2023年11月26日更新業種別M&A

不動産仲介業界のM&Aの動向は?売却や買収の事例からメリットや費用相場も解説!

本記事では、不動産仲介業界のM&A動向、売却・買収メリット、成功・失敗事例、費用の相場など幅広く解説します。不動産仲介業界のM&Aは、買い手・売り手によってM&Aを選択する目的が異なります。M&Aを検討中の方は必見です。

目次
  1. 不動産仲介業界とは
  2. 不動産仲介業界のM&Aの最新動向
  3. 不動産仲介業界におけるM&Aの特徴
  4. 不動産仲介業界でM&Aを行うメリットとデメリット
  5. 不動産仲介業界のM&Aにおける注意点
  6. 不動産仲介業界のM&Aを成功させる6つのポイント
  7. 不動産仲介業界のM&Aの成功・失敗事例
  8. 不動産仲介業界のM&Aに向けた準備から買収編
  9. 不動産仲介業界のM&Aに向けた準備~売却編
  10. 不動産仲介業界における資産売却と株式譲渡の比較
  11. 不動産仲介業界のM&Aのまとめ
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不動産管理会社のM&A・事業承継

不動産仲介業界とは

近年の日本ではM&Aが活発化しており、幅広い業種でM&Aが行われています。本記事では、このうち不動産仲介業界のM&Aに焦点を絞りまとめました。まず本章では、不動産仲介業界の定義・特色・変遷・市場環境などの基本知識を把握しておきましょう。

不動産M&Aについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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不動産仲介業界の定義

不動産仲介業界とは、不動産物件の所有者と借り手(あるいは買い手)の間に入って、売買・貸借・交換の代理または仲介などの事業を手掛ける企業が属する業界のことです。

不動産仲介業を営む際は、「宅地建物取引業(宅建業)」に該当した上で、宅地建物取引業法の規定に基づいて国土交通大臣あるいは都道府県知事から免許を受ける必要があります。

ひとことに不動動産仲介業といっても、貸家・アパートの賃貸仲介を専業とする業者から、大規模宅地の造成・販売および建売住宅の建築販売などを兼業する業者に至るまで、事業の規模・内容は非常に幅広いです。

ちなみに、不動産仲介業は、短縮化されて不動産業と呼ばれるケースも多いです。とはいえ、不動産業は広義・総称であり、大きく分けると3つに分類されます。具体的には、仲介不動産取引業(土地や建物の売買を直接あるいは代理で行う)・不動産管理業・不動産賃貸業の3種類です。

そのほか、不動産業界は、デベロッパーと呼ばれる「土地の開発と分譲などの大規模な宅地造成のほか、再開発事業・マンション分譲・オフィスビルの建設・リゾート地の開発まで幅広く手掛ける企業」と、仲介会社と呼ばれる「賃貸物件の取り扱いや管理・流通を主に担う業者」の2つにも分類されます。

不動産仲介業界の特色

不動産仲介業界の主な特色は、以下のとおりです。

  • 借主・貸主から受け取る仲介手数料は宅地建物取引業法により賃料をもとに規定される
  • 仲介業はフロービジネス、管理業はストックビジネスに該当する
  • 商品の差別化が非常に困難である
  • 物件情報はインターネットにより周知されている
  • 売主・買主あるいは双方の依頼を受け、媒介契約を締結し当事者の間に入り、契約成立に向けてサポートする
  • 開発・売買・賃貸など他の不動産事業と比べると、資産価値変動の影響を受けにくい

なお、不動産仲介業界では、事業を営む際に宅地建物取引業者として宅地建物取引業法の適用を受ける点も大きな特徴です。ひとつの都道府県内に事務所を置く場合、都道府県知事の免許を受ける必要があります。また、複数の都道府県内に事務所を置くならば、国土交通大臣の免許を受けなければなりません。

さらに、事務所には都道府県知事の実施する「宅地建物取引士資格試験」に合格した宅地建物取引士を置く必要がある点も留意しておきましょう。

不動産仲介業界の変遷

ここでは、都心部に焦点を絞り、不動産仲介業界の過去から現在までの経緯を大まかに振り返ります。戦後の日本が高度経済成長期に差し掛かった頃、東京都心にも依然として多くの町工場・商店・問屋などがありました。これらの事業者の多くは法人を組織し、従業員が多数在籍する企業も少なくなかったのです。

しかし、高度経済成長の加速化による円高の影響や交通インフラの整備が進行したことで、工場は地方や海外に移転していきました。その後は、跡地に大型デパートなどが建設されて、東京都心の産業構造は大きく変化したのです。

こうした時代背景の中で、都心において効率良く収益が見込めるために、銀行が積極的に融資したい事業として不動産賃貸業が台頭してきました。また、高度経済成長期には東京都心の不動産価格が高騰したことで、異業種の事業者が不動産賃貸業に新たに参入するケースも多く見られたのです。

以上のような変遷によって、都心の不動産を所有するオーナーは、従来は他の事業を行っていたものの、途中から不動産業界に参入(事業転換)したため、法人名義で不動産を所有するケースが多いのです。

不動産投資リスクについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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不動産仲介業界の市場環境

不動産仲介業界では、2008年に発生したリーマン・ショック以降、地価公示のマイナス基調に悩まされましたが、その後は東日本大震災による一時停滞があったほかはおおむね微増傾向を維持しています。

2012年以降は日本銀行の低金利政策を受けたインフレ期待のほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピック(COVID-19の影響で2021年に順延)に向けた東京都心の再開発など、不動産市況の回復が見込まれる状況です。

中でも都市部の集積地では比較的底堅い動向が見られたほか、2014年以降は外国人観光客の増加により店舗・ホテルなども需要増の傾向にありました。

ただし、人口減少時代に入り土地価格もピークを超えた上に、コロナ禍における働き方改革により在宅勤務が浸透する状況において、都心部におけるオフィス需要が急激に減少する可能性が高い点が懸念されています。

こうした中で、不動産仲介業界では、中古マンションのリノベーションなどで新たな収益を確保する動きが見られています。

不動産仲介業界のM&Aの最新動向

本章では、不動産仲介業界のM&A最新動向を以下の3項目に分けて取り上げます。

  • 不動産仲介業界の現状
  • 不動産仲介会社が取るべき施策
  • 不動産仲介業への新規参入の状況

それぞれの項目を順番に把握して、自社のM&A戦略に役立てましょう。

不動産仲介業界の現状

不動産仲介業界における近年の状況を見ると、大手の不動産仲介会社では、ブランド力を活用しながらフランチャイズ(FC)の加盟店舗数を年々増加させている状況が目立っています。これに対して、中小規模の不動産仲介会社では経営環境の悪化に悩まされている状況です。

また、今後とも賃貸不動産の空室率が上昇する見込みである上に、不動産管理業やサブリース業の収益力低下も問題視されています。そのため、多くの不動産仲介会社では安価な賃料での展開や付加価値増大による賃料維持などが求められているものの、中小企業からすると収益性の低下は避けられない状況です。

さらに、東京オリンピックを目前に不動産価格がピークに達した上にコロナ禍の影響も相まって、不動産仲介業界では中小企業と大手企業の収益性の差が拡大しています。小規模事業者からすると、競争を生き残ることは非常に難しい状況です。

不動産仲介会社が取るべき施策

現在の不動産仲介業界では、競争激化に伴って、業界再編および小規模事業者の淘汰が進行しています。また、仲介手数料の値下げや不動産売買件数の伸び悩みなどによる収益性の低下だけでなく、宅地建物取引士の採用も難しい状況です。

特に、不動産売買を担う営業スタッフの採用難が極めて深刻な状況です。チェーン展開する大手企業では処遇や教育制度で優位に立ちやすい一方で、小規模な不動産仲介会社は苦境に立たされています。

以上の事情を踏まえると、規模の小さい不動産仲介業者は、M&Aにより大手企業に吸収される可能性が高いです。そして、一方の引退を控える不動産仲介会社の経営者からすると、親族内承継ではなくM&Aによる第三者への事業承継を検討するケースが増加しています。

不動産仲介業への新規参入の状況

近年では、異業種企業が不動産仲介業界に新規参入する動きも目立っています。例えば、相続税の申告を専門的に手掛ける税理士法人が不動産仲介業に新規参入するケースなどが代表例です。また、将来的には、M&A仲介会社が不動産仲介業も手掛けるようになる可能性も想定されています。

不動産管理会社の売却額の相場については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】不動産管理会社の売却額の相場は?価格の算出方法や売却の注意点を解説!

不動産仲介業界におけるM&Aの特徴

不動産業を経営する際は、日々変動のある有価証券などの動産とは異なり、損益を日々確定するような意思決定は求められません。しかし、建物の管理・修繕・建て替えの時期などを検討する際は、重要な意思決定が求められます。

修繕・建て替えを実施する場合、銀行などから多額の借り入れをするケースが想定されます。また、外部環境の変化が目まぐるしく、対象の不動産の将来性が明確でない中で多額の借り入れを行うかどうかは重大な意思決定です。その判断は数十年後に大きく影響を及ぼします。

以上のことを踏まえて、「代表者が個人保証により多額の借り入れをした所有不動産が、後継者の代になって正の財産となるか負の財産となるか」、つまりは不動産価格が将来どのように変動するのか明確に見とおしにくい点が不動産仲介業界におけるM&Aの大きな特徴です。

不動産の事業承継については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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不動産仲介業界のM&Aに対する株主の視点

不動産仲介会社がM&Aを実施する場合、意思決定に際して企業とその株主が念頭に置いておくべき事項として、不動産売却益に課される税額が挙げられます。ここでは、複数の株主が存在し、なおかつ業績好調である不動産仲介会社がM&Aを実施する際に発生しやすい問題をまとめました。

もともと分散した株式の株主は、会社が好調である時期に利益の分配を要求しようと考えます。そして、会社が保有している不動産について、継続保有は大きなリスクとなるために不動産自体を売却し、この売却益を株主間で分配しようと考えるのです。

ところが、これを実行に移す際に会社の顧問税理士に相談すると、過去に取得した不動産を売却する場合、高額な含み益に法人税が課されることを知らされます。ここで、それでも不動産の売却を進めて高額な法人税の納付後に会社を清算し、株主に財産を分配したケースを想定しましょう。

この分配財産による収入は通常の所得と同等にみなされるため、所得税は累進課税が適用されて住民税も含めると最高で税率55%が課されます。これにより、結果的に株主の手元に残る資産は不動産売却価格の3分の1にも満たないことが判明し、不動産の売却を断念しました。

その結果、このような立場の不動産仲介業界の株主は、M&Aにより株式を買い取ってもらった方が得であるとの考えに至ったのです。以上を簡単にまとめると、不動産売却益に課される税額を考慮した上で、売却対象を決めると良いでしょう。

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不動産仲介業界でM&Aを行うメリットとデメリット

不動産管理会社のM&A・事業承継
不動産管理会社のM&A・事業承継

本章では、不動産仲介業界でM&Aを行う場合のメリットとデメリットを順番に取り上げます。

不動産仲介業界のM&Aのメリット

不動産仲介業界におけるM&Aでは、当然ながら譲渡側と譲受側それぞれの立場の会社が存在します。そのため、不動産仲介業界のM&Aにおける譲渡側・譲受側のメリットを個別にまとめました。

譲渡側のメリット

不動産仲介業界のM&Aにおける譲渡側のメリットは、以下の3点です。

  • 大手企業の営業力を利用して利益を改善できる
  • 社員の雇用を守れる
  • 後継者問題が解決し事業承継ができる

中小規模の不動産仲介会社の中には、業界の不況や競争の激化により厳しい経営を迫られている会社が増加しています。もしも会社が倒産してしまうと、社員の雇用を守れません。しかし、M&Aを実施すると、倒産を免れて社員の雇用を維持できます。

また、M&Aにより大手企業の傘下になれば、大手企業の営業力と顧客基盤を利用して自社の売上・利益増加が見込めます。さらには、中小規模の不動産仲介会社が陥りやすい後継者不足問題も、M&Aにより解決可能です。

後継者不在により、会社を廃業したり高齢の経営者が引退できなかったりするケースが報告されていますが、M&Aを行うと後継者を確保した上で経営の引退を実現できるメリットがあります。

譲受側のメリット

不動産仲介業界のM&Aにおける譲受側のメリットは、以下の3点です。

  • 管理戸数の増加
  • 新たな顧客やネットワークの確保
  • 有資格者の確保

不動産仲介会社を買収すると、譲受側は新たな顧客や情報ネットワークを獲得できます。また、M&Aにより、管理戸数を一挙に大きく増やすことも可能です。もしも不動産管理業務も行っている企業であれば、管理戸数が増えるほど手数料収入も増加させられます。

さらに、M&Aを実施すると、賃貸不動産経営管理士や宅地建物取引士など、不動産仲介業界に欠かせない資格を持つ人材の確保も可能です。

不動産仲介業界のM&Aのデメリット

さまざまなメリットがある不動産仲介業界のM&Aですが、デメリットも存在します。不動産仲介業界のM&Aのデメリットに関しても、M&Aの譲渡側と譲受側に分けてまとめました。

譲渡側のデメリット

不動産仲介業界のM&Aにおける譲渡側のデメリットは、以下の3つです。これらは、不動産仲介業界のM&Aに限ったものではなく、M&A全般におけるデメリットだといえます。

  • 企業文化の違いで両社が融合できない
  • 雇用条件の変更により従業員が退職する
  • 買い手が現れない

M&Aにおける譲渡側のデメリットは、企業文化の違いにより想定していたシナジー効果が発揮できない点にあります。大手企業の傘下に入り、営業力やネットワークを生かして自社の売上・顧客の増加を狙っていたものの、会社同士がかみ合わずに結果が出ないケースは少なくありません。

また、譲渡側の従業員からすると、労働環境や雇用条件が変化するため、この変化に不満を感じる人も発生します。その結果、退職を選択する従業員が出るおそれもあるのです。さらに、条件に見合った買い手がなかなか見つからないおそれがある点もデメリットだといえます。

たとえ買い手候補が見つかったとしても、売却価格に関する思惑の相違などで条件面が合わなければ、交渉がうまくいかずにM&Aが不成立となるおそれがあります。

譲受側のデメリット

不動産仲介業界のM&Aにおける譲受側のデメリットは、以下の3つです。

  • 期待していたシナジー効果が生まれない
  • 優秀な人材が流出する
  • 簿外債務やキャピタルゲイン課税の発生

譲渡側のデメリットと同様の内容として、M&Aによって期待していた相乗効果が生まれない点がデメリットとして挙げられます。相乗効果が生まれない原因のひとつが、M&Aによる労働環境の変化に伴って、優秀な従業員が退職してしまうトラブルの発生です。

そのため、M&Aの際は、従業員のケアを可能な限り手厚く行う必要があります。特に不動産仲介会社のM&Aで発生しやすい特徴的なデメリットは、簿外債務やキャピタルゲイン課税の発生です。簿外債務とは賃借対照表に計上されていない債務のことであり、訴訟案件や未払いの給与・退職金などが該当します。

また、キャピタルゲイン課税は、M&Aにおいて譲渡側企業の帳簿価格をそのまま承継するために、譲渡側が持っていた土地や不動産を売却した際に売却利益が発生して買収側が課税を強いられる問題を引き起こします。

以上を踏まえて、帳簿上の問題が発生する可能性を把握した上で、M&A仲介会社にデューデリジェンスを依頼しながら譲渡側の会社を調査すると良いでしょう。

M&Aのメリットについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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不動産仲介業界のM&Aにおける注意点

不動産仲介業界で実施されるM&Aの目的に高額な課税の回避がある点を考慮すると、M&Aの対象会社である買い手・売り手企業では税務の専門知識が必要不可欠です。とはいえ、M&Aの契約内容は宅地建物取引業法などとは別物である上に、M&Aプロセスに関する実務能力も欠かせません。

そのため、たとえ不動産のプロであり税務に精通していたとしても、M&Aの専門家が不在のままでM&A交渉を成立させるのは非常に困難です。M&Aには特有のセオリーがあり、経験者でないと身に付けられません。

具体的にいうと、不動産売買など全般的な取引業務およびM&Aの実務・税務に精通する人材を選出した上で、彼らの経験・取り扱う情報を生かして各種の煩雑な手続きを進めながら売り手・買い手双方の利害関係を合致させなければ、M&Aの成功には至りません。

求められる専門分野が多岐にわたる不動産仲介業界のM&Aは、高度な知識と実務能力が要求される極めて専門性の高い案件だといえます。こうした中で成功を目指すためにも、M&Aの専門家への依頼を検討しましょう。

もしも不動産仲介業界M&Aをご検討中であれば、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では中小・中堅規模のM&Aを得意としており、支援実績を豊富に持つアドバイザーによる専任フルサポートを手掛けております。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。

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不動産仲介業界のM&Aを成功させる6つのポイント

不動産仲介業界のM&Aの実態が明らかになったところで、本章では実際に不動産仲介業界でのM&Aを成功させるポイントとして、以下の6項目を取り上げます。

  1. 売却のタイミングを誤らないこと
  2. 自社管理の物件を持っていること
  3. 地域性を生かす運営を行っていること
  4. 社員の平均年齢が高齢でないこと
  5. 同業他社に売却すること
  6. M&Aの専門家や仲介会社に相談をすること

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①売却のタイミングを誤らないこと

不動産仲介業界の市場が下降傾向にある時期に会社売却を行うのは、良いタイミングとはいえません。タイミングを逃す前に、最適な時期を見極めてM&Aの実行を検討すると良いでしょう。

②自社管理の物件を持っていること

中小規模の不動産仲介会社にある強みは、独自ルートによる管理物件を所有している点にあります。大手企業が持っていない上に、インターネットの検索で見つからないような管理物件は、M&A時に大きな強みです。

③地域性を生かす運営を行っていること

中小規模の不動産仲介会社の強みは、地域性に特化している点にもあります。地域性の強さを発揮して、大手ではカバーしきれない不動産管理を行える強みを持っていれば、M&A時に有利です。

④社員の平均年齢が高齢でないこと

中小規模の不動産仲介会社では、経営者と長年の顔なじみである従業員が多く、M&Aの成立とともに退職を決めてしまう可能性があります。このようにベテラン従業員が退職される可能性がある中で、現役世代が社員として在籍していれば、M&A時にアピールできる大きなポイントです。

⑤同業他社に売却すること

同業他社の企業であれば、すでに不動産仲介業に精通している経営者およびスタッフが在籍していることから、安心して経営を任せることが可能です。

⑥M&Aの専門家や仲介会社に相談をすること

最後のポイントは、M&Aは専門家や仲介会社に相談する点にあります。不動産仲介業界の場合、不動産取引の延長的な感覚のもとで、自身でM&Aを進めたい衝動に駆られてしまうケースも珍しくありません。

しかし、それでは問題が発生してしまうため、M&Aの専門家に任せて解決の難しい問題を柔軟に対応してもらうと良いでしょう。

M&Aの法律相談先ランキングについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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不動産仲介業界のM&Aの成功・失敗事例

本章では、不動産仲介業界のM&Aの成功事例と失敗事例を掲示します。いずれの事例も、M&A戦略策定の参考資料としてしっかりと把握しておきましょう。

不動産仲介業界のM&Aの成功事例

飯田グループホールディングス

飯田グループホールディングス

出典:https://www.ighd.co.jp/

不動産仲介業界M&Aの成功事例として、「飯田グループホールディングス」のM&Aを取り上げます。飯田グループホールディングスは、2013年に不動産仲介業界で戸建て分譲住宅を手掛ける6社の企業が経営統合して誕生しました。

この6社とは、タクトホーム・アイディホーム・東栄住宅・アーネストワン・一建設・飯田産業です。その結果、売上高は業界最王手「積水ハウス」の半分程度にまで達し、年間販売戸数では積水ハウスを大きく上回りました。

経営統合後は、既存事業である分譲マンション・戸建・土地の分譲・注文住宅などを展開しつつ、スケールアップしたメリットを大きく生かして、仕入れコストの引き下げや優秀な技術者の育成などにも成功しています。

このように不動産仲介業界では、急速な業界再編などに危機感を抱いて、M&Aによる企業規模の拡大を通じて、周辺業界への参入・海外展開・多角化した企業展開などを進める企業が増加しています。

不動産仲介業界のM&Aの失敗事例

不動産仲介業界のM&Aでは、しばしば報告される失敗パターンがあります。それは、過去にM&Aを実行したものの、数年経過後に買収した会社を再び他社に譲渡するケースです。このケースのほとんどは、経営者のみの直接交渉でM&Aを実施してしまった点に起因すると考えられます。

不動産仲介業界の日常業務として手掛けている不動産取引の延長線上で、M&Aの交渉のみであれば当事者同士でも協議・合意は可能です。しかし、M&Aに必要な買収監査を十分に行えないため、偶発債務・簿外債務などの負債リスクを把握できなかったのです。

また、M&Aアドバイザーがいれば見落とさないM&A後の組織・人員の体制なども、十分な吟味や検討が実施されないままとなって事業に好影響を生みませんでした。M&A実施にあたっては、専門家のサポートが必要であることを示す事例といえます。

マンション管理会社のM&A事例については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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不動産仲介業界のM&Aに向けた準備から買収編

本章では、不動産仲介業界のM&Aにおける買い手として、準備の内容を検討します。まず、M&Aは単純な不動産の取得とは異なり会社の買収であるため、専門的な外部機関に依頼しなければなりません。このときに、会社の内容を調査するため、買収には少なからず時間と手間が発生します。

また、会社買収の特性上、取得を望んでいる不動産と直接関係のない偶発債務・簿外債務などの負債を引き継ぐ可能性がある点を頭に入れておきましょう。さらに、負債だけではなく、不動産含み益に対して課税された税金を引き継ぐケースも存在します。

なお、不動産売買では契約書は印紙税の課税文書ですが、株式売買契約では非課税文書であり、印紙を用意する必要はありません。

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不動産仲介業界のM&Aに向けた準備~売却編

不動産仲介業界のM&Aは、売り手が株式を譲渡した後も会社は存続するため、売主にとって手間の少ない取引形態です。つまり、現在の会社の人員整理・締結している既存の契約変更などを行う必要はありません。買い手企業の子会社になる点について違和感がなければ、従業員への説明を済ませましょう。

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不動産仲介業界における資産売却と株式譲渡の比較

最後に紹介するのは、不動産仲介業界における不動産売却時の売却益とM&Aで株式譲渡した際の譲渡益の比較です。なお、ここでは、単純な売却額ではなく、納税を経て手元に残る金額を比較します。

まずは法人が含み益のある不動産を譲渡する場合、譲渡益に対して事業税・住民税・法人税などの税金が課税されます。もしも含み損のある不動産を所有していれば、同一事業年度内に売却して譲渡損を生み出すと、法人税などを軽減できる譲渡損益通算を適応可能です。

また、譲渡益に見合う損金として固定資産除却損や役員退職金の支払いなどを行える場合も、同様に法人税などの税金を軽減できます。しかし、譲渡益に見合う損金の計上ができない場合は、法人税などの負担は避けられません。

また、商業系建物の譲渡であれば、消費税の負担も加わります。ここから株主に利益還元するには株主配当を行いますが、株主の配当所得では総合所得として累進課税が適用される仕組みです。結果的に最高で約55%の税率が課せられて、株主の利益は不動産売却額の30%ほどしか残りません。

不動産仲介業界でのM&Aの優位性

その一方、M&Aで株式譲渡した場合、譲渡所得は申告分離課税となるため約20%の課税率です。また、株式譲渡であれば、消費税や法人税は適用されません。不動産の売却額と株式譲渡の譲渡価額は必ずしも同額ではありませんが、税率の差は非常に大きいです。

このように、株主にとっては、M&Aでその会社の株式を譲渡する方が有益性は高いです。また、買収側にとっても、M&Aであれば出費を抑えられるメリットがあります。具体的にいうと、不動産を現物で購入すると課税される不動産取得税と登録免許税は、M&Aであれば対象外です。

なお、費用面では、M&A仲介会社に支払う費用の吟味も忘れてはなりません。会社ごとに料金体系は多種多様ですが、「仲介会社への手数料は具体的な結果を対価に支払いたい」とお考えの方は、完全成功報酬制のM&A仲介会社への依頼が選択肢のひとつです。

M&A総合研究所にはM&Aに関する知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、これまで培ってきたノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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不動産仲介業界のM&Aのまとめ

不動産仲介業界のM&Aには、他の業種とは違った特徴があります。特にM&Aに関して、他の業種と比較して業界内で理解や親近感が高い傾向にある点が特徴的です。

なぜなら、不動産仲介会社では、日常的に高額な不動産を取り扱っていたり、不動産取得を目的に不動産保有企業そのものを取得したりする行為を自然にイメージできるためです。しかし、それゆえに、他業種よりもM&Aへの抵抗感が低く、M&Aを当事者のみで実施してしまう傾向があります。

M&Aによるメリットを最大化するには、M&A専門家の起用を忘れないようにしましょう。本記事の要点は、以下のとおりです。

・不動産仲介業界とは
→不動産物件の所有者と借り手(あるいは買い手)の間に入って売買/貸借/交換の代理または仲介などの事業を手掛ける企業が属する業界

・不動産仲介業界の現状
→中小規模の不動産仲介会社では、経営環境の悪化に悩まされている

・不動産仲介会社が取るべき施策
→親族内承継ではなくM&Aによる第三者への事業承継を検討する

・不動産仲介業への新規参入の状況
→相続税の申告を専門的に手掛ける税理士法人が不動産仲介業に新規参入するケースが代表例

・不動産仲介業界でM&Aを行うメリット
→大手企業の営業力を利用して利益を改善できる(譲渡側)、管理戸数の増加(譲受側)など

・不動産仲介業界でM&Aを行うデメリット
→企業文化の違いで両社が融合できない(譲渡側)、企業文化の違いで両社が融合できない(譲受側)など

・不動産仲介業界のM&Aにおける注意点
→M&Aの専門家が不在のままで、M&A交渉を成立させるのは非常に困難

・不動産仲介業界のM&Aを成功させるポイント
→売却のタイミングを誤らないこと、自社管理の物件を持っていること、地域性を生かす運営を行っていること、社員の平均年齢が高齢でないこと、同業他社に売却すること、M&Aの専門家や仲介会社に相談をすること

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