2024年11月29日更新会社・事業を売る

M&Aにおける公認会計士の役割や業務内容、依頼するメリットを詳しく紹介!

公認会計士は、M&Aプロセスのなかで戦略策定・バリュエーション・財務デューデリジェンスなど専門的な役割を果たします。会計に関する専門知識は、M&Aの成功を目指すうえで頼りになる存在です。本記事ではM&Aにおける公認会計士の役割や弁護士との違いを解説します。

目次
  1. M&Aと公認会計士の関係性
  2. M&Aアドバイザーとしての公認会計士の役割・業務内容
  3. M&Aアドバイザーとしての公認会計士と弁護士、税理士の違い
  4. M&A実務を公認会計士に依頼するメリット
  5. M&A実務を公認会計士に依頼する際の費用
  6. M&Aにおける公認会計士の役割・業務内容まとめ
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M&Aと公認会計士の関係性

M&Aと公認会計士の関係性を把握するために、それぞれの定義を解説します。M&Aの業務を実施する専門家はM&Aアドバイサリーと呼ばれ、弁護士・税理士・公認会計士なども該当します。これらの専門家たちが、それぞれの役割を果たすことで、M&Aは成功に大きく近づきます。

公認会計士とは

公認会計士(英語:Certified public accountant)とは、株式会社などの法人の財務状況を監査して正確性を保証する、いわば会計の専門家です。公認会計士の多くが監査法人に就き、法定監査などの、第三者の立場から企業等の財務情報の適正性を示す業務を行います。

上場企業や会社法上の大会社は、公認会計士による監査が法律により義務付けられているので、監査対象も規模の大きな企業が主になります。M&Aでは、主として買収される企業の財務状況を監査して、売買価額を決定する役割などを担う立場です。

公認会計士は、企業の経営状態を正確に把握するため、会計帳簿のチェックだけでなく、経営者から事業環境や戦略についても直接情報を収集します。企業の将来計画の現実性を様々な角度から評価するため、広範な知識が必要です。財務諸表の監査や内部統制のチェックは、企業の販売活動やコーポレートガバナンスなどにも焦点を当て、組織全体の運営が適切かどうかを検証します。

公認会計士はこれらの活動を通じて、企業の会計や経営に関する深い理解を持っており、その知見を生かして会計や財務に関するコンサルティングサービスも提供しています。これにより、公認会計士の活動範囲は非常に広く、多岐にわたる専門性を有しています。

税理士登録している公認会計士であれば、税理士と同様に税務代理業務を遂行できます。経営戦略の立案・コンサルティング業務などを実施する公認会計士もいます。

単なる会計業務のみならず、高い専門性を生かして幅広い業務を遂行する点が公認会計士の強みです。難関資格であるがゆえ、公認会計士は全国におよそ3万人程度しかおらず、多くの会社から貴重な存在だと捉えられています。報酬は比較的高額になりやすく、キャリアを積むと年収が1,000万円を超える公認会計士も珍しくありません。

公認会計士が在籍するM&A仲介会社もある

M&Aの現場でも公認会計士は重宝される存在です。最近では公認会計士が在籍するM&A仲介会社もあります。在籍していない場合でも、外部の公認会計士と提携しているM&A仲介会社がほとんどなので、どちらにしても心配する必要はないでしょう。

【関連】後継者と事業承継の現状・課題|後継者選びのポイントを解説【国のデータから分析】

M&Aで公認会計士が必要とされる理由

公認会計士が資格を得るにあたって身につけている会計や財務の知識・スキルは、M&Aの多くのプロセスにおいて親和性が高く、どれも有効に機能します。公認会計士1人でM&Aを完遂させることは無理ですが、公認会計士抜きのM&A実施も厳しいでしょう。

これが、M&Aで公認会計士が必要とされる理由ですが、求められる具体的な役割の内容は後述します。

M&Aアドバイザーとしての公認会計士の役割・業務内容

M&Aにおける公認会計士の役割は、以下のとおりです。

  1. M&A戦略・スケジュールの策定
  2. バリュエーション
  3. 財務デューデリジェンス
  4. 税務に関する助言
それぞれの役割を順番に見ていきます。

①M&A戦略・スケジュールの策定

公認会計士の役割の一つに、M&Aにおける戦略・スケジュールの策定があります。

M&A戦略の策定

公認会計士の役割・業務としては、M&A戦略の策定は以下の3点が挙げられます。

  • 業界動向の調査
  • 目的の明確化
  • PMI(Post Merger Integration=M&A後の経営統合プロセス)

M&A戦略の策定は、一貫性を持ってM&Aを進めるために、M&Aの初期に行うもので重要なプロセスです。PMIとは、具体的には人事労務制度・業務システムの統合、企業風土の融合などです。コンサル的側面が強い役割になり、想定される問題やトラブルに適切に対応するため、M&Aの初期段階から策定しておくのが重要となります。

M&Aスケジュールの策定

スケジュールの策定は、M&Aをスムーズに進めるためには重要なものになります。公認会計士の監修のもとでM&Aスケジュールを策定すれば、M&Aプロセスのスピーディーな完遂につながります。

M&Aプロセス全般に携わる専門家は、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とも呼ばれます。公認会計士をFAとして起用することで、多くの側面からM&Aサポートを受けることが可能です。

②バリュエーション

バリュエーションは、M&Aプロセスの中でも重要視される業務です。バリュエーションとは、M&Aでは売り手の企業価値を評価する行為を指します。ここでいう企業価値とは、M&Aにおける買収価額を算出するための基礎となる数値です。

算定された企業価値は売却企業と買収企業の交渉の土台となるため、公認会計士に依頼し信頼性の高いデータを揃えることが重要です。
M&Aでバリュエーションを実施する際は、「DCF(Discount Cash Flow)法」「時価純資産法」「類似会社比準法」のいずれかが活用されることが多くなっています。。

現在、主として採用されているのはDCF法ですが、いずれにしても高度な会計知識が必要です。公認会計士がバリュエーションを実施する際は、状況に応じて公正かつ利益を最大化させるように企業価値を算定します。

③財務デューデリジェンス

デューデリジェンスもバリュエーションと同じように、M&Aにおける非常に大切なプロセスになります。デューデリジェンスとは、M&Aによって売却する企業の実態を詳細に調査する、買収側の行為です。

デューデリジェンスの対象分野は財務・税務・法務・人事労務などがあり、各専門家がそれぞれ調査します。会計の専門家である公認会計士は、財務デューデリジェンスを担当します。

財務デューデリジェンスは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を調査しつつ、売却企業の財務状況を確認します。収益性の確認はもちろんのこと、ここでは簿外債務や偶発債務といったリスクを洗い出すことが特に大切です。

簿外債務は貸借対照表に載っていない債務、偶発債務は将来的に債務となることが予想される要素を指します。これらの債務がM&A実施後に判明すれば、買い手企業の経営に大きな損害を与える可能性があります。極力、デューデリジェンスで洗い出さなければなりません。

財務デューデリジェンスのもう一つの目的は、売却企業の適切な売買価額を見極めることです。この点でも、公認会計士は大きな役割を担っています。財務デューデリジェンスは高度な専門知識と経験を要するため、M&A仲介会社や公認会計士などに依頼するケースが一般的です。

④M&Aプロセス全体の支援

公認会計士は培った経営の幅広い知識などを活かして、M&Aのプロセス全体の支援を行うことも可能です。M&Aには、株式譲渡事業譲渡株式交換など、さまざまなスキーム(手法)があり、どのスキームを用いるかによって、課税対象や課税方法、課税額も変わってきます

公認会計士は培った経営の幅広い知識などを活かして、M&Aのプロセス全体の支援を行う場合もあります。M&Aは頻繁に実施するものではないので、M&Aのプロセスを成功に導くにためには、専門知識が豊富な公認会計士やM&A仲介会社などに依頼することが重要です。

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M&Aアドバイザーとしての公認会計士と弁護士、税理士の違い

M&A実務に携わる公認会計士以外の専門家として、以下の2士業があります。

  1. 弁護士
  2. 税理士
公認会計士との違いを、それぞれ順番に見ていきます。

弁護士の役割・業務内容との違い

弁護士は、公認会計士と同じように難関資格といわれ、M&Aでも必要不可欠な役割を果たしています。公認会計士は会計の専門家ですが、弁護士は法律の専門家です。

M&Aにおける弁護士の主な役割は、M&Aの法務全般に関する業務を担います。具体的には、各種契約書作成支援や法務デューデリジェンスなどです。

M&Aプロセスでは、秘密保持契約・基本合意契約・最終契約と当事者間で多くの契約を交わします。その際、法的リスクを鑑みてM&A当事者間の利害を調整する必要があるため、弁護士の関与が重要な場面です。

特に最終契約は、用いるM&Aスキームにより記載しなければならない事項が法律で決まっているため、それらを適正に漏れなく含ませる必要があります。

デューデリジェンスとは、M&A取引の過程で行われる買収監査のことです。対象企業(基本的には売り手企業)の問題点や将来発生しうるリスクの抽出などを行います。

そのなかで、法的リスクにフォーカスして行われるものが法務デューデリジェンスです。調査対象の株式発行や取引契約書の有効性から、労働法関係のコンプライアンス、紛争・訴訟リスクに至るまで細かく調査します。

法務デューデリジェンスの項目それぞれが専門的な判断を要するため、弁護士の担う重要な業務の一つです。M&Aの手法によっては、法律・契約・許認可などの側面から規制が複雑化するケースもあるため、弁護士もまたM&Aに欠かせない存在といえます。

税理士の役割・業務内容との違い

税理士は、M&Aプロセスの中でも税務に関する業務を実施する専門家です。M&Aにおいて税理士は、主として税務デューデリジェンスの役割が顕著です。税務の専門家であることから、M&Aでの節税対策などのアドバイスも期待できます。

公認会計士の試験では税金科目が必須であり、会計監査(公認会計士の主な業務)の際も税金の知識が要求されるため、公認会計士も税制の知識はあります。しかし、税務デューデリジェンスを含む実務での税金計算や、その申告事務などは税理士の専門領域です。

中小企業がM&Aを実施する場合は特に節税対策が重要視されるため、税理士は心強い存在です。M&Aでは、取引額が大きくなりやすく、その規模により多額の税金が発生するため、税理士の協力のもと税金対策を行い手続きを進めていくことは非常に重要といえます。税理士も状況に応じて、M&Aの戦略策定といったコンサルタント業務も手掛けます。

税理士は、コストや業務の幅広さを考えると、公認会計士と比較しても頼りになる専門家です。特に、普段からビジネスで関わりのある顧問税理士がいる場合、彼らはM&Aの効率的な進行をサポートする貴重な資源になり得ます。もしM&Aを考えているなら、まずは自社の顧問税理士に相談することをおすすめします。

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M&A実務を公認会計士に依頼するメリット

M&A実務を公認会計士に依頼することで得られるメリットは、以下のとおりです。

  1. 公正な買収価額を算定できる
  2. M&A専門家とのネットワークを活用できる
  3. 会計・税務について専門的見地からアドバイスを受けられる
それぞれのメリットを順番に見ていきます。

①公正な買収価額を算定できる

M&Aは売買取引である以上、買収価額を決定するときには利益相反が問題となることがあります。買い手側はできるだけ安い価額でM&Aを実施したいと思う一方で、売り手側としては高値で会社を売却したいと考えるものです。

両者の利益が異なるため、一方の意見によって買収価額が決定すれば、他方にとって不利なM&A取引となってしまいます。M&Aの買収価額を決めるときには、財務諸表ではわからない価値(のれん代)も加味しなければなりません。

そこで、会計の専門家である公認会計士がM&A取引に介在し買収価額の算定を実施すれば、公正な立場からM&Aの買収価額が適切に算定されます。

②M&A専門家とのネットワークを活用できる

M&Aに携わる公認会計士は、ほかの士業の専門家とのネットワークを持っているケースもあります。したがって、公認会計士にM&A業務を依頼すれば、弁護士や税理士などほかのM&Aに携わる専門家を紹介してもらえる可能性があります

M&Aでは専門家同士が連携してプロセスを進めていくケースが多いです。専門家同士のネットワークを活用できれば、スムーズなM&Aの完遂にもつながることでしょう。

③会計・税務について専門的見地からアドバイスを受けられる

公認会計士は会計分野の専門家であるため、M&Aの当事会社では気づけない見地からアドバイスを実施できます。M&Aの実施に行き詰まったときなどは、特に公認会計士から有益なアドバイスを受けられる可能性が高いでしょう。

M&Aの相談先は公認会計士もしくは仲介会社がおすすめ

M&Aの成功確率を高めるためには、公認会計士やM&A仲介会社のサポート・アドバイスが有用です。M&Aをご検討されている経営者様は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。

当社は全国の中小企業のM&A・事業売却に数多く携わっており、M&Aに精通したアドバイザーが専任となって、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートいたします。

通常は10カ月~1年以上かかるとされるM&Aを、成約まで最短3カ月の実績を有しており、成約までのスピードを重視してサポートしてまいります。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受けつけておりますので、M&Aをご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。

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④他分野の専門家を紹介してもらえる

M&Aにより決定される事項は企業価値だけでなく、以下のような事項があります。

  • 会計面
  • ビジネス面
  • 労務面
  • 法務面
  • 税務面
あらゆるシーンで専門家が必要になりますが、公認会計士はそういった専門家とのネットワークを持っていることが多いです。依頼をすれば、他分野の専門家を紹介してくれるでしょう。

M&A実務を公認会計士に依頼する際の費用

M&A実務を公認会計士に依頼する際の具体的な費用は、請け負う公認会計士によってケースバイケースです。ここでは、一般的なM&A仲介業務の相場について、各プロセスごとに紹介します。

名目 費用額 内容
相談料 0~10万円 委託契約前の相談費だが無料の場合が多い
着手金 0~100万円 委託契約時に発生するが無料の場合もあり
中間金 0~300万円 基本合意契約書締結時に発生するが無料の場合もあり
成功報酬 案件により変動 成約時に発生するがレーマン方式で計算される
バリュエーション 50万~100万円 企業価値算定時の費用
デューデリジェンス 50万~100万円 デューデリジェンス実施時の費用※買収側のみ発生
リテイナーフィー 0~数十万円 委託契約締結で発生する月額顧問料だが無料の場合が多い

近年は、完全成功報酬制の料金システムのM&A仲介会社が増えています。その場合、M&Aが成約するまで手数料は発生しません。仮にM&Aが成立しなかった場合でも、手数料は請求されません。

【関連】M&Aの費用と相場はどのくらい?仲介の手数料体系や計算方法を解説!

M&Aにおける公認会計士の役割・業務内容まとめ

公認会計士は、戦略策定・バリュエーション・デューデリジェンスといった、M&Aの中でも重要なプロセスの役割を担っています。会計の高度な知識を持つ専門家であるため、M&Aを実施する上で頼りになる存在です。

M&Aを実施するときに公認会計士をM&Aアドバイザリーとして起用するメリットは多いため、大いに活用することをおすすめします。本記事の概要は、以下のとおりです。

〇M&Aとは
 →会社・事業を合併・売買する経営戦略手法の総称

〇公認会計士とは
 →高度な会計知識を持った国家資格者

〇M&Aにおける公認会計士の役割
 →M&A戦略やスケジュール策定・バリュエーション・財務デューデリジェンス・税務に関する助言

〇M&A実務を公認会計士に依頼するメリット
 →公正な買収価額算定・M&A専門家とのネットワーク・専門的な見地からのアドバイス

〇M&A実務に携わる公認会計士以外の専門家
 →弁護士・税理士

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