた人材の確保が課題とされています。
③機械翻訳の導入を検討するも投資負担が大きい
導入を進める企業も多い機械翻訳は、人間が言葉を学ぶプロセスを活用して翻訳を行うニューラル機械翻訳の登場で、高い精度を誇る翻訳を可能としています。
とはいえ、機械翻訳を導入してから翻訳者の業務を削減して高い費用対効果を得られるまでには一定の期間を要するため、導入にかかる費用負担がネックとなり、自社に取り入れるのを躊躇う通訳・翻訳会社が見られます。
通訳・翻訳業界の今後の動向予測
通訳・翻訳会社の業界では、下記のような動きが見られます。通訳・翻訳会社を事業譲渡する際は、下記の動きに合わせて譲渡を行いましょう。
- 通訳・翻訳業界の市場動向は堅調に推移
- 機械翻訳・翻訳アプリなどが広まりつつある
- 翻訳のオフショア化も徐々に増加
- 通訳・翻訳業界の事業承継・M&A動向
通訳・翻訳業界の市場は堅調に推移
日本企業のグローバル化、製造拠点の海外移転、国際的な知的財産権の保護に向けた特許出願の増加、そしてコンテンツの国境を超えた展開といった要因が重なり、翻訳業界の需要は拡大しています。
AI技術を活用した機械翻訳の精度も向上しているものの、その結果を編集・確認するニーズが高まり、現状では機械翻訳が市場に悪影響を与える状況にはなっていません。翻訳と通訳を含めた日本国内の市場規模は、2018年度で3,000億円に達し、前年度比104.0%の成長を示しています(矢野経済研究所調査)。
機械翻訳・翻訳アプリなどが広まりつつある
IT技術を用いた機械翻訳は、高い翻訳精度を誇っていますが、完ぺきとはいえず、細部の修正を必要としています。
機械翻訳を開発する会社が自社で翻訳事業を手掛ける際には、翻訳事業の買収により、自社のみで完結できる事業体制へと移行する可能性があるので、機械翻訳の会社からの需要が増すタイミングに、通訳・翻訳会社の事業譲渡を行いましょう。
また、PC・スマホで言語を翻訳できるアプリも、手軽さを強みとして利用者数を増やしていますが、細かい言い回しの違いに対応できていなかったり、マイナーな言語への対応が遅れていたりなどの特徴が見られます。
今後は精度の高い翻訳技術・ノウハウを持った通訳・翻訳会社の買収が進むとされるので、翻訳アプリを提供する会社が高精度の翻訳アプリ開発を進めるタイミングが、通訳・翻訳会社の事業譲渡に合った時期といえます。
翻訳のオフショア化も徐々に増加
国外の翻訳者を活用したオフショア事業は、日本企業の進出増加に伴い、アジアエリアの言語を中心に需要の高まりを見せています。
今後も翻訳にかかるコストを抑えつつ、質の高い翻訳サービスを強化する動きが見られるので、アジアエリアを中心とした言語の翻訳に対応できる通訳・翻訳会社は、事業のオフショア化を進める傾向が強まっている現在が、事業譲渡に見合ったタイミングといえます。
通訳・翻訳業界の事業承継・M&A動向
通訳・翻訳会社の業界では、中小規模の会社が多く、大手による寡占状態にはありません。事業規模が似ている企業同士が鎬を削る状態にあるので、同業者を自社に取り込む事業承継・M&Aがよく見られます。
通訳・翻訳会社はそれぞれの会社で得意とする言語を持つことから、買い手は自社にはない言語への通訳・翻訳を行っている事業・会社を買収の対象に据えています。
つまり、事業そのものを大きくさせることのほかに、業容の拡大も買収の目的としているので、同業からの需要が多いといえます。
また、人材の育成・新事業の創出などを目的に、通訳・翻訳会社を買収する例もいくつか散見され、買収を通じて売り手が持つ通訳・翻訳の技術・ノウハウを自社に反映させています。
活躍できる社員を育てたり、自社事業との融合で新しい事業を始めたりなど、買い手は厳しい競争を勝ち抜く方法に事業譲渡・M&Aを用いているので、同業・近隣業種からの需要が高まっている現在が、通訳・翻訳会社が事業譲渡などを進める時期といえます。
通訳・翻訳会社の事業譲渡による事業承継のポイント
通訳・翻訳会社を事業譲渡で他の会社に譲り渡す際のポイントは、下記の通りです。取り上げる譲渡の際の注目点や、実際に行われた事業譲渡の例、事業譲渡に適した通訳・翻訳会社から、自社に合っている方法かを確かめましょう。
- 通訳・翻訳会社を事業譲渡する際の注目点
- 通訳・翻訳会社の事業譲渡事例
- 事業譲渡に適した通訳・翻訳会社とは
通訳・翻訳会社を事業譲渡する際の注目点
通訳・翻訳会社の事業譲渡では、譲り渡す対象を把握することが重要です。事業譲渡は、買い手との交渉で、引き継いでもらう対象が選ばれるので、売り手が望む対象を引き継いでくれない場合があります。
そのため、通訳・翻訳会社の事業譲渡では、交渉の段階で、自社が望む対象を買い手が引き継いでもらえるかを確認しましょう。
また、雇用・取引契約は自然に引き継がれないので、関係者の同意を得たり、買い手に再契約を結んでもらったりといった対処も必要です。
通訳・翻訳会社の事業譲渡による事業承継の事例
通訳・翻訳会社が事業譲渡に踏み切った主な事例をご紹介します。
インバウンドテックによるインデンコンサルティングのテレビ電話型通訳サービスの譲受
インバウンドテックは、インデンコンサルティング(京都市)の提供するテレビ電話通訳サービス「スマイルコール事業」を譲り受けることを決定しました。
インバウンドテックは、多言語対応のコンタクトセンターやセールスアウトソーシングなどの事業を展開しており、今回の譲受によりその多言語コンタクト事業の拡大を図ります。「スマイルコール事業」は平日9時~17時にテレビ電話で通訳を行うサービスで、インバウンドテックはこれを活用し、既存顧客へのサービス提案を強化していく方針です。
事業譲渡に適した通訳・翻訳会社とは
買い手は同業を営んでいるケースが多いことから、買い手による事業・業容の拡大を後押しできる事業を備えた通訳・翻訳会社が、事業譲渡に適しているといえます。
通訳・翻訳事業は会社ごとに、取り扱う言語や翻訳・通訳の対象が異なります。自社で取り扱っていない事業・自社に不足する言語を売り手からの承継で得られれば、供給体制を強化でき、買い手の経営計画を成功に導けます。
買い手にない事業特性を備えている通訳・翻訳会社を事業譲渡で譲る際は、下記の記事を参考にしましょう。
通訳・翻訳会社の株式譲渡による事業承継のポイント
通訳・翻訳会社を譲り渡す際に適した方法は事業譲渡ですが、株式譲渡でも通訳・翻訳会社を譲り渡すことが可能です。株式譲渡も検討する際は、下記の項目にも目を通しましょう。
- 通訳・翻訳会社を株式譲渡する際の注目点
- 通訳・翻訳会社の株式譲渡事例
- 株式譲渡に適した通訳・翻訳会社とは
通訳・翻訳会社を株式譲渡する際の注目点
通訳・翻訳会社の株式譲渡で他の会社に譲る際は、個人保証と担保の解除を盛り込んでいるかを確かめましょう。株式を買い手に譲り株主の変更を行う株式譲渡では、会社をそっくり買い手に承継できるものの、オーナー社長が金融機関などから借りたお金は、引き継がれません。
株式譲渡で通訳・翻訳会社を譲る際は、譲渡契約に買い手が個人保証と担保を肩代わりする旨を記載しましょう。これなら株式譲渡でも、オーナー社長の個人保証と担保が解除されます。
通訳・翻訳会社の株式譲渡による事業承継の事例
通訳・翻訳会社が株式譲渡を終えた主な事例をご紹介します。
アイフィスジャパンによるテンナイン・コミュニケーションのM&A
2024年10月、アイフィスジャパンは、テンナイン・コミュニケーション(TNC社)の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。アイフィスジャパンは証券レポートや企業業績予想の提供サービスを展開しており、TNC社は翻訳・通訳および英語教育を行っています。
アイフィスジャパンは既に翻訳・通訳サービスを提供しており、今回のM&Aにより、TNC社の9,000名の翻訳・通訳スタッフとそのノウハウを活用して、サービスの拡大や新分野への進出を目指します。
また、TNC社が展開する機材レンタル事業や短期集中型英語教室などの新たなサービスと相乗効果を図り、事業の安定性と収益性を強化する方針です。
翻訳センターによる福山産業翻訳センターのM&A
翻訳センターは、福山産業翻訳センターの全株式を取得し、子会社化する契約を締結することを発表しました。翻訳センターは、大阪、東京、名古屋で特許、医薬、工業、金融・法務分野などの翻訳業務を行い、グループでは通訳や人材派遣、翻訳者の育成も手掛けています。
一方、福山産業翻訳センターは特許翻訳に特化して事業を展開しており、今回の株式取得により、営業と技術支援を強化し、同社の収益向上を図るとともに、翻訳センターの市場シェア拡大を目指す方針です。
TAKARA & COMPANYによるベネッセホールディングスのM&A
企業の情報開示に関する総合支援などを営む株式会社TAKARA & COMPANYは、2020年の3月に、株式会社ベネッセホールディングスから、通訳・翻訳会社として事業を展開する株式会社サイマル・インターナショナルの株式をすべて取得しました。
買い手の株式会社TAKARA & COMPANYが買収を決断したのは、上場企業向けの情報開示書類の翻訳と外国人株主向けの翻訳事業の強化を図るためです。
売り手が保有する質の高い通訳・翻訳サービスを自社事業と組み合わせることで、数を増やす外国人株主へのサービス拡充を目指すとしています。
株式譲渡に適した通訳・翻訳会社とは
買い手は自社事業との組み合わせによる新サービスの創出を、買収の目的としています。そのため、株式譲渡が合っている通訳・翻訳会社は、自社のみで質の高い通訳・翻訳サービスを提供できている会社といえます。
また、買い手は国際化の進行に対応するために買収に取り掛かるケースが多いので、買い手の国際化を後押しできる通訳・翻訳会社は、株式譲渡での譲り渡しを選ぶことで、買い手を見つけやすいといえます。
株式譲渡で通訳・翻訳会社の譲り渡しを進めるなら、下記の記事を参考にしましょう。
通訳・翻訳会社の事業承継で評価が高い企業の特徴
通訳・翻訳会社を他社に譲る際には、下記の点に注意を払うと、企業価値を高められます。
- アジアを中心とした国際的な人材もいる
- 様々な翻訳業務を行える
①アジアを中心とした国際的な人材もいる
日本などの先進国は、急速に発展を遂げているアジア地域に目を付けて、対象国での事業展開を始めています。
しかし、英語が通じる国ばかりとは限りませんし、現地の担当者がすべて英語を習得しているわけではないため、進出を図る企業は現地での意思疎通に、通訳・翻訳会社の力を借りています。
アジア圏などの海外への進出を図る企業は、現地の法律に従い、事業運営に関わる書類の提出や、現地スタッフの雇用、日常業務などをこなす必要があります。
そのため、主にアジア圏の言語に対応できる人材を確保していると、利用する企業の要望に応えられるので、通訳・翻訳会社の価値を上げられるでしょう。
②様々な翻訳業務を行える
翻訳業務には、研究機関に対する英文の翻訳・技術書の翻訳をはじめ、映像に用いられる字幕・吹替の翻訳や、企業が株主などへ公開するIR資料の翻訳、契約書など実務関連書類の翻訳などが挙げられます。
売り手が、買い手の求める業務を事業範囲に収めていると、高い企業価値があるとして評価されるので、買い手を選ぶ際は、買い手が求めそうな翻訳業務を自社で担っているかを目安にすると、企業価値を高められます。
通訳・翻訳会社の事業承継・M&Aは経営戦略が大切
通訳・翻訳会社が取り組む事業譲渡・M&Aでは、下記のような経営戦略を押さえて、事業などを譲り渡しましょう。
- 中小規模の通訳・翻訳会社は規模拡大が難しい
- 取引先の選別も始まる中で運営方法を検討する
中小規模の通訳・翻訳会社は規模拡大が難しい
通訳・翻訳会社の業界は、中小規模の会社数が多く、新たな取引先を確保して、事業を大きくすることは難しい状況にあります。
他の会社との差別化を図れる技術・ノウハウなどを備えていないと、企業数の多さから1件あたりの単価を下げて仕事を得る必要があるので、事業を大きくするなら事業譲渡・M&Aで、他社の傘下に入る方法も業界で生き残るための手段といえます。
取引先の選別も始まる中で運営方法を検討する
通訳・翻訳会社の業界では、同規模の事業者が増え、隣接業種からの参入も見られるため、既存の事業体制では、取引先から契約を切られる恐れがあります。
しかし、取引先の確保に向けて、国外への業務外注によるコストの削減や、機械翻訳の導入、新たな通訳・翻訳業務の開始などに取り掛かるには費用の捻出が求められます。
自社のみで通訳・翻訳会社業界の動きに対応できない場合は、事業譲渡かM&Aによる売却を検討しましょう。他社の資本・事業を活用できれば、事業の価値を高められ、取引関係を維持できるといえます。
学習塾・通信制高校・日本語教育事業などを展開する株式会社ウィザスは、2016年の7月に、翻訳・通訳会社を営む株式会社吉香の株式をすべて取得し、連結子会社としました。
買い手の株式会社ウィザスが買収に踏み切った目的は、国際化に合わせた新サービスの提供です。
翻訳・通訳会社としての事業経験を活かした、学生向けの人材育成プログラムや、ASEANエリアからの留学生向けの日本語教育プログラム、外国人観光客に対応できる人材の訓練プログラムなどの開発を進めるとしています。
ヒューマンホールディングス株式会社の完全子会社であるヒューマンアカデミー株式会社は、2014年の10月に、企業・大学の研究機関向けに論文の翻訳・通訳事業を営むクデイラアンド・アソシエイト株式会社の株式をすべて取得し、子会社としました。
買い手のヒューマンアカデミー株式会社が買収を決断した理由は、業容の拡大です。売り手が提供する質の高い通訳・翻訳会社としてのサービスを、自社が保有する情報・ノウハウと組み合わせることで、国外向けの教育事業のさらなる強化を図るとしています。
通訳・翻訳会社のその他のM&A手法
通訳・翻訳会社の譲渡では、事業・株式譲渡のほかにも、下記のような方法が用いられています。
- 合併
- 第三者割当増資
- 株式交換
合併の事例では、株式会社翻訳センターが連結子会社同士での吸収合併を済ませています。合併の当事会社は、株式会社アイ・エス・エスと株式会社HCランゲージキャリアで、株式会社アイ・エス・エスを存続会社としました。
両社で保有する経営資源が重なっていたため、合併により効率的な経営体制へと移行させると発表しています。
第三者割当増資の事例では、宝印刷株式会社によるTranslasia Holdings Pte. Ltd.の株式引き受けが挙げられます。
宝印刷株式会社は対象会社の株式を引き受けて子会社とし、東南アジアで取り組む翻訳業務の拡大や、新たな翻訳言語の獲得、新たな取引先の確保を目指しています。
株式交換の事例では、株式会社クレステックと株式会社ナビとの簡易株式交換が挙げられます。株式会社クレステックが対象会社の株式について一部を獲得し、これに合わせて簡易株式交換を行い、株式会社クレステックを存続会社として、対象会社を子会社としました。
株式会社クレステックは、対象会社保有する販売促進とサービス提供後の支援に関するノウハウを獲得し、自社事業に活かすために、対象会社との株式交換を終えています。
通訳・翻訳会社を事業承継する際の引き継ぎ・手続きについて
通訳・翻訳会社を他の会社に引き継がせる際は、下記のような手続きが必要です。
- 事業譲渡の引き継ぎ・手続き
- 株式譲渡の引き継ぎ・手続き
事業譲渡の引き継ぎ・手続き
通訳・翻訳会社の事業を引き継がせるためには、下記のような手続きが必要です。
- 譲渡契約の締結
- 株式買取請求の通知
- 契約上の地位の移転手続き
- 債務者への通知と承諾
- 株主総会の特別決議
- 不動産の移転手続き
1.譲渡契約の締結
買い手の買収監査を受けて変更された事業譲渡の条件(引き継ぐ対象や、取引価格、譲渡の方法、効力発生日など)に納得したら、譲渡契約を結びます。
2.株式買取請求の通知
譲渡に反対する株主には、株式の買取請求権が与えられています。そのため、通訳・翻訳会社が事業譲渡に取り掛かる際には、株主へ事業譲渡の効力発生日の20日前までに、譲渡を実行する旨を知らせる必要があります。
3.契約上の地位の移転手続き
譲渡で譲り渡す対象を個別に引き継がせる事業譲渡では、引き継ぎの対象についての契約も、契約ごとの手続きを必要とします。
不動産に関わる賃貸借の契約をはじめ、事業所の設備に関するリース契約や、取引先との契約、社員との雇用契約などは、契約する相手方の同意が必要です。
4.債務者への通知と承諾
債権についても、債務者から地位の移転について、事前に移転する旨を知らせて承諾を得る必要性が生じるので、通訳・翻訳会社の事業譲渡では、引き継ぐ対象によって、個別に移転させるための手続きが求められます。
5.株主総会の特別決議
事業を譲り渡すと会社に多大な影響が及び、株主の権利を侵害しかねないので、株主総会の特別決議が求められています。
ただし、下記の場合に限り、株主総会の決議は不要です。
- 譲渡対象の資産が、総資産額の20%に達しない場合
- 特別支配関係のある会社同士での譲渡・譲受の場合
- 対価が総資産額の20%を超えない場合
6.不動産の移転手続き
通訳・翻訳会社が事業に関わる不動産を買い手に譲る際には、移転したことを主張するために、登記の変更を必要とします。
株式譲渡の引き継ぎ・手続き
通訳・翻訳会社を株式譲渡で買い手に譲る際は、下記の手続きを必要とします。取り上げる内容は、非上場会社で取締役会を置いていない会社を例にした手続きです。
- 譲渡の承認請求
- 株主総会の決議と譲渡契約の締結
- 株主名簿の書き換え請求
1.譲渡の承認請求
譲渡制限の付いた株式を譲る際は、会社の承認を得るために承認請求が必要です。会社に対して、株式を譲り受ける者の名前や名称、株主機の種類と数、不承認の際に実施する買取請求の有無を知らせます。
2.株主総会の決議と譲渡契約の締結
定款で定めた承認機関で、株式譲渡の決議を行います。仮に、承認しないと決議した場合は、承認請求の日から2週間以内に承認しない旨を知らせることが求められます。
株式の譲渡が認められると、株主と買い手が譲渡契約を結びます。
3.株主名簿の書き換え請求
株式を譲り渡す者と受け取る者で、株主名簿の書き換えを会社に請求します。請求を受けた会社が、名簿を書き換えたことを確かめるために、株式を受け取る買い手から株主名簿記載事項証明書の請求を受けるので、会社は株主名簿記載事項証明書を引き渡します。
通訳・翻訳会社の事業承継時におすすめの相談先
通訳・翻訳会社の事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&A支援に特化した部署を立ち上げる動きが活発化しています。特に、投資銀行や大手メガバンクは、企業間の取引をスムーズに進行させるために、ファイナンシャルアドバイザー(FA)として資金調達や戦略の策定に積極的に取り組んでいます。
こうした専門的なサポートを活用することで、企業は資金調達や事業承継などの複雑な課題にも迅速に対応でき、専門家のアドバイスを受けることで取引の成功率を高めることが期待されます。
ただし、大手金融機関は大規模案件を優先する傾向があり、中小企業が十分な支援を受けにくい状況も見受けられます。そのため、企業は自社の規模やニーズに合った支援先を慎重に選ぶことが重要です。
また、アドバイザリーサービスには高額な費用がかかることがあるため、事前にコストを確認し、予算計画を立てることが必要です。
公的機関
近年、事業承継やM&Aに関する公的サポートが大幅に強化されています。全国に展開されている「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に直面している中小企業に対し、事業承継やM&Aに関する情報提供や専門的なアドバイスを行い、企業間のマッチングを無料で支援しています。
この体制により、地方の中小企業や個人事業主でも専門的なサポートを手軽に受けられる環境が整備されています。また、必要に応じてM&A仲介会社や専門家を紹介することも可能です。
ただし、民間の仲介業者と比較すると、対応のスピードや柔軟性が不足している場合もあるため、その点には注意が必要です。それでも、公的機関は事業承継やM&Aを考える企業にとって、信頼できるパートナーとして重要な役割を担っています。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収や売却における全過程をサポートする専門機関です。売り手と買い手の双方に対して、適切な取引相手の紹介、交渉の補助、取引進行の管理、企業価値の評価(バリュエーション)、契約書作成といった幅広いサービスを提供し、取引が円滑に進むよう支援しています。
特に仲介会社は、広範なネットワークを活用して最適な取引相手を見つけ、M&Aの成功率を高める役割を担います。また、M&Aの経験が少ない企業には、具体的で実践的なアドバイスを行い、取引をスムーズに進行させるサポートを提供します。
ただし、仲介会社を利用する際には、着手金や中間金などの費用がかかることがあるため、コスト管理が求められます。費用を抑えたい場合は、成功報酬型の仲介会社を選ぶのが効果的な選択肢です。
通訳・翻訳会社の事業承継まとめ
通訳・翻訳会社の事業・株式譲渡について、譲渡の際に押さえておくべき点や、引き継ぎ・手続きなどを取り上げました。
【通訳・翻訳会社の事業譲渡のポイント】
- 通訳・翻訳会社を事業譲渡する際の注目点
- 通訳・翻訳会社の事業譲渡事例
- 事業譲渡に適した通訳・翻訳会社とは
【通訳・翻訳会社の株式譲渡のポイント】
- 通訳・翻訳会社を株式譲渡する際の注目点
- 通訳・翻訳会社の株式譲渡事例
- 株式譲渡に適した通訳・翻訳会社とは
【通訳・翻訳会社を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて】
- 事業譲渡の引き継ぎ・手続き
- 株式譲渡の引き継ぎ・手続き
通訳・翻訳会社を事業譲渡などで売り渡す際は、業種に見られる問題と業界の動きを把握して、売却する時期を見極めましょう。
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
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